新日鐵住金株式会社(製造)鞘ケ谷ほたるの里保育園/福岡県北九州市

パートII 新日鐵住金株式会社(製造) (PDF形式:797KB)別ウインドウで開きます

立ち上げ時のポイント
  • 認可保育施設では対応することができない、工場の交替勤務者のニーズに合わせて、保育施設の設置場所や開所時間などを検討した。
  • 会社理念や、月々の保育利用ニーズが変動しうることを想定し、保育士等の確保に柔軟に対応できることなどを重視して外部委託業者を選定した。
  • 先行事例の視察時に受けたアドバイスをもとに、運営委託を行う外部委託業者の検討を早期に行い、保育施設の施設整備等の段階から保育のノウハウを持つ外部委託業者に相談しながら開設準備を実施した。
設置者の概要
○企業概要 ■事業所  本社(東京都千代田区)、大阪支社、支店(全国10ヶ所)、製鐵所(全国13ヶ所)等
■設立年 平成24年10月
■資本金 4,195億円
○業種 製造(製鐵、エンジニアリング、化学、新素材、システムソリューションの各事業)
○従業員規模

・グループ全体 92,309人

・単独     4,000人(うち女性) 約200人
グループ全体で92,000人を超える従業員数を持つ大企業。
製鐵拠点の1つである八幡製鐵所では、北九州市内3地区の製鐵工場を運転。

○企業の特色

・八幡製鐵所の工場に勤務する従業員の約4割が三交替制勤務。

・工場における女性人材の活用を目指し、近年、若年女性の採用を積極的に実施。

保育施設の概要
○所在地 福岡県北九州市(人口:約97万人)
○地域の特色

・平成27年の合計特殊出生率は1.59で、20政令指定都市の中で第2位。

・6年連続で年度当初の待機児童数0人を継続中。

○設置方式 単独設置・単独利用型
○設置場所

・社宅敷地内に1階建ての建物を新築。

・駐車場として活用していた一角を転用し、スペースを確保。

○運営方式 外部委託方式(株式会社テノ.サポート)
○開設日 平成29年4月
○利用定員と利用者数

・定員:30人(うち地域枠0人)
従業員枠(0歳児5人、1歳児5人、2歳児5人、3歳児5人、4歳児5人、5歳児5人)

・利用者数:25人 ※平成30年1月時点
従業員枠(0歳児4人、1歳児11人、2歳児6人、3歳児3人、4歳児1人、5歳児0人)

○開所時間

通常保育 平日・土曜・日曜・祝日 24時間

・時間帯に関わらず、利用者単位で最大19.5時間の保育。

・利用者の状況により、保育ニーズがない場合は休園。現状では平日7:00~20:00の開所でほぼ収まっている。

○保育施設の特色

・三交替勤務の従業員が利用しやすいよう、社宅敷地内に設置。

・近隣への騒音に配慮し、近隣の住居に接しない場所を選んで施設整備を実施。

○費用の状況

・初期費用約6,700万円(うち助成分約3,800万円)※1
※1 建造物の建築費のほか、フェンス、備品等の費用を含む

・年間運営費用約3,000万円(うち助成分2,200万円)※2
※2 人件費、備品類費用を含む

設立までの流れ

時期 内容
開設6年前
平成23年
女性人材の採用に力を入れる
開設2~3年前
平成26~27年
保育施設の設置検討を開始 ⇒社内での設置検討
開設1年3ヶ月前
平成28年1月
三交替勤務の女性従業員にアンケートを実施し、保育施設へのニーズを把握 ⇒ニーズの把握
開設1年2ヶ月前
平成28年2月頃
先行して保育施設を開設していた社内の他事業所および関連法人の保育施設を視察
保育施設開設時に利用可能な制度等の情報を収集
⇒参考情報の収集
開設10ヶ月前
平成28年6月頃
企業主導型保育事業の情報を入手し、同事業の利用を決定設置場所を選定 ⇒設置方式の決定、設置場所の選定
開設8ヶ月前
平成28年8月頃
見学した2保育施設の運営委託会社を候補とし、運営委託を行う外部委託業者を検討(最終的な社内決済は11月)保育施設の着工 ⇒外部委託業者の選定、施設整備
開設4ヶ月前
平成28年12月
社員向け説明会を2回開催
近隣地域の社会福祉協議会、小学校や認可保育施設等を個別に訪問し、開設の説明と挨拶を実施
⇒社内向け説明会開催
開設1ヶ月前
平成29年3月
外部委託業者を中心に保育人材等の確保、安全管理などのマニュアル作成等の開設準備を実施 ⇒開設準備
平成29年4月 保育施設開設 ⇒開設

設置の検討

保育施設の設置の経緯とニーズの把握

新日鐵住金株式会社の製鐵拠点の1つである八幡製鐵所は、前身である明治期の官営製鐵所の操業開始以来、近隣工場との統合等を経ながら、北九州市内の3地区(戸畑地区、小倉地区、八幡地区)で製鐵工場の運転を行っている。同工場に三交替制で勤務する従業員は従前から男性が中心であったが、平成23年より高等学校卒業後の女性を採用するなど女性人材の確保に力を入れるようになった。それに合わせ、今後、出産や子育て等の時期を迎える女性従業員が、仕事と家庭の両立が難しいという理由で離職することなく、長期的にキャリアを積んでいくことができるよう、事業所として24時間365日の受入れが可能な保育施設の設置検討を行うようになった。

そこで、実際の従業員のニーズを把握するため、三交替勤務の女性従業員(19~25歳)30人ほどにアンケートを実施したところ、保育施設設置への賛同とともに、設置されれば子どもを預けたいという利用意向もあることが分かった。

設置に向けた検討を進めるにあたり、まず、先行事例からの情報収集を行った。同社の大分製鐵所が先行し、平成28年4月の保育施設開設に向けた準備を行っていたため、検討開始の初期段階で同施設の視察に訪れた。施設の見学を行っただけでなく、立ち上げ担当者より、準備段階から外部委託業者に相談して進めるとよいなどの具体的なアドバイスも受けることができた。また、近隣の医療機関が運営している保育施設の見学も行った。

大分製鐵所の保育施設は認可施設として設置されていたため、当初は同様の形態を考えたが、認可施設は地域枠の設定が条件であり、今後、保育ニーズが増えることが想定されるため、社内のニーズに合致しないと考えた。また、厚生労働省の事業所内保育施設への助成事業(事業所内保育施設設置・運営等支援助成金)の活用も検討したが、同事業では助成期間が10年間に限られるため、判断しかねていた。

上記のように保育施設をどのように設置するかを検討していた平成28年6月頃に、企業主導型保育事業が新設されるとの情報を得て、他制度よりも柔軟な運営が可能な同事業の活用を決定した。

設置場所の確保

交替勤務の従業員が利用しやすい保育施設を目指していたため、交替勤務者が夜勤前や夜勤から帰宅した後に睡眠をとり、その後に子どもを迎えに行くことも想定する必要があった。そのため、保育施設の設置場所は事業所よりも住居に近い方が送迎の利便性が高いと考え、社宅施設内への設置を検討した。3ヶ所ある社宅施設の中でも最大規模の社宅内に設置することとした。

当初は同社宅内にある集会所のスペースを活用することも考えたが、助成条件に対して構造上の制約があることが分かったため、以前は駐車場として使用していた敷地の一角に保育施設を新築することに決定した。敷地内の場所選定の際には、近隣への騒音に配慮し、近隣の住宅と接していない現在の場所を選んだ。

施設整備にあたり社内では保育に関する知見がなかったため、運営委託を行う保育事業者の検討を早めに実施し、保育事業者などに相談しながら、検討作業を進めるよう工夫した。施設について留意が必要なことを細かくヒアリングし、施設計画に落としこんでいった。

駐車場の一角を活用した 1階建ての建物

施設のエントランス

園庭が見える保育室

午睡の様子

入口横の事務室

運営方法の検討と外部委託時の業者選定

保育施設の運営方法については、社内には保育に関する知見がないため、従業員の大切な子どもを預かる上での安全性や円滑な運営を第一に考え、外部委託方式を採用した。外部委託業者の選定時には、設置検討の段階で視察を行った大分製鐵所および医療機関の保育施設の運営委託先の2社を候補として検討した。最終的には、福岡県を拠点としている地元企業であること、直営で認可施設の運営実績もあり自治体担当者にも認識されていること、保育士の確保がより確実で、保育施設の利用状況に応じて柔軟に保育士の増減に対応してもらえることなどを考慮し、現在の事業者に決定した。

企業内に向けた対応

福利厚生としての側面と利用者負担の検討

入園選考時の基準において、認可施設では対応することが難しい夜勤のある従業員の子どもを優先的に入園させることとしている。また、地域の認可施設を利用した場合と同程度の利用料金に設定することで、子どもをもつ従業員間で金銭的負担の格差が生じないように配慮している。月額利用料は基本保育料、延長保育料、その他の実費徴収分(個人で利用しているカラー帽子、帳面、名札)で構成されている。

企業内での説明

設置検討の段階で行った従業員アンケートで把握されたニーズを踏まえ、企業内での説明を行った。具体的には、人事担当者レベルでの設置検討の後、所内幹部、本社幹部への説明を行った。すでに大分製鐵所の保育施設開設の実績があったため、社内での承認や決済のプロセスは同事例にならって進め、スムーズに進めることができた。本社説明の後、組合への説明を経て、平成28年12月に従業員向けの説明会を2回開催した。説明会の開催時には従業員の家族も参加可能とし、参加希望者を募った。

地域とのかかわり

自治体との連携

保育施設の開設にあたり、北九州市の戸畑区の保健福祉課に相談し、開設の報告を行うべき先があるかを問い合わせた。その助言に基づいて市役所の保育課を訪問し、報告を行った。また、警察署や消防署への報告も行った。

近隣住民とのかかわり

保育施設設置への近隣住民の理解を得るために、開設前の段階で、地域の小学校、社会福祉協議会、地区自治会、近隣の認可保育施設を個別に訪問し、挨拶と開設の説明を行った。

開設に向けた具体的な準備

施設運営に関する法令の遵守と保育計画の作成

調理、衛生、安全面等の法令遵守については、外部委託業者の知見を活用し、計画を立ててもらった。保育計画の作成についても委託業者が計画立案を行うが、保育施設の理念として追加したい点などは伝え、反映させている。

保育士等の必要人材の確保

外部委託方式としているため、保育事業者において保育士等の必要人材の確保を行っている。具体的には、前月に利用者から翌月の利用予定を提出してもらい、その状況に合わせて外部委託業者が保育士人数の調整を行っている。

設立後の運営

衛生管理と安全管理

衛生管理や安全管理などについては、月1回の定期会議の際に外部委託業者から報告してもらうとともに、日常的な意見交換も行っている。基本的には外部委託業者での対応だが、社内でもマニュアル等は把握しており、規定どおりの運営がなされているかを確認することや、ヒヤリ・ハットの事例について原因や対策を話し合うなどにより、管理者として意識を高めていくことに努めている。

なお、保育施設には防犯カメラを24台設置し、セキュリティ会社との契約も行っている。

利用定員枠の運用

保育施設を利用希望者には、単願での申込を前提として申請手続きを行うよう依頼したため、保育施設の定員確保の見込みはおおむね予測することができた。その際、認可施設の利用申込を行う時期よりも前に選考を実施し、製鐵所の保育施設に入所できなかった場合は認可施設の利用申込に間に合うよう配慮した。

関係機関や近隣保育施設などとの連携

地域に根ざした保育施設の運営を行っていきたいと考えているが、現状はどのような活動をすべきか模索中で、具体的な取組には至っていない。今後、地元のお祭などへの参加を検討したいと考えている。社宅内に開設した施設として、利用児童の保護者以外の従業員やその家族と触れ合う機会があるという特色を活かし、社宅という小さなコミュニティからではあるが、地域みんなで子どもを育てるという考え方を育んでいきたいと考えている。

受け入れ時間や体制の工夫

三交替勤務を行っている従業員の利用を想定し、社宅内への保育施設設置、ニーズに応じた24時間365日の開所、夜勤前後の睡眠時間も含めた保育時間の設定を行うなどの工夫を行っている。利用者単位では最大19.5時間の預かりを実施している。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

現時点では三交替勤務の女性従業員の保育施設利用はまだ実現していませんが、今後、そのような女性従業員の育児休業取得等が増加することは充分に想定される中、所内の保育施設として認可施設では対応できない時間帯や日数等をカバーできる体制が整っていることは大きな意義があると考えています。この取組が女性従業員の職場への復帰を後押しし、培ってきた技能や知識を中断することなく発揮できると考えています。これまでほぼ男性従業員のみだった三交替勤務の現場に女性の活力が発揮され、より働きやすい職場環境づくりにつながることを期待しています。

従業員枠利用者の声

鞘ケ谷ほたるの里保育園では、24時間365日の保育が可能な受入れ体制があるので、職場での勤務の時間帯に合わせて、自由に保育時間を選択することができ、とても助かっています。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)