医療法人社団水光会(医療)保育施設ひまきのの森/福岡県福津市

パートII 医療法人社団水光会(医療) (PDF形式:805KB)別ウインドウで開きます

立ち上げ時のポイント
  • 以前から運営していた託児所の利便性の向上と、機能・定員の拡大を目指し、中核病院等が集積している敷地内にスペースを確保し、保育施設を移転した(定員増により企業主導型保育事業に適用)。
  • 移転先のスペースから逆算した受入可能な児童数の上限を想定しつつ、保育ニーズに応じて段階的に定員数を拡大した。
  • 移転先は以前、事務室として使用していた場所だったため、コンセントや配線等を床下に隠したOAフロアとしていた床面への床貼り、パーテーションの撤去・新設、子ども用トイレの設置のための水回りの工事、エアコンの増設等、全体的な改修を行った。
  • 保育利用のニーズの変動に柔軟に対応できるよう、外部委託方式を採用し、近隣地域で保育士等の人材を豊富に確保している業者を委託先として選定した。
  • 病児保育の担い手として法人が直接雇用した看護師も保育補助を実施している。
設置者の概要
○企業概要 ■事業所 福岡県福津市
■設立年 昭和40年
■病床数 300床
○業種 医療(総合病院、介護老人保健施設等の運営)
○従業員規模

・グループ全体 969人(うち女性) 700人

・単独    690人(うち女性) 490人
法人内のサービス付き高齢者住宅、フィットネスセンターやグループ内の社会福祉法人、有限会社等を含む200人程度が保育施設の所在する敷地内に勤務。
看護職をはじめとする女性職員の比率が全体の7割以上。

○企業の特色

・総合病院の運営を軸に、介護サービス関連事業所や入所・入居施設、健康増進のための運動施設の運営等、幅広い事業を展開。

・業務上、看護師等の夜勤が必要な職種も多く、職員の福利厚生のために昭和50年代より法人内で託児所を自主運営。

保育施設の概要
○所在地 福岡県福津市(人口:約6万人)
○地域の特色

・平成23年頃から市内で大規模な都市開発が行われ、総合病院の周辺地域にも新興住宅地が拡大中。

・平成23~28年の人口増加率が県下2位と急激に人口が増加しており、認可保育施設の待機児童数も増加(平成29年4月時点で52人)。

○設置方式 単独設置・共同利用型(法人グループ内)
○設置場所

・事業所内設置

・以前は事務室として使用していたスペースを活用。

○運営方式 外部委託方式(株式会社テノ.サポート)
○開設日 平成28年7月
○利用定員と利用者数

・定員:50人(うち地域枠0人)
従業員枠(0歳児12人、1~ 2歳児25人、3歳児5人、4~ 5歳児8人)

・利用者数:48人 ※平成30年2月時点
従業員枠(0歳児8人、1歳児16人、2歳児7人、3歳児6人、4歳児7人、5歳児4人)

○開所時間 通常保育 平日・土曜・日曜・祝日7:30~18:30(延長保育18:30~20:30)
お泊り保育※1 平日・土曜・日曜・祝日15:30~翌10:00
※1 準夜勤・深夜勤務者がいる場合に実施
○保育施設の特色

・法人グループの施設が集積している敷地内にある複合施設の1階部分に整備。

・病児保育のための専用スペースを確保。

○費用の状況

・初期費用約1,450万円(うち助成分約930万円)※2
※2 改装費、追加工事代金、備品購入費用、その他を含む

・年間運営費用約6,000万円(うち助成分5,500万円)※3
※3 運営委託費、光熱費、消耗品費用、病児保育経費、事務員人件費を含む

設立までの流れ

時期 内容
開設26年前
平成2年10月
総合病院等の移転により、昭和50年から自主運営していた託児所が離れた場所に残され、いずれは敷地内への移転をと検討 ⇒社内での設置検討
⇒ニーズの把握
開設2年前
平成26年
介護系事務部門の移転等により、病院等が集積する敷地内に保育施設のスペースを確保できる見込みが立ち、移転を決定 ⇒設置場所の選定
開設5~6ケ月前
平成28年1月~2月
移転先のスペースを踏まえ定員増を決定したことを機に、運営方法を外部委託方式にすることを決定
候補3社を比較検討の結果、業者を選定
⇒運営方式の決定
⇒外部委託業者の選定
開設3ヶ月前
平成28年4月頃
新聞報道で企業主導型保育事業の情報を入手し、移転開設のための改修費の助成を申請
職員向けに利用説明会を3回開催
⇒設置方式の決定、申請手続き、社内向け説明会の開催、利用者の募集
開設1~2ヶ月前
平成28年5~6月
移転先の改修工事を実施
委託業者とともに人材確保、運営マニュアル作成等の開設準備を実施
⇒設備整備
⇒開設準備
平成28年7月 保育施設開設 ⇒開設
平成29年5月 定員を50人に増員

設置の検討

保育施設の設置の経緯とニーズ把握の実施

医療法人社団水光会では、昭和50年代より、看護師寮に併設する形で職員のための託児所を設けていた。平成2年になり、同法人の中核施設である総合病院と老人保健施設が以前の場所から2.5km離れた現在の場所に移転したが、その際に託児所の設置場所を確保できず、同施設は以前の場所に残したままとなった。そのため、託児所利用者の送迎時の負担が大きく、理事長をはじめ、以前から近隣地への移転を望む声が大きかった。

平成26年になり、病院の健診部門やリハビリテーション施設、一般向けのフィットネス施設、サービス付き高齢者住宅等が入居している現在の建物で、1階に入っていた介護系事務を所管している2部署のうち1部署が福津市の施設に移転することになった。そこで、もう1部署を法人内の他の場所に移すことで、保育施設のスペースを確保し、託児所の移転開設を行うことを決定した。

同じ頃、病院等が立地する周辺地域では、平成23年頃から始まった大規模な都市開発による新興住宅地が次々と完成し、人口増加に伴う認可保育施設の待機児童問題も顕著になりつつあった。そこで、移転開設にあわせ、以前は15人と小規模だった定員枠を40人に拡大することとした。定員増にあわせ、従前は看護師のみに限られていた利用対象者を、看護師を優先としつつ、グループの職員全体に拡大した。

なお、法人としては、福岡県が実施している病院内保育施設への補助事業(病院内保育所運営費補助金)により年間240万円程度の運営費補助を受けていたが、基本的には託児所の運営にかかる費用(年間経費 約1,600万円)は法人の持ち出しであった。移転開設の決定を行った際にも、法人内の職員のための福利厚生という位置づけは不変であったため、施設整備等に必要な経費はすべて法人が負担することを前提に考えていた。

上記の前提で外部委託業者の選定等の移転開設に向けた準備を進めていた平成28年4月頃に、新聞報道で企業主導型保育事業が新設されることを知った。当初、助成対象になるのは新設の施設だろうと捉えていたが、外部委託業者等に相談し、定員増による移転開設という形も助成の対象になることを知り、同事業の活用を決定した。その後、施設整備費の助成が認められたため、運営費についても申請を行うこととした。

設置場所の確保と安全管理

上記のように、サービス付き高齢者住宅等が入っている建物1階の一角を保育施設として活用した。確保できるスペースの面積から逆算して受入可能人数の上限を算出し、余裕をみて定員人数を設定した。

施設整備にあたっては、以前は事務室として使用していた場所でありコンセントや配線等を床下に隠したOAフロアとしていた床面への床貼り、パーテーションの撤去・新設、子ども用トイレ設置のための水回り工事、エアコンの増設等、全体的な改修が必要だった。施設内の配置等を検討する際には、パーテーションでゆるやかな空間の区切りを設けつつ、スタッフが全体を見渡せるように配慮を行った。また、病児保育のための専用室も新たに設置した。保育施設の入口は他の施設等とは別に設けられた専用入口となっており、二重ドアとカメラ機能付きのインターホンを設置することで安全管理にも配慮している。

開設当初、職員に対し、送迎時は職員用駐車場に車を止め、歩いて保育施設に来るよう指導していたが、天候が悪い日などに大変だという利用者の声を受けて、保育施設の玄関前を舗装して2台分の車寄せを設けるなどの工夫も行った。

保育施設の入口

二重扉になっている入口

パーテーションで区切られた保育室

パーテーションとおもちゃ棚

午睡の様子

病児保育の専用室

運営方法の検討と外部委託時の業者選定

移転前は法人が保育士等を直接雇用し、自主運営を行っていたが、利用状況の変動にあわせて人材配置の調整を行うことに苦労していた。そのため、移転開設で定員が増えることを機に、保育士の配置調整を柔軟に行いやすい外部委託方式に切り替えることとした。業者選定にあたっては、保育事業の実績が豊富な3社を候補として検討し、最終的に県下で最も実績があり、近隣の2つの医療機関でも保育施設の運営を行っている事業者を選定した。近隣地域の保育士を多く抱えているため、保育士等のヘルプが必要な時に人材確保が期待できることや柔軟な対応を行ってもらえるという安心感が決め手であった。

なお、病児保育を担当する看護師(非常勤3人)については法人が直接雇用を行っており、病児保育の利用がない時は外部委託業者のスタッフに加わって保育の手伝いを行っている。

企業内に向けた対応

福利厚生としての側面と利用者負担の検討

近隣の認可保育施設では対応できない、お泊り保育が可能な点や、移転開設を機に病児保育の機能を追加した点が強みである。なお、現在施設を利用中の職員は、看護職が大半(現在利用中の児童の約7割)を占めており、その他に医師をはじめ検査室の技師や介護老人保健施設の介護職、フィットネス部門の職員などの利用者もいる。

また、保育施設を福利厚生の一環と考えているため、利用者のニーズに合わせて適用できるように料金体系を工夫し、利用者負担の水準も低く抑えている。具体的には、月極利用の基本料金(時間目安210時間)の他に、月10日以下(同105時間)、月5日以下(同52.5時間)、一時預かりと幼稚園の併用(通常1日4時間、夏冬春の長期休暇時は20日預かり)の4タイプを設定しており、パートタイム勤務の職員も利用しやすいようにしている。保育料等は給与天引きにより徴収し、保育施設で現金のやりとりは発生しないようにしている。基本の保育料以外に発生しうる利用者負担は、お泊り保育を利用する際の朝食代(200円)と夕食代(300円)である。延長保育時の補食は外部委託業者がサービスとして提供してくれている。

企業内での説明

法人の理事長をはじめ、多くの職員が託児所の移転開設を望んでいたため、法人内の調整はスムーズに進んだ。移転開設にあたり、保育施設に関する説明会などのイベントは特に実施しなかったが、保育施設を担当している病院総務部の課長が各部署長に声かけを行い、移転開設や利用可能な対象者の要件が看護師以外にも拡がったことなどを説明した。その中で、なかなか復帰できないでいる職員がいるなどの話を聞くこともあった。

地域とのかかわり

自治体との連携と自治体等への手続き

移転開設にあたり必要な手続きを確認するため、市の保育所管課に連絡をとり、情報収集を行った。その回答を受けて、保健所等への変更届の提出を行った。

開設に向けた具体的な準備

保育士等の必要人材の確保

外部委託業者が近隣の2医療機関でも保育施設の運営を受託しているなど、近隣地域に保育士を多く抱えているため、緊急に保育士が必要な時も柔軟に判断し、対応してくれている。

運営費に関する事項

当初は託児所として運営していた時と同様に県の補助金を受けることを考えていたが、企業主導型保育事業での施設整備費の申請が受理されたため、運営費の申請を行った。助成を受けるに当たり、短い準備期間で過去数ヶ月分の情報をさかのぼり、細かく実績を整理しながら作業を行った。

設立後の運営

衛生管理

保育施設の利用児童が嘔吐してしまった時や、保育士に手洗いの指導を行うときなどに、総合病院の院内感染対策チーム(ICTチーム)のメンバーが不定期で施設を巡回し、指導を行ったりしている。託児所として運営していた時には行っていなかったが、敷地内に移転したことによって可能になった。保育施設のインフルエンザやノロウイルスなどの対策等に有効と考えている。

家庭、地域への情報提供

毎月、保育施設の利用者に向けて「たより」を配布している。また、同内容を院内のイントラネットにも掲載し、法人内の職員に広く保育施設の取組を周知することに努めている。

地域の子育て支援

七夕やハロウィーン、年末の餅つきなどの際に、地域のイベントに参加したり、敷地内にある病院や介護施設等を訪問するなどの交流を行っている。

利用定員枠の運用

移転開設した平成28年7月当初は定員40人でスタートしたが、開設後1年もしないうちに定員に達したため、平成29年5月より10人増員し、定員50人とした。それでも、法人内で6~7人が空き待ちとなっている状況である。移転開設した頃から、法人で看護師の人材確保のために採用活動に力を入れた結果、ひとり親家庭や複数名を一緒に預けられる保育施設を確保しにくい兄弟の子どもがいる家庭など、「保育所に預けることができるならば」と雇用に至った職員もおり、保育ニーズの上昇の理由にもなっている。

受け入れ時間や体制の工夫

日勤の職員だけでなく、準夜勤・深夜勤務の職員にも対応できるよう、通常保育としての開所時間(延長保育を含め7:30~20:30)に加えて15:30~翌日10:00までのお泊り保育も実施している。利用者から勤務シフトに基づいた保育利用時間を前月末に提出してもらい、15分単位で受け入れ体制の調整を行っている。全体的には日勤の利用者が中心だが、週4人程度はお泊り保育の利用がある。延長保育については、急患などの緊急の対応が必要な場合に利用されるケースがあり、利用実績は週に2~3人程度である。このように保育利用のニーズは利用者の状況によって変動的であるため、外部委託業者の選定時に保育士の確保等に柔軟に応じてもらえることを重視した。業者への運営委託は年間契約だが、月々の保育時間等の実績に応じて支払を行っている。

外部委託方式ではあるが、職員の子どもを預かる上での責任として、法人側でもしっかりと状況を把握しておかなければならないと考えている。そのため、保育施設を担当している事務職員がすべての子どもの名前を覚えたり、日々施設に足を運んでスタッフや利用者とコミュニケーションをとるようにしている。保育士や利用者の要望を聞いたり、保育士と利用者の仲介役、利用者と職場の所属先上司などとの仲介役の役割を果たすこともある。例えば、子どもの発熱時などに迎えに行きづらいなどの声があれば、必要に応じて所属先の上司に気にかけてもらえるよう声かけをするなどの対応を行っている。

企業担当者・利用者の声

企業担当者の声

保育施設が移転前よりも広く、きれいな施設になったこと、何より職場に近くなり送迎の負担が軽減されたことで、施設を利用している職員に大変喜ばれています。自主運営を行っていた頃よりも、利用者の保育ニーズに細やかに対応ができるようになり、外部委託業者にも感謝しています。食事の提供に関しても自園調理で離乳食から一般食まですべてに対応していて適温提供を基本としています。企業主導型保育事業としての助成を受けることで、利用者の負担をより低く抑えることができています。

従業員枠利用者の声

以前の保育施設も利用していましたが場所が離れていたため、子どもの発熱の連絡があってもすぐにお迎えができずに結局、仕事を休むことになり、働くママとして負担が大きいものでした。しかし、保育施設の場所が病院横と近くなり、小児科との連携もあるため、発熱の連絡があってもすぐに病院受診することができ、さらに看護師による病児保育があるので安心して預けることができています。保育内容も充実していて、子どもがいつも笑顔で「ひまきのの森」に通園しています。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)