少子化対策

全国リレーシンポジウム〈愛知県〉 分科会2「地域における子育て支援」

(事例発表者)
岩田 修治 柳原通商店街振興組合理事長
丸山 政子 NPOまめっこ理事長
(コーディネータ)
林 陽子 中部学院大学短期大学部教授

分科会2の様子

(要旨)
問題提起

林 陽子 中部学院大学短期大学部教授

 日頃から、少子化対策について皆様方にはそれぞれの部局、または地域で力を注いでいただいているわけですが、なかなかV字回復みたいにはいきません。今後は少子化対策の視点ということで、仕事と子育ての両立、専業主婦層にも子育て支援が必要であること、さらに、男性を含めた働き方の見直しやワーク・ライフ・バランスが課題になるのではないでしょうか。しかし他方で、地域における子育て支援がないと、幾らワーク・ライフ・バランスとか、あるいは男女の固定的役割分担観の見直しと言っても、「子どもを持って良い」とか、「2人目、3人目を生んでも良い」とはならないのではないでしょうか。
地域における子育て支援は様々なプロセスを踏んできました。究極的には、「この地域は子育てしやすいな」とか、「子育てを応援してくれそうだ」とか、あるいは「楽しんで子育てができそうだ」という雰囲気を、その地域の方々が体で感じ取っていただけるように醸成された上で様々な施策が生きてくるのではないのでしょうか。
本分科会ではこういった地域における子育て支援がどんなふうになされてきて、それが今、その地域において、「子育てを楽しんでできるよ」とか、「子育てを応援してもらえるよ」という雰囲気をつくっているのか、実際の事例を通して皆様方にお伝えできればと思っています。

事例発表1 NPOまめっこの地域における子育て支援

丸山 政子 NPOまめっこ理事長

 「まめっこ」は1992年に名古屋市北区に親子教室ということで、「親も子も主人公」という合言葉でスタートしました。どうしても子どもが生まれると「何々ちゃんのお母さん」とか「何々さんの奥さん」という感じで自分を見失ってしまう状況になります。子どもの方も、みんな個性を持っているのに、子どもらしさを求めてしまって、本当に子どもの素直な姿はなかなか見つけてあげられなかったりします。そういう意味で、親も子も主人公になる所をつくりたいということから親子教室を始めました。
これはキャラバン隊で部屋を一つ借りて、その部屋の中でやっていたので、社会的には「一体密室で何をやっているのか」と、なかなか理解し得なかったと思います。それを長年やっていくうちに、利用しているお母さんたちの間に「自分の地域にもつくりたい」ということになり、会場が最大5会場に増えたこともあります。その後、スタッフは皆女性たち、子育て中の親なので、転勤があり、介護があり、いろいろな関係で辞めざるを得ず、会場確保も難しくなって、今は名古屋市北区と稲沢市の2会場だけで実施しています。
親子教室を長年やってきて、それはそれで必要とされているのですが、ある意味、「子育ては楽しいよ」という言葉とは裏腹に、「やはり大変なんだ」という状況がありました。少子化の傾向が顕著になって、密室の中でやっているよりも、社会的に外に出て、子育てがいかに楽しいか、いかに大変かを体験してほしいということから、2003年に集いの広場の事業を商店街ですることになりました。法人になったのは2000年で、3年後に「遊モア」という拠点を持とうという動きになったのです。
2000年に法人化した際に、メンバー全員でカナダへ視察に行ったり、私個人はフランスへ行って、海外の子育て支援の状況を知り、日本は本当に遅れているなということで、経済産業省の補助金をいただき、「0、1、2、3、おとなの広場、遊モア」を立ち上げました。「遊モア」というのは「もっと遊ぼう」ということと、「子育て中はユーモアを持って過ごしたいね」という二つの思いを込めてこの名前をつけました。
長年親子教室をやっている中で女性学を学んだり、ジェンダー学を学んだり、労働とはどういうことなのということを学んできました。現在は、性別で役割を分業した社会になったということで、子育てがしんどくなったのだということがわかりました。それならば、その社会をまたつくり変えれば良いのではないかと、あえて働く場所である商店街にこの「遊モア」をつくることにしました。今年で5年目になります。
一般に「広場で遊ぶ」と言われると、「何で公園に行かないのだ」と言われます。公園は3歳、4歳になって元気に走り回れる頃になると行けますが、2歳まではハイハイ状態なので、公園には行けないのです。それに、雨が降ったら行けないし、天気が良くても暑くて過ごせないのです。「屋根つき公園ですよ」と最初のころは説明していました。「託児所ですか」という質問には、「親子で過ごしているから託児所ではない」と言ってきました。
ただ、運営が厳しいので、広場の中で一時保育も始めました。日常元気に過ごしている保育園の子どもの中に、ぽつんと家庭で育てられた子が預けられると、子ども同士もなかなか仲間づくりができないのです。そこで、広場の中で保育をすることになり、世話は保育士などのスタッフがするが、遊ぶ部分では親子で遊ぶことにしてきました。2時間なり5時間を安心して過ごしてくださいという保育をして、その活動をするうちに、子どもだけ預けたいということで、「モアキッズ」がスタートしました。幼稚園や保育園に行く前に、「うちの子、お弁当の箱が開けられるだろうか」、「いつも私が世話をしているから、子どもだけになった時にやれるのか」という母の不安がある中で、子ども同士のルールを少しずつわかってほしい、体験してほしいということで「モアキッズ」を始めました。
始める中で、やはり商店街の人たちも好奇心を持って、「あんたたち、やれるのかね、もうかるのかね」と聞かれたりしました。「もうかりません。でも人は来ます」とやっていくうちに、おかみさんたちも興味を持ってくれました。おかみさんたちは子育ての経験があるから、多分わかってくれるだろうと思って、「遊モア」開設当初に「おかみさんの会をつくろう」ということで集まっていただき、「ffの会」をつくり、そういう中から自然にボランティア活動をしてくれるようになり、それが結局「遊モア」に対する理解、子育て支援に対する理解につながったと思っています。
さらに、「こんなに人が来るならマップが欲しいね」ということになりました。愛知県の「子育てみんなで推進モデル事業」という施策を使ってマップをつくろうということで、「人にやさしいまちマップ」を商店街理事長のほか皆さんに協力をしてもらいながらつくり、それを今活用しているところです。
その他、地域の保育園の先生たちも「一体親子で何しているのか」とか、「保育園は子どもしか預かっていないが、親の状況を知っておかなければいけないと思っているので、ぜひボランティアさせて欲しい」ということで、今、身近な田幡、名城、大野、東志賀保育園の先生が輪番でお話会に来てくれます。
また、「遊モア」利用者の母たちは、子どもが3歳、4歳で幼稚園へ行くと、少し手があいてボランティア活動ができるようになり、「ボラスタ」という組織をつくってボランティア活動をしてもらっています。
「遊モア」のこの5年間の利用状況を見ると、暑い夏と寒い冬は利用が一番多く、今年の7月は延べで500人が来ました。5年間活動しているので、今、2人目のラッシュです。上のお子さんが2歳、3歳になったので次の赤ちゃんを生むとなると、2人の子を公園には連れていけません。そうなると家で悶々として、ますます赤ちゃんは気になるわ、上の子はいたずらをするわで怒ってばかりということになります。ここの利用料ですが、1カ月に何回でも利用可能な6,000円のファミリー券がありますが、それが7家族分出ました。これから利用率は当然高くなるのかなと思っています。
「遊モア」が広がって、商店街に寄与したことで大きいと思うのは、お弁当屋さんです。近くに元気のよいお弁当屋さんがあり、「遊モア」開設当初、何気にお弁当を買っているときに、「なかなかお客が来なくてね」という主人の愚痴のような話を小耳に挟み、「「遊モア」が開設したらお弁当注文して良いか」と尋ねたら、「良いですよ」と言ってくれました。「遊モアに来てくれるお母さんには、「離乳食は持ってきても良いですよ。でも、通常食になったら商店街のお弁当屋さんに注文しても良いですよ」と言って、普通のお弁当を申し込んでいました。そのうちに、親子で来るから、親子弁当をお願いしたら、御飯を小さいおにぎりと大きいおにぎりにしてくれました。そういうささいなことでも、お母さんは子どもに食べさせるので、とてもありがたく思い、喜んでいました。また、「卵のアレルギーがあるから抜いて欲しい」、「塩コショウはしないで欲しい」というようにいろいろ要望を言って注文しても、そのとおりにできて来るわけです。商店街には他にもいろんなお店があるので、緩やかに波及効果があるのではないかというのが私の想像です。
今後の課題ですが、「遊モア」は年間400万円から500万円の事業をしており、名古屋市の「名古屋集いの広場事業」で180万円の予算をいただいて、あとは寄附金で運営しています。運営はとても厳しく、大家さんと商店街の善意で今は動いている状況で、資金と人材確保が急務です。それはどうやったら良いか、皆で考えてほしいし、私たちも考えていこうと思っています。当初、「遊モア」は有料でスタートしましたが、やはり子育て中のお母さんには、「お金を取るのですか。保育所や児童館はただですけど」と言われました。「保育所や児童館は全部が公営だから税金で賄えるが、NPOは非営利だけど、税金は一部しか入っていないから有料でないとやれない」という話をすると、「こういう場所は必要だからどんどん宣伝しようよ」とか、「利用することで継続されるのなら利用したいね」というような信頼関係が生まれています。だから、NPOの人も無料でするのではなく、やはりそこは有料で事業的に展開する意識や覚悟が必要であり、行政や企業の人たちにはNPOを育てていくための資金的確保を工夫してほしいと思っています。
また、私はそろそろ次世代を育成しなければいけない、私一人が頑張らないで、そろそろ黒子に徹して、次の人たちが地域で活躍できる場所とか子どもたちが中心になって活動できる場所を意識して動こうかと思っています。
現実に今、大学を卒業して、子育て支援の中で働きたいという若いスタッフが来ています。NPOで働きたいというのは、私にとっては非常に嬉しい言葉です。「社会保険はまだ整備されていないのですよ」と言ったら、「今はそうでしょうね」と言って働いてくれる若い人がいるのです。企業に働くのと同じように、NPOで働くというイメージをしてくださる若い人たちがいるのだなと思った次第です。次世代の人たちが「ここで働くことは自分の仕事にもなるけれど、地域も良くなる、それから社会が良くなる。」「がむしゃらに働くという働き方も一方ではあるが、それぞれの働き方の選択肢もつくっていける」というようなことを思っているのではないでしょうか。そういう意味でも、商店街は働く人が沢山いるので、「お店を持ちたい」、「NPOでも働きたい」、「もちろん企業でも働きたい」というような、いろんな働き方がイメージできるように、例えば「まめっこ」でそういうことがモデル的にできないだろうかと考えています。

事例発表2 柳原通商店街における子育て支援の取組

岩田 修治 柳原通商店街振興組合理事長

 私は5年前に商店街の理事長になったのですが、その時は90店舗あり、1度は95店舗まで増えたのですが、今は82店舗まで減っています。名古屋市の空き店舗の補助金のことで、企業支援ネットの方を訪ねた折に、丸山さん(NPOまめっこ理事長)を紹介されたのですが、とにかく1店舗でも空き店舗のシャッターを開けたいという思いで、丸山さんに会いました。
丸山さんと初めて顔合わせをした際も、はっきりいってNPOの意味も知らなかったし、お金を取って子育てをやることが全く理解できなかったのですが、何度となく説得されるうちに、今の子育ては、昔と違ってほったらかしではだめなんだということがわかり、それなら商店街も一緒になって子育てしようよと、お金以外の手助けなら面倒を見ましょうということで始めました。丸山さんは私の顔を見るたび「お金がない、お金がない」ということで、もう本当にどうなることかと思いました。
「遊モア」のオープンによって商店街が劇的に変わった、売上が伸びたというわけではありません。でも、オープン後は、若いお母さんが通るのが普通になりました。それまでは手押し車を押しているおばあちゃんか、あとは自転車でサーっと通っていく姿を見かけるばかりだったのです。最近は若いお母さんがベビーカーや自転車に子どもを乗せたり、もちろん車でいらっしゃる方もいますが、そういう姿を見るのが全然違和感がなくなりました。
ただ、一番大きく変わったのは柳原通です。柳原通商店街は、愛知県で一番古い振興組合で歴史としてはすごくあるのですが、「遊モア」ができたお陰で、テレビやラジオに1カ月半ぐらいで15回以上取り上げてもらいました。それから、地元のフリーペーパーや中日新聞、全国版の新聞にも載せていただいて、かなりの宣伝効果があったと思います。
今では、商店街に夜間保育もでき、テレビ等で取り上げられたことにより、「遊モア」の隣にお年寄りのサロンもできました。一つのNPOを商店街に誘致したことからいろいろできています。相撲部屋もできてふだんお年寄りのサロンとして使ったりしていています。もちろん民間でのお年寄りの介護の施設はあるのですが、将来的には一緒になって共同で、例えばお年寄りと若いお母さんたちと子どもさんたちとの一緒のイベント、中学校とか小学校を巻き込む形でイベントを行うことが出来ればというのが今の夢です。やはり、まだ連携というのは口で言うのは簡単ですが、なかなか難しいところがあって、そこを何とか、私の代で道しるべだけはつけておきたいと思っています。
商店街の軒数は確かに減っています。私の代になってから28軒なくなりましたが、20軒新しい店舗が入りましたので3割近い店が変わりました。外から見るとどこが変わったのという商店街でありますが、できればもう少し変わって、若い30代、40代のお母さんたちが来る商店街になってくれたら良いなというのがもう一つの夢であります。

<質疑応答>
○参加者 行政の立場から話を伺っていたのですが、NPOさんと商店街さんが素晴らしい連携で取り組んでいらっしゃる。そこで、逆に行政に望むものは何かありませんか。助成金の話はちょっと別として、それ以外に。「もしかしたら行政がいたほうが良かったな」とか、逆に「いないほうが良いのよ」とか、その辺りについて教えていただきたいと思います。

○丸山 行政に望むことは、市民がやっているプログラムを横取りしないでほしいということです。自分たちがやっていることは有料でやっているが、行政は無料でやれてしまう。そうすると、補助金の流れを知っている行政の人は、それを行政の手柄にしてしまうおそれがあるが、もうそういう時代ではないと思います。行政の人は予算の動きとか世の中の動きなりそういうノウハウを知っているわけなので、それをNPOの人たちにきちんと伝授して、ぜひ、人材とか資金とかを応援してほしいと思います。

○岩田 商店街としてはそれこそ補助金ぐらいしかないが、「遊モア」の立ち上げのときからそうだったが、県の職員の方も、市の職員の方にしても、本当に一生懸命親身にやってくださり、ちょっとトラブルがあると、土曜日だろうが何だろうが飛んできて、一緒になって考えてくれたから、「つくらなければいけないな」という気にもなった。やはり行政もそういう場所を現実に見ることが必要だと思います。ただ電話で書類上の話だけしていたらわからないので、できれば私たちのようなこういう子育ての場にしろ、老人介護にしろ現場へ行って、いかに現場が苦労しているかを見てもらうことも必要だと思います。

○参加者 いじめとか犯罪の心配がある今日、簡単に生めよ増やせよというのは少し無責任な発言ではないかと思っているが、どう思いますか。
○丸山 「遊モア」の中は知り得ている関係で顔が見えているから、すごく安心した関係で子どもも伸び伸び遊ばせられるけれど、一歩外に出ると、「この人は誰なの」と不安にならなければいけないような社会です。そういうところは、個人なり組織としてできることにはやはり限界があって、だからこそ商店街とか地域の町内会の人とか顔の見える関係をつくることは大事だと思います。最初から全体を予防することはできませんが、点を少しずつ広げることが面になっていくと思うし、やはり常にNPOという核になる団体があるから広がっていくことだと思っています。スタッフもいろんな地域の人がいるので、そうした人がまた点となって動いていけば変わっていくのではないかと思っています。

まとめ 

コーディネータ:林 陽子 中部学院大学短期大学部教授

 お二方から本音でお話をいただきました。私の個人的な感想ですが、大変充実した、また、学びの多い分科会だったと思います。私が学ばせていただいた、感じたことを申し上げて、まとめにかえさせていただきたいと思います。
第一に、今、お二人の話を伺い、また、フロアからの話も伺いまして、子育て支援とは子育てを支援することから出発していますが、最終的には、それぞれが生きることを支援するということだと思いました。つまり、子育て中のお母さんを支援する、子どもを支援する、それから若者を支援するということです。そして、それがいつも支援する人と支援される人という図式にあるのではなく、支援する人がいつしか支援される人になる場合もあるし、それから、支援されていた人が支援する人にもなるという非常にダイナミックな関係なのかなと思って聞かせていただきました。
2点目は、連携という言葉の深さというか、多様さということを感じました。
まず、顔が見える関係になることが大事なことなのだということです。連携というと、きれいごとみたいな感じでよく聞かれますが、やはりドロドロしたものをぶつけ合いながら、岩田さんの言葉を借りると、ののしったり、ののしられたりしながら連携ができていくのかなと思います。そして、もうひとつの側面は、NPO単体で支援することは不可能だということです。行政のほかの機関、NPO同士との連携、それから商店街との連携もあると思いますが、いろいろな機関、場、人との顔の見える連携の仕方が、これから求められる連携なのではないでしょうか。
さらに重要なのは、行政との関係のつくり方です。「今までやってきた、プランだとかプログラムを取っていかないでよ」というストレートな話もありましたが、もう一方では、NPOの成果を行政という立場で広げていただくことで地域の厚みが出てくるという、そういう側面もあると思うので、その辺のところは柔軟なコーディネートが必要ではないかなとも思いました。
先ほど、「行政もお金がない」という話がありまたが、案外お金のないことが知恵とエネルギーを生み出すのかなということも、丸山さんを拝見していてちょっと思ったりもしました。
最後に、NPOの今後について感じたことです。今、NPOに若い人の目が向きつつあるということもあって、NPO自体も、誕生したばかりみたいなところがありましたが、これから育ちの時期というか、成熟に向けて育っていく時期であり、また育っていくことが要望されているのだなと思った次第であります。

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