少子化対策

全国リレーシンポジウム〈千葉県〉 分科会1「中小企業ならではの強みを活かした仕事と子育ての両立支援」

(事例発表者)
西村美和子  医療法人芙蓉会 五井病院 副理事長
川脇 秀夫  株式会社インテリア計画 代表取締役社長
谷口 ひろみ  五井自動車教習所 取締役財務部長
(コーディネータ)
渥美 由喜  株式会社富士通総研 主任研究員

分科会1の様子

(要旨)
問題提起

渥美由喜 株式会社富士通総研主任研究員

 昨年の中小企業白書に「中小企業だからこそ、仕事と子育ての両立がしやすい」というデータをいくつか提供した。私は、中小企業だからこそもつ強みがあると考えている。
第一に、経営者の方が従業員の顔が見えていて、目配りが効いてきめ細やかな対応をしやすいということ。特に、能力のある方に仕事を継続してもらいたくて、一律的ではない、柔軟な対応をするという特徴はあると思う。また、大企業では育児休業を取得することがキャリアロスにつながるということで大きな問題になっているが、中小企業は役職の階層がフラットで、半年・一年の育休が、その後10年も効いてくるということは少ない。通勤時間がとても短く、自宅・保育所・職場が非常に近い距離にあるという環境も中小企業の特徴かと思う。

事例発表1 院内保育園や労働条件の整備・配慮で若い労働力を確保

西村美和子 医療法人芙蓉会五井病院副理事長

 私どもの病院は、医者と外注部門を除いて160名、全員で200名ちょっとで運営しているが、この中の70%が女性である。
女性の多い職場であり、女性の労働力というのは大変大きな意味合いを持っている。
今から5年前、病院を全面建て替えすることになったときに、ハード面では建物を免震構造にした。ソフト面についても、これから先、役に立つ施設は何か皆で考えたところ、職員がいきいきとして、職業を遂行できるような場所ではないかということになった。さらに、病院の技能を保つためには、女性の労働力を安定させることが必要であり、院内保育は欠かせないものの一つであるという結論に至った。
設立当初はなかなかスムーズにいかなかったが、5年目を迎え、安定して稼働している。
施設は、安全性の確保のため、5階建最上階の一角をとり、一番日当たりのよい部屋を保育スペースとして、屋上は高めのフェンスで囲い、花を植えたり砂場をおいたりして、夏にはプールで遊べるようにした。また、5階は管理フロアなので、IDカードでセキュリティをかけて、関係者以外は出入りできないということで運営を始めた。
院内保育の利用者は、看護師だけではなくて、病院の職員や医者の子どもも預かるし、男性職員のお子さんも預かるようにして、皆さん安心して、安定した気持ちで仕事をしていただけているのではないかと、ちょっと満足している。
さらに、「働く人に働きやすく」をモットーに、変則性のシフト(4週8休)を取り入れ、労働時間も8時45分から5時15分と、他の病院に比べて少なめにしている。
また、終業間際に急患が運び込まれたり、何か突発的なことが起こって残業してもらうことは皆無ではないが、原則的に残業はしない。病棟も二交替だが、交替時間がきたらきちんと帰ってもらうことをモットーにしている。
育休の取得状況は、毎年4人程度が育児休業を取り、一年後に復職して、元の職場で同じような業務をしてもらっている。まず家庭が基盤であり、家庭が揺らぐとよい仕事をしていただけないので、家庭と仕事が両立することをきちんと見極めた上で、いろいろな部署に就けるように気を配っている。
このように、院内保育園や労働条件やいろいろなことを配慮していくと、若い労働力が得られるというメリットがある。病院は、高齢の方だと動きにくいところがたくさんあるが、病院の方で労働環境を整えれば、若い人でも家庭と職業とを両立できて、いきいきと働いてもらえているというのが現状である。
ただし、院内保育の運営にかかる経済的なことからいったら、採算は全く取れていない。常勤が3人にパート5人と、8人全員有資格の保育士をおいて、光熱費だとかいろんなことを考えたら、経費は大変かかっている。しかし、従業員の精神的な安定だとか、労働力の安定的な確保だとかいうことを考えれば、決して無駄な支出ではない。むしろ、病院の経営を安定させるための大事な要素の一つである。

事例発表2 情報をオープンにして、互いに譲り合える組織で協力支援体制を強化

川脇秀夫 株式会社インテリア計画代表取締役社長

 家具インテリア業界は明らかに男性社会であるが、インテリア家具における購買の決定権は女性にある。そこで、男性ばかりが集まって女性の関心やニーズの議論をしても虚しいと感じ、育児という問題のその前の段階の、女性にとって働きやすい職場を作っていこうということで取り組んでいる。
現在当社では、一人が正社員として時短就業中、一人が休業中で、この3月から一人が育児休業を開始する予定であるが、特にこの育児と仕事の両立ということを考えていくときには、10人いたら10通りの個別事情があると感じている。
例外事項的にこの人はこういう待遇をしているのだよ、という場合、そんなに不満というものが出てこないが、ポイントがある。一つは、全体の動きを隠すことなく皆に伝えること。つまり、本来なら勤務時間というものが定められているが、子どもを育てているから柔軟に対応しているという話もオープンにしている。その辺の事情というのは、各店舗の店長に判断を任せてやってもらっている。他方で、一人が優遇されるということは、必ずどこかに負担がかかるわけで、そういう負担を負っていると思われる人に対しては、トップである私が直接出向いて行き、「不公平に感じるかもしれないけど、今度あなたがその立場になった時に、そういうふうにしてくれるというのはいいことだと思わない?」という話をして了解をしてもらっている。

事例発表3 積極的に女性を採用するようになった経緯・背景とは

谷口ひろみ 五井自動車教習所取締役財務部長

 教習所の指導員は、技術は言うまでもなく、教えることに熟練性を問われる職業であるため、長く勤めてもらいたい。他方、女性は、結婚・出産があるので定着しにくいだろうと、なかなか受け入れにくい社会であった。
その中で、先代の社長である創業者の父が、これからは女性の時代になると、昭和45年に、恐らく千葉県としても初めて、わが社に女性指導員が誕生したのだが、その女性は結婚・出産で、退職してしまったこともあり、20数年間、全く女性を採用することがなかった。ところがある日、その女性指導員がやってきて、もう一度働かせてくれないかと、わが社の門を叩いてくれた。その時はもう子育ても終えられていたので、採用したところ、女性ならではの気配りが非常にきき、男性の先生よりも良いと生徒の間で大変評判になり、たちまち教習所で人気者になった。それで再度女性指導員の採用に踏み切った経緯がある。
実際に女性指導員の評価は高く、アンケートでも、メッセージカードでも1位を取るのが大体女性である。また、ほとんどが無資格で入ってこられ、勉強し育成して資格を取るのだが、男性は、勉強の難しさとか、大変さに諦めて退職してしまう人もいる中で、女性は辛抱強く勉強して、最終資格まで取る方が多い。そういう意味でも、安心して女性を採用することができるようになった。
女性は結婚・出産があるからこういう仕事に向かないと、採用を諦めたことがあったが、辞めてしまうから任せられないのではなくて、結婚・出産などを迎えても、安心して仕事ができるような職場の環境づくりができていなかったから辞められたのだという大きな誤りに気付いた次第である。それから、改めていろいろな女性支援ということを考え始めた。
現在は、生徒さん達のために設置した教習所内の託児所を職員にも開放している。また、出産後の育児の時間をもっと増やしたい、仕事はしたいが育児の時間を重点的に考えたいという希望があれば、正社員からパートへ変更して、子育てが落ち着いて、もう少し勤務時間を増やしたいということであれば、いつでも正社員に戻れるようになっている。
こういう受け皿がなかった時には、小さなお子さんがいる女性を採用するのは、二の足を踏んでいた部分もあるが、今では積極的に雇用できるようになった。社内で徹底していくにはまだまだ問題があるが、今後もいろいろなことに取り組んでいきたいと思っている。

<質疑応答>
○参加者 ワーク・ライフ・バランスで、残業を減らす取組をしているか。しているならば、どのような施策か。

○西村 残業を減らすのは、一つは経営者の発想の転換、視点を変えることではないか。残業しなくても、きちんと仕事は引き継げるのだと話し合ったり、業務の見直しを積み重ねて努力をした結果、今では比較的きちんと帰れるようになった。まずは視点を変え、残業しなくても勤務時間中にきちんと仕事をこなしてもらうとから始まるのではないか。

○参加者 10人が10人とも個別の事情があるという話があったが、同時に、周囲の仕事や両立に対する考え方も、10通りのものがあるだろう。トップ自ら話を持っていくので、はい分かりましたとなるだろうが、果たしてそれで周りの人たちが不満を感じないのか、本当はどうなのか。そう辺りをもう少し突っ込んでお伺いしたい。

○川脇 不満はあるが、トップから言われているからしぶしぶということはあるかもしれない。信頼関係を築くときに一番大事なのは「1回目のミスは笑顔で見逃してあげる。2回目のミスも笑顔で見逃す。3回目に初めて注意をする」という土壌を作っていくと、自分自身が助けられたという思いが生まれてくる。さらに、子育て期間中の社員に対し、ケースバイケースで、直接帰ってもいいよ、という話をしているが、トップまで報告が廻るとなると、帰りづらいだろうと、現場で対応することになっている。

○参加者 正社員からパートタイマーへの一時的な雇用の転換にあたり、賃金面でギャップが出てくるだろう。待遇面でどのような配慮をされているのか。

○谷口 スキルを持って正社員で働いていた人が、一時的にパートに移行するということで、個々の資格等スキルや、凡そすべての要素を加味している。また、教習は一時間当たりいくらという形なので、その点を踏まえて単価設定をしている。女性の指導員もその時給だったらということで、逆に喜んでパートになっている現状である。

○渥美 「従業員間の不公平感の解消」と並んで、「どうやって代替要員を確保しているのか」という質問がよく出る。その辺り、皆さんの企業ではどうされているのか。

○川脇 一つは、一人ひとりの社員がいろいろな仕事ができる多能職化を目指す。もう一つのキーワードは、最低人数ということで、何か突発的なことが生じても間に合うように、一つの職場で18人確保することを当社では取り組んでいきたいと考えている。

○谷口 実際のところ、子どもが急に具合が悪くなって帰るといったこともあるので、必ず一人予備的に教習に入れるような枠を作っておいて、いつでも代替が利くようにしている。長期的な休業に関しては、増員しなくてはならない場合もある。

○参加者 子育てする若い世代のゆとりがあまりになさ過ぎが一番の問題と思っている。その中で、例えば育休を取る人が出るというと、その分が自分に振りかかってくるのではないかと、なかなか気分的にも受け入れ難い。上司の理解や考え方というのもあるだろうが、若手にもう少し優しい社会にならないか。社会全体の中で、若い世代がどういうふうに仕事に向き合っていくかというところにも関連しているのではないか。

○川脇 人が抜けるのは、中小企業にとって本当に大変なこと。そういう前提で、一人ひとりがいろいろな仕事ができるようにしている。多能職化の利点の一つは、一人が抜けた時に、仕事をいろんな人に割り振って、内部での分業が行いやすいというメリットがある。

○渥美 二つの対応があるのではないか。一つは組織としての対応。これは基本的に権限委譲だと思う。両立先進企業の特徴は、現場に任せる余地を大きくして、長く働くも、短く働くもその人の裁量だというところで、働きやすくしているという要素がある。もう一つは、従業員の意識改革である。しばしば、経営者の意識改革だとか、管理職が取りにくくしているという非難されるが、私は従業員にも問題があると思っている。欧米企業では、休むのが当たり前になるために、自分のやっていることを全部開示している。一方で、日本企業の従業員というのは、とかく「俺がいないと仕事が回らないから、休めない」などと、そこにアイデンティを持つ従業員が多い。そうすると、かえって休みづらくしたり、早く帰りづらくしている面があると思う。日本企業はチームとしての力を持っているから、ガラス張りにするのが一つ対策としてあると思っている。その際には、自分の業務すべてやアウトプットを開示したらそこにプラスの評価を与えるなどの方法で、動機付けをしていくというのが重要だと思う。

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