少子化対策

少子化社会対策大綱(案)

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資料1

1 大綱策定の目的

 我が国は、世界で最も少子化の進んだ国の一つとなった。合計特殊出生率は過去30年間、人口を維持するのに必要な水準を下回ったまま、ほぼ一貫して下がり続け、この流れが変わる気配は見えていない。日本が「子どもを生み、育てにくい社会」となっている現実を、我々は直視すべき時にきている。
 未婚化・晩婚化という結婚をめぐる変化に加え、近年では結婚した夫婦の出生力そのものも低下しており、このままでは出生率の低下は更に進むことが予想されている。急速な少子化の結果、我が国はあと3、4年で人口減少時代を迎える。いわゆる第二次ベビーブーム世代が、子どもを生み、育てる時期に入っているにもかかわらず、第三次ベビーブームが起こる気配はない。
 こうしたことの背景に、核家族化や都市化による家庭の養育力の低下、かつては親族や近隣から得られていた支援や知恵が得られにくいという育児の孤立、育児の負担感が大きいこと、家庭生活との両立が困難な職場の在り方、結婚や家族に関する意識の変化、若年失業の増大など若者の社会的自立を難しくしている社会経済状況といった問題が指摘されている。
 こうした少子化の急速な進行は、社会や経済、地域の持続可能性を基盤から揺るがす事態をもたらしている。経済成長の鈍化、税や社会保障における負担の増大、地域社会の活力低下など、我々が直面する深刻な問題の多くは、少子化の結果としての人口構造の歪みに起因しているといっても過言ではない。さらに、少子化が進むことによって、同年代の仲間と切磋琢磨して健やかに育つ環境や乳幼児とふれあって育つ環境までも子どもたちから奪われつつある。子どもにとって健全に育ちにくい社会となることで、自立した責任感のある社会人になることが難しくなっていると懸念されている。
 しかし、こうした現実に対する危機感が社会で十分に共有されてきたとはいえない。
 次代を託す新たな生命が育ちにくくなっており、虐待なども起きている現状を社会全体の問題として真摯に受け止め、子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会へ転換することが緊喫の課題になっている。
 このため、子どもや子育て家庭を、世代を越え、行政や企業、地域社会も含め、国民すべてが支援する新たな支え合いと連帯を作り上げることが求められている。また、子どもたちの健やかな育ちや自立を促し、さらには親自身の育ちを支援し、子育て・親育て支援社会をつくることを国の最優先課題とすることが求められている。
 我が国の人口が転換期を迎えるこれからの5年程度をとらえ、集中的な取組に踏み出すとともに、その成果を厳正に評価し公表することが急務である。その際、国、地方公共団体、職域、地域、家庭、個人など、社会を構成するすべての主体が、それぞれの責任と役割を自覚し、自主的かつ積極的な取組を進めていく必要がある。
 子どもは社会の希望であり、未来の力である。次代を担う生命がたくましく育ち、自立した責任感のある大人となっていく社会への変貌は、すべてに優先されるべき時代の要請となっている。少子化社会対策基本法に基づき、国の基本施策としてこの少子化社会対策大綱を定め、少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する。


2 少子化の流れを変えるための3つの視点

 子育て家庭が安心と喜びをもって子育てに当たれるよう社会全体で応援するとの基本的考え方に立って、少子化の流れを変えるための施策を国を挙げて取り組むべき極めて重要なものと位置付け、今後の政府の取組の方向性を視点として3つ掲げる。
 なお、施策の推進に当たっては、ライフステージの各段階に応じて必要な施策を有機的に組み合わせ、効果的に講じ、受けられる支援の情報が広く的確に届くよう取り組む必要がある。

(1)自立への希望と力

『若者の自立が難しくなっている状況を変えていく。』

 若者が、自己実現や社会への参画を目指しながら、自己の選択として、職業や結婚、出産、子育てを自らの人生において積極的に位置付けていくことは、自立した社会人となる上で非常に大切なことである。
 しかし、近年それを阻む要因として、若年失業者やいわゆるフリーターの増大など、若者が社会的に自立することが難しい社会経済状況がある。学校を卒業あるいは中退した後、就職も進学もせずその意欲もない状況に陥る多数の若者の存在が懸念されており、親元に同居し基礎的生活コストを親に支援してもらっている未婚者も増加していることが指摘されている。引きこもりや不登校など子どもたちを取り巻く状況は近年ますます厳しさを増している。
 早い頃からの職業意識の醸成のための教育や、教育と雇用との間で連携の取れたキャリア形成を支援することなどにより、若年失業の流れを転換してゆくことが求められている。
 また、子どもが自立した若者へと成長していくためには、自然や人と直接ふれあうことによって、心豊かにたくましく育ち、生活や社会、自然とのかかわりを学び、生きる力を発揮できるようにしていくことが重要である。


(2)不安と障壁の除去

『子育ての不安や負担を軽減し、職場優先の風土を変えていく。』

 結婚や出産は個人の決定に基づくものであることはいうまでもない。近年、未婚化、晩婚化が進んでいるが、その背景には結婚に対する考え方の変化がある。また、結婚を望んでも出会いの機会が限られるという状況や、出産を希望しても仕事と子育ての両立の困難からあきらめるといった状況がしばしば指摘される。
 家族の多様化、小規模化が進む中で、家庭で子育てに当たる親には子育ての負担を一人で抱え込むこと、社会活動を制限されることなどに対する不安が大きく、子どもを生み、育てる上での障壁も大きい。特に低年齢児や在宅での育児に対する支援は限られている。
 また、日本では、父親が育児にかける時間が世界でも突出して少ないことが指摘され、妻の就労の有無にかかわらず、父親が親としての役割を積極的に果たすことが、子育て家庭の育児ストレスや不安の解消のみならず、子どもの健全な育ちのためにも重要になっている。親となった男性がその役割を十分担うことができるよう、職場を始め社会が応援する風土や意識が求められている。
 さらに、子どもが小さいうちは家庭で育てたいと願い退職した者が、その後必ずしも自らの意欲や能力をいかした良好な再就職の機会に恵まれていない。
 結婚や出産をためらわせる障壁を極力取り除き、子育ての不安や負担を軽減するため、希望する者が結婚や出産、子育てをしやすい環境整備と併せ、職場優先の風土を是正する「働き方の見直し」を喫緊の課題とし、家族の時間や私的活動の時間を大切にできる職場風土をつくることが求められている。


(3)子育ての新たな支え合いと連帯 -家族のきずなと地域のきずな-

『生命を次代に伝えはぐくんでいくことや家庭を築くことの大切さの理解を深めていく。』

 家庭は、子どもが親や家族との愛情によるきずなを形成し、人に対する基本的な信頼感や倫理観、自立心などを身に付けていく場である。しかし、職場優先の風潮などから子どもに対し時間的・精神的に十分向き合うことができていない親、無関心や放任といった極端な養育態度の親などの問題が指摘されている。家庭において夫婦が子育ての喜びを共有することで、親から子へ子育ての喜びや楽しさが伝えられることにもつながる。
 人々が自由や気楽さを望むあまり、家庭を築くことや生命を継承していくことの大切さへの意識が失われつつあるとの指摘もある。学校教育や地域社会など様々な社会とのかかわりの中で子育ての楽しさを実感し、自らの生命を次代に伝えはぐくんでいくことや、家庭を築くことの大切さの理解を深めることが求められている。


『子育て・親育て支援社会をつくり、地域や社会全体で変えていく。』

 子育ては父母その他の保護者が第一義的責任を持つものである。同時に、子育ては次代の担い手を育成する営みであるという観点から、子どもの価値を社会全体で共有し、子育て家庭が安心と喜びをもって子育てに当たれるよう社会全体で支援することが求められている。
 近年、核家族化、地域社会の変化など、子育てをめぐる環境が大きく変化したため、家庭のみでは子育てを負い切れなくなってきており、さらには虐待などが深刻な問題となっている。祖父母などの親族や、近隣など身近な地域社会での助け合いのネットワークが有効に機能することが望まれる。また、社会経済の変化や少子化に伴い、妊娠、出産から子どもの健全な育ちにかかわるニーズは大きく変化してきており、小児医療、母子保健などの多様なニーズに対し、適切な対応が求められている。
 このため、かつて家族や地域・集落が担っていた次代の育成を支援する機能を、地域や社会の力を借りて、現代社会にふさわしい形で再構築するとともに、子育てを社会全体で支援していく「新たな支え合いと連帯による子育て支援」の体制をつくり上げていくことが求められている。
 また、公共空間を始めとする生活環境において、妊婦、子ども及び子ども連れの人への配慮が行き届いた「子育てバリアフリー」を推進するとともに、地域、職場など社会のあらゆる場面で、子育てや家庭生活が尊重され、社会を挙げて子育てを応援する社会風土の醸成や子どもを大切にする国づくりが求められている。
 その際、国、地方公共団体、職域、地域、家庭、個人など、社会を構成するすべての主体が、それぞれの責任と役割を自覚し、自主的かつ積極的な取組を進めていく必要がある。


3 少子化の流れを変えるための4つの重点課題

 上記の3つの視点を踏まえ、特に集中的に取り組むべき重点課題を4つ設定する。

(1)若者の自立とたくましい子どもの育ち

  • 就業を自らの人生設計の中で主体的に位置付けられるようにするとともに、国、地方公共団体、教育界、産業界等が一体となって、若者の自立を阻む要因となっている就業困難を解消するための取組を積極的に進める。
     多くの若者にできるだけ早い段階から社会とのかかわりを実感することのできる機会を提供するため、小学校や中学校段階からの職場見学、就業体験など早い時期から職業意識を醸成する教育に取り組む。
  • 若者の自立を促すためにも、勉学を希望する若者が経済的理由でその機会を失うことがないよう、奨学金制度による支援を一層推進する。
  • 子どもが自立した若者へとたくましく育ち、意欲にあふれ、活動的な社会人となり、自立し次代の社会を担っていくことができるよう、家庭・学校・地域において子どもたちが生きる力を発揮できるような取組を進める。自然の中での集団生活の体験などの豊かな体験活動や、社会とかかわり様々な人と接するボランティア活動の機会を積極的に提供し、また、子どもたちが放課後や週末に活動する場を提供する。
     こうした取組を通じ、子どもが自然や家族以外の人と直接ふれあうための様々な出会いや体験活動を豊かに持つ中で、基本的なルール、感性、社会性等を身に付け、意欲や体力を養っていくことができるよう、社会全体として支援していく。

(2)仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し

  • これまでの仕事と家庭の両立支援の取組の不足していた点を省みて、男女がともに仕事時間と生活時間のバランスが取れるように働き方を見直す。子育てと仕事が両立できる職場づくりは企業の社会的責任であるとともにこれからの経営に様々な利点をもたらすものとの認識に立って、次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」という。)に基づく行動計画の策定とその目標の達成に向けた取組が進むよう促すとともに、国・地方公共団体等の特定事業主における社会全体の牽引役としての取組を促す。
  • 結婚や出産後も育児をしながら働くことができるようにするための取組を進める。育児休業を取得しやすい環境づくりを進めるとともに、子育て期間中の勤務時間の短縮等の措置、職業能力の維持、向上のための措置等の実施を推進する。きめ細かい総合的な再就職支援策の推進を図ることにより、再就職を希望する者が円滑に再就職できるようにする。
  • 妻の就労の有無にかかわらず、男性が、育児や教育を含め、親としての役割を積極的に果たしていけるようにするための新たな取組を推進する。
  • 職場の自主的な取組に加え、世代を越えた国民全体の責務として、子育てと仕事の両立を困難にする風土の改革を強力かつ計画的に進める。職場の管理職や地域の町内会等で中核的役割を担う人の意識改革のための取組を進めるなど、男女がともに子どもを生み、育てやすい環境を整備する。

(3)生命の大切さ、家庭の役割等についての理解

  • 幼い段階からの親や身近な者との愛着形成、幼い子どもとのふれあいの体験などを通じて子どもや家庭を知り、子どもとともに育つ機会をつくることにより、将来の親となる世代が生命の尊さを実感したり、人への関心や共感を高め、社会とのかかわりや人とのつながりを大切にすることについて、家庭、学校、地域において理解を深める取組を推進する。
  • 子どもを生み、育てることの意義、子どもや家庭の大切さについて理解を深める取組を推進する。
  • 安心して子どもを生み、育てることができる社会の形成について理解を深める取組を推進する。

(4)子育ての新たな支え合いと連帯

  • 子どもたちが健やかに育っていくよう支えていくためには、個々の子育て支援施策について一層の充実を図るとともに、子どものための最善の利益を基本とし、親のニーズも踏まえた効果的なものとしていくことが求められている。
     例えば、子育て支援施策は、育児休業や勤務時間の短縮などの働き方にかかわる施策、幼稚園・保育所における施策、多様な地域子育て支援事業、小・中学生の放課後対策、児童手当等の経済的支援など、多岐にわたっている。社会全体で次世代の育成を効果的に支援していくため、これらの様々な子育て支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、その在り方を検討していく。
     また、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図る。
  • 特に地方公共団体は、地域の特性に応じた多様なニーズや生活実態を十分把握し、それを十分に反映しながら次世代法に基づく行動計画を策定し、自主性を存分に発揮しつつ効果的な施策を実施する。
  • 待機児童ゼロ作戦の実施により、保育所の待機児童の解消のための取組を進める。
  • 小・中学生の放課後の受入体制を、大都市周辺部を中心に整備するとともに、利用者のニーズや地域の実情に応じ効果的な放課後対策の取組を推進する。
  • すべての子育て家庭が利用できるよう身近な場所に地域での子育て支援の拠点を作り、子どもの育ちの段階に応じた「親と子の育ちの場」の提供を進め、親の成長と子育てを支援していく。
     その際には、身近な近隣地域レベルでの子育て支援で地域の力を生かす必要がある。幼稚園や保育所などを地域に開かれたものにしていくとともに、NPOなどの民間団体も含めた多様な主体が参加できるように、子育て支援の取組をきめ細かく推進する。
  • 児童虐待という親子間の最も深刻な事象に対応できる社会、あるいは障害児とその家族やひとり親家庭といった多様な家庭のニーズに応えられる社会を創り上げていくことが、すべての子どもと子育てを大切にする社会づくりにつながるとの認識に立ち、こうした特に支援を必要とする子どもとその家庭に対する支援の充実を図る。
  • 地域において、いつでも安心して保健医療サービスが受けられるようにするための小児救急医療体制を含め、妊娠、出産から子どもの健全な育ちにかかわる保健医療の充実を図る。また、児童福祉、小児医療などが連携して子どもの健やかな育ちを継続的に支え、子どもの危機に対応することができるよう、体制整備を図る。
  • 妊婦、子ども及び子ども連れの人への配慮が行き届いた子育てバリアフリーの観点から、建築物、公共交通機関及び公共施設等の生活環境についてハード・ソフト両面にわたるバリアフリー化を推進する。

4 推進体制等

(1)内閣を挙げた取組の体制整備

 本大綱に基づき、内閣総理大臣を会長とし、全閣僚で構成する少子化社会対策会議を中心に、内閣を挙げて少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する。また、定期的に施策の進捗状況を点検するとともに、その結果に基づき、必要な見直しを行う。
 このため、少子化社会対策会議の下に、民間有識者の意見を反映させる仕組みをつくり、少子化の流れを変えるための施策を評価し、その結果を公表するとともに、関連施策の事前、事後のチェック体制をつくり、十分な成果が生まれるよう施策の推進につなげる。
 経済財政諮問会議、総合科学技術会議、男女共同参画会議等の関係する重要政策会議等との間で緊密に連携・協力を図り、施策を推進する。


(2)重点施策についての具体的実施計画

 本大綱に盛り込まれた施策について、その効果的な推進を図るため、平成16年中に施策の具体的実施計画(新新エンゼルプラン)を策定する。


(3)構造改革特別区域制度の活用

 地域の実情に応じた子育て支援に取り組み、地方公共団体が創意工夫しやすいような取組ができるよう、構造改革特別区域制度の活用を図る。構造改革特別区域においては、規制の特例措置の効果等を評価し、特段の問題のないものは速やかに全国規模の規制改革につなげる。


(4)国民的な理解と広がりをもった取組の促進

 本大綱を踏まえ、各界代表者の参加により開催されている「少子化への対応を推進する国民会議」(平成11年6月設置)の取組方針について必要な見直しを行い、更に一層の国民的な理解と広がりをもった取組の促進のため、職場、家庭、地域、学校等における取組を促進し、また、広く国民に向けた情報発信を行っていくこととする。


(5)大綱のフォローアップ等

 本大綱については、施策の進捗状況とその効果、出生率の動向等を踏まえ、毎年フォローアップを実施していくとともに、おおむね5年後を目途に見直しを行うこととする。


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