少子化対策

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第2節 家庭と社会全体の子育て費用

1 家庭における子育て費用

(乳幼児期における子育て費用)

 前節において、経済的支援措置に対する要望が高いことを指摘したが、実際に子育て世帯ではどのくらいの費用がかかっているのであろうか。子どもが乳幼児期にある場合、一般的に親の年齢は20代から30代前半と若く、世帯収入も相対的に低いため、子育て費用は経済的な負担感を引き起こすものと考えられる。そこで、ここでは子どもが小学校就学前の乳幼児期における子育て費用をみてみよう。

(乳幼児期の子育て費用は約440万円)

 財団法人こども未来財団の「子育てコストに関する調査研究」(2003(平成15)年3月)によると、妊娠・出産費用の平均額は、約50万4千円、0歳児の子育て費用は、約50万6千円となっている。1歳から3歳までは各年50万円前後、4歳から6歳までは各年65万円前後となっている。これらを合計すると、子どもが生まれてから小学校にあがるまでの子育て費用は、約440万円となる。
 妊娠・出産費用の内訳は、「分娩・入院費」が36万5千円、「定期検診代」が9万円、「妊婦用品・衣料費等の出産準備費」が4万9千円である。ゼロ歳児では、「ベビー・子ども用品・衣料」の費用が高い(約19万8千円)ほか、他の年齢よりも「保健・医療費」の金額が高くなっている(約3万9千円)、1歳以降、「ベビー・子ども用品・衣料」の金額が減少する一方で、「幼稚園費・保育園関係費」、「幼稚園・保育園以外での教育費」が増えてくる。0~3歳よりも、4~6歳の方が子育て費用が高いのは、特に「幼稚園・保育園関係費」が増えているからである。
 これらの数値は、年齢別にみた子育て費用の平均値であるが、第1子の場合には、平均値よりもそれぞれ約1割~2割ほど高くなる一方で、第2子の場合に約1割~2割ほど低くなる。第1子に比べて、第2子の子育て費用はおおむね7~8割程度となっている。
第1‐5‐8図 年齢別子育てコストの推移


(個別にみると世帯差が大きい)

 これらの金額は調査対象世帯の平均値であるので、個別にみると、サービスの利用次第によっては、平均値よりも多くの金額がかかることになる。
 たとえば、「幼稚園・保育園関係費」は、平均値でみると、ゼロ歳児の場合に約1万3千円、1・2歳児の場合には約8万円となっているが、実際に、ゼロ歳児保育を利用すると、保育所の保護者負担は月額約3万5千円(年額42万円)かかる3。1~2歳児でも同様の水準である。3歳児以降でも、月額2万5千円(年額30万円)前後の保育料が必要となる。もし、子どもが同時期に2人保育所を利用していれば、保育料の負担はさらに重くなる。
 また、認可保育所の定員がいっぱい等の理由で利用できずに、認可外保育所を利用する場合には、保育料はこれらの水準よりも高くなる。認可外保育所の平均月額利用料は3~4万円(年額36万円~48万円)、ベビーホテルで4~5万円(年額48万円~60万円)となっている。さらに、民間のベビーシッターを利用すれば、1時間約2千円程度の費用がかかる。
 幼稚園の場合には、公立幼稚園であれば、月額6千円(年額7万2千円)程度の保護者負担であるが、私立幼稚園であれば、月額2万円(年額24万円)程度の保護者負担が必要となる。
3 平成15年度の保育所保育単価による保育所徴収基準の数値。本節において他の数値も同様。なお、保育所徴収基準は、世帯の所得水準に応じて減額されるので、所得税非課税世帯など、低所得世帯では、本文の数値よりも低い負担となる。

(若い世帯では負担が重い)

 子どもが小さい頃の世帯は、親の年齢が20代から30代という若い世帯が多いので、世帯収入も概して低い時期にあたる。厚生労働省の「平成14年所得再分配調査」をみると、世帯主が30代の場合で6歳未満の子どもがいる世帯の所得分布は、「400万円以上600万円未満」の層が全体の36%と最も多く、「600万円以上」の世帯が全体の32%を占めている一方で、「400万円未満」の世帯も全体の32%を占めている4。「400万円未満」の世帯において、年間50万円から65万円という子育て費用の負担は重い。「平成17年版 国民生活白書」によれば、年収400万円未満の世帯では、子どものいない世帯の割合が年収400万円以上の層よりも高い。一定の経済力を下回ると子どもを持つ経済的負担感が高まり、子どもを持ちにくくなると指摘している。
 さらに、同白書でも指摘しているように、子どものいる世帯の可処分所得は、20代と30代の場合、子どものいない世帯より少ない。これは、子どものいる世帯では、一般に共働き率が低く、配偶者の収入が少ないことによる。他方、子育て費用が発生しているので、子どものいない世帯よりは家計が厳しくなる。
 若年層において、パートやアルバイトで働く人たちが増加していることから、男性では34歳以下の層で、女性では24歳以下の層で、他の世代よりも所得格差が拡大している。「貯蓄残高ゼロ世帯」も増加しており、20代では37.4%、30代では25.3%の世帯が、貯蓄残高がゼロである(2003(平成15)年)。こうした若い世代の経済環境が、未婚化・晩婚化の進行や結婚しても子どもを持てない状態、あるいは子どもが生まれてからの子育て費用の負担の重さを招いている。
 前述の世論調査において、保育料や幼稚園費の軽減や児童手当の引上げなどの経済的支援に対する要望がトップにあるのは、こうした若い世代における子育て費用の負担の重さも背景にあるものと考えられる。
4 厚生労働科学研究(政策科学推進事業)「我が国の所得・資産格差の実証分析と社会保障の給付と負担の在り方に関する研究」に基づく分析による。

第1‐5‐9図 子どものいる世帯と子どものいない世帯の世帯主年齢層別可処分所得(2003年)


(経済的負担に対する支援策)

 こうした子どもが乳幼児期にある場合の経済的負担に対して、現在講じられている公的な支援策は、表(第1‐5‐10表)のとおりである。代表的なものとして、妊娠・出産期における健康保険から支給される「出産育児一時金(家族出産育児一時金)」や、「出産手当金」、「児童手当」がある。また、医療保険における3歳未満の乳幼児の一部負担金については、2002(平成14)年10月より2割負担とされたところであるが、加えて、多くの地方自治体が地方単独事業として「乳幼児の医療費助成」(ある一定年齢までの乳幼児の医療費の自己負担分を助成。内容については、都道府県、市町村によって異なる)を実施している。
 また、子どもが保育所を利用する場合、保育サービスの提供に要する財源は、保護者が負担する保育料以外は、国や都道府県または市町村の負担で賄われている。たとえば、ゼロ歳児であれば、1人あたり月額約16万円の経費がかかり、約3.5万円の保護者負担以外の約12.4万円は、国及び地方自治体の負担となっている。したがって、ゼロ歳児を1人保育所にあずけると、1年間に約150万円の公費をかけていることになる。保育所経費については、公立保育所では国の基準以上に大きな費用がかかっている場合が多いほか、保護者の保育料負担を国の基準よりも軽減している市町村もあることから、実際にかかっている公費は、これ以上になっている場合が多い。
 税制面では、子どもの扶養控除があるので、これにより所得税・地方税の軽減が図られている。
 したがって、乳幼児を保育している世帯からは、公的な経済的支援策は、出産育児一時金や出産手当金以外は、年額6万円(第3子以降は年間12万円)の児童手当のみというようにみえるが、公費負担としては、これらの制度以外に、保育所運営費や幼稚園に対する補助金、税制上の軽減措置などがある。こうした公的な支援策の金額は、次の「2 社会全体の子育て費用」の項目で述べるとおり、0歳から5歳までの子ども1人あたり平均として、年額約60万円と推計される。

第1‐5‐10表 乳幼児期の子育てに対する主な経済的支援策
費用 名称 内容 根拠となる制度
妊娠・出産費用 出産育児一時金(家族出産育児一時金) 1人につき30万円 医療保険制度
(健康保険)
出産手当金 出産日以前42日から出産日後56日までにおける休業補償・賃金日額の6割
医療費 乳幼児の医療費助成 乳幼児期の医療費の自己負担部分を軽減(医療保険制度における乳幼児(3歳未満)の自己負担は2割) 地方自治体の単独事業
育児費用 児童手当 第1子、第2子は月額5千円、第3子以降から月額1万円。生まれてから小学校3年修了前まで。所得制限あり 児童手当法

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