少子化対策

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第5章 社会全体の意識改革

第1節 社会的な意識改革の必要性

1 子育て家庭を取り巻く状況と家族をめぐる変化

(1)子育て家庭の変化

(家族形態の変化)
 第1章で解説したとおり、わが国では、未婚化や晩婚化の進行という結婚をめぐる変化に加え、近年では結婚した夫婦が持つ子どもの数も漸減傾向にある。こうした状況の背景として、育児に関する精神的・身体的・経済的な負担や、家庭・育児と仕事の両立が困難な職場での働き方に加え、核家族化や都市化の進展等による家庭の養育力の低下や地域における相互助け合いの低下があり、かつては家族や近隣から得られていた知恵や支援が得られにくいという育児の孤立、といった問題点が指摘されている。さらに、これらの問題点の中には、家族や家庭をめぐる変化が影を落としているものがあると考えられる。
 まず、家族形態の変化であるが、2005(平成17)年の総務省「国勢調査」によれば、一般世帯数は4,906万世帯、世帯人員は1億2,497万人で、1世帯当たり人員は2.55人と過去最低を記録した。1985年には3.14人であったから、20年間に世帯の規模が0.6人分小さくなった。
 世帯類型別構成割合をみると、近年では、「三世代世帯」の割合は、1980(昭和55)年の12.2%をピークに低下傾向にあり、2005年は6.1%となっている。また、「核家族世帯」の割合も、1980(昭和55)年の60.3%をピークにやや低下傾向にあり、2005年は57.9%となっている。他方、「単独世帯」の増加は顕著であり、1975(昭和50)年の19.5%から2005年には29.5%に上昇している。このことは、未婚化・晩婚化の進行を背景に単身者が増加し、さらに、彼らが家族と同居しないケースが増加していることや、高齢化の進行に伴い高齢者の単身者が増加していることを反映している。
 三世代世帯は家事などを多くの世帯人員で分担することが可能となるが、核家族世帯や単独世帯では少ない世帯人員で担うこととなるため、男性も家事や育児への参加が求められてきたといえる。
第1‐5‐1図 世帯類型別構成割合
(子どものいる世帯の状況)
 児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯の状況については、第1章でみたとおりであるが、厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、2005年では児童のいる世帯数は1,237万世帯、そのうち夫婦と未婚の子のみの世帯が830万世帯(児童のいる世帯の67.1%)、ひとり親と未婚の子のみの世帯が78万世帯(同6.3%)、三世代世帯が294万世帯(同23.8%)となっている。三世代世帯の割合が漸減する一方で、ひとり親世帯の割合が増加している。
 なお、国土交通省の調査によると、既婚者で親と同居しているのは22%、親が1時間以内の近距離にいる「近居」は52%を占め、遠距離に住むのは26%となっている。このように夫婦がその親と同居していなくても、半数の家族は、祖父母とその子ども夫婦とが比較的近くで生活していることがわかる。
第1‐5‐2図 既婚者とその親との住まい方の実態

 また、共働き世帯数は、1980年以降、年々増加しており、1997(平成9)年に、男性雇用者と無業の妻からなる世帯数(片働き世帯)を上回り、それ以降、その差が徐々に拡大しつつある。2005年では、共働き世帯は988万世帯、片働き世帯は863万世帯となっている。第3章でみたとおり、末子の子どもの年齢が6歳以上の子育て家庭においては、半分以上が共働き世帯となっている。子育て支援策を考える際には、共働き世帯と片働き世帯(いわゆる専業主婦世帯)の双方の家族形態を念頭に置く必要がある。
第1‐5‐3図 共働き等世帯数の推移

(コラム)核家族はいつの時代から存在したか

 核家族(nuclear family)とは、夫婦とその未婚の子どもからなる家族のことである。
 わが国では、家族形態の変化の常套句として「核家族化の進展」をいい、第2次世界大戦後の高度経済成長の過程で、大都市への人口集中等により、3世代家族等の大家族が減少し、核家族化が進展してきたと認識しているのが一般的である。しかし、総務省の国勢調査結果をみると、必ずしもそうとは断言できない日本の世帯の変化の特徴がうかがえる。
 第1‐5‐4表のとおり、核家族世帯は1920(大正9)年の第1回国勢調査時点でも、全世帯の半数を超えていた。当時、子どもは5人以上生まれていても、結婚すると別世帯を構えるため、親と同居できるのは2組の子ども夫婦だけで、残りは核家族世帯にならざるを得ない。また、親の寿命も現在よりは短いため、親と同居できる期間も短かったものと考えられる。夫婦と子に加えて夫婦の親等が同居する拡大家族世帯の割合が、1920年当時で全世帯の3割となっていることも、こうした見方を裏付ける。核家族世帯は、実は戦前から「主流派」だったのである。
第1‐5‐4表 世帯類型別構成割合の推移

 また、核家族世帯の割合が最も高かったのは1975(昭和50)年であり、その後減少傾向となっている。ただし、実数は増加しており、2000(平成12)年には2,733万世帯となっている。割合が減少しているのは、本文でも述べたとおり、単独世帯が急増しているからである。一方で、拡大家族世帯の割合は、年々減少傾向にあり、祖父母とその孫が同居する世帯は減っている。
 核家族は人類にとって普遍的なものといわれており、たとえば、縄文時代の遺跡として有名な青森県の三内丸山遺跡の竪穴式住居も、平均4、5人の家族(夫婦とその子ども)が生活をしていたものと推測されている。
 しかし、三内丸山遺跡の縄文人も住まいは核家族世帯であっても、周囲には一族がともに生活をしたであろうし、時代が下って、たとえば江戸時代では一般庶民(ほとんどが農民)は、近隣に血縁を同じくする人々が大勢いて、農作業をはじめ助け合いながら生活をするなど、実態的には大家族的な生活であったと考えられる。
 したがって、現代の核家族、特に郷里を離れて都市に移り、新たに世帯を構えたような核家族は、近隣に血縁者が存在しない孤立した核家族という点で、古来の核家族とは性格を異にしており、孤立した子育てなど新たな課題を抱えている。
(参考文献『データで読む家族問題』湯沢雍彦、日本放送出版協会、2003(平成15)年、『歴史からみる日本の子育て』柴崎正行・安齋智子、(株)フレーベル館、2005年)
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