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少子化対策

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第2節「子どもと家族を応援する日本」重点戦略の概要(2/4)

4 包括的な次世代育成支援の枠組みの構築

(現行の給付・サービスの制度的な課題)

現行の次世代育成支援に関連する給付・サービス全体を担う児童福祉、母子保健、医療保険、雇用保険等の各制度は、それぞれの制度の考え方に基づいて給付内容や費用負担の方法等が定められ、どのような支援ニーズに対して、どのような給付が保障されるか体系立った制度となっていない。また、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が小さく、家族政策を支える負担についての明確な国民的合意も形成されているとはいい難い状況にある6

欧州諸国の経験に照らせば、現金給付、現物給付のバランスをとった家族政策の充実が必要であるが、

 ・  今後、我が国が急速な人口減少、労働力人口の減少に直面する中で、誰もが意欲と能力に応じて働くことのできる環境整備を進め、就業率の向上を図ることが必要であり、
 ・  また、出生率の回復したフランスなどでは、近年、保育サービスの充実など仕事と家庭の両立支援を軸とした家族政策が展開されている

ことにかんがみると、とりわけ現物給付の充実を図り、女性をはじめ働く意欲を持つすべての人の労働市場参加と国民の希望する結婚・出産・子育てを可能にする社会的基盤を構築することが喫緊の課題である。

なお、重点戦略の中間報告(2007年6月)では、近年出生率が回復しているフランスの家族関係給付の規模を我が国の人口構造に機械的に当てはめた場合、約10.6兆円(GDP比では約2%)に相当するとの試算を示している7 (第1-2-17図)。


第1-2-15図 各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較(2003年)[家族関係の給付の国民経済全体に対する割合]

第1-2-16図 社会保障給付費の中での児童・家族関係の給付費の割合

第1-2-17図 フランスの家族関係支出(2003年)の日本の人口規模への換算

(新たな枠組みの構築の必要性)

仕事と生活の調和を推進し、国民の希望する結婚や出産・子育ての実現を支える社会的な基盤を構築するためには、以下に掲げるような考え方で給付・サービスを再構築するとともに、国全体として、このような給付・サービスが全国どの地域でも体系的に整備され、すべての子どもや子育て家庭に普遍的に提供される枠組みを構築するとともに、それぞれの地域においては、地域の実情を踏まえて、給付・サービスの整備に積極的に取り組んでいく必要がある。


<給付・サービスを再構築する考え方>

[1]親の就労と子どもの育成の両立を支える支援

・出産前から3歳未満の時期

 この時期の支援への重点的な取組、就業希望者を育児休業と保育、あるいはその組合せでカバーできる体制・仕組みの構築、それぞれの制度における弾力化による多様な選択を支える切れ目のない支援

・3歳から小学校就学前の時期の支援

 認定こども園と短時間勤務の普及・促進

・学齢期の放課後対策

 全小学校区での「放課後子どもプラン」の実施による空白地区の解消、対象児童の増加に対応した1学区当たりのクラブ数の増加による保育所から放課後クラブへの切れ目のない移行と適正な環境の確保

[2]すべての子どもの健やかな育成を支える対個人給付・サービス

・すべての子育て家庭に対する一時預かり制度の再構築

  すべての子ども・子育て家庭に対するサービスとして機能するよう事業を再構築し、一定水準のサービス利用を普遍化

・子育て世帯の支援ニーズに対応した経済的支援の実施

  子育て世帯の支援ニーズに対応し、現金給付と税制を通じて総合的に経済的支援を実施

[3]すべての子どもの健やかな育成の基盤となる地域の取組

・妊婦健診の支援の充実

 望ましい受診回数を確保するための支援の充実

・各種の地域子育て支援の面的な展開と当事者主体の取組の重視

 全市町村で生後4か月までの全戸訪問を実施、小学校区すべてに地域子育て支援拠点を面的に整備

・安全・安心な子どもの居場所の設置

 全小学校区における放課後子ども教室の実施(「放課後子どもプラン」)

・家庭的な環境における養護の充実など適切な養育を受けられる体制の整備

 家庭的な環境における養護の充実、施設機能の見直し など


(現物給付を優先した家族政策の充実と効果的な財政投入の必要性)

現在、OECDの社会支出の「家族」部門に準拠して、我が国の児童・家族関係の社会支出額を2007(平成19)年度予算ベースで推計すると、およそ4兆3,300億円(GDPの0.83%に相当)となっている。

これには、出産関係の費用や育児休業給付、児童を対象とした各種の手当て、各種の児童福祉サービスなどが含まれている。重点戦略検討会議の基本戦略分科会が、仕事と生活の調和を推進し、国民が希望する結婚や出産・子育ての実現を支えるための給付・サービスについて、一定の整備水準を仮定して推計したところによると、追加的に必要となる社会的なコストは1.5~2.4兆円となる(第1-2-18図)。


第1-2-18図 仕事と生活の調和の実現と希望する結婚や出産・子育ての実現を支える給付・サービスの社会的なコストの推計

第1-2-19表 支給額、支給対象年齢について各種の前提をおいた児童手当給付額の機械的試算

(次世代育成支援の社会的コストは「未来への投資」)

次世代育成支援の社会的コストは、これを単に社会的コストの増加としてとらえるのではなく、このコストを負担することにより、仕事と出産・子育ての両立が可能になることによる女性の労働力市場参加の実現や、国民の希望する結婚や出産・子育ての実現を通じた将来の労働力人口の減少の緩和により大きなベネフィットが生まれるものであり、「未来への投資」と認識すべきものである。

逆に、今、この社会的コストを負担しなければ、持続的な経済発展を支える労働力の確保ができず、結果的には国民経済の成長の制約という形で、将来、より大きな社会的なコストを負担することになるほか、例えば、育児の孤立化がさらに進み、児童虐待のリスクが増加するなど、より大きな問題につながることも懸念される。

経済財政運営の見通しや社会保障の給付と負担の見通し、公的年金の財政検証などでは、女性の労働市場参加が実現することを前提として組み込んでいるが、その一方で、女性の労働市場参加と国民の希望する結婚・出産・子育ての実現を支えるための次世代育成支援の社会的コストの負担は各種の見通しには組み込まれていない。

女性の労働市場参加の実現を前提に、今後の経済財政運営や社会保障を考えていくのであれば、働き方の見直しによる仕事と生活の調和の実現に向けた取組とあわせて、社会全体で次世代育成支援のためのコストを負担していくことが必要であり、女性の労働市場参加と未来の社会の担い手となる子どもの健やかな育成の基盤を整えることは、まさに「未来への投資」である8


(重点戦略が示した課題[1]:具体的な制度設計の検討)

現行の次世代育成支援制度の費用は、国、地方公共団体の公費、企業の拠出金、労使折半の保険料により賄われており、現行の費用負担の構成は、おおむね公費8に対して労使の保険料等が2の割合となっている。

重点戦略は、今後、少子化対策の給付の充実に当たっては、諸外国と比較しても特に厳しい財政状況の下で、その費用を次世代の負担によって賄うことのないよう、必要な財源をその時点で手当てして行うことが必要であるとしている。

また、重点戦略は、仕事と生活の調和の実現と希望する結婚や出産・子育ての実現を支える給付・サービスを体系的かつ普遍的に提供し、必要な費用についてはこれを次世代の負担とすることなく、給付の性格や施策間の整合、連携を考慮しつつ、国、地方公共団体の公費負担、事業主や個人の子育て支援に対する負担・拠出の組合せにより支える具体的な制度設計の検討について、以下に示すポイントを考慮し、直ちに着手の上、税制改革の動向を踏まえつつ速やかに進めるべきであるとしている。


第1-2-20図 現行の次世代育成支援の給付・サービスの費用構成

第1-2-21図 家族関係社会支出と財源構成(推計)の国際比較(2003年度(日本は2007年度予算ベース)、対GDP比)

<制度設計に当たって考慮すべきポイント>

●子どもの健やかな育成の観点から一定のサービスの質を担保すること

●子育て家庭の支援ニーズに対応して、現金給付と現物給付を適切に組み合わせ、きめ細かな対応を図ること

●事業主の取組と地方公共団体の取組を連結し、切れ目のない一体的な支援を実現すること

●現在の子育てをめぐる状況下では現金給付より現物給付の方が緊急性が高く、また、実施や普及に時間がかかることを考慮すること

●国が示す基本的な考え方の下、地方公共団体が地域の実情に応じて責任を持って事業を展開できるよう配慮すること

●子育ての当事者をはじめとする多様な主体の参画、行政とこれらの主体の協働を図ること

●関連する諸制度(税制等)との関係も総合的に考慮すること

●虐待を受けた子どもなど特別な支援を要する子どもや家庭に対する配慮を包含すること


(重点戦略が示した課題[2]:先行して実施すべき課題)

重点戦略は、包括的な次世代育成支援を図る制度設計の検討とともに、2009(平成21)年度までの現行の「子ども・子育て応援プラン」及び地方公共団体の次世代育成支援のための行動計画の見直しも視野に入れ、

 ・  一定の質の確保された保育サービスの量的な拡大を可能にする提供手段の多様化のための家庭的保育の制度化
 ・  一時預かり事業や地域子育て支援事業の法律的な位置づけの明確化
 ・  地方公共団体や事業主が策定する次世代育成支援のための行動計画に基づく取組の推進のための制度的な対応
 ・  家庭的養護の充実や社会的養護体制の計画的整備など社会的養護体制の充実

などの課題について、2008(平成20)年度において先行して実施すべきであるとしている。

 

 6  国立社会保障・人口問題研究所「平成17年度社会保障給付費」をみると、高齢者関係給付費は61兆7,079億円(全体の70.2%)であるのに対し、児童・家族関係給付費は3兆5,637億円(全体の4.1%)となっている。なお、本統計は、ILO基準であり、OECD基準の社会支出と比べ、施設整備費などの直接個人に移転されない費用は計上されていない。
 7  フランスの家族政策に要する費用は、公費負担とともに、事業主が給与総額の5.4%(給付総額の約50%に相当)を拠出するなど、高水準の企業拠出によって賄われている。
 8  内閣府「平成15年度年次経済財政報告」では、就労と出産・子育ての二者択一構造が解決されるなどにより、労働市場参加が進み、さらに出生率が向上した場合、2050(平成62)年までを通じて、実質GDP成長率を0.5%程度押し上げる効果があると推計されている。

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