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少子化対策

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8 社会保障国民会議 第三分科会(持続可能な社会の構築(少子化・仕事と生活の調和)) 中間とりまとめ

平成20年6月
社会保障国民会議第三分科会

1 少子化対策は未来への投資~状況はまったなし~

子どもが愛され幸せに育つことは国民共通の願いである。

少子化対策は、子ども一人一人の健やかで個性豊かな育ちを大切にしつつ、将来の我が国の担い手の育成を図る「未来への投資」である。

現在の少子化の急速な進行の背景には、結婚、出産、子育てについての国民の希望と現実のかい離が存在している。少子化対策は、こうした国民の希望と現実のかい離を解消するための取組であり、国民一人一人が自らの望む生き方を選択し、それによって「安心感」や「幸福感」を得ることができるよう社会環境を整えていく営みにほかならない。

また、少子化の進行は、将来の労働力人口の減少という形で、今後の我が国の経済成長や年金制度をはじめ社会保障制度の持続可能な運営に大きな影響を及ぼす。就労と結婚・出産・子育ての二者択一構造の解決は、女性の労働市場参加の実現と国民の希望する結婚や出産・子育ての実現を通じて労働力人口の減少を緩和することにつながるものであり、将来の我が国の経済成長、社会保障全体の持続可能性という意味からも不可欠な課題である。

このように少子化対策は、「未来への投資」として、世代を超えて社会の構成員すべてがその役割を果たす、社会全体で取り組むべき課題である。少子化対策は、子どもの成長に応じて、雇用、保健、福祉に関わる問題はもとより教育費や住宅の問題など幅広い分野にわたる対応を必要とする取組であり、結婚、出産から子どもが成人に至るまで各段階の施策が省庁の縦割りを乗り越え切れ目なく講じられる必要がある。

1990(平成2)年のいわゆる1.57ショックを契機に、政府は出生率の低下と子どもの数が減少傾向にあることを「問題」として認識し、以来、エンゼルプランをはじめ総合的な少子化対策に取り組んできた。しかしながら、少子化の傾向に歯止めがかかる気配はない。また、子どもを生み育てる親など、施策を利用する者からも、国のこれらの対策の効果がスピード感をもって感じられない、ないしは施策の改善が実感されない、といった声が聞かれている。

第2次ベビーブーム世代が30歳代半ばにある現在、利用者のニーズを踏まえた更なる少子化対策の実現はもはや“まったなしの状況”である。

昨年12月には、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略(以下「重点戦略」という。)、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章(以下「憲章」という。)及び仕事と生活の調和推進のための行動指針(以下「行動指針」という。) が策定された。重点戦略においては、国民の希望する結婚、出産、子育てを実現し、女性をはじめ、若者、高齢者等の労働市場参加を実現するため、「働き方の改革による仕事と生活の調和の実現」とその社会的な基盤となる「包括的な次世代育成支援の枠組みの構築」(仕事と子育ての両立や家庭における子育てを支える社会的基盤の拡充)を車の両輪として同時並行的に取り組んでいくことが必要不可欠との方向が示されている。

こうした取組を軌道に乗せ、各地域、各家庭に安心感、幸福感をもたらすことができるよう、保育等の子育て支援サービスのきめ細かな改善を含め、利用者の視点に立った効果的な少子化対策を推進することが求められている。本分科会は、そのための方策について議論を行った。

2 仕事と生活の調和の推進

(1)働き方の見直しと少子化

現在の急速な少子化の背景には、共働き家庭が増加する中、個人の置かれた状況に応じた多様な働き方が十分に選択ができないことや生活の不安を抱える非正規雇用者の増大、正規雇用者の長時間労働といった働き方の二極化など、国民一人一人にとって、自らの望む生き方の実現を困難にしている「働き方をめぐる様々な課題」が存在している。

働き方の見直しによる仕事と生活の調和の実現は、結婚、出産、子育てについての国民の希望と現実のかい離を解消するにあたっての大前提ともいえる。

仕事と生活の調和の実現のためには、まず、若い人々が就労による経済的自立が可能な社会を構築し、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的な基盤が確保できるようにすることが必要である。そして、働く若い男女が出会い、新しい家庭に向けて愛を育むゆとりが持てることが重要なのは言うまでもない。

また、出産・子育て期において、女性が、子育てしながら働き続けることが困難であること、正規雇用者を中心に長時間労働の割合は依然として高く、男性の家事・育児時間が先進諸国の中で最低レベルであることなどの実態を解消し、父親も母親ともに育児にあたれるような社会、子どもと豊かな時間が持てる社会とする必要がある。

今後は、すべての働く者について、憲章及び行動指針に基づき、社会全体で働き方の見直しに取り組んでいく必要がある。少子化が進む中、経済社会の持続可能な成長のためには、企業も、その社会的責任を果たす立場からも、また現在及び将来の労働力確保としての側面からも、仕事と生活の調和に取り組んでいく必要がある。

(2)育児期の多様で柔軟な働き方

出産前に仕事をしていた女性の7割が出産を機に退職しており、その中には、仕事と子育ての両立が難しかったために辞めた者が少なからず含まれている。その背景には、育児休業が取得しにくかったり、保育所の時間と勤務時間があわない、といった両立支援制度の使いにくさとともに、育児期にそれぞれの個人の状況に応じて多様で柔軟な働き方を選べるようになっていないといった働き方についての問題がある。

子どもを持つ母親の働き方として望ましい働き方について尋ねたある調査によると、子どもが1歳半になるまでは、育児休業や子育てに専念することをあげる女性が多く、その後は短時間勤務、残業のない働き方を望むという回答が多い。しかしながら現状では、育児休業から復帰した後、直ちにフルタイム勤務をせざるをえないなど働き方に不安があることから、仕事と子育てを両立していく見通しを立てることが難しいという状況がみられる。

代替要員の確保など、育児休業を取得しやすい環境づくりを進めるとともに、育児休業から復帰した後の働き方として、例えば父母が保育所への送り迎えを余裕を持って行うことができるなど、子育ての時間が十分に確保され、子どもの成長や育児の状況に応じた多様で柔軟な働き方が選択できるようにする必要がある。

このため、小学校就学前までの時間外労働、深夜業の制限や子どもの看護休暇などが制度としてあり、3歳までは勤務時間短縮等の措置を事業主が講じなければならないとされていることについて、一層周知していくとともに、これらを促進するための方策について制度的な手当も含めて検討を進めていくべきである。

また、子どもが病気になったときには気兼ねなく休めるような休暇を取得しやすい職場の雰囲気づくりも必要である。

(3)男性の育児参加

働き方を見直し、男性の育児参加を促進することが極めて重要である。

妻からは夫が平日も育児・家事に協力してくれることが求められている一方、6歳未満の子を持つ男性の一日平均の家事・育児時間はあわせて1時間程度と、先進諸国の中で最低レベルにある。また、子育て期の男性については週労働時間が60時間を超えるものの割合が2割前後と他の世代よりも高くなっており、父親の帰りが遅く、母親に子育ての負担が集中している。父親も母親もともに子育てに取り組むという意識改革と職場の環境整備が必要である。

また、男性の育児参加を進めるためには、生まれた直後から、子どもに接し、関われる時間を多く持つことが重要である。そのためには、意識改革とあわせ、育児期の柔軟な働き方の実現や男性の育児参加促進のための第一歩となる男性の育児休業取得の促進などを制度的な手当も含めて検討を進めていく必要がある。中でも、生まれた直後から男性が育児に関われるよう、男の産休(パタニティ休暇※)を普及させていくことが重要である。
※配偶者が産休中など出産直後の父親の休暇(育児・介護休業法上、配偶者の産休中も父親の育児休業取得が可能)

(4)企業への浸透

働き方の見直しを進めるためには、まずは職場において意識改革や柔軟な働き方を実践することが肝要である。

企業の中には、既に積極的に仕事と生活の調和に取り組んでいるところもあり、それぞれの企業の自主性、多様性を尊重しつつ自助努力を促し、そうした先進的な企業の取組を社会全体に広げていくことが必要である。とりわけ、企業と労働者が協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革とあわせ、働き方の改革に取り組むことが重要である。

そのためには、まず、仕事と生活の調和に取り組むことの意義、メリットについての企業の理解を広める必要がある。

実際に仕事と生活の調和に取り組んだ企業は、社員の定着率、満足度、仕事への意欲の向上、企業イメージの向上等を、その効果としてあげており、長い目で見ると、仕事と生活の調和の推進は企業の生産性を向上させる取組であるということができる。

しかしながら、現状は、特に中小企業において、仕事と生活の調和は、余裕のある企業だからできることであるという意識が根強く存在しており、こうした意識を払拭することが必要である。

このため、好事例の情報提供や仕事と生活の調和に取り組む方法論としてのメリット分析を行っていくことが重要である。

また、企業の自助努力を喚起するためには、それぞれの企業の取組の呼び水となるようなインセンティブも重要である。

現状においても、例えば次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」という。)に基づく認定マークや労働時間の設定改善に取り組む企業への助成金などの支援策は存在するが、企業にとってのより強力、効果的な動機付けは、多くの国民が仕事と生活の調和に取り組む企業を評価し、当該企業の生み出す製品、サービスを消費者が積極的に選択するような機運が醸成されることにある。

現在、企業の次世代育成支援の行動計画の公表を義務づける次世代法の改正法案が国会に提出されているが、企業の次世代育成支援や仕事と生活の調和への取組状況が公開され、国民がこれに接することができるようにすることの意義は大きい。

仕事と生活の調和への取組はこれまで一部の先進的な企業にはみられたが、社会全体への広がりには乏しかった。この意味で、昨年12月、政労使の合意により憲章・行動指針が策定されたことは大きな前進であり、以上に述べたような企業へのメリットの普及やインセンティブの工夫などにより社会全体でその推進に取り組み、すべての企業に浸透させていくことが求められる。

3 保育等の子育て支援サービスのきめ細かな改善(別紙参照)

(別紙は、利用者が保育等の子育て支援サービスを利用する際の課題について、その背景、解決の方向性を整理したもの)

(1)利用者の視点に立ったきめ細かな運用改善

エンゼルプランの策定以来、総合的な少子化対策が幾度か講じられてきた。その結果、サービスの量的な充足にはなお遠いものの、少子化対策の各種サービスのメニュー自体は、ある程度出そろっているのではないかと考えられる。しかしながら、こうしたこれまでの取組にもかかわらず、依然として解決すべき課題は多く、利用者からは、改善が実感できない、その効果が肌で感じられるものにはなっていないとの声が聞かれる。

制度、施策そのものは必要であり、時宜にかなったものではあるが、これが現場で実際に利用される場面において、使いやすいものになっていないため、以下のとおり、利用者の直面している課題の解決の十分な手助けになっていない事例もみられる。

【保育所をめぐる問題】
「保育所が一杯で入れないため、職場復帰できない、あるいは退職せざるをえない」、「入所の通知が遅すぎる」、「4月に定員が埋まってしまい、年度途中入所が難しいために4月にあわせて育児休業を切り上げざるをえない」、「他の保育サービスの選択肢が少ない」、「子どもが病気のときに預かってもらえるところがない」など。
【放課後児童クラブなど小学生以上が対象のサービスの問題】
「利用希望が多いクラブには入れない」、「利用時間がニーズに合っていない」、「小学校3年生までしか利用できないクラブが多い」、「放課後児童クラブ(厚生労働省)と放課後子ども教室(文部科学省)の連携が不十分」など。
利用者である子ども自身や親にとって安心で使いやすいサービスにするために、サービスの質・量の抜本的な拡充を図るとともに、あわせて、新たな制度体系の構築を断行する必要があるが、まずは、こうした利用者からの声にこたえ、現場レベルのきめ細かな運用改善をできるところから速やかに手をつけていくことが必要である。

(2)地域全体が支える、世代を超えて支える子育て支援

子育てには時間と人手がかかるが、それだけに得られる幸福感も大きい。

しかしながら、地域での子どもとのふれあいの減少などにより、親になるまでに子育てに肯定的な感情を持てないこと、親になっても、子育てについて身近に悩みを相談する相手がいないことなどから、親が子どもとのきずなを見いだせない、子育ての負担面ばかりを感じがちであるといったケースが増えてきている。子どもに関わる豊かな時間を生み出し、子どもと一緒に暮らし、子どもとともに親も成長する充実感、子育ての本当の楽しさを実感できるような子育て支援が必要とされてきている。

子育て支援は地域が支えることが重要である。町内会・自治会、NPOなどの市民団体や、企業、シニアや若者をはじめとする地域住民など、多様な主体が担い手となって、地域全体が子育てに関われるような支援、子育て家庭のリスクにもきめ細かに対応できるような地域のネットワークが必要である。子育て支援のサービスの担い手としては、依然として行政や社会福祉協議会などの半公的な主体が大半を占めているものがあり、新規参入のNPO等が参入しづらい現状がある。このため、今後、担い手の育成という視点も含め多様な主体の参画に向けた検討がなされるべきである。地方公共団体における政策の決定過程やサービスの現場等においても、親を一方的なサービスの受け手としてではなく、相互支援や、サービスの質の向上に関する取組などに積極的に参画し得る方策を探るべきである。

また、親自身が、やがて支援側に回れるような循環を地域に生み出し、高齢者も含めた地域の力(例えば地域の「社会的祖父力・祖母力」の活用による世代間交流)などを有効に引き出すことができるよう、子育てに優しいまちづくりの視点も含めた環境づくりが必要である。多子世帯に配慮した支援なども重要である。

これからの子育て支援は、すべての家庭を対象に、子ども自身の視点に立つとともに、親の主体性とニーズを尊重し、子育てが孤立化しないように、子ども自身と親の成長に寄り添う形で支援することが重要である。

幼少期から長期的展望に立って子育てに関心を持つ、「心を育てる」取組を幅広く進めるとともに、子どもを持ち、育てる喜びを認識し、共有するための情報発信にも力を入れていくことも必要である。

4 市町村における施策の着実な実施

少子化対策の各種施策の多くは地方公共団体、特に市町村が担い手となっている。それぞれの地域の住民が少子化対策の各種施策の効果を十分に享受できるかどうかは、基礎的な自治体として住民に直接接し、施策を実施している市町村の取組によるところが極めて大きい。

一方、少子化対策の各種施策の中には、市町村によって取組格差が大きい施策もある。地方分権の時代にあって、どういった施策をどの程度実施するかは基本的には市町村の判断するべき事柄ではあるが、その一方で、どの地域に住んでいるかによって、利用することができる住民サービスの内容に著しい差異が生じている状態は望ましいことではなく解消することが必要である。

例えば保育の場合、住んでいる地域によって、希望すればすぐに保育所に入所できるところもあれば、そうではないところもある。放課後児童クラブなども同様である。

一方、地域特性に対応する必要があるなど柔軟性が求められるサービスは、地方公共団体の財源確保に配慮し、地方公共団体の裁量性を確保する必要がある。

また、保育所と幼稚園や放課後子どもプラン(放課後児童クラブ、放課後子ども教室)など関係省庁で行政が密接に連携し合うべきものについては、現実の利用者のニーズに即した事業展開を図るため、ニーズの多様化に柔軟に対応し、現場の声を十分踏まえつつ、統合・一本化すべきところは統合・一本化し、共同の取組を推進すべきである。

保育所の施設設備に関する最低基準や「保育に欠ける」入所要件の見直しなども、速やかに検討し、すべての子育てをする利用者や子ども達のニーズを踏まえ、速やかに結論を得る必要がある。

5 少子化対策に対する効果的な財政投入と新たな制度体系の構築

家族関係社会支出の対GDP比をみると、欧州諸国が2~3%であるのに対し、我が国は1%未満と著しく小さい。社会保障全体に占める家族関係社会支出の割合を比較してみても同様である。

少子化対策の財政的な規模の小ささは、長年解消しない待機児童の問題や貧弱な各地域における少子化関連施策のサービスの整備状況に端的に現れている。

現状において全国どこに住んでいてもニーズに応じて必要なサービスが受けられる状況になっていないことはもちろん、少子化の状況が将来の年金の給付水準に直結することなどからも明らかなとおり、少子化対策は、我が国の将来の社会保障の持続可能性の根幹に関わる政策である。

こうした点にかんがみると、少子化対策については、国が責任をもって国・地方を通じた財源の確保を行った上で、大胆かつ効果的な財政投入を行い、サービスの質・量の抜本的な拡充を図るための新たな制度体系を構築することが不可欠である。その際、制度の効率的な運営にも努めるべきである。また、子育てに関わる経済的支援も重要であるが、まずは緊急性の高い保育をはじめとするサービスの充実を優先するべきである。

重点戦略は、仕事と生活の調和の実現と、国民の希望する結婚や出産・子育ての実現を支える給付・サービスの社会的なコストの追加所要額は1.5兆円~2.4兆円と推計している。これは、今後必要となる財源の一定の目安であるが、施設整備やサービスの質の維持・向上のためのコスト、さらには社会的養護など特別な支援を必要とする子ども達に対するサービスの充実に要する費用などは含まれていないことに留意するべきである。

以上のような更なる財政投入のためには、負担を将来に先送りせず、重要な政策課題である少子化対策のために社会全体で広く負担を分かち合うことの合意形成が必要である。我が国の少子化の状況は、もはや猶予を許す状況にはない。質量の抜本的拡充と制度体系の構築、負担についての国民的な合意形成が速やかに進められる必要がある。

このまま少子化の流れが続くことは、結婚、出産、子育てについての国民の希望が実現しないだけでなく、我が国の経済、年金や医療、介護といった社会保障全体の持続可能性を脅かすことになる。積極的に少子化対策に財政投入をしている国は、現に、少子化に歯止めがかかっていることを踏まえ、我が国においても少子化対策に優先的に取り組む必要がある。


別紙

保育等の子育て支援サービスに関する課題・背景と解決の方向性


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