少子化対策

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第2節 「子ども・子育てビジョン」の概要

1 子どもと子育てを応援する社会に向けて

「子ども・子育てビジョン」(以下「ビジョン」という。)は、「子どもが主人公(チルドレン・ファースト)」という基本的な考えのもと、これまでの「少子化対策」から「子ども・子育て支援」へと視点を移し、社会全体で子育てを支えるとともに、「生活と仕事と子育ての調和」を目指しながら、次代を担う子どもたちが健やかにたくましく育ち、子どもの笑顔があふれる社会のために、子どもと子育てを全力で応援することを目的としている。

1)子どもが主人公(チルドレン・ファースト)

ビジョンでは、「子どもが主人公である」(チルドレン・ファースト)という基本的な考えのもと、「子どもを大切にする社会」をつくることを宣言している。そのためには、

・家族や親だけが子育てを担うのではなく、社会全体で子どもと子育てを応援していくことが重要である

・子どもが社会の主体的な一員であると位置づけ、その子どもと子育てを、国、地方、企業(職域)、地域、NPO、家庭、個人など社会全体で応援する

・近年、家庭や家族の形態、親の就業の有無や状況、個人のライフスタイルが多様化するとともに、特別な支援が必要な子どもが増えている。このため、子どもの権利条約も踏まえ、すべての子どもたちが尊重され、その育ちが等しく確実に保障されるよう取り組む

こととしている。

第1-1-17図 基本理念の転換(子どもと子育てを応援する社会)

2)「少子化対策」から「子ども・子育て支援」へ

これまで「少子化対策」として、さまざまな計画の策定や対策が講じられてきているが、それが目に見える成果として、生活の中で実感できない現状にある。

このため、ビジョンでは、「少子化対策」から「子ども・子育て支援」へと視点を移し、子育てをする親や子どもたちなどの当事者の目線で、子ども・若者の育ち、そして子育てを支援することを第一に考え、個人が希望を普通にかなえられるような教育・就労・生活の環境を社会全体で整備していくこととしている。

第1-1-18図 バランスのとれた総合的な子育て支援

3)生活と仕事と子育ての調和

子どもの成長、子育て、個人の生活、仕事を切り離して考えることはできず、また、家庭や職場における男性と女性の役割についてもあわせて考える必要がある。

このため、ビジョンにおいては、「子ども・子育て支援」を進めるにあたり、「男女共同参画」「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」「子ども・若者育成支援」のそれぞれの施策と密接な連携を図ることとしている。

第1-1-19図 「子ども・子育てビジョン」概要

2 基本的な考え方

1)社会全体で子育てを支える

ビジョンにおいては、「子どもを大切にする」という考えのもと、どのような状況にある子どもであっても、多様性を尊重し、困難な状況に対しての支援を行うことにより、すべての子どもの生きる権利、育つ権利、学ぶ権利が等しく確実に保障されることを目指している。

また、多様な家族形態や親の就労の有無に関わらず、すべての子どもの育ちと子育てを切れ目なく包括的に「ライフサイクル全体を通じて社会的に支える」こととしている。

さらに、地域の子育て力を高め、それぞれの地域の特色を生かし、子どもと子育てを中心として「地域のネットワークで支える」とともに、地域の再生を目指すこととしている。

2)「希望」がかなえられる

ビジョンにおいては、個人の希望する結婚、出産、子育てを実現するという観点から、「生活、仕事、子育てを総合的に支える」という考え方のもと、子どもを生み育てることに夢を持てる社会を目指すこととしている。

子どもがいる現役世帯の世帯員の相対的貧困率は、2007(平成19)年の調査で12.2%、そのうち、ひとり親世帯については54.3%となっている。またOECD加盟国で比較した相対的貧困率についてみると、我が国はOECD諸国の中でも高い水準であり、その改善が課題となっている。このため、「格差や貧困を解消」し、親の経済力や幼少期の生育環境によって、人生のスタートラインの段階から大きな格差が生じ、世代を超えて格差が固定化することがない社会を目指している。

さらに、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現を目指すとともに、若者、女性、高齢者、障害のある者など働く意欲と能力を持つすべての人の社会参加を実現することにより、「持続可能で活力ある経済社会」が実現することを目指している。

3 3つの大切な姿勢

ビジョンにおいては、子ども・子育て支援施策を行っていく際の姿勢として、次のような「3つの大切な姿勢」が示されている。

1)生命(いのち)と育ちを大切にする

一人ひとりの子どもが幸せに生きる権利、育つ権利、学ぶ権利を大切にし、「生命(いのち)と育ちを大切」にすることが重要である。

このため、妊娠・出産の安心・安全と子どもの健康を守るための環境整備や支援などを進めるとともに、子ども手当の創設や高校の実質無償化などにより、すべての子どもの健やかな育ちと教育の機会を確保することとしている。

2)困っている声に応える

子どもや子育て家庭の不安を解消し、困っている声に応えることが重要である。

このため、保育所に入れない子どもたちや放課後の居場所のない子どもたちを抱える子育て家庭に、十分なサービスが提供されるように環境整備を進めることとしている。

また、一人ひとりの子どもの置かれた状況の多様性を社会的に尊重し(インクルージョン)、ひとり親家庭の子どもや障害のある子どもなど、特に支援が必要な方々が安心して暮らせるよう支援するとともに、子どもの貧困や格差の拡大を防ぐこととしている。

3)生活(くらし)を支える

若い世代や子どもの立場に立って、家庭や地域の生活を支えることが重要である。

このため、若い世代への就労・生活・自立に向けた支援を行うなど、子どもや若者が円滑に社会生活に移行できるようにすることとしている。

また、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を推進し、いわゆる「M字カーブ」の解消など、女性が出産や子育てのために仕事をやめなくてもよいように、また、出産や子育て後に円滑に仕事に復帰できる社会が実現するよう、働き方の改革と職場環境の改善を進めることとしている。

4 目指すべき社会への政策4本柱と12の主要施策

3つの大切な姿勢を踏まえ、次のような「目指すべき社会への政策4本柱」と「12の主要施策」に従って、取組を進めることとしている。

1)子どもの育ちを支え、若者が安心して成長できる社会へ

(1)子どもを社会全体で支えるとともに、教育機会の確保を

子ども手当の創設により、次世代を担う子どもたちを社会全体で支えるとともに、高校の実質無償化、奨学金の充実等により、子どもの学びを支援する。

また、子どもの「生きる力」を養い、安心して学べる学校の教育環境の整備に取り組む。

(2)意欲を持って就業と自立に向かえるように

非正規雇用対策(正規雇用への転換促進、非正規雇用の待遇格差の是正等)や若者の就労支援の実施(キャリア教育・職業教育、ジョブカフェ等によるフリーター等の就労支援)を推進する。

また、「子ども・若者育成支援推進法」に基づくニートやひきこもり等の困難を有する子ども・若者への支援に取り組む。

(3)社会生活に必要なことを学ぶ機会を

学校・家庭・地域の取組等を通じて、多様な家庭や家族の形態があることを踏まえつつ、生命の大切さ、家庭の役割等についての理解を深める。

また、地域ぐるみで子どもの教育に取り組む環境を整備するとともに、文化・芸術活動、自然とのふれあいの場の提供等により、学びや遊びの体験を通じて豊かな人間性を育成する。

2)妊娠、出産、子育ての希望が実現できる社会へ

(4)安心して妊娠・出産できるように

妊婦健診や出産に係る経済的負担の軽減、新生児集中治療管理室(NICU)の整備等、相談支援体制の整備(妊娠・出産・人工妊娠中絶など)等により、妊娠・出産の支援や周産期医療体制(産婦人科医師、助産師等を含む。)を確保する。

また、不妊専門相談センター、不妊治療に係る経済的負担の軽減等により、男女を問わず、不妊治療への支援に取り組む。

(5)誰もが希望する幼児教育と保育サービスを受けられるように

潜在的な保育ニーズの充足も視野に入れた保育所待機児童の解消、多様な保育サービス(延長保育、休日・夜間保育、病児・病後児保育、事業所内保育等)の充実、人口減少地域における保育機能の維持、幼児教育と保育の質の向上を図る。

さらに、保育制度改革を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の構築について検討する。その際、認定こども園制度の在り方など幼児教育、保育の総合的な提供(幼保一体化)の在り方についても検討し、結論を得る。

また、放課後子どもプランを推進し、放課後児童クラブを拡充するとともに、これらのサービスの質の向上を図ることにより、放課後対策に取り組む。

(6)子どもの健康と安全を守り、安心して医療にかかれるように

子どもが病気になっても安心して医療にかかれるよう、小児医療体制を整備するとともに、あらゆる子どもを対象に、一定の窓口負担で医療にかかれるようにする。

また、こころの健康づくり、「食育」の普及促進、子どもの事故防止等により、子どもの健康と安全を守る。

(7)ひとり親家庭の子どもが困らないように

子育て・生活支援、就業支援、経済的支援(児童扶養手当を父子家庭にも支給)の充実等により、ひとり親家庭を支援する。

(8)特に支援が必要な子どもが健やかに育つように

障害のある子どものライフステージに応じた一貫した支援の強化、障害のある子どもや発達障害のある子どもへの教育と保育などの支援等により、障害のある子どもへの支援に取り組む。

また、児童虐待を防止するとともに、里親やファミリーホームの促進、施設のケア単位の小規模化など家庭的養護の拡充、虐待を受けた子どもへのきめ細やかな対応等により社会的養護の充実を図る。

さらに、定住外国人の子どもなど特に配慮が必要な子どもたちへの支援を行う。

3)多様なネットワークで子育て力のある地域社会へ

(9)子育て支援の拠点やネットワークの充実が図られるように

乳児がいる家庭への全戸訪問の実施、地域子育て支援拠点の設置促進、ファミリー・サポート・センターの普及促進、商店街の空き店舗や余裕教室の活用等により、地域における子育て支援の充実を図る。

また、NPO活動への支援、ボランティアの育成、高齢者等の人材活用等により、地域住民の力の活用、民間団体の支援、世代間交流を促進する。

(10)子どもが住まいやまちの中で安全・安心にくらせるように

良質なファミリー向け賃貸住宅の供給促進、公的賃貸住宅と子育て支援施設との一体的整備の推進等により、子育てに適したゆとりある住宅・居住環境の確保を図る。

また、建築物、公共交通機関、公園等におけるバリアフリー化、道路交通環境の整備、子ども目線のものづくりの推進(キッズデザインの推進)、交通安全教育等により、安全に安心して暮らせるよう、子育てバリアフリーなどを推進する。

4)男性も女性も仕事と生活が調和する社会へ(ワーク・ライフ・バランスの実現)

(11)働き方の見直しを

長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、ライフスタイルに応じた多様な働き方の推進、テレワークの推進等により、働き方の見直しに向けた環境整備を図る。

また、男性の育児休業の取得促進等により、男性の子育てへの関わりを促進する。

(12)仕事と家庭が両立できる職場環境の実現を

育児休業、短時間勤務等を取得しやすい職場環境の整備、育児休業中の経済的支援、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等により、育児休業制度その他の両立支援制度の普及・定着及び継続就業を支援するとともに、子育て女性等の再就職支援を図る。

また、男女が職場で十分に能力を発揮しつつ、子どもを生み育てながら安心して働き続けられる職場環境となるよう、男女雇用機会均等の確保を図るとともに、「同一価値労働同一賃金」に向けた均等・均衡待遇を推進する。

さらに、企業経営者等の意識改革、積極的取組企業の社会的な評価の推進など、企業等における取組の「見える化」によりもう一段の取組を推進する。

5 今後の取組に向けた推進方策

1)政府を挙げた取組

このビジョンに基づき、政府を挙げて、子どもを生み育てることに夢を持てる社会の実現のための施策を強力に推進することとしている。また、省庁横断的な観点から、総合性と一貫性を確保するため、子どもや子育てに係る施策間の整合性や連携を図る取組を進めるとともに、「子ども家庭省(仮称)」の検討など、省庁のあり方についても検討していくこととしている。

2)数値目標

今後、5年間を目途(2014(平成26)年度)として、次のような数値目標を目指すこととしている。

≪主な数値目標≫

(1)潜在的な保育ニーズに対応した保育サービスの拡充
(2)放課後児童クラブの充実
(3)安心できる妊娠と出産
(4)社会的養護の充実
(5)「地域の子育て力」の向上
(6)子育てしやすい働き方と企業の取組
(7)「男性の育児参加」を重視

3)ビジョンの目標を達成するための社会的追加コスト

ビジョンの施策として、新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度を構築することとしているが、ビジョンの数値目標を前提として、主要な子育て支援サービスや給付の拡充に必要な社会的追加コストを機械的に試算してみると、2014(平成26)年度(ビジョンの最終年度)における追加所要額は、サービスの量的拡大で約0.7兆円となると見込まれている(施設整備費などは含まない)。

第1-1-20図 ビジョンの目標を達成するための社会的追加コスト

4)社会全体における理解と広がりをもった取組

社会全体における理解と広がりをもった取組の促進のため、職場、家庭、地域、学校等における取組を促進するとともに、広く社会に向けた情報発信を行うこととしている。

5)地域の実情に応じた取組

各地方公共団体が定める次世代育成支援行動計画等に基づき、地域の実情に応じた施策の展開を図るとともに、地方公共団体における子ども関連施策を担当する部署の横断的な連携の仕組みを強化することとしている。

6)点検・評価と本ビジョンの見直し

ビジョンの関連施策については、定期的に進捗状況を点検・評価するとともに、その結果に基づき、必要な見直しを行うこととしている。なお、その際は、子どもや子育て家庭の視点に立った点検・評価を重視することとしている。

また、ビジョンについては、施策の進捗状況とその効果、社会経済情勢、子どもの貧困率など子育て家庭の状況その他子どもと子育てをめぐる状況等を踏まえ、おおむね5年後を目途に見直しを行うこととしている。


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