少子化対策

前の項目 次の項目 目次へ

2 子どもの健康と安全を守る

1)予防接種

予防接種はこれまで、多くの疾病の流行の防止に大きな成果をあげ、感染症による患者の発生や死亡者の大幅な減少をもたらすなど、わが国の感染症対策上極めて大きな役割を果たしてきたところである。

しかし、感染症が著しくまん延し、大きな被害を与えていた時代は過ぎ去り、今日ではその流行が余りみられなくなったため、予防接種によって獲得した免疫が感染症の流行を抑制していることが忘れられてしまいがちとなっている。

このため、感染力が非常に強い疾病に関しては、免疫水準の変化により周期的に流行を繰り返すおそれもあり、予防接種により国民全体の免疫水準を維持するためには、予防接種の接種機会を確保すると共に、社会全体として一定の接種率を確保することが重要である。

2009(平成21)年4月の新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生とその対策を契機として、予防接種制度全般の見直しに関する国民の気運が高まり、それを受け同年12月に厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会を新たに設置した。さらに、今後の日本脳炎の定期接種の進め方に向けた検討を行うため、予防接種部会の下に「日本脳炎に関する小委員会」を設置したところである。

現在、予防接種部会においては、同部会が2010(平成22)年2月に取りまとめた「第一次提言」1を踏まえ、予防接種法(昭和23年法律第68号)の対象となる疾病・ワクチン(ヒブ、肺炎球菌、子宮頸がんなど)の在り方、接種費用の負担の在り方、予防接種に関する評価・検討組織の在り方などについて、議論を行っているところである。

また、予防接種法の対象となる疾病・ワクチンの在り方については、医学的・科学的観点からの検討・取りまとめを行うため、2010年8月27日に予防接種部会の下に「ワクチン評価に関する小委員会」を設置し、2011(平成23)年3月11日に報告書がとりまとめられたところである。

引き続き、予防接種部会における議論などを行い、予防接種制度の適切な実施に向けて検討を進めていくこととしている。

日本脳炎ワクチンについては、接種後に健康被害を発症した事例があったことから、2005(平成17)年5月より積極的勧奨を差し控えていたところであるが、その後、新たなワクチンが薬事承認されたことから、2011年4月からは、第1期の標準的な接種期間に該当する3歳児と4歳児に対する積極的勧奨を再開した。この間、積極的勧奨を行わなかったために、接種機会を逃した方々については、日本脳炎に関する小委員会での議論を踏まえ、2011年4月から、9歳児と10歳児に対する第1期接種としての積極的勧奨を再開することとし、順次、積極的勧奨を実施することとしている。

2)こころの健康づくり

2008(平成20)年度から、経験豊かな退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして、養護教諭未配置校や経験の浅い養護教諭の配置校へ定期的に派遣し、校内での教職員に対する研修、個別の対応が求められる児童、生徒への対応方法等に関する指導等を実施するとともに、スクールヘルスリーダーによる情報交換・知見の向上を図ること等により、児童、生徒が抱える現代的な健康問題に適切に対処できる環境を整備するスクールヘルスリーダー事業を実施している。

また、子どもの日常的な心身の健康状態を把握し、健康問題などについて早期発見・早期対応を図ることができるよう、教員を対象とした指導参考資料を作成するとともに、養護教諭、臨床心理士等を対象に、子どもの心のケアの効果的な対応方法等に関するシンポジウムを開催している。

さらに、児童思春期におけるこころの健康づくり対策としては、児童思春期におけるこころのケアの専門家の養成研修事業を行っており、精神保健福祉センター、児童相談所等では児童思春期の専門相談を実施している。

加えて、様々な子どもの心の問題、児童虐待や発達障害に対応するため、都道府県域における拠点病院を中核とし、各医療機関や保健福祉機関等と連携した支援体制の構築を図るための事業を2008年度より3か年のモデル事業として実施してきたところであり、2011(平成23)年度予算においては、本モデル事業の成果を踏まえ、事業の本格実施を行うこととしている。

3)性に関する科学的な知識の普及と発達段階に応じた適切な教育

生涯を通じた女性の健康支援事業では、保健所、市町村保健センター等において、妊娠、避妊や性感染症を含めた女性の心身の健康に関する相談指導のほか、女性のライフステージに応じた健康教育等を実施している。

学習指導要領においては、学校における性に関する指導は、児童生徒が性に関して心身の発育・発達と健康、性感染症等の予防などに関する知識を確実に身に付け、生命の尊重や自己及び他者の個性を尊重し、相手を思いやり、望ましい人間関係を構築するなど、適切な行動を取れることを目的として実施されており、体育科、保健体育科、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしている。なお、指導に当たっては、児童生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮すること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに配慮することが大切である。

政府では、学校において適切な性に関する指導が実施されるよう、効果的な指導方法について実践研究等を実施するとともに、各地域における指導者養成と普及を目的とした研修会を行ったところである。

4)「食育」の普及促進

2005(平成17)年6月に制定された食育基本法(平成17年法律第63号、同年7月施行)において、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性を育んでいく基礎となるものと位置付けられたところである。

食育基本法では、食育推進会議(会長:内閣総理大臣)が食育推進基本計画(以下この項目において「基本計画」という。)を作成することとされており、2006(平成18)年度から2010(平成22)年度を対象とする最初の基本計画が2006年3月に決定され、これに基づき食育の推進に関する各種施策が行われてきたところである。

なお、2011(平成23)年3月には、2011年度から2015(平成27)年度の5年間を期間とする新たな基本計画が決定されたところである。

(1) 国民運動としての食育の推進

食育基本法の趣旨から、子どもたちに対する食育が重要であるとの認識の下、基本計画に基づき、家庭、学校、保育所、地域等において、国民的広がりを持つ運動として食育を推進している。基本計画は、食育推進運動を重点的かつ効果的に実施し、食育の国民への浸透を図るため、毎年6月を「食育月間」として定めている。内閣府では、実施要綱を策定して全国的な推進を図るとともに、2010年6月に佐賀県佐賀市において第5回食育推進全国大会を開催するなど、食育に関する国民の理解の促進に努めたところである。

また、2007(平成19)年8月からは、食育推進会議の下に「食育推進評価専門委員会」を設置し、食育の推進状況についての評価を行うとともに、「若い世代の食生活改善」等様々な課題について審議を重ねている。

(2) 家庭における食育の推進

2006年6月に公表した「平成17年度乳幼児栄養調査」結果では、出産直後や離乳食の開始時期に授乳や子どもの食事への不安が高まること、幼児(4歳未満)の約1割に朝食の欠食がみられることなどが明らかとなり、乳幼児のいる家庭への食育を推進していく必要がある。このため、授乳や離乳について適切な支援が推進されるよう2007年3月に取りまとめた「授乳・離乳の支援ガイド」の内容について普及啓発を図っている。

また、2010年3月、子育て中の保護者を主たる対象とする「親子のための食育読本」を作成し、公表したところである。

(3) 学校等における食育の推進

学校における食育を推進するためには、学校における指導体制の整備が不可欠である。2005年4月に制度化された栄養教諭は、各学校の指導体制の要として、教育に関する資質と栄養に関する専門性を生かして、学校給食の管理を行うとともに、食に関する指導を一体として担うことにより、教育上の高い相乗効果をもたらすことが期待されており、食育の推進に大きな効果を上げている。2010年4月現在で、すべての都道府県において3,379人の栄養教諭が配置されている。このほかにも、
<1>全国のすべての小学校1年生・3年生・5年生を対象とした「食生活学習教材」の作成・配布、
<2>栄養教諭を中核として、学校、家庭、地域が連携しつつ、学校における食育を推進するための事業の展開
など、各種事業を継続的に実施し、学校における食育の推進に努めている。

また、2008(平成20)年3月には、小中学校の学習指導要領の改訂を行い、その総則において、「学校における食育の推進」を明確に位置付けるとともに、家庭科(技術・家庭科)や体育科(保健体育科)、総合的な学習の時間、特別活動など、関連する教科等においても食育に関する記述を充実した。併せて、幼稚園教育要領の改訂も行われ、領域「健康」において、食育の観点からの記述を充実した。

さらに、2009(平成21)年4月には、改正学校給食法(平成20年法律第73号)を施行し、第1条(この法律の目的)において、「学校における食育の推進」を明記するとともに、栄養教諭が学校給食を活用した食に関する指導を行うことや、校長が食に関する指導の全体計画を作成するなど、必要な措置を講ずることを規定した。

児童福祉施設における食事は、入所する子どもの健やかな発育・発達及び健康の維持・増進の基盤であるとともに、望ましい食習慣及び生活習慣の形成を図るなど、その果たす役割は極めて大きい。そこで、2009年度に改定された「日本人の食事摂取基準」(2010年版)を受けて、児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理のあり方について、子どもの健やかな発育・発達を支援する観点から、具体的な食事計画の作成や評価など栄養管理の手法について、専門家による検討を行い、2010年3月に「児童福祉施設における食事の提供ガイド」を取りまとめた。

なお、保育所における食育の推進については、2009年4月に施行された、新たな保育所保育指針(厚生労働省告示第141号)に位置付けられている。

(4) 地域における食生活の改善等のための取組の推進

心身ともに健康で豊かな食生活の実現に向け、2000(平成12)年に策定された「食生活指針」を具体的な行動に結びつけるため、2005年から「何を」「どれだけ」食べたらよいかをわかりやすく示した「食事バランスガイド」について普及・啓発を行っている。特に、農林水産省では、栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践を促すため、広域的、先進的に食育に取り組む活動に対する支援等を行った。さらに、学校給食への地場産物の活用の促進など、地域の特性を活かした取組を促進している。

5)子どもの事故防止

(1) 子どもの事故予防のための取組

2009(平成21)年12月より、子どもの事故防止について、国自らの取組を加速化・重点化するとともに、家庭、学校、サークル、消費者団体、事業者、地方自治体等の取組を促進する「子どもを事故から守る!プロジェクト」を展開している。

具体的には、2010(平成22)年9月より、子どもの年齢(月齢)ごとに起こりやすい事故及びその予防に関する情報等を、携帯サイト2及びパソコン用ホームページ3で紹介するとともに、子どもの思わぬ事故を防ぐための注意点や豆知識を、メール配信サービス「子ども安全メールfrom消費者庁」において、毎週1回配信している。

また、2010年度から、子どもの事故予防強化事業において、家庭内における子ども(特に乳幼児)の事故予防のためのパンフレット等を両親学級や集団健診等の場において配布・説明するなど、保護者等に対する意識啓発を行っている。

(2) 遊び場の安全対策の推進

都市公園における遊具については、安全確保に関する基本的な考え方を示した「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を2008(平成20)年8月に改定し、各施設管理者への周知を図っている。また、社会資本整備総合交付金等により、都市公園の遊び場の安全・安心対策となる施設整備に対する支援を実施している。

(3) 建築物等の安全対策の推進

建築物や昇降機等における子どもの事故を防止し安全を守るためには、建築物等に要求される性能水準を維持し、常時適法な状態に保つことが必要であり、このため、多数の者が利用する特定の特殊建築物等について、建築物等の所有者等による維持保全計画の作成、定期報告制度等を通じ、適切な維持保全及び必要な改修を促進している。

また、社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会及び同審議会昇降機等事故調査部会において、建築物等に係る事故情報について継続的に分析・検討を行い、建築物等の事故防止を図っている。

6)犯罪等の被害の防止

(1) 子どもを犯罪等の被害から守るための取組の推進

「犯罪から子どもを守るための対策」に基づき、子どもを対象とする犯罪の取締りや通学時間帯における通学路等のパトロール活動を強化するとともに、防犯ボランティアによるパトロール活動や「子ども110番の家」の活動に対する支援を推進している。

また、学校等の教育関係機関と連携して、子どもの連れ去りや不審者の学校侵入を想定した実践的な防犯訓練や防犯教室の実施を推進するとともに、ネットワーク等の構築により、声かけ事案、不審者情報等の迅速な発信及び共有に努めている。

さらに、2010(平成22)年度においては、より実効性のある地域ぐるみの学校安全体制の整備を推進するため、先導的な取組を集めた実践事例集「地域ぐるみの学校安全体制整備実践事例集」を作成した。

(2) 「安全・安心まちづくり」の推進

防犯まちづくり関係省庁協議会において、「防犯まちづくりにおける公共施設等の整備・管理に係る留意事項」(2003(平成15)年7月)の着実な実施を図ることなどにより、防犯に配慮した犯罪の発生しにくい公共施設等の整備・管理の普及を促進し、あわせて、住宅についても犯罪防止に配慮した環境設計を行うことにより、犯罪被害に遭いにくい「安全・安心まちづくり」を推進している。また、子どもに対する犯罪の発生が懸念される学校周辺、通学路、公園、地下道、空き家等における危険箇所の把握・改善に努めている。

7)子どもの健康に影響を与える環境要因の解明

近年、子どもたちの間で、ぜん息などのアレルギー疾患や先天奇形など、体やこころの異常が年々増加していることが報告されている。

こうした子どもの異常の原因として、子ども自身の遺伝的要因や生活環境ばかりでなく、環境中の化学物質等が関与している可能性が指摘されている。

環境省は、環境中の化学物質等が子どもの健康に与える影響を解明するため、2010(平成22)年度より、「子どもの健康と環境に関する全国調査」(以下「エコチル調査」という。)を開始した。このエコチル調査は、全国の10万組の親子の協力を得て、血液や尿、母乳などの分析を行うとともに、生まれてくる子どもの健康状態を13歳に達するまで追跡する大規模な疫学調査である。調査で得られた生体試料は長期的に保存し、将来的な調査研究にも備える。

この調査は、環境省の企画立案の下に、国立環境研究所がコアセンターとして実施機関となり、国立成育医療研究センターがメディカルサポートセンターとしての医学的支援を行いつつ、全国15地域の大学等によるユニットセンターと協力して実施する。調査期間は、リクルート期間(3年間)と追跡期間(13年間)として、2011(平成23)年1月から2027(平成39)年までを予定している。

エコチル調査を実施することで、子どもの発育や発達に影響を与える化学物質等の環境要因が明らかになることから、子ども特有のばく露や子どもの脆弱性を考慮した適正な環境リスク評価・リスク管理を行うことが可能となる。さらには、安全・安心な子育て環境の実現・少子化対策にも資するものである。

第2-2-9図 エコチル調査について

前の項目 次の項目 目次へ
内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)