少子化対策

第3節 「子ども・子育て新システム」の概要

子どもは社会の希望、未来を作る力であり、安心して子どもを産み、育てることのできる社会の実現は日本社会全体で取り組まなければならない最重要課題の一つである。

現在、子どもや子育てをめぐる環境の現実は厳しく、核家族化や地域のつながりの希薄化によって、子育てに不安や孤立感を覚える家庭は少なくない。また、多くの待機児童が生じている地域もあることや、本格的な人口減少社会が到来したことも踏まえ、国や地域を挙げて、子ども・子育てへの支援を強化していかなければならない。

全ての子どもに良質な成育環境を保障し、子ども・子育て家庭を社会全体で支援するため、幼保一体化を含め、子ども・子育て支援関連の制度・財源を一元化して新しい仕組みを構築し、質の高い学校教育・保育の一体的な提供、保育の量的拡大、家庭における養育支援の充実を図ることが求められている。

こうした状況を踏まえ、子ども・子育て支援関連の制度・財源・給付を一元化するとともに、制度の実施主体を市町村(基礎自治体)とし、国・都道府県等が制度の実施を重層的に支える一元的な制度として、「子ども・子育て新システム」(以下、「新システム」という。)を構築するものである。

新システムは、人生前半の社会保障を強化するものとして、社会保障・税一体改革の柱となるものであり、少子高齢化などの社会状況の変化を踏まえ、現在の社会保障制度について、「子ども・子育て支援」などを中心に未来への投資という性格を強めること等により、「全世代対応型」の社会保障制度に改革することを目指すものである。

平成24年通常国会に提出した法案に基づき構築を図る新システムの概要は以下の通りである。

第1-1-4図 子ども・子育て新システムの具体的内容(ポイント)

1 市町村、都道府県、国の役割について

市町村は、新システムの実施主体としての役割を担う。そのため、市町村は、潜在ニーズも含めた地域での子ども・子育てに係るニーズを把握した上で、管内における新システムの給付・事業の需要見込量、提供体制の確保の内容及びその実施時期等を盛り込んだ「市町村子ども・子育て支援事業計画」を策定し、その計画をもとに給付・事業を実施することとしている。

都道府県は、「都道府県子ども・子育て支援事業支援計画」を策定し、広域自治体として、新システムの給付・事業が健全かつ円滑に運営されるよう、必要な助言・援助を行うとともに、子ども・子育て支援施策のうち、特に専門性が高い施策及び広域的な対応が必要な施策等を行う。

また、市町村子ども・子育て支援事業計画及び都道府県子ども・子育て支援事業支援計画の策定に当たっては、関係当事者の参画の仕組みとして、合議体の設置など子ども・子育て支援の当事者等の意見を反映させるよう必要な措置を講ずる。

国は、新システムの制度設計、市町村に対する交付金の交付、「基本指針」の策定等、新システムの給付・事業が健全かつ円滑に運営されるよう、必要な措置を講ずる。

2 給付設計

新システムの給付・事業は以下の通りであり、市町村が実施する。

(子ども・子育て支援給付)

・こども園給付…指定を受けたこども園(総合こども園、幼稚園、保育所、客観的な基準を満たした施設)の利用者に対する給付

・地域型保育給付…指定を受けた地域型保育事業(小規模保育、家庭的保育等)の利用者に対する給付

・児童手当

(地域子ども・子育て支援事業)

・地域子育て支援拠点事業、一時預かり、乳児家庭全戸訪問事業 等(対象事業の範囲は法定)

・延長保育事業、病児・病後児保育事業

・放課後児童クラブ

・妊婦健診

3 幼保一体化

1)基本的考え方

新システムでは、すべての子どもの健やかな育ちと、結婚・出産・子育ての希望がかなう社会を実現するため、<1>質の高い幼児期の学校教育・保育の一体的提供、<2>保育の量的拡大、<3>家庭における養育支援の充実の三点を目的とする幼保一体化を推進することとしており、具体的には、以下の給付システムの一体化と施設の一体化を行う。

(1)給付システムの一体化

・市町村が、地域における学校教育・保育の需要を始め、子ども・子育てに係る需要の見込み及び提供体制の確保について市町村子ども・子育て支援事業計画を策定し、地域における学校教育・保育を計画的に整備する

・指定制度を導入し、質の確保のための客観的基準を満たした施設や事業者について指定を行い公的財政措置の対象とすることにより、多様な事業主体の保育事業の参入を促進し、質の確保された保育の量的拡大を図る

・学校教育・保育に係る給付を一体化したこども園給付を創設し、学校教育・保育に関する財政措置に関する二重行政の解消及び公平性の確保を図る

(2)施設の一体化

・学校教育・保育及び家庭における養育支援を一体的に提供する総合こども園を創設する

2)指定制度の導入

新システムでは指定制度を導入し、質の確保のための客観的な基準を満たすことを要件に、認可外施設を含めて参入を認め、株式会社、NPO等の多様な事業主体の参入を認める。これにより、保育の量的拡大を図るとともに、あらかじめ市町村が質が確保されていることを確認したメニューの中から利用者がニーズに応じて多様な施設や事業を選択できる仕組みとする。指定については、現行の幼稚園・保育所等の基準を基礎として、人員配置基準・面積基準等、客観的な基準を定め、適合すれば原則として指定を行うことで透明性を確保する。

施設・事業については継続的な運営を基本とするが、やむを得ず撤退する場合には3ヶ月以上の予告期間を設けて指定辞退の事前届出を行わせ、利用している児童が他の施設等で継続的に必要な教育・保育が提供されるようにするための調整義務を施設・事業者に課すこととする。また、質の確保の観点から、指定については5年ごとに更新する。

指定制度においては、指定基準を満たす施設については、すべて指定するが、市町村が策定する市町村子ども・子育て支援事業計画における需要見込み量を超えた供給がなされている場合など、施設数が過大となっている場合には新規の指定や更新を行わないことができる仕組みとする。

3)こども園給付の創設

総合こども園、幼稚園、保育所、それ以外の客観的な基準を満たした施設について、こども園として指定を行い、学校教育・保育に係る給付を一体化したこども園給付の対象とする。

こども園の指定基準については、国が定める基準を踏まえ、指定権限を有する市町村が定めることとする。

こども園給付の給付構成としては

・満3歳以上の幼児に対する標準的な教育時間及び保護者の就労時間等に応じた保育に対応する給付

・満3歳未満児の保護者の就労時間等に応じた保育に対応する給付

とし、質の確保・向上が図られた学校教育・保育を提供するために必要な水準の給付をすべての子どもに保障するため、公定価格とする。公定価格の具体的な設定については、制度の施行までに検討を行う。

4)地域型保育給付の創設

こども園の利用者を対象とするこども園給付に加え、以下の保育事業を地域型保育事業として、この利用者を地域型保育給付の対象とし、多様な施設や事業の中から利用者が選択できる仕組みとする。

・小規模保育(利用定員6人以上19人以下)

・家庭的保育(利用定員5人以下)

・居宅訪問型保育

・事業所内保育(その事業所の従業員の子どもに保育を提供するほか、地域において保育を必要とする子どもにも保育を提供)

これは待機児童が都市部に集中し、また待機児童の大半が満3歳未満の児童であることを踏まえ、小規模保育等の量的拡充により待機児童の解消を図るとともに、一般市町村においても、放課後児童クラブ、地域子育て支援拠点、一時預かりなどを併設することにより、地域の多様なニーズに対応が可能となる。また郡部などの人口減少地域などでも、地域コミュニティの子育て支援の拠点の維持・確保にもつながる。

5)総合こども園の創設

幼保一体化のうち施設の一体化として、学校教育・保育及び家庭における養育支援を一体的に提供する総合こども園を創設する。総合こども園には法律上の学校及び児童福祉施設の位置付けを付与し、学校としての基準(学級担任制、面積基準等)と児童福祉施設としての基準(人員配置基準、給食の実施等)を併せ持つ基準を適用することで、質の高い学校教育・保育を保障することとし、その具体的制度設計については、現行の幼稚園制度及び保育所制度の双方に求められる質の水準を基本とする。

また、総合こども園における指導・援助の要領として「総合こども園保育要領」を定める。

総合こども園においては、

<1>満3歳以上児の受入れを義務付け、標準的な教育時間の学校教育をすべての子どもに保障する。また、保育を必要とする子どもには、学校教育の保障に加え、保護者の就労時間等に応じて保育を保障する

<2>保育を必要とする満3歳未満児については、保護者の就労時間等に応じて保育を保障する

こととする。なお、満3歳未満児の受入れは義務付けないが、財政措置の一体化等により、満3歳未満児の受入れを含め、幼稚園及び保育所等の総合こども園への移行を促進する。

また現行の保育所(満3歳未満児のみを保育するいわゆる乳児保育所を除く。)については、小学校就学前のすべての子どもに学校教育を保障する観点から、本格施行一定期間の後にすべて総合こども園に移行することとする。

6)行政が関与した利用手続き

こども園給付等については、保護者に対する個人給付を基礎とし、確実に学校教育・保育に要する費用に充てるため、市町村から施設・事業者に支払う法定代理受領を可能とする仕組みとする。

また、例外のない保育の保障の観点から、市町村が国の定める客観的基準に基づき、利用者の保育の必要性を認定する仕組みとする。

契約については、保育の必要性の認定を受けた子どもと受けない子どものいずれについても、市町村の関与の下、保護者が自ら施設を選択し、保護者が施設と契約する公的契約とするが、公的契約については、正当な理由がある場合を除き、施設に応諾義務を課す。

定員以上に応募がある場合は選考が必要となり、施設は、国が定める選考基準に基づき選考を行うものとする。なお、保育の必要性の認定を受けない子どもについての選考においては、施設の設置者が定める選考基準(選考方法)に基づき選考することを基本とする。

新システムでは保護者が選択した施設・事業者に利用を申し込むことを基本とするが、円滑な利用がなされるよう市町村が関与を行う。

具体的には、市町村が管内の施設・事業者の情報を整理し、子育て家庭に広く情報提供し、相談に対応し、必要な助言を行うことや、要保護児童、障害児等の特別な支援が必要な子どもなど、あっせん(市町村による、利用可能な施設との契約の補助)等による利用が必要と判断される場合には、市町村が、関係機関とも連携して利用調整を行い、利用可能な施設・事業者のあっせんを行うほか、必要に応じて、その施設・事業者に対して子どもの利用の要請を行う。

市町村は、計画的な基盤整備により保育需要が供給を上回る状態を解消する取組を強力に推進することが制度の前提であるが、当面の保育需要が供給を上回る場合の対応として、特別な支援が必要な子どもなど、優先利用の対象となる子どもについて、市町村が利用調整を行い、利用可能な施設・事業者をあっせん等を行うとともに、それ以外の子どもについては、保護者が市町村に利用希望を提出し、市町村が利用調整を行い、利用可能な施設・事業者をあっせん等する。

また、保育の利用が必要と判断されるにもかかわらず、保護者が進んで保育の利用をしない場合など、契約による利用が著しく困難と市町村が判断した場合には、その子どもについて、市町村が施設に対して措置する(措置による入所・利用)こととする。

新システムにおいては、現行の保護者が市町村と契約する仕組みから、保護者が施設と契約する仕組みへと変わるものの、利用者負担の確実な支払いが担保される必要性は従来と変わらないため、改正後の児童福祉法第二十四条に規定される市町村の責務も踏まえ、利用者負担の支払いに関して確実な支払いを担保する仕組みを設けることとする。

4 地域子ども・子育て支援事業

地域子ども・子育て支援事業は、子ども・子育て家庭等を対象とする事業として、市町村が地域の実情に応じて実施する以下の事業とする。また、対象事業の範囲は法定する。

<1>地域子育て支援拠点事業

<2>一時預かり

<3>乳児家庭全戸訪問事業

<4>養育支援訪問事業その他要支援児童、要保護児童等の支援に資する事業

<5>子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)

<6>子育て短期支援事業

<7>延長保育事業

<8>病児・病後児保育事業

<9>放課後児童クラブ

<10>妊婦健診

<11>実費徴収に係る補足給付を行う事業(仮称)

<12>多様な主体が新システムに参入することを促進するための事業

(例:特別支援教育に関する支援等)

地域子ども・子育て支援事業について、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施することとする。市町村は、市町村子ども・子育て支援事業計画で需要の見込み、提供体制の確保の内容及びその実施時期を記載し、提供体制を計画的に確保することとする。また、事業ごとに、質の確保を図る観点から、国は一律の基準を設定する。

すべての子ども・子育て家庭を対象としたこれらの事業の実施が必要であり、特に、地域子育て支援拠点事業については、地域の子育て資源に精通した「子育て支援コーディネーター」(仮称)を配置するなどにより、実施主体である市町村と当該事業者が連携し、個々の子育て家庭に身近な立場から、その事情に応じた、利用支援の役割を果たすものとする。

また、放課後児童クラブについては、小学校4年生以上も対象となることを明記し、4年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う。質を確保する観点から、職員の資格、員数、施設、開所日数・時間などについて、国は法令上の基準を新たに児童福祉法体系に設定する。

さらに、妊婦健診については、国は「健診回数・実施時期」及び「検査項目」について、乳幼児健診の取扱いや現行の事業実態を踏まえ、法令上の基準を新たに母子保健法体系に示すこととする。

5 社会的養護・障害児に対する支援について

市町村が実施する新システムの給付・事業は、社会的養護施策の要保護児童、障害児等を含め、地域の子ども・子育て家庭を対象とするものである。一方、都道府県は、社会的養護、障害等のニーズに対応する専門性が高い施策を引き続き担うこととし、市町村と都道府県の連携を確保する。そのため、相互の連携について市町村子ども・子育て支援事業計画、都道府県子ども・子育て支援事業支援計画に位置づける。

市町村は、要保護児童、障害児等を含め、地域における学校教育・保育の需要の見込み及び提供体制の確保の内容及びその実施時期を市町村子ども・子育て支援事業計画に明記することとする。また市町村による利用調整により、確実な利用を支援する仕組みを設ける。

さらに、虐待予防の観点から保育の利用が必要と判断される場合など、契約による利用が著しく困難と判断した場合において、市町村が措置による入所・利用を行うこととする。

6 子ども・子育て会議の設置

新システムにおける給付・事業を、子ども・子育て当事者のニーズに即したものとし、効果的かつ効率的に運用するため、地方公共団体、事業主代表・労働者代表、子育て当事者、子育て支援当事者等(子ども・子育て支援に関する事業に従事する者)、有識者が子育て支援の政策プロセス等に参画・関与できる仕組みとして、国に子ども・子育て会議を設置することとする。

また、地方公共団体においても同様の事務を所掌する合議体が設置できることとする。

7 新システムにおける費用負担等について

1)費用負担について

社会全体で子ども・子育て支援を支えるという観点から、社会全体により必要な費用を負担するとの考え方に立ち、国及び地方の負担、事業主からの拠出を求めることとする。

利用者負担については、すべての子どもに質の確保された学校教育・保育を保障するとの考え方を踏まえ、利用者の負担能力を勘案した応能負担を基本として定めることとする。

2)恒久財源の確保について

潜在ニーズを含む保育等の量的拡充は、最優先で実施すべき喫緊の課題である。また、これと併せて、職員配置の充実など必要な事項については、税制抜本改革による財源を基本としつつ、必要に応じそれ以外の財源を含め、国・地方を通じた恒久的な財源を確保しながら実施することとする。

このための追加所要額は、潜在ニーズを含む保育等の量的拡充と、職員配置の充実などの質の改善を合わせて1兆円超と見込まれる。

この財源については、税制抜本改革によって0.7兆円程度、税制抜本改革以外の財源も含めて1兆円超程度の措置を今後検討することとされている。

8 国の所管及び組織体制について

子ども・子育て支援法案における事務については、内閣総理大臣が主たる責任を有し、企画立案から執行までを一元的に内閣府において所管する。

総合こども園は、子ども・子育て支援法案を所管することとなる内閣府で所管するが、総合こども園は学校及び児童福祉施設としての性格を併せ持つため、その限りにおいて文部科学省、厚生労働省の所管は残ることから、事務の内容に応じて、両省と調整を図ることとする。

また、省庁再編の際に実現を目指す子ども家庭省(仮称)の基盤となる組織体制として、当面、子ども・子育て施策の中核的役割を担うこととなる内閣府に、子ども・子育て支援法案及び総合こども園法案における権限を、内閣府特命担当大臣の下で、適切に実施するため「子ども・子育て本部」を設置し、新システムの一元的な実施体制を担保することを目的として、法律上の総合調整権限を持たせる。

9 新システムの施行について

新システムは、恒久財源を得て本格実施を行うこととしており、具体的な施行期日については、新システムに関する法案と同日に閣議決定され国会に提出された税制抜本改革に関する法案による消費税の引き上げの時期等を踏まえ政令で定めることとしている。また法案成立後、2013(平成25)年度を目途に、子ども・子育て会議や国の基本指針など可能なものから段階的に実施するとともに、地方公共団体を始めとする関係者とも丁寧に意見交換を行い、円滑な施行に向けた準備を行うこととする。

一方で、現在の社会保障制度は、現在でも全体として給付に見合う負担を確保できておらず、今後、人口構成の変化が一層進んでいく社会にあっても、社会保障を持続可能なもとするために、給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心というという現在の社会保障制度を見直し、給付・負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間・世代内の公平が確保された制度へと改革していくことが必要である。また、今後は、給付面で子ども・子育て支援などを中心に未来への投資という性格を強め、全世代対応型の制度としていくとともに、負担面で年齢を問わず負担能力に応じた負担を求めていくなど、制度を支える基盤を強化していくことが必要である。 そのためには、国民すべてが人生様々な段階で受益者となり得る社会保障を支える経費は国民全体で分かち合わなければならない。社会保障の安定財源確保と財政健全化は、財政赤字や債務残高の増大による、企業の資金調達や設備投資への圧迫や、将来の社会保障などへの不安を通じた家計の消費の抑制などといった成長の阻害要因を減少させ、人々が安心して消費や経済活動を行うことを可能とし、新たな成長の基盤を築く意義を有する。 このような社会保障改革で目指すべき社会は、制度が出産・子育てを含めた生き方や働き方に中立的で選択できる社会、子どもが家族や社会と関わり良質な環境の中でしっかりと育つ社会などである。

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