少子化対策

目次]  [戻る]  [次へ

第2章 少子化対策の取組

第3節 少子化危機突破のための緊急対策【特集】

これからの若い世代が家族を形成し、子育てに伴う喜びを実感できると同時に子どもたちにとってもより良い社会を実現するため、結婚・妊娠・出産・育児における課題の解消を目指すとともに、家族を中心に置きつつ、地域全体で子育てを支援していく取組の推進等について検討を行うため、2013(平成25)年3月に内閣府特命担当大臣(少子化対策)の下に、「少子化危機突破タスクフォース」(以下「タスクフォース」という。)が設置された。タスクフォースにおいては、家族形成に関する国民の希望が叶えられない阻害要因の解消方策や、家庭と地域における子育ての向上に向けた支援の在り方等に関する議論が行われ、同年5月28日には、「『少子化危機突破』のための提案」がとりまとめられ、この提案をもとに、同年6月7日には、少子化社会対策会議において「少子化危機突破のための緊急対策」が決定された。

「少子化危機突破のための緊急対策」の内容については、以下のとおりである。


少子化危機突破のための緊急対策

平成25年6月7日
少子化社会対策会議決定

I. はじめに

1.我が国は、社会経済の根幹を揺るがしかねない「少子化危機」とも言うべき状況に直面している。

○ 少子化社会の問題は、結婚や妊娠、出生など個人の考え方や価値観に関わる問題であり、個人の自由な選択が最優先されることは言うまでもない。一方で、少子化等による人口構造の変化は、我が国の社会経済システムにも深く関係する問題であり、直接的には年金、医療、介護に係る経費など社会保障費用の増大を招くとともに、経済成長への深刻な影響も懸念されるという点で、社会的課題であるということを念頭に置いた対策が必要である。

2.少子化対策を「新たなステージ」へ高める観点から、『少子化危機突破のための緊急対策』に早急に取り組む必要がある。

○ 現在も多くの若者が、将来家庭を持つことを望み、希望する子どもの数は平均2人以上となっている。しかしながら、晩婚化が進むとともに、生涯未婚率が上昇しており、また、合計特殊出生率も1.41(2012)と、結婚や妊娠・出産に対する国民の希望を叶えることができていない。こうした国民の希望を叶える観点から、少子化対策は、政府をはじめ関係者あげて取り組まなければならない国民的な課題である。

○ 一方で、政府はこれまでも少子化対策に継続的に取り組んできたが、少子化の進行に十分に歯止めがかかっているとはいえない。

  • いわゆる「団塊ジュニア世代」による「第3次ベビーブーム」は到来せず、「出生数」の減少傾向が続いている。
  • 「合計特殊出生率」は1.26(2005年)から1.41(2012年)まで上昇したが、先進国の中でも低い水準である。しかも、このまま上昇傾向が続くかどうかも不透明である。
  • 晩婚化が進むとともに、生涯未婚率は上昇している。

○ フランスやスウェーデンの例のように、総合的な政策の充実・強化によって、個人の価値観や選択を前提としながら出生率を反転させ、少子化傾向に歯止めをかけることも可能であると考えられる。

○ こうしたことから、従来の取組の成果と課題、地域の実情やニーズを踏まえ、少子化対策の重要性に関して国民的な認識の醸成に努めつつ、「少子化危機」を克服するために少子化対策を「新たなステージ」に高める観点から、『少子化危機突破のための緊急対策』に取り組むことが強く求められている。


II. 基本方針

○ これまでの少子化対策は、「子育て支援」と「働き方改革」を中心に取り組んできており、『子ども・子育て関連3法』の成立や『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章』の策定などを進めてきたが、待機児童解消や、長時間労働の抑制等をはじめとして更なる強化が必要となっている。
一方、個人の希望の実現という点で政策ニーズが高く、出生率への影響も大きいとされている「結婚・妊娠・出産」に係る課題については、これまでの取組は弱いのが現状である。

【緊急対策の柱―「3本の矢」で推進】

○ このため、『少子化危機突破のための緊急対策』として、

<1> 「子育て支援」と<2> 「働き方改革」をより一層強化するとともに、

<3> 「結婚・妊娠・出産支援」を対策の柱として打ち出すことにより、これらを『3本の矢』として推進する。


【対策の狙いー支援を「新たなステージ」に】

○ こうした対策をパッケージとして進めることにより、

<1> 結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目ない支援」、

<2> 「第1子・2子・3子以降」のそれぞれに対応した支援

の総合的な政策の充実・強化を目指す。


【対策成功のカギ】

○ 上記の取組にあたっては、当事者だけでなく、家族・地域・職場が積極的に支援していく環境づくりが重要である。このため、

<1> 国民への情報発信と政府による着実な施策実行、

<2> 地域や職場の取組に対する社会的な支援、

<3> 子どもたちやシニア世代の「祖父母力」など幅広い年齢層の参加促進

を進めていく。


III.緊急対策の柱―「3本の矢」で推進

1.「子育て支援」の強化

(1)「子ども・子育て支援新制度」の円滑な施行

○ 我が国の「子育て支援」は、平成24年に「子ども・子育て関連3法」が成立し、大きな転機を迎えた。この画期的な新制度を着実かつ円滑に施行するため、25年4月に「子ども・子育て会議」を設置し、検討を開始したところであるが、地域における幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実を図り、地域の実情に応じて、子育て支援が総合的に推進できる体制を整備する。

(2)「待機児童解消加速化プラン」の推進

○ 「子育て支援」において緊急的に取り組むべき課題として、都市部を中心とする「待機児童問題」がある。この問題解消のため、子ども・子育て支援新制度の施行を待たずに前倒しで、地方自治体に対し、できる限りの支援策を25年度からスタートさせ、待機児童解消の「加速化」を図る。これにより、「緊急集中取組期間」(平成25・26年度)に約20万人分の保育を整備し、「取組加速期間」(平成27~29年度)に更に整備を進め、上記と合わせて、潜在的なニーズも含め約40万人分の保育の受け皿を確保する。その際には、株式会社を含む多様な主体でスピード感をもった施設整備を推進する。

(3)多子世帯への支援

○ 多子世帯特に3子以上世帯に対しては、子育てにかかる費用負担の軽減を図る観点から、現在講じられている保護者負担における特例措置などの支援はもとより、様々な支援を展開していくことが重要である。

(4)地域・職場の「子育て支援ネットワーク」

○ 地域や職場における子育て支援を推進するとともに、親同士の交流や世代間交流を促すため、スポーツや文化芸術等を基盤とした「子育て支援のためのネットワークづくり」や、「企業・NPO等の連携による子育て支援事業」、企業・店舗等が参加する「子育て支援のためのパスポート事業」の推進、地域コミュニティの子育て支援の拠点の確保、事業所内(大学・病院等を含む)の保育等の支援を推進する。

○ また、障害のある子どものライフステージに応じた一貫した支援、児童虐待に対する相談・支援体制の強化等、社会的養護が必要な子どもに対する里親委託やファミリーホームの推進、児童養護施設等の小規模化等による家庭的養護の推進や自立支援の推進等により、特に支援が必要な子どもが健やかに育つ環境づくりを進める。

2.「働き方改革」の強化

(1)子育てと仕事の「両立支援」

○ 男女が子育てをしながら仕事の責任を果たすことが可能になるよう、長時間労働の抑制やテレワークの活用等による働き方の柔軟化などの働き方改革を強力に進める必要がある。また、現行育児・介護休業法の趣旨の徹底化を図り、子どもが3歳になるまでは、希望する場合には、男女とも育児休業や短時間勤務を取得しやすいよう、企業における環境整備を働きかける。パートタイマーなど非正規労働者も育児休業を取れるよう職場環境づくりを進める。

(2)中小企業の両立支援促進

○ 仕事と子育ての両立の取組を促進するために、両立支援の取組を行うことに課題が多い中小企業への配慮等が重要であり、育児休業取得後の円滑な職場復帰支援として、「育休復帰支援プラン(仮称)」の策定等を行うとともに、育児休業者の代替要員確保のための助成を行う。さらに、中小企業における仕事と子育ての両立支援の好事例を普及し、企業の実情に応じた取組を促す。

(3)企業による「女性登用」の促進

○ 女性が子育てをしながら活躍して働くことができる環境整備という観点から、個別企業における役員・管理職等への女性の登用や登用状況の情報開示に向けた働きかけを行う。全上場企業において、まずは、役員に一人は女性を登用するよう働きかけている。

(4)ロールモデル等の普及

○ 女性がキャリア形成をしていく上で、身近にロールモデル(キャリア形成での目標となる社員)やメンター(女性社員の相談・サポートをする社員)がいることは大きな支えとなることから、企業におけるロールモデルやメンターの普及を図るとともに、女性就労者に対する教育訓練機会の拡充を促す。

(5)男性の働き方の見直し

○ 子育て期をはじめとして男性の働き方の見直しや意識改革も進めていく必要があり、仕事と子育ての両立支援のほか、長時間労働の抑制や多様で柔軟な働き方の促進等のワーク・ライフ・バランス施策を推進する。

3.結婚・妊娠・出産支援

(1)結婚・妊娠・出産支援の「全国展開」

○ 結婚を希望する者が結婚できるように、若者の経済面における安定の確保に向け、自立に向けた支援、正規雇用化やキャリア形成等の支援に引き続き取り組むとともに、新婚世帯に対する経済面などの支援措置を検討する。また、地域や職場における取組を推進するため、全国レベルでの結婚・妊娠・出産支援に関する情報共有や、先進的な事例等に対する表彰を行う。

○ 中学生及び高校生等が乳幼児と出会い、ふれあう機会の推進や地域の青年活動の促進等を図る。

(2)妊娠・出産等に関する情報提供、啓発普及

○ 妊娠・出産等について、適切な時期に正確な情報提供を行い、啓発普及を図ることが重要である。このため、女性及び男性を対象にした多様な情報提供の充実を図る観点から、その提供する情報の内容・時期・方法等について専門的な検討を行う「情報提供・啓発普及のあり方に関する研究班」を設置し、具体的な施策を検討する。

(3)地域の「相談・支援拠点」づくり

○ 地域における相談支援拠点の体制充実を図るため、「女性健康支援センター」等について、電話・メール相談体制の充実(全国統一の番号、利用しやすい受付時間の設定等)を進め、利用者が相談しやすい環境を整える。また、相談支援拠点について全国統一番号の呼称等を分かりやすく覚えやすいものにするなど、周知を図るとともに、利用者がより気軽に利用できるようにする。

(4)「産後ケア」の強化

○ 産院退院後の悩みや孤立からもたらされる育児不安等は、第2子以降の出生行動に影響を与えうるといった指摘や、児童虐待の問題にも関わっているとの指摘がある。このため、退院後の母子にできる限り早期の接触を図り、必要な支援につなげることが必要である。具体的には、早期の電話相談等の充実を図る「産後早期ケア(産後3、4か月まで)」の強化や、産後ケアセンター等において休養(日帰り、宿泊)等を行う「産後レスパイト型事業」や、現在活動していない助産師等を活用した子どもの世話に関する相談に対応したり、シニア世代の活力である「祖父母力」を活用して、母親の話し相手や一緒に外出するなどの支援を行う「産後パートナー事業」をモデル事業として導入し、その成果を踏まえて対応を検討する。

(5)地域医療体制(産科・小児医療)の整備

○ 社会保障制度改革国民会議の議論を踏まえ、地域の産科・小児医療体制の整備のため、地域医療・医師確保に取り組む。

(6)不妊治療に対する支援

○ 不妊治療に対する支援の在り方について検討し、その結果を踏まえ支援を進める。

4.国民的な認識醸成と地域プランへの支援

(1)国民への情報発信と政府による着実な施策実行

○ 我が国が直面している「少子化危機」を突破し、結婚・妊娠・出産・育児をしやすい社会を作っていくには、これから結婚・妊娠・出産する世代や、現在子育て中の世代への支援の重要性に加え、地域や職場における認識を深めてもらうため、広く情報発信を強化していくことが重要である。特に、企業の経営者や自治体の首長の間で「少子化危機」に関する状況及び対策の必要性について認識を広め、少子化対策への積極的な参加を推進していくことが重要である。

○ また、こうした少子化対策の展開にあたっては、具体的な政策目標・スケジュール等を明確に示し、国民的な理解を得ながら着実に実行していくことが重要である。

(2)「地域・少子化危機突破プラン」の推進

○ 少子化対策においては、地域の実状に即した取組が重要である。このため、地方自治体が創意工夫した「地域・少子化危機突破プラン」を全国から公募し、その中からモデル的な取組を選定した上で、集中的にその取組を支援し、成果や課題について全国的に共有することにより、少子化対策の地域レベルでの取組を推進・加速化させる。

5.制度・財源面の対応

(1)子ども・子育て支援新制度等の財源確保

○ 「子ども・子育て支援新制度」の平成27年4月(予定)における円滑な施行を図るため、幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実を図るための財源として、消費税引き上げによる財源(0.7兆円)を含め1兆円超程度の確保に努める。

○ また、「子ども・子育て支援新制度」の円滑な施行を確保し、待機児童解消等を推進するため、平成26年度に「保育緊急確保事業」を実施する。

○ 地域において若者が経済面における安定性の確保ができる企業に雇用されるなどの環境が整備され、結婚、子育てができる社会を構築するため、「結婚・妊娠・出産支援」や「子育て支援」などの多様な取組に対して、安心こども基金等の活用も含めた財政的な支援について検討する。

(2)「次世代育成支援対策推進法」の延長・強化の検討

○ 平成26年度で期限切れとなる「次世代育成支援対策推進法」について、官民あげて「少子化危機突破」に向けた取組を推進する観点からも、その延長・強化を検討する。

中学生とあかちゃんのふれあい体験学習

愛知県豊田市役所が市内の中学校と共催で実施してきた「中学生とあかちゃんのふれあい体験」は、2012(平成24)年度で6年目となった。

中学生が乳児とふれあう体験を通して、子育ての喜びや命の尊さや家族の絆の大切さを感じ取り、親の役割を考える機会とし、将来親になるための準備教育として実施している。中学生と赤ちゃんがふれあえる体験は全国的にも数が少なく、貴重な体験の場となっている。

この事業は、地域と学校が連携して実施することで、地域の子育て環境づくりの推進を図ることを目的としており、当日はたくさんの地域の方にもボランティアとして参加してもらうことで、世代を越えた交流を通じて、地域ぐるみで子育てする基盤作りを進めることもねらいとしている。

事業の特色は、

  • 3年生全員が参加する体験学習として学校の授業の一環として位置づけられていること
  • 概ね1対1で実施するためより高い効果が得られること
  • 母子保健推進員、保護者、大学生(中学校によっては、民生児童委員、老人クラブ)などの地域ボランティアも乳児と同数程度参加し、地域の子育て環境づくりの推進に繋がっていること

などが挙げられる。

事業の内容については、各学校と話し合い決定するが、当日に向けて、乳幼児の成長、体の発達、へその緒の話、命の重さ、乳児に関する学習、当日の注意点、赤ちゃんの抱き方等や、ビデオ鑑賞、自分史作成などの事前授業を行い、当日は抱っこ、おんぶ、遊びなどのふれあい体験を行っている。また、終了後には中学生からお母さんたちへの礼状(メッセージカード等)の作成などを行い、交流を図っている。

中学生とあかちゃんのふれあい体験学習の様子

ふれあい体験の時間中は会場のあちこちから終始、中学生たちの赤ちゃんに対する「かわいい」という声が聞こえていた。お母さんだけでなく、お父さんが来ていたり、夫婦で参加している人も多かった。参加した中学生全員が抱っことおんぶを体験するが、赤ちゃんに泣かれてしまい、戸惑う中学生もいれば、あやし方がうまくて赤ちゃんを寝かせつけてしまう中学生もいた。

中学生からは「抱っこしたけど泣かれてしまって残念でした」、「抱っこしたら重くて、下にずり落ちそうになってびっくりしました」、「赤ちゃん欲しいとも思ったけれど、同時に大変だなとも思いました」などの声が聞かれ、お母さんからは「中学生が周りにいないので、いい機会だと思って参加しました。自分の子も15年経つとこうなるのかなと想像することができました」などの声が聞かれた。

こういった体験は、中学生だけでなく、参加した親にとっても、親になるということや、命の重さや大切さを実感させられるきっかけとなっている。

核家族化などの影響で、わが子を授かって初めて、赤ちゃんを抱いたり、おむつを替えたりするという人も少なくなく、子育てに対する知識・経験不足が、子育てに対する不安感を高め、虐待へつながる恐れもある。こうした豊田市の取組をはじめとする「赤ちゃんとのふれあい体験」は今後一層の広がりが期待されるが、こうした事業に協力をしてくれる親子の協力が必須であり、親子が安心して協力できるよう、学校との橋渡し役を養成することが必要であると指摘されている。東京成徳短期大学寺田教授が代表を務める「ハートフルママ」では、赤ちゃんとのふれあい体験の普及に長年取り組んでいるが、2年前から品川区との共催により、橋渡し役を担うファシリテータの養成活動にも取り組んでおり、今後こうした事業が一層広がることが期待される。

目次]  [戻る]  [次へ
内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)