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少子化対策

第2部 少子化社会対策の具体的実施状況(第2章 第1節 5)

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第2章 きめ細かな少子化対策の推進(第1節 5)

第1節 結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じた支援(5)

5 教育

キャリア教育の推進

若者のライフプランニングを支援するため、高校生が進路選択に当たって、就職のみならず結婚、出産、育児などのライフイベントを踏まえた生活の在り方についても総合的に考えることができるよう、調査研究を踏まえ教材を作成し、ライフデザイン構築のための学びを推進している。

「ニッポン一億総活躍プラン」においては、ライフプランニング、キャリア形成支援として、高校生に対し、自分の職業や家庭、将来について実践的に考える機会を提供するため、実践的教材を用いた学習の実施や、乳幼児触れ合い体験等の体験交流活動の強化に取り組むこととされた。これを受け、内閣府、文部科学省及び厚生労働省が連携して取組を進めることとした。高校生が進路選択に当たって、就職のみならず結婚、出産、育児などのライフイベントを踏まえた生活の在り方についても総合的に考えることができるよう、文部科学省において教材の作成に向けた調査研究を実施し、それらを踏まえ、3府省において教材の内容の検討を行うとともに、地方公共団体に対し、乳幼児触れ合い体験の推進について周知を行った。

学校教育段階からの妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識の教育

高等学校の保健体育の啓発教材「健康な生活を送るために」の改訂にあたり、個人が将来のライフデザインを描けるようにするため、その前提となる、妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識等について盛り込んでいる1


1 http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/08111805.htm

性に関する科学的な知識の普及

生涯を通じた女性の健康支援事業では、保健所、市町村保健センター等において、妊娠、避妊や性感染症を含めた女性の心身の健康に関する相談指導のほか、女性のライフステージに応じた健康教育等を実施している。

また、性感染症に関する特定感染症予防指針においては、性感染症は、10代半ばから20代にかけての若年層における発生の割合が高いことから、性感染症から自分の身体を守るための正確な情報提供を適切な媒体を用いて行うことで、広く理解を得ることが重要であり、保健所等が行う健康教育にあっては、教育関係者及び保護者等と十分に連携し、学校における教育と連動した普及啓発を行うこととしている。

さらに、学習指導要領においては、学校における性に関する指導は、児童生徒の発達の段階に応じて性に関する科学的な知識を理解させるとともに、生命の尊重や自己及び他者の個性を尊重し、相手を思いやり、望ましい人間関係を構築するなど、適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており、体育科、保健体育科、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしている。なお、指導に当たっては、児童生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮すること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに配慮することが大切である。

政府においては、学校において適切な性に関する指導が実施されるよう、各地域における指導者養成と普及を目的とした研修会等を行ったところである。

妊娠や家庭・家族の役割に関する教育・啓発普及

学習指導要領においては、学校における性に関する指導として、児童生徒が妊娠、出産などに関する知識を確実に身に付け、適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており、これに基づき保健体育科を中心に学校教育活動全体を通して指導が行われている。

また、児童生徒に、家族の一員として家庭生活を大切にする心情を育むことや、子育てや心の安らぎなどの家庭の機能を理解させるとともに、これからの生活を展望し、課題をもって主体的によりよい生活を工夫できる能力と態度を身に付けさせることが重要である。このため、小学校、中学校、高等学校において、発達の段階を踏まえ、関連の深い教科を中心に、家庭・家族の役割への理解を深める教育がなされている。

2017(平成29)年3月に改訂した、小・中学校学習指導要領においては、例えば、小学校家庭科では、家庭生活が家族の協力によって営まれていることや、中学校技術・家庭科では、家族や地域の人々と協力・協働して家庭生活を営む必要があることや、介護など高齢者との関わり方について理解することなどについて、教育内容の充実が図られたところである。なお、高等学校の学習指導要領については、2017(平成29)年度中に改訂を予定しているところである。

・乳幼児と触れ合う機会の提供

乳幼児と接する機会の少ない中学生、高校生等が、乳幼児と出会い、触れ合うことは、他者への関心や共感能力を高め、乳幼児を身近な存在として意識し、愛着の感情を醸成している。

・学校・家庭・地域における取組の推進

将来の親となる世代が子供や家庭について考え、子供とともに育つ機会を提供するとともに、国民一人ひとりが家庭や子育ての意義について理解を深められるようにすることが重要である。学校教育においては、子供たちに乳幼児との触れ合いの機会を提供し、将来親となった際に必要となる子育ての態度を育てるとともに、少子化とそれがもたらす社会への影響、子育てや男女が協力して家庭を築くことの大切さなどについても理解を深めさせることが重要である。

このため、小学校、中学校、高等学校の各学校段階で、関係教科、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動等において相互の連携を図りながら子育てへの理解を深める教育が実施されている。

また、道徳教育用教材「私たちの道徳」の活用を推進するとともに、「特別の教科 道徳」の新設等を通して、道徳教育の一層の推進を図っている。家庭や地域における取組としては、夫婦で共同して子育てをすることの大切さや命の大切さなどについて、保護者が理解を深められるよう、地域が主体的に実施する家庭教育に関する取組を支援している。

トピックス:小さな子供と触れ合う機会をつくる

生徒が緊張しながら小さな子供を抱っこし、お母さんの話に耳を傾ける―「乳幼児触れ合い体験」の取組が地方公共団体において行われている。

中学生や高校生を対象とした意識調査によると、小さな子供(小学校に入る前の乳幼児)と「触れ合う機会はない」と回答した生徒の割合は、72.7%となっており1、高校生に限ると、82.2%と高い水準になっている。触れ合う機会としては、中高生全体で「学校の授業や行事」との回答が10.3%で最も多く、「親戚の子供と遊んだり、世話をしている」の8.9%を上回っている。23

「乳幼児触れ合い体験」は、少子化や核家族化が進行する中、自分と異なる世代と接する機会が少なくなっている中学生や高校生が小さい子供と触れ合える貴重な機会となっている。


1 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(2014)「子育て支援策等に関する調査2014(中高生の意識調査)」より。なお、同報告書では、2003年に実施された前回調査では、66.1%と報告されている。

2 前回調査では、「学校の授業や行事」(9.5%)、「親戚の子どもと遊んだり、世話をしている」(14.4%)と報告されている。

3 ほかの選択肢は、「町内会や子ども会の活動」(6.3%)、「近所の子どもと遊んだり、世話をしている」(5.1%)、「子どもを含めたサークルやボランティア活動」(3.4%)と報告されている。

【県内全域の高校で実施するための体制を構築】~石川県~

石川県では、高校生を対象として、2013(平成25)年度から乳幼児触れ合い体験「親子交流授業」を実施している。初年度の実施は5校であったが、学校の理解を得ながら実施校数を拡大し、2016(平成28)年度には23校で行われた。取組を進める中で、<1>効率的かつ効果的なプログラムの作成、<2>実施する学校側の体制構築、<3>参加する乳幼児親子の確保という3つの課題が浮かび上がったため、県は2015(平成27)年度に地域少子化対策強化交付金(現在の「地域少子化対策重点推進交付金」)を活用し、こうした課題の解決に取り組んだ。

上記<1>、<2>の課題については、公益財団法人いしかわ結婚・子育て支援財団が中心となり、NPO等子育て支援者や家庭科教諭、大学の研究者と協力して検討を行った。その結果を基に授業のプログラムを作成するとともに、県内各地域の子育て支援団体が授業を支援する体制を構築した。特に、<2>の課題については、実際に授業を担当する家庭科教諭とともに、家庭科の指導観点や教育現場での実情を踏まえた検討を行ったことにより、授業実施について学校から理解を得やすくなったという。

また、上記課題<3>についても同様に検討を行い、ウェブサイトから参加登録を行うことができるシステム「ファミリーバンク」を構築し、2016(平成28)年度から運用を開始している。この「ファミリーバンク」は、スマートフォンからも参加申込みができるなど、参加する乳幼児親子の利便性に配慮したものとなっている。また、実施する学校側からも、参加者への連絡等が簡単にできるようになり、事務的な負担が大きく軽減している。加えて、地域の子育て支援団体による呼びかけや口コミを通じた啓発活動も行っており、2016年度末時点で約300組の親子が「ファミリーバンク」に登録している。

親子交流授業の写真
「ファミリーバンク」ホームページイメージ図

【生徒と親子をつなぐファシリテーターを育成】~東京都品川区~

東京都品川区では、2008(平成20)年度から区内の小学校・中学校・高等学校において乳幼児触れ合い体験「赤ちゃんとのふれあい事業」を実施しており、2016(平成28)年度には14校で行われた。実施主体は、各地域の児童センター(区が地域ごとに設置する子育て支援施設)であり、地域の学校への本事業の周知及び協力依頼、授業時間の調整、当日の運営を担っている。また、参加する乳幼児親子の確保も行っており、日頃、児童センターを利用している親子に声をかけるなどして募集している。さらに、本事業の実施に合わせ、児童・生徒と乳幼児親子の交流が進むように、パイプ役となるファシリテーターを学校に派遣している。ファシリテーターは、どのように接したらよいか戸惑う児童・生徒に声をかけるなど、児童・生徒と乳幼児親子との交流をサポートしている。こうしたパイプ役がいることで、乳幼児親子も安心して参加することができている。

ファシリテーターを確保するため、区では広く地域の子育て経験者等から募集を行い、外部講師による養成講座や現場での実習を通じて、必要な知識とスキルを習得してもらう機会を設けている。こうしたファシリテーター養成の取組は2011(平成23)年度から行われており、2016(平成28)年度末時点のファシリテーター登録数は約70人にのぼる。

赤ちゃんとのふれあい事業の写真
ファシリテーター養成講座の写真

【子育て支援NPOと協力】~愛媛県砥部町~

愛媛県砥部町では、地域少子化対策強化交付金(現在の「地域少子化対策重点推進交付金」)を活用し、2015(平成27)年度から、町内に1校ずつある中学校・高等学校・大学において、乳幼児触れ合い体験「赤ちゃんふれあい体験事業」を実施している。実施主体は、町が企画提案型公募により選定した、砥部町で活動するNPO法人「とべ子育て支援団体ぽっかぽか」(以下「ぽっかぽか」という。)である。

「ぽっかぽか」は、町の主管課や児童館、保健師と協力して事業内容を企画し、学校とも調整を重ね、授業を運営している。参加する乳幼児親子の確保に当たっては、「ぽっかぽか」と地域の母親達とのネットワークを活用するとともに、SNSでの情報発信や口コミを通じた啓発活動を行い、参加を呼びかけている。また、協力する母親達からのアイデアを活かし、生徒と乳幼児親子との交流がうまく進まない場合に備えて、話題提供のためのコミュニケーションカード4を用意するなど、きめ細かい工夫も行っている。

このように地域を巻き込んだ取組を通じて、地域の親子向けイベントにボランティアとして参加する生徒が増えるなど、若者が地域の子育て支援にも関心を持つ機運が高まっている。

コミュニケーションカードを使って交流の写真
グループに分かれて交流の写真

4 話題となる項目が記載してあるカード。カードに書いてあることを質問したり答えたりすることで、互いに話しやすいように工夫している。

乳幼児触れ合い体験は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づく行動計画策定指針や、中学校・高等学校の学習指導要領にも記載されている。しかし、実施する側の負担の大きさや参加する乳幼児親子の確保の難しさなどから、全ての地域で行われているわけではないのが現状である。

紹介した事例から、乳幼児触れ合い体験を広め、継続していくためには、地方公共団体の関係部局同士が連携することはもとより、地域の子育て支援団体とも連携・協力し、地域を巻き込んだ実行体制をつくることが改めて重要であるといえる。

【乳幼児触れ合い体験の持つ意味】~自分の将来を考えるきっかけに~

赤ちゃんや小さい子供と触れ合う機会が多かった人は、そうでない人に比べて結婚意欲が高く、希望する子供の数が多い5

また、小学校の時までに近所の小さい子供と遊ぶなどの地域活動の経験が多かった人は、そうでない人に比べて結婚や子育ての願望が強いという調査結果6もあり、この調査を行った国立青少年教育振興機構青少年教育センター長の明石要一氏は「少子化対策のためには、子供の頃から友だちと遊ばせ、家族行事や地域活動7に参加させるなど、人間的な触れ合いを体験できる環境づくりも重要である」と提言している8

乳幼児触れ合い体験に参加した高校生からは、

「子供はすごく欲しいけど、不安も増した。命の大切さを改めて考えさせられた。何か勇気をもらった気もする。」

「自分が親になるなんて想像できないけど、今日あの場にいたママのように立派な親になりたいと思った。」

などの感想があったという。

生徒が、乳幼児と触れ合うだけでなくその親とも交流し、子育てや家庭等の話を聞くことが、自分の将来について考えるきっかけとなっていることがうかがえる。少子化や核家族化が進行する中、自分と異なる世代と接する機会が少なくなっている中学生や高校生等が小さい子供と触れ合う「乳幼児触れ合い体験」は、子供を産み育てることの意義を考え、親や家族、地域の果たす役割を理解する貴重な機会となっている。


5 国立社会保障・人口問題研究所(2016)「第15回出生動向基本調査」より。
参照URL http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/doukou15_gaiyo.asp

6 国立青少年教育振興機構「若者の結婚観・子育て観等に関する調査」(2017年)より。
参照URL http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/111/

7 ここでいう「地域活動」とは「近所の小さい子供と遊んであげたこと」、「バスや電車で体の不自由な人やお年寄りに席をゆずったこと」、「地域清掃に参加したこと」の3つを指す。

8 「若者の結婚観・子育て観等に関する調査報告書」(2017)より。

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