第1部 新しい少子化対策の推進 

(コラム)イギリスにおけるワーク・ライフ・バランスに関する企業の取組

(官民を挙げた仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)キャンペーン)
 イギリスでは、欧州諸国の中でも長時間労働であり、仕事と子育ての両立に対する公的な支援も遅れていたが、近年では官民をあげて仕事と生活の調和(ワーク・ライフバランス)に積極的に取り組んでいる。その特徴は、ワーク・ライフ・バランスの推進は、企業で働く従業員の生活の質を高めるだけでなく、企業にとっても競争力を高めて業績向上につながるという見方がされている点である。

(背景)
 イギリスの仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の取組は、1990年代半ば頃から大企業を中心に始められた。
 その背景としては、1990年代中頃から景気が拡大して労働需要が逼迫したため、企業は優秀な労働者の採用や従業員の定着を目的として、パートタイムやフレックスタイム、在宅勤務など、働く時間や場所に縛られない柔軟な働き方を導入するようになったことがあげられる。
 一方、労働者の側でも、共働き世帯が増加したことから、家事・育児と仕事を両立するため、柔軟な働き方に対するニーズが高まってきた。また、消費者ニーズの変化により、土・日曜日営業や24時間営業が広がってきたことも、柔軟な働き方を促進する要因となったと考えられる。

(企業にとってのメリット)
 企業に対してワーク・ライフ・バランス施策の導入が業績に与える影響について尋ねたところ、労使関係、従業員の労働意欲、従業員の定着、生産性といった項目で、「良い影響をもたらす」という回答が5割以上に上っている。
 ワーク・ライフ・バランス施策のコストを含めた費用対効果についても、「施策は費用対効果に優れている」との回答が66%に上っている。労働市場が逼迫する中、1人当たり採用コストは平均3,462ポンド(約66万円程度)もかかると指摘されており、支援策によって従業員の定着率が高まれば、こうしたコストが削減できると考えられている。

(政府の支援)
 仕事と生活の調和は、1人親の就業が可能になるなど、「福祉から就業へ」というブレア政権の基本方針に合致することから、イギリス政府でも2000(平成12)年3月より「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)キャンペーン」を開始した。
 同キャンペーンの中核に当たるのは、「チャレンジ基金(The Challenge Fund)プログラム」である。これは、ワーク・ライフ・バランス施策の導入を検討する経営者に対して、無料コンサルティングの機会を与える制度であり、企業は、専門家の力を借りることによって、個別企業の実情に合った最適なワーク・ライフ・バランス施策の導入を期待できる。「チャレンジ基金」には、2000年から2003(平成15)年にかけて1,150万ポンド(約22億円)の公的資金が投入され、448企業が支援を受け、120万人の従業員が影響を受けた。
 また、「先進事例紹介」として、チャレンジ基金プログラムを活用した企業から情報収集を行い、企業業績にも良い影響を与える形で仕事と生活の調和策を導入した具体的な事例や成功要因の情報提供を行うことで、ワーク・ライフ・バランス施策がビジネスにも有益であることを示し、企業の自主的な取組を促進し、長時間労働等の英国の労働文化を変えていこうとしている。

第1−4−13図 ワーク・ライフ・バランスの影響
第1-4-13図 ワーク・ライフ・バランスの影響

(仕事と生活の調和策と出生率との関係)
 さらに、仕事と生活の調和を下支えするための条件整備として、パートタイム労働における同一労働・同一賃金の義務づけ、出産休暇の延長、父親休暇の創設、児童給付の引き上げ、保育所の整備等、仕事と子育てを両立しやすい環境の整備のための総合的な対策も進められている。
 イギリスの仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の取組は、出生率の向上を直接の目的としているものではないが、近年のイギリスの合計特殊出生率の水準(1.7程度)をみると、仕事と子育てを両立しやすい環境の整備が、結果として出生率の向上に寄与しているのではないかとみられている。

 第4章 働き方の改革

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