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共生社会全般・その他の施策 >  「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」について >  企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説

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企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説


(1)本指針の対象や法的性格
 本指針は、あらゆる企業を対象として、反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応を定めたものであり、法的拘束力はない。
 したがって、本指針の内容を完全に実施しなかったからといって、直ちに、罰則等の何らかの不利益が、与えられるものではない。また、中小企業や零細企業においては、これらの内容を忠実に実施することは困難を伴うため、適宜、企業規模に応じて、指針の5つの基本原則を中心とした適切な対応をすることが大切である。
 なお、法的拘束力はないが、本指針策定後、例えば、取締役の善管注意義務の判断に際して、民事訴訟等の場において、本指針が参考にされることなどはあり得るものと考えている(例えば、東証一部上場のミシン等製造販売会社の取締役に対する損害賠償請求訴訟における最高裁判決(平成18年4月10日)が参考となる)。

(2)反社会的勢力との関係遮断を社内規則等に明文化する意義
 今日、反社会的勢力との関係遮断については、(社)日本経済団体連合会の「企業行動憲章」のほか、多くの企業が、当該企業の企業倫理規程の中に盛り込んでいる。
 かかる企業倫理規程は、従業員の倫理に期待し、従業員の自発的な適正処理を促すために有用であるものの、反社会的勢力への対応を、単に従業員の倫理の問題としてとらえると、企業内に、反社会的勢力の不当要求を問題化せず安易に解決しようとする者がいる場合に、反社会的勢力と直接に対峙する担当者が、相手方の不当要求と当該社内関係者の判断との間で板挟みになり、従業員の倫理だけでは処理しきれない問題に直面し、判断を誤らせるおそれがある。また、反社会的勢力への対応は、その性質上、企業の担当者が当該問題を企業にとって不名誉なことと受け取ったり、相手方に対する恐怖心を抱いたりすることから、適切に処理することに困難が伴う。
 そこで、反社会的勢力との関係遮断を更に確実なものとするため、反社会的勢力との関係遮断を、単なる倫理の問題としてとらえるのではなく、法令遵守に関わる重大な問題としてとらえ、外部専門機関と連携して、その助言・助力を得て法的に対応し、問題を解決することを手順化することが有効となる。
 そのためには、企業は、反社会的勢力との関係遮断を、内部統制システムの法令等遵守・リスク管理事項として明記するとともに、社内規則等の服務規程の中にも規定することが重要と考えられる。

(3)不当要求の二つの類型(接近型と攻撃型)
 反社会的勢力による不当要求の手口として、「接近型」と「攻撃型」の2種類があり、それぞれにおける対策は、次のとおりである。
1 接近型(反社会的勢力が、機関誌の購読要求、物品の購入要求、寄付金や賛助金の要求、下請け契約の要求を行うなど、「一方的なお願い」あるいは「勧誘」という形で近づいてくるもの)
→ 契約自由の原則に基づき、「当社としてはお断り申し上げます」「申し訳ありませんが、お断り申し上げます」等と理由を付けずに断ることが重要である。理由をつけることは、相手側に攻撃の口実を与えるのみであり、妥当ではない。
2 攻撃型(反社会的勢力が、企業のミスや役員のスキャンダルを攻撃材料として公開質問状を出したり、街宣車による街宣活動をしたりして金銭を要求する場合や、商品の欠陥や従業員の対応の悪さを材料としてクレームをつけ、金銭を要求する場合)
→ 反社会的勢力対応部署の要請を受けて、不祥事案を担当する部署が速やかに事実関係を調査する。仮に、反社会的勢力の指摘が虚偽であると判明した場合には、その旨を理由として不当要求を拒絶する。また、仮に真実であると判明した場合でも、不当要求自体は拒絶し、不祥事案の問題については、別途、当該事実関係の適切な開示や再発防止策の徹底等により対応する。

(4)反社会的勢力との一切の関係遮断
 反社会的勢力による被害を防止するためには、反社会的勢力であると完全に判明した段階のみならず、反社会的勢力であるとの疑いを生じた段階においても、関係遮断を図ることが大切である。
 勿論、実際の実務においては、反社会的勢力の疑いには濃淡があり、企業の対処方針としては、
1 直ちに契約等を解消する
2 契約等の解消に向けた措置を講じる
3 関心を持って継続的に相手を監視する(=将来における契約等の解消に備える)
などの対応が必要となると思われる。
 ただ、いずれにせよ、最終的に相手方が反社会的勢力であると合理的に判断される場合には、関係を解消することが大切である。
 なお、金融機関が行った融資等、取引の相手方が反社会的勢力であると判明した時点で、契約上、相手方に期限の利益がある場合、企業の対応としては、関係の解消までに一定の期間を要することもあるが、不当要求には毅然と対応しつつ、可能な限り速やかに関係を解消することが大切である。

(5)契約書及び取引約款における暴力団排除条項の意義
 暴力団を始めとする反社会的勢力が、その正体を隠して経済的取引の形で企業に接近し、取引関係に入った後で、不当要求やクレームの形で金品等を要求する手口がみられる。また、相手方が不当要求等を行わないとしても、暴力団の構成員又は暴力団と何らかのつながりのある者と契約関係を持つことは、暴力団との密接な交際や暴力団への利益供与の危険を伴うものである。
 こうした事態を回避するためには、企業が社内の標準として使用する契約書や取引約款に暴力団排除条項を盛り込むことが望ましい。
 本来、契約を結ぶまでの時点では、<契約自由の原則>に基づき、反社会的勢力との契約を、企業の総合的判断に基づいて拒絶することは自由である。また、契約関係に入ってからの時点においても、相手方が違法・不当な行為を行った場合や、事実に反することを告げた場合には、<信頼関係破壊の法理>の考え方を踏まえ、契約関係を解除することが適切である。
 したがって、暴力団排除条項の活用に当たっては、反社会的勢力であるかどうかという属性要件のみならず、反社会的勢力であることを隠して契約を締結することや、契約締結後違法・不当な行為を行うことという行為要件の双方を組み合わせることが適切であると考えられる。

(6)不実の告知に着目した契約解除
 暴力団排除条項と組み合わせることにより、有効な反社会的勢力の排除方策として不実の告知に着目した契約解除という考え方がある。
 これは、契約の相手方に対して、あらかじめ、「自分が反社会的勢力でない」ということの申告を求める条項を設けておくものである。
 この条項を設けることにより、
○ 相手方が反社会的勢力であると表明した場合には、暴力団排除条項に基づき、契約を締結しないことができる。
○ 相手方が反社会的勢力であることについて明確な回答をしない場合には、契約自由の原則に基づき、契約を締結しないことができる。
○ 相手方が反社会的勢力であることについて明確に否定した場合で、後に、その申告が虚偽であることが判明した場合には、暴力団排除条項及び虚偽の申告を理由として契約を解除することができる。

(7)反社会的勢力による株式取得への対応
 反社会的勢力が、企業の株式を取得した場合、株主の地位を悪用して企業に対して不当要求を行うおそれがあり、また、反社会的勢力が企業の経営権を支配した場合、他の株主、取引先、提携先、従業員等の犠牲の下、支配株主たる反社会的勢力のみの利益をはかるような経営が行われ、企業価値が不当に収奪されるおそれがある。そのため、反社会的勢力に企業の株式を取得されないように対策を講ずる必要がある。
 反社会的勢力による株式取得には、不当要求の手段として取得する場合や、買収・乗っ取りの手段として取得する場合があるが、これらに対抗するためには、まず前提として、株式を取得しようとする者が反社会的勢力であるか否かを判断することが重要であると考えられる。

(8)反社会的勢力の情報を集約したデータベースの構築
1 企業に対するアンケート調査結果について
 平成18年10月、全国暴力追放運動推進センターが行った「企業の内部統制システムと反社会的勢力との関係遮断に関するアンケート調査」によると、
<各業界ごとに、反社会的勢力に関する公開情報及び各企業からの情報を集約・蓄積し、加盟企業が情報照会を行うデータベースを構築すること>
について、その良否を質問したところ、「よいと思う」との回答が大部分(87%)を占めた。このアンケート結果を踏まえると、確かに
○ 情報共有の仕組みを構築するには、参加企業間に信頼関係が必要であること
○ 反社会的勢力排除の取組姿勢について、企業間に温度差があること
○ 民間企業の保有する情報には限界があること など、様々な実務的な検討課題があるものの、各業界団体ごとに反社会的勢力に関する情報データベースを構築することは、極めて有効な取組ではないかと考えられる。
2 不当要求情報管理機関について
 暴力団対策法は、不当要求情報に関する情報の収集及び事業者に対する当該情報の提供を業とする者として、「不当要求情報管理機関」という任意団体の仕組みを規定しており、現在、(1)財団法人競艇保安協会、(2)財団法人競馬保安協会、(3)社団法人警視庁管内特殊暴力防止対策連合会の3つが登録されている。
 また、警察庁、金融庁、日本証券業協会、東京証券取引所等による証券保安連絡会においては、証券会社間における反社会的勢力に関する情報の集約・共有を行うための証券版<不当要求情報管理機関(仮称)>の設置を検討中であり、今後、本指針の普及過程において、他の業界から証券業界と同様の要望があるならば、警察としては、証券保安連絡会における議論の推移を踏まえつつ、前向きに検討したいと考えている。

(9)警察署や暴力追放運動推進センターとの緊密な関係
 警察署の暴力担当課の担当者や、暴力追放運動推進センターの担当者と、暴排協議会等を通じて、平素から意思疎通を行い、反社会的勢力による不当要求が行われた有事の際に、躊躇することなく、連絡や相談ができるような人間関係を構築することが重要である。  また、暴力追放運動推進センターが行っている不当要求防止責任者に対する講習等を通じて、不当要求に対する対応要領等を把握することも重要である。

(10)警察からの暴力団情報の提供
 暴力団情報については、警察は厳格に管理する責任(守秘義務)を負っているが、国民を暴力団による不当な行為から守るとともに、社会から暴力団を排除するため、警察の保有する情報を活用することも必要である。
 そこで、警察庁においては、平成12年に、「暴力団排除等のための部外への情報提供について」(平成12年9月14日付 警察庁暴力団対策部長通達)において、暴力団情報の部外への提供についての判断の基準及び手続を定め、暴力団による犯罪等による被害の防止又は回復等の公益を実現するため適切に情報を提供するとともに、提供の是非の判断に当たっては組織としての対応を徹底している。
 本指針における反社会的勢力排除のための企業からの照会についても、上記の基準及び手続に即して、適正に対処するものである。

(11)個人情報保護法に則した反社会的勢力の情報の保有と共有
 企業が、反社会的勢力の不当要求に対して毅然と対処し、その被害を防止するためには、各企業において、自ら業務上取得した、あるいは他の事業者や暴力追放運動推進センター等から提供を受けた反社会的勢力の情報をデータベース化し、反社会的勢力による被害防止のために利用することが、極めて重要かつ必要である。
 反社会的勢力に関する個人情報を保有・利用することについては、事業者が個人情報保護法に違反することを懸念する論点があることから、本データベースを構成する反社会勢力の情報のうち個人情報に該当するものについて、反社会的勢力による被害防止という利用目的の下において、1取得段階2利用段階3提供段階4保有段階における個人情報の保護に関する法律(以下「法」という。)の適用についての基本的な考え方について整理すると、以下のとおりである。
1 取得段階
 事業者が、上記目的に利用するため反社会的勢力の個人情報を直接取得すること、又は事業者がデータベース化した反社会的勢力の個人情報を、上記目的に利用するため、他の事業者、暴力追放運動推進センター等から取得すること。
→ 利用目的を本人に通知することにより、従業員に危害が加えられる、事業者に不当要求等がなされる等のおそれがある場合、法18条4項1号(本人又は第三者の生命、身体又は財産その他の権利利益を害するおそれがある場合)及び2号(事業者の正当な権利又は利益を害するおそれがある場合)に該当し、本人に利用目的を通知または公表する必要はない。
2 利用段階
 事業者が、他の目的により取得した反社会的勢力の個人情報を上記目的に利用すること
→ こうした利用をしない場合、反社会的勢力による不当要求等に対処し損ねたり、反社会的勢力との関係遮断に失敗することによる信用失墜に伴う金銭的被害も生じたりする。また、反社会的勢力からこうした利用に関する同意を得ることは困難である。
 このため、このような場合、法16条3項2号(人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき)に該当し、本人の同意がなくとも目的外利用を行うことができる。
3 提供段階
 事業者が、データベース化した反社会的勢力の個人情報を、上記目的のため、他の事業者、暴力追放運動推進センター等の第三者に提供すること
→ 反社会的勢力に関する情報を交換しその手口を把握しておかなければ、反社会的勢力による不当要求等に対処し損ねたり、反社会的勢力との関係遮断に失敗することによる信用失墜に伴う金銭的被害も生じたりする。また、反社会的勢力からこうした提供に関する同意を得ることは困難である。
 このため、このような場合、法23条1項2号(人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき)に該当し、本人の同意がなくとも第三者提供を行うことができる。
4 保有段階
 事業者が、保有する反社会的勢力の個人情報について、一定の事項の公表等を行うことや、当該本人から開示(不存在である旨を知らせることを含む。)を求められること
→ 反社会的勢力の個人情報については、事業者がこれを保有していることが明らかになることにより、不当要求等の違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある場合、個人情報の保護に関する法律施行令3条2号(存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの)に該当し、法2条5項により保有個人データから除外される。
 このため、当該個人情報については、法24条に定める義務の対象とならず、当該個人情報取扱事業者の氏名又は名称、その利用目的、開示等の手続等について、公表等をする必要はない。
 本人からの開示の求めの対象は、保有個人データであり、上記のとおり、事業者が保有する反社会的勢力の個人情報は保有個人データに該当しないことから、当該個人情報について、本人から開示を求められた場合、「当該保有個人データは存在しない」と回答することができる。

(12)反社会的勢力との関係遮断を内部統制システムに位置づける必要性
 会社法上の大会社や委員会設置会社の取締役会は、健全な会社経営のために会社が営む事業の規模、特性等に応じた法令等の遵守体制・リスク管理体制(いわゆる内部統制システム)の整備を決定する義務を負い、また、ある程度以上の規模の株式会社の取締役は、善管注意義務として、事業の規模、特性等に応じた内部統制システムを構築し、運用する義務があると解されている。  反社会的勢力による不当要求は、
○ 取締役等の企業トップを対象とするものとは限らず、従業員、派遣社員等の個人や関係会社等を対象とするものがあること
○ 事業活動上の不祥事や従業員の不祥事を対象とする場合には、事案を関係者限りで隠ぺいしようとする力が社内で働きかねないこと を踏まえると、反社会的勢力による被害の防止は、業務の適正を確保するために必要な法令等遵守・リスク管理事項として、内部統制システムに明確に位置づけることが必要である。このことは、ある程度以上の規模のあらゆる株式会社にあてはまる。 また、反社会的勢力の攻撃は、会社という法人を対象とするものであっても、現実には、取締役や従業員等、企業で働く個人に不安感や恐怖感を与えるものであるため、反社会的勢力による被害を防止するための内部統制システムの整備に当たっては、会社組織を挙げて、警察や弁護士を始めとする外部専門機関と連携して対応することが不可欠である。 すなわち、
○ 取締役会が明文化された社内規則を制定するとともに、反社会的勢力対応部署と担当役員や従業員を指名すること
○ 制定した社内規則に基づいて、反社会的勢力対応部署はもとより、社内のあらゆる部署、会社で働くすべての個人を対象としてシステムを整備すること が重要である。

(13)内部統制システムを構築する上での実務上の留意点
 内部統制システムの世界基準と言われているCOSOの体系によれば、内部統制システムは、(1)統制環境、(2)リスク評価、(3)統制活動、(4)情報と伝達、(5)監視活動の5項目から構築されるとされている。
 反社会的勢力との関係遮断を内部統制システムに位置付けるに際して、それぞれの項目における留意事項は次のとおりであるが、特に、リスク評価の部分は、重点的に管理すべき項目である点に留意する必要がある。
ア 統制環境
  • 経営トップが、反社会的勢力との関係遮断について宣言を行う。
  • 取締役会において、反社会的勢力との関係遮断の基本方針を決議する。
  • 企業倫理規程等の中に、反社会的勢力との関係遮断を明記する。
  • 契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入する。
  • 反社会的勢力との関係遮断のための内部体制を構築する(例えば、専門部署の設置、属性審査体制の構築、外部専門機関との連絡体制の構築等)。
イ リスク評価
  • 反社会的勢力による不当要求に応じることや、反社会的勢力と取引を行うことは、多大なリスクであることを認識し、反社会的勢力との関係遮断を行う。
  • 特に、事業活動上の不祥事や従業員の不祥事を理由とする不当要求に対して、事案を隠ぺいするための裏取引を行うことは、企業の存立そのものを危うくするリスクであることを十分に認識し、裏取引を絶対に行わない。
ウ 統制活動
  • 反社会的勢力による不当要求への対応マニュアルを策定する。
  • 不当要求防止責任者講習を受講し、また、社内研修を実施する。
  • 反社会的勢力との関係遮断の取組について、適切な人事考課(表彰や懲戒等)を行うとともに、反社会的勢力との癒着防止のため、適正な人事配置転換を行う。
エ 情報と伝達
  • 反社会的勢力による不当要求がなされた場合には、直ちに専門部署へその情報が集約されるなど、指揮命令系統を明確にしておく。
  • 反社会的勢力の情報を集約したデータベースを構築する。
  • 外部専門機関への通報や連絡を手順化しておく。 
オ 監視活動
  • 内部統制システムの運用を監視するための専門の職員(リスク・マネージャーやコンプライアンス・オフィサー等)を配置する。

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