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第3節 食育推進運動の展開

1 国における食育推進運動の展開

食育の周知の状況

「食育」という言葉について、平成20年3月「食育に関する意識調査」では、言葉を知っていた人の割合は74.0%(「言葉も意味も知っていた」41.0%及び「言葉は知っていたが意味は知らなかった」33.0%との合計)で、平成19年3月調査と比較すると、8.8%増加した(図表―21)。

図表―21 食育の周知度

図表―21 食育の周知度の図

▲CSVファイル

「食育月間」の取組

食育月間の実施要綱

平成20年度の「食育月間」では、取組の重点事項や主な実施事項を盛り込んだ「平成20年度「食育月間」実施要綱」を定めた。この実施要綱において、重点的に普及啓発を図る事項として、「食を通じたコミュニケーション」、「バランスの取れた食事」、「望ましい生活リズム」、「食を大切にする気持ち」、「食に関する知識と選択力」の5項目を掲げた。

そして、ホームページへの掲載、テレビを通じての広報、ポスターの作成と関係府省、全都道府県、関係機関・団体等への配布等により「食育月間」の普及啓発を図った。

食育推進に関する標語の募集、決定

月間に先立ち、平成20年1月28日から2月29日にかけて募集した食育推進に関する標語については、「楽しい食卓」、「食の豊かさ」、「食を選ぶ力」の3つのテーマに関し、全国の児童生徒約7万8千人から約9万点の応募があった。これらの応募作品の中から、審査の結果、それぞれのテーマごとに「うれしいな 笑顔満点 食満点」、「食文化 次は あなたが守る番」、「選ぶこと 君の健康 守ること」の作品が標語として選定された。選定された作品は、6月の食育推進全国大会において食育担当大臣が表彰したほか、食育推進の広報ポスター等各種広報媒体に用いられた。

食育標語表彰式(第3回食育推進全国大会)の写真
左から
諏訪瞳さん(埼玉県春日部市立八木崎小学校6年生)
「うれしいな 笑顔満点 食満点」
會澤美空さん(茨城県常陸太田市立北中学校3年生)
「食文化 次は あなたが守る番」
大城綾花さん(大阪府立岸和田高等学校1年生)
「選ぶこと 君の健康 守ること」
食育標語表彰式(第3回食育推進全国大会)
食育推進の広報ポスターの写真
食育推進の広報ポスター

食育推進全国大会の開催

「食育月間」における全国規模の中核的イベントとして、平成20年6月7日、8日の両日に、群馬県前橋市において、内閣府と群馬県の共催により、第3回食育推進全国大会を開催した。講演会・シンポジウム等の様々なイベントや130のブースによる多彩な展示が行われ、2日間で約2万8千人の来場を得た。

今年度は、食育推進全国大会のプレイベントとして、開催地である群馬県民及び近隣地域の住民の食育への関心を高めるため、平成20年2月12日にシンポジウム「家庭と地域のつながりで食育を進めよう」を開催した。

第3回食育推進全国大会

食育推進全国大会は、食育推進運動を重点的かつ効果的に実施する「食育月間」における全国規模の中核的なイベントである。

第3回大会は、内閣府と群馬県の共催により、6月7日(土)、8日(日)の両日、群馬県前橋市で開催された。

関係者の協力の下、開会式、食育標語の表彰をはじめ、講演・シンポジウム等の様々なイベント、約130のブースによる多彩な展示や体験活動コーナーが催され、2日間で約2万8千人の来場を得た。

〈主な講演会・シンポジウム等〉

○講演「子どもを元気にする家庭料理とは」

○パネルディスカッション「食育の原点!子どもの育ちを家庭・社会で支える」

○講演「口福が幸福に〜今こそ食育を〜」

○講演「家族の食育をはじめましょう」

○シンポジウム「ぐんまの食卓・世界の食卓」

パネルディスカッションの写真
パネルディスカッション
体験活動コーナーの写真
体験活動コーナー
展示・体験会場の写真
展示・体験会場

食育月間の主要な取組

文部科学省では、6月19日に、東京都において、「食育推進交流シンポジウム」を開催した。厚生労働省では、関係団体の総会や食育推進講座において普及啓発を図った。農林水産省では、6月13日に、東京都において、食を考える国民フォーラム「教育ファームで実践−食の大切さをからだ全体で学ぶ」の開催やイベント等を行い、食育の普及啓発に取り組んだ。

「食育の日」の取組

食育推進運動を継続的に展開し、食育の一層の定着を図るため、毎月19日の「食育の日」には、各地で、様々な機会をとらえた広報啓発活動が展開された。具体的には、学校や保育所での啓発活動、朝食の大切さや県産物の啓発をねらいとした活動、各種広報媒体を通じた普及啓発活動など、様々な場面で多様な活動が展開されている。

関係府省や都道府県等の取組状況については、内閣府のホームページにおいても情報を提供している。

なお、「平成20年度「食育月間」実施要綱」において、毎月19日の「食育の日」の普及啓発とともに、少なくとも週1回は家族そろって楽しく食卓を囲むことの呼びかけを求めている。

[「食育の日」における広報啓発の取組(例)]

■「食事バランスガイド」等を参考にした食生活や規則正しい生活を普及させるため、県職員により「食育宣伝隊」を結成し、保育園、幼稚園、学校等に出向き、児童、児童の保護者、県内の方々を対象に、体験を通した食育啓発活動を実施。〈青森県食の安全・安心推進課〉

■「食育月間」「食育の日」の周知及び望ましい食習慣を勧奨するため、毎月19日に地元のFM局であるFMゆきぐにから望ましい食習慣についての説明を放送。〈新潟県南魚沼振興局健康福祉環境部〉

■生活リズムが乱れがちな夏休み後の9月、食育の日を含む1週間を「毎日しっかり朝ごはんウィーク」として設定し、児童生徒や家庭に働きかけを実施。〈富山県教育委員会スポーツ・保健課〉

■児童、保護者の食育への意識を啓発するため、毎月19日に県内の各幼稚園及び各保育園では食育に関する標語を作成の上、各園の玄関に掲示。〈福井県坂井市福祉課〉

■「食育の日」を周知するため、毎月19日に県内量販店、道の駅、直売所、行政機関で食育の日に係るのぼりを掲示。更に食育月間である6月19日には量販店やJR駅前で県民に対する啓発を実施。〈滋賀県健康推進課〉

■給食時間の校内放送で、郷土料理や県産物100%の日等の特色のあるメニューや、食材の栄養に関する内容について解説する等、学校給食や地域への理解を深める取組を実施。〈兵庫県洲本市教育委員会〉

■「主食、主菜、副菜のそろった朝食を食べてきたか」など『朝食調べ』を継続して行うことを通じ、子どもたちの食に対する意識を啓発。〈鳥取県教育委員会体育保健課〉

■毎月第三木曜日(「ふるさと食の日」の前日)に、食育月間、食育推進計画、県内の食育活動を周知するための地元新聞社とタイアップした企画紙面を掲載。〈島根県農林水産総務課〉

■食育全般について、県内の方々に周知するため、福岡市天神で食育パネル展、食育クイズ、食育スタンプラリー、県産米をはじめとする県産農産物のPRなどのイベントを開催。〈福岡県生産流通課〉

資料:内閣府食育推進室調べ

食育に関する施策等の総合的な情報提供

内閣府では、広く国民の食育への理解を深めるため、ポスターやリーフレット等を通じた情報提供を行っている。また、地域での活動の促進を図るため、ホームページ等を通じ、食育基本法や食育推進基本計画等の食育に関する基本的情報をはじめ、都道府県・市町村の食育推進計画の作成状況や各種取組、関係府省の食育関連予算等、食育推進の施策に関する総合的な情報提供を行っている。

文部科学省では、学校における食育の推進への理解を深めるため、ホームページにおいて、栄養教諭制度、食に関する指導、学校給食衛生管理基準等の情報提供を行っているほか、学校給食と食育に関するリーフレットを作成して情報提供を行っている。

厚生労働省では、「食育の推進」に関する取組状況等をホームページに掲載することやイベント等において情報提供を行っている。また、母子保健、健康づくり、食品の安全に関するパンフレット、リーフレット等を作成し、都道府県、保健所、市町村保健センター等における健康づくりの活動を通じた情報提供を行っており、多くの人々が正しい情報を入手できるよう取り組んでいる。

農林水産省では、各地での食育イベントの情報提供等を行う「食育推進だより」のホームページへの掲載(毎月更新)をはじめとして、ホームページやリーフレット、シンポジウムやイベント等を活用して「食事バランスガイド」等の食育に関する情報提供等を行っている。また、地域の関係者と連携したフォーラム等の開催、食育推進ネットワークの設立、出張講座等、それぞれの地域に密着した様々な方法で情報提供を行っている。

食品安全委員会では、食品の安全性に関して、国民の関心が高い案件を中心に、様々な方法で情報提供に努めている。意見交換会の開催、食の安全ダイヤルや食品安全モニターを通じた情報・意見の交換、ホームページや季刊誌を通じた情報提供等、従来のリスクコミュニケーションの取組に加え、食品安全委員会の審議結果概要や開催案内等、食品の安全性に関する情報をタイムリーに提供するため、メールマガジン「食品安全委員会e−マガジン」を毎週1回発行している。また、ホームページで公開している「食品安全総合情報システム」は、国内外の食品の安全性に関する情報を蓄積・整理して広く一般に情報提供し、あわせて、関係機関との情報の共有化を図っている。さらに、平成19年度には、リスクコミュニケーションをわかりやすく解説したDVD映像ソフトを配布するとともに、食育の一環としてリスク分析の考え方をわかりやすく解説した冊子を作成して配布している。

なお、「食品安全確保総合調査」の結果や「食品健康影響評価技術研究」の成果についても、情報発信していくこととしている。


1 内閣府食育推進HP:http://www8.cao.go.jp/syokuiku/index.html

2 文部科学省HP:http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/index.htm

3 厚生労働省食育HP:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou04/index.html

4 農林水産省食育HP:http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/index.html

5 食品安全委員会HP:http://www.fsc.go.jp/


民間の取組等に対する表彰の実施

食育に関して、特に優れた取組を表彰し、その内容を情報提供することにより、食育が国民運動とし、一層推進されることが期待される。

総務省の過疎地域自立活性化優良事例表彰では、地域の農作物、特産品や郷土料理等を利用し、地域の魅力を一層高め、地域の活性化に努めている取組に対しても表彰を行っている。平成19年度は、北海道標津町、新潟県朝日村高根フロンティアクラブなどの取組が表彰を受けている。

文部科学省では、学校給食の普及と充実に優秀な成果をあげた学校、共同調理場、学校給食関係者及び学校給食関係団体について、文部科学大臣表彰を実施している。平成19年度は、学校36校、共同調理場9場が「学校給食優良学校等」として、また、29名の学校給食関係者と8名の学校給食関係団体が「学校給食功労者」として表彰された。

厚生労働省では、栄養改善及び食生活改善事業の普及向上等に功労のあった者及び地区組織等について、栄養関係功労者厚生労働大臣表彰を実施している。平成19年度は、263名が功労者として表彰された。

農林水産省では、平成15年以降、全国から食育の取組を実践する団体等を募集し、特に優れた実践事例を表彰する「地域に根ざした食育コンクール」を実施している。募集は、「食品産業分野」、「農林漁業分野」、「食育ネットワーク分野」等5分野で行っている。平成19年度には、「教育分野」で応募のあった、新潟県の上越市立高志小学校5年生の「教育ファーム」の取組み、「「いただきます」のために〜お米を売る体験で「食べる」側から「育てる」側へ〜」が最優秀賞に選ばれた。

2 地方における食育推進運動の展開

(1)市町村の食育推進計画づくり

食育を国民運動として推進していくためには、全国各地において取組が進められることが必要であるため、食育基本法においては、都道府県とともに市町村に対しても、推進計画を作成するよう努めることを求めている。

内閣府では、平成20年5月に「地域の特性を生かした市町村食育推進計画づくりのすすめ」とする参考資料をとりまとめた。以下にそのポイント(図表―22)を紹介したい。

図表―22 計画づくりの手順(例)と地域の特性を生かした計画づくりを進める5つのポイント

図表―22計画づくりの手順(例)と地域の特性を生かした計画づくりを進める5つのポイントの図

<1>地域の「食」を知ることが、計画づくりのスタート

地域の食に関する現状を分析し、課題を明らかにするために、各種手法によって必要な情報収集を図る(図表―23)。食に関する内容は、農業生産の状況から住民の健康状態、これまでの取組など幅広いので、記録・観察・聞き取り、統計・調査結果の活用をはじめ、多様な分野の人々による話し合い、意見交換等を通して、現状分析を進め、課題の共有を図る。

課題を明確にし、食育推進の基本的方向を探りながら、目標を検討していく中で、さらに必要な分析を加え、目標を絞り込むといったように、繰り返し分析を重ねていくことも重要である。

図表―23 地域の「食」を知る対象と方法(例)

図表―23 地域の「食」を知る対象と方法(例)の図

<2>食育推進のねらい・目標を考える−食育の計画づくりが目指すのは、人づくり、地域づくり

各分野の取組ごとのねらいを整理するので

はなく、その地域における食育推進で目指す姿について十分に関係者間で話し合い、食育推進の目標を決定する。

食育推進の目指す姿として、まちづくりの視点、次代を担う子どもを中心とした人づくりの視点で、計画づくりが進められている市町村もある(図表―24)。まちづくりの視点には、産業振興、健康増進、教育、環境保全、観光振興などを総合的に推進していこうとする、人づくりの視点には、子ども、家庭、地域のつながりを強化し、次世代や持続可能な社会を目指して推進を図っていこうとする特徴がある。

図表―24 食育推進の目指す姿(例)

図表―24 食育推進の目指す姿(例)の図

<3>食の「つながり」に着目した取組を展開する

地域では、すでに多くの食に関する取組が実施されているので、計画づくりで、それらを整理することによって、地域の取組の全体像を把握することができる。しかしながら、個々の取組については、特定の分野で、限られた機関によって実施され、取組の効果が検証されないまま継続しているものもある。

計画づくりでは、食育推進で目指す姿の実現に向けて重点目標を設定し、そのために必要な取組について検討を行う。その際、既存の活動についても、これまでつながりのなかった関係機関が連携することでより効率的な実施が図れないかなど、それらの取組が目標達成に有効かをとらえ直してみることも必要となる。

また、人、食、地域の“つながり”に着目することで、分野という“部分”からはじめるのではなく、食育を推進する上でなにが重要かを考え、そこからそれぞれの分野においてできることを考えるという新たな流れを作り出すこともできる。

<4>食育に取り組む多様な「主体」を増やす

食育の推進で、多様な「主体」が取組を推進していくためには、計画づくりの段階から、教育、健康づくり、農業といった特定分野に限定されることなく、多様な関係者が参画することが必要である(図表―25)。

様々な分野から「主体」となる人々の参画があれば、地域の食を広く深く知ることができ、お互いの取組やその特徴を理解しあうことで、連携が進み、新たな取組へと発展することも期待できる。

また、食育を国民運動として推進し、地域に根ざし、地域に定着させていくためには、なによりボランティアの活動が重要である。一人でも多くの人々が「食」を通して自分たちの暮らす地域社会に関わることができれば、地域の「食」について主体的に考え、取り組む人たちが増えることになる。

図表―25 事例にみる多様な「主体」(例)

図表―25 事例にみる多様な「主体」(例)の図

<5>食育の取組を継続できる体制づくり

食育に関する取組を継続的に推進するために必要なこととしては、多様な関係者の連携・協力の強化があげられる。計画段階だけではなく、実践段階でも引き続き連携・協力が図られる体制の維持が必要である(図表―26)。

特に、食育推進の中心は地域住民なので、食育に関する様々な情報をわかりやすい形で提供するとともに、住民の意見や考え方を積極的に把握し、取組に反映させていくことも重要である。

また、推進状況の評価を行い、限られた予算を効率的・重点的に運用できるようにするとともに、実践した成果の評価・分析を経て、次の取組に役立てられるよう、計画の見直しを行う。

こうした分析・評価、目標の設定、取組の決定、実践といったプロセス全体を、共有できる体制づくりが求められ、計画づくりという食育推進の仕組づくりと、実際に活動を展開していく実態づくりが、ともに推進されていくことが望まれる。

図表―26 食育の取組を継続できる体制づくり(例)

図表―26 食育の取組を継続できる体制づくり(例)の図

3 地域の特性を生かした取組事例

「地域の特性を生かした市町村食育推進計画づくりのすすめ」でとりまとめた計画づくりの実践事例では、体制づくりや計画内容に特徴のある事例や人口規模など個別特性に応じた事例を紹介した。各事例での計画内容・実施の特徴は、計画前からの地域の活動に支えられており、これらの活動もあわせて紹介した。

現在、市町村では、食育推進計画の作成が進みつつあるが、計画の作成前から、それぞれの活動分野で取組が行われてきている。そうした取組の多くが、特定の分野における地道な取組であるために、地域全体に広く知られ、多様な食育関係者の相互理解により、発展的・継続的な活動として展開されるまでに至っていない状況も見受けられていた。

しかしながら、食育推進の計画づくりをはじめ、様々な場面で食育に関する取組が取り上げられることで、関係者間での共有化が進み、従来の活動が多様な機関の連携によって広がりをもった取組として進められたり、従来個々に取組を進めてきた機関が協働により新たな取組を開始したり、関係機関や取組内容について、既存のつながりを深め、新たなつながりを生み出す形で、様々な食育活動が展開されはじめている。

こうした様々なつながりに焦点を当て、8つの取組事例を取り上げた(図表―27事例紹介)。

“つくる(生産、調理)”ことと“食べる”ことをつなぐ、生産から消費、健康までをつなぐ、親子や高齢者と子どもといった人をつなぐ、食文化を次世代へつなぐ、復興へとつなぐなど、食を通じたつながりを創り出す活動は多様である。

各地域で、地域の特性に応じて、様々なつながりに着目した活動が展開され、地域からの情報発信が進み、全国でそれらの取組が共有化されることで、さらに広がりのある充実した内容の取組が展開されていくことが期待される。

図表―27 食を通じたつながりを創り出す食育活動の取組事例

図表―26 食育の取組を継続できる体制づくり(例)の図

事例<1>

生産者が地元食材で子どもとの交流を進める〈福井県大野市〉

−安全で新鮮、おいしい野菜を子どもたちに

野菜を学校に届けて「立派な野菜!」と喜んでもらえると嬉しいし、お昼頃自分たちの作った野菜をみんなが食べていると思うと、それが次の励みになる。学校給食に食材を供給する生産者グループの声だ。

生産者グループは、学校給食用の食材の提供とともに、栽培の苦労や工夫、旬や伝統的な料理などについて、子どもたちに直接伝える。

給食の野菜畑の看板の写真
広大に広がる里芋畑の写真
広大に広がる里芋畑
生産者による地元野菜の紹介の写真
生産者による地元野菜の紹介

清らかで豊かな水や山々の緑、澄んだ空気などの自然環境に恵まれた農産物や、名水を利用し培われた食文化や産業を、市民の誇れる財産としてみんなで守っていくことが計画の基本

−市内全学校への地場産物提供を目指す

市民、家庭、地域、学校、生産者、行政など「食」を守るものが、健康・身体、文化・伝統、産業、環境などを「食」で守る。大野市ではこの「食守(しょくもり)」を基本理念として食育の推進に取り組む。

「越前おおの食育推進計画」では、大野市産コシヒカリによる米飯給食の充実や、地元の生産者グループ等が参加する地場産学校給食の取組を市内の全学校に広げること、食材を通して生産者グループとの交流を図ることなどが盛り込まれている。

■越前おおの食育推進計画における数値目標(一部抜粋)

【基準値(2006年度、*は05年度)→目標値(2011年度)】

◇地元の生産者グループ等が生産する農林産物を利用した地場産給食を実施する小・中学校数【16/17校→全校】

◇地元の生産者グループ等が生産する農林産物を利用した地場産給食を実施する公立幼稚園数 【4/5園→全園】

◇地元の生産者グループ等が生産する農林産物の保育園給食等への利用促進【0園→公立全園(6園)

事例<2>

食べる人の視点で、生産から消費、健康をつなぐ〈北海道名寄市〉

名寄農業高校、名寄市立大学、名寄市教育委員会は、従来の取組を生かし、生産から消費者の健康までをつなぐ「食育」の推進に合同で取り組み、相互に協力・支援を行う。

−高校生が生産から消費、健康までを学び、小中学生に伝え、学ぶ

高校生は、生産から給食提供までの過程、食品や食事・健康について学び、卵・トマトの生産、学校給食センターへの納品を行い、小中学生の給食へのニーズを把握した上で、給食だよりを作成し、市内全小中学校の教室に掲示。高校生の食材が出た日は残食率が減り、小中学生は生産過程とともに成分や給食の栄養バランス等を学び、高校生自身にも知識や意識の変化がみられる。

農業高校生が生産した食材を活用した給食と給食だよりが小中学生に提供されるまでのプロセスの図

事例<3>

親子で一緒に食育 「ぺこぺこぺろり」〈山形県〉

−ワーキンググループと県内の東北芸術工科大学との協働作業

「ぺこぺこぺろり」は、食の大切さや食に対する感謝の気持ちを育むことをねらいとした絵本。主人公のそうた君のもとにぺこぺこ村から招待状が届き、様々な出会いや体験を通して、野菜や魚に関心をもち、ぺろりと残さず食べられるようになるというストーリー。

保育関係者を中心にしたワーキンググループが原案を検討し、県内の東北芸術工科大学がデザインを担当し、作成を進めた。

−子ども向けの絵本「ぺこぺこぺろり」と大人向けの「食育ポイントブック」

絵本は、親子で一緒に読んで学べるように、大人向けの「食育ポイントブック」とセットになっているのが特徴。

家族で食卓を囲めば、そこには「愛情」が育まれます。友達同士で食卓を囲めば、そこには「友情」が芽生えます。地域のみんなで食卓を囲めば、そこには「絆」が生まれます。刊行に当たってのこうした言葉からは、子どもたちが夢や希望を持てる“やまがた”をつくりたいという大人たちの優しい想いが伝わってくる。

食育推進のための絵本「ぺこぺこぺろり」の写真
食育推進のための絵本「ぺこぺこぺろり」
食育推進のための絵本「ぺこぺこぺろり」の中の写真

事例<4>

孫世代と一緒にクッキング−3世代食育講座−〈大阪府高槻市〉

−市の施政方針にあわせて事業をリニューアル

高槻市の施政方針として「教育・子育て・食育」が重点施策に掲げられたのを機に、市内32地区に配置した健康づくり推進リーダーが行ってきた料理教室を、保護者だけではなく、祖父母や地域の力を借りて、子どもも参加するものにできないかと考えたのが、3世代食育講座。

みんなで一緒にしゅうまいづくりの写真
(みんなで一緒にしゅうまいづくり)
それぞれできることに挑戦の写真

(それぞれできることに挑戦)

−祖父母や地域の力を借りて食育を推進

核家族の多い現状。参加の仕方は、3世代同居の家族がそのまま会場に、お孫さんと別居の方が前日から泊りがけで呼び寄せたり、早朝から迎えに行ったりして会場に、さらに地域の人が参加をあきらめていた子どもたちを何人も連れて参加するなど様々な形で、家族や近隣の人とのつながりで子どもと一緒の参加が実現している。

また、夏休みや土日、祝日を中心に実施しているので、お父さんやおじいちゃんの参加も目立ち、その真剣な姿に教室は活気あふれたものになっている。

料理づくりで子どもが自らの可能性を試してほしい、小さい頃から基本的体験を積み重ねてほしい、地域の力とともに人生経験豊かで時間的ゆとりのある高齢者の力を借りて子どもの食育を進めたい、それが事業のねらいであり、事業関係者の願いでもある。

事例<5>

太巻き祭りずしで郷土料理と感動を伝える〈千葉県市川市〉

−作って、見て、楽しい祭りずしで、食文化を伝承

太巻き祭りずしは、農民の手で作られ、受け継がれてきた千葉県を代表する郷土料理の一つ。地元でとれた食材を使い、大切なお米が美しくみえるように工夫されたもので、切り口の文様が特徴。切った瞬間、「わっきれい!」と感動が広がる。食文化伝承の担い手となる千葉伝統郷土料理研究会市川支部のメンバーは、学校栄養士・学校調理師の有志で構成され、学校給食を通して行事食や伝統食を伝えるとともに、地域のコミュニティ活動を通した親子対象の「祭りずし教室」で体験活動にも取り組む。

祭りずし教室の写真
祭りずし教室

−市川市の食育推進計画でも重点的取組として位置づけ

「誰もが健康なまちをつくる」−「食」による健康づくりを目指す市川市の食育推進計画では、海苔や梨に代表される地場産物など市川の豊かさにふれ、日々の食育活動から食生活に関心をもつことに配慮し、“気分のりのり病気なしなし”をキャッチコピーに重点的取組を整理。その取組の一つである「郷土料理、行事食等の食文化を伝える取組」として太巻き祭りずしがコラムとともに取り上げられている。

市川市をイメージした太巻き祭りずしの写真
市川市をイメージした太巻き祭りずし

事例<6>

高校生レストランが地域の夢をつなぐ〈三重県立相可高等学校食物調理科〉

−地元のおばあちゃんが作った野菜で “まご”世代の高校生が料理をつくる「まごの店」

テーブルは満席で、厨房は目が回るような忙しさ。その中で高校生がきびきびと対応している。「まごの店」は、高校生が運営するレストランだ。メニュー開発から、仕入れ、調理、接客、会計管理のすべてを高校生が担う。「おばあちゃんの店(農産物直営施設)」の食材をはじめ地産地消を基本に、地元食材を最大限に生かしたメニューを考案する。調理や接客を通して、「相手のことを思って喜んでもらえるように心を込めて料理をつくる」ことを学んでいく。

−地域と高校生が “ほんまもんの心”で夢に向かって共に歩む

「料理は心、夢は独創性のある料理人」と未来を夢見て取り組む高校生を、町の人々が応援し、地域の活性化を目指す。高校生の取組は、新たな郷土料理の考案、料理教室の開催、地域イベントでの交流と広がりをみせる。「まごの店」は、食を通じて様々な人々が集い、つながる拠点でもある。

まごの店 厨房の様子の写真
まごの店 厨房の様子
まごの店(外観)と生徒の皆さんの写真
まごの店(外観)と生徒の皆さん

事例<7>

「野菜をつくって食べるじゃん」番組づくりで新たな取組へ〈山梨県甲州市〉

−計画の切り口は「子ども」と「野菜」から

果樹栽培が盛んな甲州市でも、野菜はあまり食べられていない。「子ども」のことだと大人も動く、世代間交流にもつながる。「野菜を食べる」ことは、「栄養バランス」の指標になるだけでなく、「生活スタイル」の指標になることも調査で明らかになってきた。

−番組作成・放映で、既存の取組がつながり、新たな取組へ

「野菜をつくって食べるじゃん」をテーマにした番組作成・放映に取り組むことで、これまで個々に連携してきた保育所・幼稚園、食生活改善推進員会、ケーブルテレビが一体となって進めることができ、家庭や地域を巻き込み、新たな取組として動きはじめた。子どもを中心に交流がすすみ、交流することで関わる人々も元気をもらう、それが新たな取組の原動力になっている。

番組作成・放映で新たな取組として展開の図

事例<8>

かしかりの食の魅力で震災復興を目指す〈新潟県柏崎地域振興局〉

−柏崎・刈羽地域の食文化の発信と定着を目指す「柏刈地域食育応援団」

「柏刈地域食育応援団」には、地域の郷土料理を次世代へ継承し、生産者・消費者の連携によって食による地域活性化を図るために、地元のスーパーや食品加工・製造・販売業者等26社(平成20年2月現在)が参加。地域の郷土料理をまとめた「食の歳時記」の活用や地元産物の販売・加工、食育に関する情報提供などを行っている。

−食育推進のネットワークは災害の平時の備え、復旧・復興の基盤

平成19年7月に中越沖地震発生。11月の「がんばろう!柏崎復興まつり」では柏刈地域食育応援団もイベントの活性化に協力。被災地域の健康をサポートするため、親子の運動と食生活のメニューを大学と共同で開発し、ケーブルテレビで配信。平成20年3月には、被災地における栄養・食生活支援活動の検証をもとに「柏崎地域災害時食生活支援システム検討会」報告書もとりまとめられた。食育推進の関係機関・団体との協働体制は、平時の備えの充実や災害時の食生活支援の基盤にもなる。

柏崎・刈羽地域の食育推進のキャラクターで、震災復興のシンボルマークでもある「かしかりちゃん」の図
柏崎・刈羽地域の食育推進のキャラクターで、震災復興のシンボルマークでもある「かしかりちゃん」
柏刈地域の食育推進体制及び災害時に備えた食生活支援体制の図


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