国際青年育成交流事業


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『子供の生活』

群馬県 飯島 真由美


 今回の派遣に向けて、私の関心が何故、「子供たちの生活・暮らしの様子を知ること」へと向いたのか?帰国後に改めて、考えてみた。出発前はこう思っていた。二十一世紀を担う、将来のある子供たちの育成の如何によって、タンザニアと日本の両国のみならず、世界の情勢に今後、大きく影響してくるだろう、と。一見、大げさに聞こえるかもしれないが、子供の頃の環境や育て方によって、その後どのような思想や感情を持った成人に育つのかは、やはり子供時代に大きく影響される。今のうちに彼らの背景を、この眼で見て、感じておきたかった。

 何故、アフリカの子供たちの瞳は、キラキラと美しいのか?派遣前のアフリカ各国の印象=メディアからの情報により、私の関心の一つは彼らの笑顔、特に瞳の美しさに寄せられた。身体的特徴として、瞳の大きさや肌の色と白目とのコントラスト、二重やまつ毛の長さ・カールの仕方など、瞳をより美しく見せる条件もある。しかし、私が感じたかったことは、彼らの心の中にある「何か」であった。それは最近の日本の子供たちには少なくなっていると感じる。

 幸運にも、タンザニアの子供たちと直接、触れ合う機会にも恵まれた。これは日本での事前研修の際に、タンザニア派遣の現地プログラム内容への要望として、我々がリクエストしていたものであり、それを叶える形になったものだった。多くの方々のご配慮とご尽力の賜物であると、心から感謝したい。

 さて、その貴重な機会の第一回目は、タンザニアでの私達の拠点であったDar es Salaam近郊の町IlalaにあるShule ya Msingi Vingunguti B という小学校だった。その小学校はJICAの青年海外協力隊の保健婦として派遣されている、武田純子さんの任地の一つだった。武田さんは小学生を対象にして衛生教育、生活ルールについて啓蒙している。具体的には、私達日本人にとってはごく自然な衛生習慣である、"歯磨き"であるとか、"食事の前やトイレの後の手洗い"だという。そういう観念について、彼らは知らない、或いは重要に感じていない、というだけである。衛生的に心がける=健康に暮らすことへ繋がる、ということを、広く深く伝えていかなければならない彼女の仕事は、果てしないものに感じた。
 タンザニア派遣団レポート写真1
 そのような中で武田さんは、年に一度、担当している地区の各小学校への健康診断を巡回している。私達が訪問させてもらったのも、その小学校での健康診断の日だった。ぬかるんだ赤土の細い小道を私達のバスが走るたびに、その小道に轍が出来ていく。この小道をきっと子供たちも歩いて登校してくるのだろう、と思った。どうやら校舎と校舎の間の広場らしき所へと、私達のバスが停車した。丁度、休み時間だったのだろうか?たくさんの生徒達が遠巻きにして、私達の様子を見ている。好奇心旺盛な子供たちの瞳と表情。キラキラと輝く大きな艶やかな瞳の数々を、この時初めて私は目にした。あまりにもたくさんの美しい瞳に見つめられて、私はめまいがした。

 さな校舎と校舎の間の広場へと集まってくる小さな黒い天使達は、恥ずかしそうにしながらも、興味津々一歩一歩、徐々に私たちの方へと近づいてくる。その生徒達の数の多さ。次から次へと何処からか、やって来る。団員の一人が挨拶をした。「Jambo!」すると、さっきまでは低く引っ込んでいた子供たちの首が、グッと前へ伸びてきた。そして、はちきれんばかりの元気な笑顔で「Jambo !!!!」と、一斉に大きな声で返事が返ってきた。口々に子供たちと挨拶の言葉を交わし、握手の求めにあった。

 この小学校もタンザニアの他の学校と同じく、二部制をとっている。二部制というのは、一つの学校施設で効率良く、たくさんの生徒を受け入れる為の制度である。生徒達は朝七時半から登校するグループと、十四時から登校するグループの二つに分かれて勉強している。そうする事で一つの学校であっても、二倍の数の生徒を受け入れて、勉学の機会をより多くの子供たちへと与える事が出来ている。それぞれ月曜日から金曜日まで、授業は続けられる。そして、Primary School は通年で七年間ある。また、今年からタンザニアでは小学校教育完全無償化が実施されている。この制度によって、子供たちの就学率がどれ程伸びるのか、まだ分からない。だが、ユネスコの調べによると、一年次入学率が六十八パーセントである中で、七年後に無事に卒業できるのは五十七パーセント。約二割の生徒が退学している。そのほとんどが女子生徒であり、退学理由は妊娠が圧倒的に多いのだという。また、授業料は無償となっても、入学時に制服代として四千タンザニアシリング(約四百円)が必要となり、これも低所得者の家庭にとっては子供を就学させにくい原因になっているのかも知れない。だが、このタンザニア政府の小学校教育完全無償化の実施によって、より多くの子供たちに就学のチャンスが巡って来ることを、心から祈りたい。

 私達が見学させて頂いた小学校の総生徒数は、二千四百九十五名。日本の小学校と比べるとかなりのマンモス校である。教室の中に一歩入るとすぐに、その生徒数に納得した。大きいとは言えない教室の中では、二百人もの生徒達が皆、仲良く木製の長いすに座っていた。相変わらずキラキラした大きな瞳で、私達の姿を見ている。ここでは、身長・体重測定、歯科検診、胃腸を触診していた。たったこれだけの健康診断であっても、子供たちの成長を見守るためには重要であるという。私達はこの中の身長・体重測定のお手伝いをさせていただいた。とても驚かされたのは、七歳くらいにしか見えない子供が実は九歳であったり、全体的に皆、体つきが小さく、貧弱だった。JICAの方の話によると本当に弱い子どもは、五歳くらいまでに何らかの病気や栄養問題で亡くなってしまう。その時期を越えると大抵の子供は"生き延びる"のだと。その事実に大きなショックを受けながら、子供たちよ、皆健康で元気に育って行くのだよ、と思いながら測定のお手伝いを進めた。

 帰り道、私達の乗ったバスを追いかけて、子供たちがあのぬかるんだ細い小道を、大きく大きく手を振りながら走って来た。転ばないで気を付けて、と思いながら私達も窓から身を乗り出すようにして、手を伸ばし大きく振り続けた。「元気に生きるのだよ。頑張って生きるのだよ。」と叫びながら。
タンザニア派遣団レポート写真2
 私達が出逢ったタンザニアの子供たちには、何ものにも拘束されない自由があった。「生活」の中を見れば、日本と比べてずっと貧しいかも知れない。私達が見かけた子供たちの身につけている衣服は、清潔とはいえないものも多かった。けれども、私がホームステイさせていただいた家庭では、子供は大家族の中で自分よりも年上の家族を心から敬い、自分よりも年下の兄弟達の面倒を見るように躾けられている。弟や妹たちの遊び相手や洗面の手伝い、着替えにいたるまで、まるで母親が行うのと変わらずにその仕事をこなしていた。そこには「子供の生活」が自然に現れていた。彼らにとって、家庭の手伝いをする事、それは至極当然の事であり、お手伝いをしているという意識さえない。あたかも生活の中でやるべき事を任されることによって、自分の誇りとして感じているかのように思えた。また、子供たちはその家庭の中における、自分のアイデンティティーを確認しているかのようにも思えた。そのような暮らし方や子供たちの家庭の中での在り方は、今の日本の子供たちからは全く感じる事のできない新鮮なものであり、かつ力強いものだった。

 そのようなタンザニアでの生活環境は、小さな子供でありながら彼らが、自分の人生を強く生きる自信を、確信を持っているかのように私には感じられる。その生きる自信・強さは何ものにも屈せず、自由なのだと思う。自由な発想と自由な精神、そして自由な体を彼らは財産として持っている。このタンザニアという国の底力は、国全体の年齢が若いという数字の上の可能性だけではなく、計り知れない大きなものがあると、子供たちと出会い、その笑顔と瞳を見るたびに感じていた。その可能性やそれ以上の大きな何かが、子供たちの心の中にある限り、彼らの美しい瞳はキラキラと輝き続けるのだろう。そしていつかまた、彼らが大きく成長した頃、彼らの瞳の輝きがどのように変化しているのか?或いは、その輝きは変わらなかったのか?を確かめに、美しい幸せな国タンザニアを訪れてみたい。

 また、その時までに今回の派遣の経験を活かして私達が、タンザニア・日本両国間においてどれだけ深い友好関係を築くことが出来るのか、互いの国を良きパートナーとし、どれだけ大切な存在に感じられるようになるのか、楽しみながら創り上げていきたい。

 今回のタンザニア派遣において、内閣府政策統括官、タンザニア政府、在タンザニア日本大使館、(財)青少年国際交流推進センター、IYEOをはじめ多くの関係機関・団体の方々にご協力いただきました。心より感謝とお礼を申し上げたい。また、タンザニアでの長くも短い日々を一緒に乗り越えてきたかけがえのない、素晴らしい仲間達に心からAsante sana

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