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特集 「家庭,地域の変容と子どもへの影響」

1 はじめに

○ 政府は,平成15年12月に策定された青少年育成施策大綱に基づき,青少年の育成に係る様々な施策を推進し,一定の効果を挙げてきたところ,その一方で,同大綱策定時には問題の深刻さが必ずしも十分に認識されていなかった事象に対する危機認識が顕在化

○ この5年間の,青少年をめぐる社会状況や問題への認識は大きく変化しており,とりわけ,青少年の健やかな成長を支える身近な環境である家庭や地域について様々な課題や対応の必要性が指摘

○ 本特集では,子どもを取り巻く「家庭,地域」に焦点を当て,様々なデータから近年の変容や子どもへの影響について現状を分析

2 家庭及び地域をめぐる状況の変化

(1)家庭をめぐる状況

家庭は,家族特に親子のつながりを築き,維持する営みを通じて,子どもが様々な力を身に付けて成長していく基礎的な場という観点から家庭をめぐる状況の変化は以下のとおり

○ 平日の親子の接触時間が減少

9歳から14歳の子を持つ親が,平日子どもと一緒に何かをしたり,相手をしている時間がどのくらいあるかを,平成12年と平成18年で比較すると,平成18年においては平日の親子の接触時間が「ほとんどない」とした父親が増え,23.3%,おおよそ4人に1人という結果。母親においても,父親ほど顕著ではないが,おおむね同様の傾向(第29図)

第29図 親子の接触時間(父親)
第29図 親子の接触時間(父親)の図

○ 労働時間の長時間化

平成14年から平成19年にかけての5年間の1ヶ月の労働時間の推移を年齢階級別に見てみると,全般的な傾向として労働時間は増加。特に子育て世代である30〜40代で約5時間程度増加(第30図)

第30図 年齢階級別労働時間の推移
第30図 年齢階級別労働時間の推移の図

○ 親の帰宅時間の遅れ

働く父親,母親の平日帰宅時間について,平成13年と平成19年を比較すると,父親については,平成13年には約4割いた19時までに帰宅する人が26.1%に減り,21時以降に帰宅する人が3割以上に増加。母親については,18時までに帰宅する人が減り,18時から20時までの間に帰宅する人が大きく増加

○ 家族そろって夕食をとる頻度の減少

家族の団らんの場である夕食を家族そろってとる頻度について,昭和51年から平成16年までの推移をみると,「毎日」,「週4日以上」の人が減り,「週2〜3日」が増えており,平成16年では「週2〜3日」が最多

○ 子どもの悩みをあまりよく知らない親

子どもが抱えている悩みや問題などについて,親がどの程度知っているかについて見てみると,総じて父親の認知度は母親に比べて低い傾向があり,特に,「友達の名前」,「よく遊びに行く場所」,「担任の先生の名前」などでその差が拡大

一方で,きちんと知るためにはある程度恒常的な関わりが必要な「今,学校で学んでいる内容」や,じっくり向き合わなければ知ることの難しい「子どもが困っていることや悩んでいること」については,母親においても他の項目と比べて若干低い傾向にあり,父親の認知度の低さは顕著(第31図)

第31図 子どもにかかわることの親の認知度
第31図 子どもにかかわることの親の認知度の図

○ 情報メディアへの接触時間の長さ

平成18年では,6〜12歳で31.6%,13〜19歳で85.4%が自分の携帯電話等を利用。携帯電話や自宅のパソコンによるインターネット(メールを含む)の平日1日の利用時間は,小学生で55分,中学生で125分,高校生166分,テレビの視聴時間については,小学生で161分,中学生165分,高校生176分,テレビゲームの利用時間は,小学生60分,中学生50分,高校生46分

一方で,高校生の家庭での学習時間は, 4人に1人が0分

○ 就寝時間の遅れ

小学5年生及び中学2年生の就寝時間を平成11年と平成18年で比較すると,小学5年生では,午後10時頃より前に就寝する子どもが減り,午後11時頃より後に就寝する子どもが増加

中学2年生では,午後11時頃より前に就寝する子どもが減り,午前0時頃より後に就寝する子どもが増加生活の夜型化が一層進行

○ 朝食欠食理由に「食欲なし」が増加

朝食の摂食状況については,平成12年と平成17年との比較では,小学生の約85%,中学生の約80%が「必ず毎日食べる」であり同水準で推移,「ほとんど食べない」がやや減少し,大きな変化はなし

朝食の欠食理由については,12年では小中ともに「食べる時間がない」が最多,17年では小学生において「食欲がない」が最多,中学生でも,順位は「食べる時間がない」が最多だが減少しており,「食欲がない」は増加傾向

(2)地域社会をめぐる状況

○ 近所付き合いの希薄化

近所付き合いの程度について,平成12年と平成19年を比較すると,「よく行き来している」及び「ある程度行き来している」が減り,「あまり行き来しない」及び「ほとんど行き来しない」が増え,これに「あてはまる人がいない」を加えると,約6割が近所付き合いに消極的という結果となっており,近所付き合いが疎遠になる傾向(第32図)

第32図 近所付き合いの程度の推移
第32図 近所付き合いの程度の推移の図

○ 「地域の教育力」が低下しているとの保護者の認識

「地域の教育力」について小中学生の保護者に聞いた結果では,半数を超える保護者が自分の子ども時代と比べ低下していると回答(第33図)

その理由については,「個人主義が浸透(他人の関与を歓迎しない)」が5割を超えて最も多いほか,「地域が安全でなくなり,子どもを他人と交流させることに抵抗感が増加」,「近所の人々が親交を深められる機会の不足」,「人々の居住地に対する親近感の希薄化」「母親の就労の増加」,「高層住宅(マンション)の普及など居住形態の変化」等の回答が約3割

第33図 自分の子ども時代と比べた現在の地域の教育力
第33図 自分の子ども時代と比べた現在の地域の教育力の図

○ 遊ぶ場所,仲間,時間の不足

小・中学生に「放課後や休みの日に困っていること」を複数回答で聞いたところ,およそ5人に1人が「家の近くに遊び場がない」と感じており,次いで,「家の近くに一緒に遊ぶ人がいない」のほか,「自由な時間がない」,「楽しい遊びがない・何もしたことがない」,「子どもだけで遊ぶのは危ないと言われる」がそれぞれ1割前後あり,遊ぶための時間,空間,仲間など,遊びの自由がないと感じている状況

○ 子ども時代の体験・交流機会の重要性

25歳〜35歳の若者に対し,現在の仕事や生活の様子と小・中学校時代の体験等についてたずねた調査結果では,若者の「仕事における態度・能力に対する自信」は,子ども時代の体験や親とのかかわりと関連しており,なかでも,小中学校時代に「親や学校の先生以外の大人と話すこと」があった若者ほど,仕事における態度・能力に自信をもっている」との結果

このほか,「親と将来のことについて話をすること」,「大勢の友だちと遊ぶこと」,「地域の行事に参加すること」などについても,仕事における自信の有無において子ども時代の体験差が大きく影響

(3)困難な状況にある家庭

○ ひとり親世帯,母子世帯の増加基調

母子世帯の推移をみると,母子世帯については,平成7年の48万3千世帯から平成19年には71万7千世帯に増加(第34図)

第34図 母子世帯・父子世帯数等の推移
第34図 母子世帯・父子世帯数等の推移の図

○ 母子世帯をめぐる状況

・「臨時・パート」の多い就業状況

母子世帯の母の84.5%が就業しており,このうち「臨時・パート」が43.6%と最も多く,次いで「常用雇用者」が42.5%,「派遣社員」が5.1%

末子の年齢が高くなるにつれ,「常用雇用者」の割合が増加,「臨時・パート」が減少

・厳しい生活の状況

平成17年の母子世帯の平均年間収入は,213万円となっており,全世帯の平均所得563.8万円の約38%(第35図)

生活保護の受給状況については,「受給している」が9.6%(全世帯では2.3%)

第35図 母子世帯・父子世帯と全世帯の平均収入の比率(平成17年)
第35図 母子世帯・父子世帯と全世帯の平均収入の比率(平成17年)の図

○ 児童虐待が行われた家庭の状況

・児童虐待が行われた家庭が有する複合的な困難

東京都福祉保健局が平成13年及び平成17年に行った調査では,児童虐待につながったと思われる家庭の状況は,ひとり親家庭が31.8%,親族,近隣等からの孤立が23.6%,経済的困難が30.8%,就労の不安定が14.0%(第36図)

家庭の状況の上位5つについて,他に合わせて見受けられる状況の上位3つをみると,「ひとり親家庭」,「経済的困難」,「孤立」,「就労の不安定」を併せ持った事情

第36図 虐待が行なわれた家庭の状況(複数回答)
第36図 虐待が行なわれた家庭の状況(複数回答)の図

・特に重篤な虐待の行われた家庭をめぐる厳しい状況

子どもが亡くなった事例を検討した報告から,心中以外の死亡事例について,虐待が行われた家庭の養育者の状況を見ると,実の両親がそろっている「実父母」が約50%,「ひとり親」が約25%

家族の経済状況をみると,生活保護世帯,市町村民税非課税世帯,市町村民税課税世帯(所得割)」の合計の割合は,平成17年で約67%,平成18年で約84%

地域社会との接触が「ほとんどない」,「乏しい」が高い割合を示しているとともに,「活発」はゼロ

養育者の心理的・精神的問題等では,実母の「育児不安」,「養育能力の低さ」,「うつ状態」が高い割合

3 おわりに

○ 新たな大綱の策定に当たって,多くの有識者から現場での取組を聴取した中で,指摘の多かったことの一つとして挙げられるのが,困難な状況にある青少年の背景にある家庭や地域の問題

○ 特に,都市化や核家族化などにより家族以外との接触が少なくなっている状態にあっては,困難な状況に置かれたときの解決を家庭内だけで抱え込むことにより,より困難な状況にとらわれていくことが再三指摘されており,家庭へのアプローチが大きな課題としてクローズアップ

○ このような困難な状況にある青少年の支援については,本人への支援はもとより,その健やかな成長を支える家庭,学校,地域等青少年を取り巻く成育環境へのアプローチも大事であり,今後,策定される新たな大綱においても,民間主体を含めた総合的な取組について,具体的な施策を示して行くこととしたい

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