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(3)困難な状況にある家庭

これまで青少年を取り巻く一般的な状況を見てきましたが,次に,困難な状況にある家庭の状況を見ていくこととします。

ア ひとり親世帯の状況

まず,近年増加傾向にあるひとり親世帯について見てみます。

● ひとり親世帯,母子世帯の増加基調

国民生活基礎調査によると,平成19年における児童(18歳未満の未婚の者)のいる世帯構造は,「夫婦と未婚の子のみの世帯」が約7割,「三世代世帯」が約2割,「ひとり親と未婚の子のみの世帯」が約7%となっており,平成7年からの推移をみると「夫婦と未婚の子のみ」及び「ひとり親と未婚の子のみ」の核家族世帯が増え,三世代世帯が減っています(図19)。

図19 児童のいる世帯の世帯構造の推移
図19 児童のいる世帯の世帯構造の推移の図
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一方,母子世帯及び父子世帯の推移をみると,母子世帯については,平成7年の48万3千世帯から平成19年には71万7千世帯となり,全世帯の1.5%となっています。父子世帯は,8万4千世帯から10万世帯となり,全世帯の0.2%となっています(図20)。

*母子世帯:死別・離別・その他の理由(未婚の場合を含む。)で,現に配偶者のいない65歳未満の女(配偶者が長期間生死不明の場合も含む。)と20歳未満のその子(養子を含む。)のみで構成している世帯

図20 母子世帯・父子世帯数等の推移
図20 母子世帯・父子世帯数等の推移の図
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イ 母子世帯をめぐる状況

次に,平成18年度全国母子世帯等調査の結果から,ひとり親世帯のうち,特に母子世帯の状況を詳しく見て行きたいと思います。

この調査では,母(父)子世帯を「父(母)のいない児童(満20歳未満の子どもであって,未婚のもの)がその母(父)によって養育されている世帯」としています。

また,推移を見る場合は平成15年と比較していきます。

● 生別によるひとり親世帯の増加,母子世帯の親の年齢の低下

ひとり親世帯になった理由別の構成は,死別世帯が約1割,生別世帯が約9割であり,死別世帯が減少し,生別世帯が増加する傾向にあります。

また,父子世帯では,生別世帯は約8割となっています。

母子世帯について,ひとり親となった時の親及び末子の年齢をみると,親の平均年齢は31.8歳で,平成15年と比べ,1.7歳低下しており,30歳代が約46%で最も多く,次に20歳代が約27%となっています。末子の年齢は,平均5.2歳で,0〜2歳が約3割,3〜5歳が約25%となっています。

なお,生別世帯では,末子の平均年齢が4.9歳と平均の5.2歳より低くなっています。

● 「臨時・パート」の多い就業状況

就業状況では,母子世帯の母の84.5%が就業しており,このうち「臨時・パート」が43.6%と最も多く,次いで「常用雇用者」が42.5%,「派遣社員」が5.1%となっています(図21)。

図21 母子世帯の母の就業状況(平成18年)
図21 母子世帯の母の就業状況(平成18年)の図
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このうち,「常用雇用者」及び「臨時・パート」について,末子の年齢階級別にみると,末子の年齢が高くなるにつれて,「常用雇用者」の割合が増加し,「臨時・パート」の割合が減少する傾向が見られます。就学年齢となる6〜8歳時,高校卒業年齢である18・19歳時にこの傾向が見られます(図22)。

*「常用雇用者」とは,会社,団体,官公庁など雇用期間について特段の定めがない,あるいは1年間を超える期間を定めて雇われる者をいい,「臨時・パート」とは,日々又は1年未満の期間を定めて雇われている者をいう。

図22 就業している母の地位別末子の年齢階級の構成割合(平成18年)
図22 就業している母の地位別末子の年齢階級の構成割合(平成18年)の図
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なお,平成19年労働力調査年報によると,女性の非農林業雇用者のうち常雇(雇用契約期間が1年を超える者又は雇用期間を定めないで雇われている者)が占める割合は,78.3%となっています。全国母子世帯等調査では,母子世帯の就業者のうち常用雇用者は,5割程度にすぎず,不安定な就労状況におかれていることがわかります。

● 厳しい生活状況

母子世帯の平均年間収入は,213万円となっており,国民生活基礎調査による平成17年の全世帯の平均所得は563.8万円ですから,母子世帯は全世帯平均の約38%にすぎません(図23)。

図23 母子世帯・父子世帯と全世帯の平均収入の比率(平成17年)
図23 母子世帯・父子世帯と全世帯の平均収入の比率(平成17年)の図
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また,平均年間収入を末子の状況別に見ると,「小学校入学前」では177万円,「小学生」では208万円,「中学生」では232万円,「高校生」では248万円であり,末子の年齢が上がるにつれて増加しています(図24)。

なお,生活保護の受給状況については,「受給している」が9.6%でした(全世帯2.3%)。

*平均収入とは,生活保護法に基づく給付,児童扶養手当等の社会保障給付金,就労収入,別れた配偶者からの養育費,親からの仕送り,家賃・地代などを加えたすべての収入をいう。

図24 末子の状況別母子世帯の年間収入(平成18年)
図24 末子の状況別母子世帯の年間収入(平成18年)の図
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収入のうち,就労収入について見てみると,就業している母の平均年間就労収入は171万円となっています。これを従業上の地位別に見ると,「常用雇用者」では,平均が257万円で,200万円未満が約40%であるのに対し,「臨時・パート」では,平均が113万円で,100万円未満及び100万〜200万円未満の層で約9割を占めており,就労上の地位によって,差が大きくなっています(図25)。

図25 現在就業している母の地位別年間就労収入の構成割合(平成18年)
図25 現在就業している母の地位別年間就労収入の構成割合(平成18年)の図
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また,雇用形態・年齢階級別平均賃金(第1部第2章第2節参照)を見ると,女性については,正規職員も非正規職員も,年齢を経ても賃金があまり上昇せず,厳しい経済状況が継続することがわかります。

なお,住居の状況も,母子世帯では,「持ち家」に居住している世帯は34.7%で,そのうち「母本人の名義の持ち家」は10.9%にすぎず,ほとんどが借家となっています。

以上,母子世帯の状況を見てきましたが,特に,学齢期前の子どものいる母子世帯については,常用雇用者としての就業はもとより,就業自体も困難であり,子どもを育てながら生計を維持していくことの厳しさが容易に想像できます。

また,子の成長により,たとえ常用雇用者となることができても,収入の増加はそれほど期待できるものではありません。子どもの福祉の観点から考えた場合,日々の生活の安定に加え,子どもが就学・進学し,さらには高等教育機関への進学等将来の希望も持てるような支え方が必要ではないかと思われます。

ウ 児童虐待が行われた家庭の状況

次に,家庭内で生ずる,子どもの命にかかわる問題である「児童虐待」の状況を見て行きたいと思います。

● 児童虐待相談件数の増加

児童相談所における児童虐待相談の対応件数は年々増加しており,平成19年は4万件を超えました。相談種別では,身体的虐待が最も多く,次いでネグレクトとなっています(第1部第3章第2節参照)。平成19年度福祉行政報告例によると,主な虐待者別では,実母が62.4%と最も多く,次いで実父が22.6%となっています。

● 児童虐待が行われた家庭が有する複合的な困難

東京都福祉保健局が平成13年及び平成17年に行った調査結果を参考に,児童虐待が行われた家庭全体の状況を見てみたいと思います。

まず,家族形態では,実父母家庭が43.6%,実母のみの家庭が30.6%,実父のみの家庭が5.0%であり,ひとり親家庭は35.6%となっています。先に見たとおり,全世帯の中の母子世帯は1.5%,父子世帯は0.2%ですから,虐待が行われた家庭にひとり親家庭が多いことがわかります。

図26 虐待が行われた家庭の状況(複数回答)
図26 虐待が行われた家庭の状況(複数回答)の図
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また,虐待が行われた家庭の状況としては,ひとり親家庭が31.8%,親族,近隣等からの孤立が23.6%,経済的困難が30.8%,就労の不安定が14.0%という結果でした(図26)。

さらに,家庭の状況の上位5つについて,他に合わせて見受けられる状況の上位3つをみると,「ひとり親家庭」,「経済的困難」,「孤立」,「就労の不安定」を併せ持った事情にあることが伺えます。

虐待の行われた家庭においては,困難な状況が複合的に重なり合い,一層深刻な状況となっていることがわかります(表1)。

表1 児童虐待が行われた家庭の状況
(平成17年)
家庭の状況 あわせて見られる他の状況上位3つ
1 2 3
1 ひとり親家庭 460件(31.8%) 経済的困難 孤立 就労の不安定
2 経済的困難 446件(30.8%) ひとり親家庭 孤立 就労の不安定
3 孤立 341件(23.6%) 経済的困難 ひとり親家庭 就労の不安定
4 夫婦間不和 295件(20.4%) 経済的困難 孤立 育児疲れ
5 育児疲れ 261件(18.0%) 経済的困難 ひとり親家庭 孤立
(平成13年)
家庭の状況 あわせて見られる他の状況上位3つ
1 2 3
1 経済的困難 286件(27.5%) ひとり親家庭 就労の不安定 孤立
2 ひとり親家庭 248件(23.8%) 経済的困難 孤立 育児疲れ
3 夫婦間不和 209件(20.1%) 経済的困難 孤立 育児疲れ
4 育児疲れ 177件(17.0%) 経済的困難 ひとり親家庭 孤立
5 孤立 174件(16.7%) 経済的困難 ひとり親家庭 育児疲れ
出典:東京都福祉保健局「児童虐待の実態 II」(平成17年)
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● 特に重篤な虐待の行われた家庭をめぐる厳しい状況

最後に,児童虐待の中でも最も重篤な事例,すなわち,子どもが亡くなった事例を検討した報告から,そのような虐待が行われた家庭の状況を見てみたいと思います。

社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会が行った「第1次報告から第4次報告までの子ども虐待による死亡事例等の検証結果総括報告」では,平成15年7月から平成18年12月までの間の事例について総括的な分析がなされています。

心中以外の死亡事例について,虐待が行われた家庭の養育者の状況を見ると,実の両親がそろっている「実父母」が約50%,「ひとり親」が約25%となっています(表2)。家族の経済状況をみると,「生活保護世帯,市町村民税非課税世帯,市町村民税課税世帯(所得割)」の合計の割合は,平成17年で約67%,平成18年で約84%でした(表3)。

また,地域社会との接触が「ほとんどない」,「乏しい」が高い割合を示しているとともに,「活発」はありませんでした(表4)。養育者の心理的・精神的問題等では,実母の「育児不安」,「養育能力の低さ」,「うつ状態」が高い割合となりました。

報告では,地域で孤立した状態にあって,周囲からの支援が行われないことにより,このような心理状況につながる可能性があること,また,孤立した中で周囲が深刻な状況を把握することが困難になることも多いと考えられるとしています。

表2 養育者の状況
  第3次報告 第4次報告
実父母 47.5% 51.1%
一人親(離婚) 7.5% 19.1%
一人親(未婚) 17.5% 8.5%
一人親(死別) 0.0% 0.0%
連れ子の再婚 10.0% 4.3%
内縁関係 17.5% 14.9%
養父母 0.0% 2.1%
出典:社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会
「第1次報告から第4次報告までの子ども虐待による死亡事例等の検証結果総括報告」(平成20年)
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表3 家族の経済状況
  第3次報告 第4次報告
生活保護世帯 11.1% 21.1%
市町村民税非課税世帯 27.8% 36.8%
市町村民税課税世帯(所得割) 27.8% 26.3%
市町村民税課税世帯(均等割) 16.7% 5.3%
年収500万以上 16.7% 10.5%
出典:社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会
「第1次報告から第4次報告までの子ども虐待による死亡事例等の検証結果総括報告」(平成20年)
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表4 地域社会との接触
  第2次報告 第3次報告 第4次報告
ほとんどない 45.2% 39.1% 42.3%
乏しい 29.0% 30.4% 30.8%
ふつう 25.8% 30.4% 26.9%
活発 0.0% 0.0% 0.0%
出典:社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会
「第1次報告から第4次報告までの子ども虐待による死亡事例等の検証結果総括報告」(平成20年)
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様々な困難な事情を抱えた家庭を孤立させないためにも,始めに相談ありきではなく,困っている状況を放っておかない,暖かく積極的な支援が求められるものと思います。

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