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特集 高校中退者・中学校不登校生徒の「その後」と地域における支援

1 はじめに

○ 政府が平成20年12月に策定した新しい「青少年育成施策大綱」では,「困難を抱える青少年の成長を支援するための取組」は重点課題の一つ。青少年の抱える「困難」のなかでも,「ニート」等社会的自立に困難を抱える青少年の問題が深刻化。こうした自立をめぐる問題の背景には,不登校や高等学校中途退学等,学校段階でのつまづきなど様々な問題が複合的に存在しているとの指摘。一方,自立に困難を抱える青少年の実態は明らかにされているとは言い難い。このため,大綱では,「困難を抱えた青少年の継続的な状況把握」を推進することとしているところ。また,平成21年3月国会提出の「青少年総合対策推進法案」においても,青少年育成に関連する分野の事務に従事する関係機関等の業務として,困難を抱える青少年の状況を把握することとしている。

○ 内閣府では,高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒の進路状況や必要な支援を把握するため,平成20年度に,文部科学省の協力を得て緊急調査を実施。高等学校中途退学者等に関して,本調査結果や,困難を抱える青少年を支援する先進的な取組を紹介し,現状や自立を支援していくために必要な取組について検討。

2 高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒をめぐる現状

(1) 高等学校中途退学者(図7参照

平成7年度以降,高等学校中途退学者の全生徒数に占める割合は2〜3%の範囲で推移。もっとも,平成13年度以降はやや減少傾向。中退事由についてみると,平成10年度以前は,主たる理由として「進路変更」を挙げる割合が高かったものの,それ以降は,「学校生活・学業不適応」が最も高くなっている。

(2) 中学校不登校生徒(図6参照

中学校不登校生徒の全生徒数に占める割合は,平成10年度以降2.0%を下回ることなく推移し,平成16年度以降はやや上昇傾向。また,平成19年度は2.91%と,平成7年度以降では最も高くなっており,依然として相当数に上る。

3 高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒の緊急調査の結果から

(1) 調査の概要

本調査は,平成21年2月から3月にかけて,郵送によるアンケートの方法により実施。高等学校中途退学者については,全国の平成16年度中に高等学校を中途退学した人のうち1,595人に調査票を送付し,168人が回答。中学校不登校生徒については,全国の平成16年度中に中学校第3学年で不登校であった人のうち480人に調査票を送付し,109人が回答。

(2) 主な調査結果

ア 高等学校中途退学者の緊急調査

<1> 現在の状況としては,「仕事をしている」が約半数(47.6%)と最多。次いで,「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」が約2割(20.8%)(図29)。なお,総務省の就業構造基本調査(平成19年)では,本調査の対象者とほぼ同年代の無業者のうち,家事も通学もしていない人の割合は5.9%。

図29 現在の状況(高校中退者)
図29 現在の状況(高校中退者)

また,現在,「学校に行っている」「仕事をしながら学校に行っている」と回答した人(計43人)の中では,「通信制高校」(41.9%)が最多(図30)。

図30 どんな学校に行っているか(高校中退者)
図30 どんな学校に行っているか(高校中退者)

一方,現在,「仕事をしている」「仕事をしながら,学校に行っている」「仕事をしながら,学校以外の場で勉強している」と回答した人(計102人)に,仕事の形態について尋ねたところ,「パート・アルバイト」(41.2%)が最多。「派遣社員・契約社員」(12.7%)と合わせると,現在,仕事をしていると回答した人の半数以上が,非正規雇用。他方,「正社員」は,36.3%(図31)。なお,就業構造基本調査(平成19年)では,「正社員」として働いている割合が55.6%で最多。次いで,「パート・アルバイト」(31.0%),「派遣社員・契約社員」(9.3%)。

図31 どんな形態の仕事をしているか(高校中退者)
図31 どんな形態の仕事をしているか(高校中退者)

<2> 中学校在学時(全学年を通して)の欠席状況については,「1/3くらい休んだ」(13.7%),「1/2くらい休んだ」(3.6%),「ほとんど休んだ」(7.1%)と回答した人を合わせると,回答者全体の約4分の1(図32)。

図32 中学校在学時の欠席状況
図32 中学校在学時の欠席状況

<3> 高校をやめた理由としては,全体の約半数が「高校の生活があわなかったから」(49.4%)。次いで,「人間関係がうまく保てなかったから」(23.2%),「高校の勉強が嫌いだったから」(20.8%)。高校を中途退学した人たちが,高校生活に違和感を感じたり,高校進学後に生じる対人関係や勉強についての問題に対処しきれずに,退学に至っている現状がうかがわれる。

ニート群(注)では,全体と比べて,「人間関係がうまく保てなかったから」「高校の勉強が嫌いだったから」「家庭の事情から」と回答した割合がやや高い(図33)。

図33 高校をやめた理由(複数回答)
図33 高校をやめた理由(複数回答)

(注) 本調査では,<1>の「現在の状況」について,「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」と回答した人の中で「夫又は妻」と同居していると回答した人を除いた人を,「ニート群」としている。

<4> 「高校をやめてから現在までに利用した施設・機関」については,全体の約半数(48.2%)は,「公共職業安定所(ハローワーク),ジョブカフェ,地域若者サポートステーションなどの就労支援機関」を利用。次いで,「病院・診療所」(23.8%)。「何も利用したことがない」は,約3割(35.1%)。

ニート群では,「病院・診療所」(39.1%)の割合が高い(図34)。

図34 高校をやめてから現在までに利用した施設・機関(複数回答)
図34 高校をやめてから現在までに利用した施設・機関(複数回答)

<5> 「これからの自分にとって大切なこと」としては,全体では,「自分で働いて収入を得ようとすること」(47.0%),「将来の希望を持つこと」(45.2%),「身のまわりのことを自分ですること」「自分に自信を持つこと」(いずれも40.5%)の順。

ニート群では,全体と比べて,「自分で働いて収入を得ようとすること」(69.6%),「将来の希望を持つこと」(65.2%)という回答の割合が高く,現状を変えたいという気持ちを持つ人が多い様子(図35)。

図35 これからの自分にとって大切なこと(高校中退者)(複数回答)
図35 これからの自分にとって大切なこと(高校中退者)(複数回答)

<6> 「今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ」としては,全体では,「技術や技能の習得を手助けしてくれるところ」(39.3%)が最多。次いで,「就職に関する相談を受けられるところ」(36.3%)。技能習得の援助や就職の相談といった支援が必要とされているが,「高校をやめてから現在までに利用した施設・機関」について,「何も利用したことがない」とした人は,回答者の約3割。支援を必要としている人に利用できる機関に関する情報がより確実に届くようにし,ニーズや状況に応じたきめ細やかな支援をどのように行っていくのかが,今後の課題。

ニート群では,就労支援等に加え,生活リズムの確立等より広い範囲の支援を求めていることもうかがえる。様々なニーズに対応できるような支援の在り方も検討する必要(図36)。

図36 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(高校中退者)(複数回答)
図36 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(高校中退者)(複数回答)

イ 中学校不登校生徒の緊急調査

<1> 現在,「学校に行っている」と回答した人は約4割(39.4%)。次いで,「仕事をしている」(26.6%),「仕事にはついておらず,学校にも行っていない」(16.5%)(図37)。なお,総務省の就業構造基本調査(平成19年)では,本調査の対象者とほぼ同年代の無業者のうち,家事も通学もしていない人の割合は2.3%。

図37 現在の状況(中学校不登校生徒)
図37 現在の状況(中学校不登校生徒)

また,現在「学校に行っている」「仕事をしながら,学校に行っている」と回答した人(計51人)の行っている学校は,「四年制大学」(29.4%),「専修学校,各種学校」(25.5%)の順(図38)。

図38 どんな学校に行っているか(中学校不登校生徒)
図38 どんな学校に行っているか(中学校不登校生徒)

一方,現在,「仕事をしている」「仕事をしながら,学校に行っている」「仕事をしながら,学校以外の場で勉強している」と回答した人(計38人)の仕事の形態は,「パート・アルバイト」(57.9%)の割合が最多。「派遣社員・契約社員」(5.3%)と合わせると,現在,仕事をしていると回答した人の6割以上が,非正規雇用。他方,「正社員」は,28.9%であり,先の就業構造基本調査における同年代の人の状況に近い結果(図39)。

図39 どんな形態の仕事についているか(中学校不登校生徒)
図39 どんな形態の仕事についているか(中学校不登校生徒)

<2> 「最初に学校を休みはじめた直接のきっかけ」としては,全体では,「友人関係(いじめ・けんかなど)」(45.9%)が最多。次いで,「勉強の問題(授業がよくわからない,成績が良くない,試験がきらいなど)」(34.9%)。

ニート群では,「友人関係(いじめ,けんかなど)」(58.8%)に次いで,「入学や進級,転校をしたときに,周りになじめなかった」(41.2%),「学校の先生との関係(怒る,注意がうるさい,体罰を受けたなど)」(29.4%)となっており,友人や学校の先生との関係等,対人関係を挙げる割合が高い(図40)。

図40 最初に学校を休みはじめた直接のきっかけ(複数回答)
図40 最初に学校を休みはじめた直接のきっかけ(複数回答)

<3> 「中学校を卒業してから現在までに利用した施設・機関」については,全体では,「病院・診療所」(22.9%)が最多。次いで,「公共職業安定所(ハローワーク),ジョブカフェ,地域若者サポートステーションなどの就労支援機関」(11.0%)。他方,半数以上が「何も利用したことがない」(56.0%)と回答。

ニート群では,利用した施設・機関としては,「病院・診療所」(52.9%),「上記以外の心理相談・カウンセリングなどをする民間の機関」(23.5%)が多く,心身に何らかの問題を抱えていると思われる人の割合が高いことがうかがえる。「何も利用したことはない」は23.5%(図41)。

図41 中学校を卒業してから現在までに利用した施設・機関(複数回答)
図41 中学校を卒業してから現在までに利用した施設・機関(複数回答)

<4> 「これからの自分にとって大切なこと」については,全体では,「人とうまくつきあうこと」(62.4%)が最多。

ニート群では,「自分で働いて収入を得ようとすること」(88.2%)が最多。次いで,「人とうまくつきあうこと」「生活のリズムをつくること」(いずれも76.5%)(図42)。

図42 これからの自分にとって大切なこと(中学校不登校生徒)(複数回答)
図42 これからの自分にとって大切なこと(中学校不登校生徒)(複数回答)

<5> 「今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ」としては,全体では,「就職に関する相談を受けられるところ」(39.4%)を挙げる人が最多。次いで,「技術や技能の習得を手助けしてくれるところ」(36.7%)。

ニート群の回答も同様の順だが,個々の選択肢の回答割合が高く,より広い範囲の支援を求めていることがうかがわれる(図43)。

図43 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(中学校不登校生徒)(複数回答)
図43 今後の生活設計のためにあれば良いと思うところ(中学校不登校生徒)(複数回答)

利用できる施設・機関についての情報が十分に行き渡るようにすることや,必要な支援やその在り方を適切に把握し,充実させていくことが必要。

4 困難を抱える青少年への支援の取組

(1) 高知県における事例(学校教育からの切れ目のない支援を目指す取組)

ニートやひきこもり傾向にある若者に対し自立に向けた支援を行うために,学校や市町村を経由して対象者の個人情報を県教育委員会が一元化(「若者はばたけネット」)(図44)。得た情報を基に,教育・福祉・医療・労働の関係機関と連携して「地域若者サポートステーション」(厚生労働省委託事業)等を活用した学び直しや就労に向けた誘導・支援を展開。

図44 「若者はばたけネット」の仕組み(高知県)
図44 「若者はばたけネット」の仕組み(高知県)

(2) 兵庫県における事例(不登校生徒等への体験・宿泊型施設による支援の取組)

公立として全国初の不登校等の青少年を対象とした全寮制フリースクール「兵庫県立神出学園」を開設し,体験学習や共同生活を通じた支援を実施。また,21の教育,保健・医療,福祉,研究機関等からなる「ひょうごユースケアネット推進会議」の事務局として,関係機関と連携しながら,青少年を取り巻く様々な心の問題等に対応する体制を整備。同会議では,青少年問題の相談窓口の広報強化を図るとともに,ひきこもり問題やインターネットによる被害の相談対応充実のための事業を展開。

(3) 札幌市における事例(「地域若者サポートステーション」の学校訪問支援)

市内高等学校において,「地域若者サポートステーション」から派遣されたキャリア・カウンセラーが,進路指導室において在学生を対象に進路等に関する個人面談を実施するほか,進路以外のことも含めた様々な相談にも対応する等,同ステーションのスタッフが学校現場に出向いて在学生の就労支援等に積極的に関与し,ニートやひきこもりに移行しがちな進路未定者発生の未然防止に努めている。

5 おわりに

○ 今回の調査から,高等学校を中途退学したり,不登校状態にあった青少年の多くは,現在,困難な状況に置かれており,就労をはじめ,対人関係能力の向上や保健・医療に関するものなど社会的自立のための幅広い支援の必要性が判明。

○ 大綱では,困難を抱える青少年の成長を支援するため,個々の困難等の態様に応じ,関係機関が連携し,問題の未然防止,早期発見・早期対応及び困難克服までの切れ目ない支援や,地域における官民の関係機関による支援ネットワークの整備等について,推進方策の検討を行うこととしている。

○ 特集で紹介した地域では,関係機関が連携し,対象者及び必要な支援を的確に把握して,対象者に応じた支援や,学校などでつながりがあるうちに接触して必要な支援,最低限の状況把握を実施。支援をより柔軟で充実したものとするために,複数の機関が連携して行う支援の在り方や内容についても検討すべき。内閣府は,平成20年度から,地域において教育,保健・医療,福祉等関係機関の連携による個別的・継続的な支援体制を確立するため「地域における若者支援のための体制整備モデル事業」を実施。政府は,これからも様々な困難を抱える青少年を支援するための具体的な施策を展開していきたい。

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