第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第4節)

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第4節 社会形成への参画支援

1 社会形成に参画する態度を育む教育の推進

子供や若者は次代を担う存在であり,彼らが自立した社会人として生きていくためには,世の中の仕組みや社会人としての権利・義務などに関する正しい知識を持ち,また,社会の形成者としての基本的な資質や能力,態度を身に付けておく必要があり,そのための教育や機会の提供が重要である。

(1)学校教育における取組(文部科学省)

学校教育では従来,小学校・中学校の社会科や高校の公民科を中心に,民主政治や政治参加,法律や経済の仕組み,勤労の権利と義務についての教育が行われている。また,消費者としての知識や態度を身に付けるため,社会科や家庭科を中心に子供の発達の段階に応じた指導が行われている。現行学習指導要領では,社会参画という視点を重視し,例えば,「社会生活を営む上で大切な法やきまり」(小学校),「契約の重要性」(中学校),「国民の司法参加」(小学校・中学校・高校),「消費者の自立の支援なども含めた消費者行政」(中学校)を新たに扱うこととするなど,教育内容の充実が図られている。

文部科学省は,小・中・高等学校において社会参画に係る実践力を育成するため,地域の抱える具体的な課題の解決に係る体験的・実践的な学習を学校と地域が連携して行うためのプログラム開発に関する調査研究を教育委員会などに委託して行い,その成果の普及に努めているところである。

(2)主権者教育(総務省,文部科学省)

平成27(2015)年6月の改正公職選挙法の成立に伴い,国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質や能力を育む教育(主権者教育)を推進することが一層重要となった。

総務省と文部科学省では,連携して平成27年度に政治や選挙等に関する副教材や教員用の指導資料を作成・配布し,学校教育や出前授業の実施など,様々な取組を行ってきた。平成28(2016)年度においても,副教材を全国の国公私立高等学校等の高校1年生を対象に配布した。

また,総務省では以下の取組を行った。

  • 政治や選挙等に対する理解を深めてもらうよう,若者向けの啓発イベントを開催
  • 選挙管理委員会が実施する学校現場での出前授業や,若者向けイベント等の主権者教育の取組を支援
  • 各地の選挙管理委員会と連携し,地域の啓発団体や若者を対象とした研修会等の開催

文部科学省では,文部科学副大臣のもとに設置した検討チームにおける取りまとめに基づき,国家及び社会の形成者として必要な教育を社会全体で推進する観点から,学校のみならず家庭,地域において,政治の仕組みなどについて必要な知識を習得させるにとどまらず,社会の中で自立し,他者と連携・協働しながら,地域の課題解決を主体的に担うことができる力を身に付けるための取組を推進しており,具体的には,以下の取組を行った。

  • 高等学校において,主権者教育の実施状況を調査し公表するとともに,優れた取組を共有
  • 大学等において,各自治体の選挙管理委員会と連携したキャンパス内における期日前投票や選挙管理委員会におけるインターンシップ等を通じた啓発活動が充実するよう,大学等における先進的な取組を周知

平成28年7月10日に,選挙権年齢が18歳以上となって初めて実施された第24回参議院議員通常選挙においては,18歳の投票率は51.28%,19歳の投票率は42.30%となり,20歳代の投票率を上回る結果となった。

総務省では,第24回参議院議員通常選挙後には,選挙管理委員会に対する取組状況調査及び新たな有権者に対する意識調査を実施し,有識者を交えた会議において現状や課題について整理を行ったところであり,この結果を踏まえ,今後,文部科学省と連携して,更に主権者教育の充実に努めていくこととしている。

COLUMN NO.1
 自分たちの未来を考え,選択する力を養う!

選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が平成28(2016)年6月19日に施行され,施行後初めての国政選挙である参議院議員選挙が同年7月に行われた。新たに18歳,19歳の有権者が誕生し,さらには,民法における成人年齢を「20歳」から「18歳」に引き下げる検討も進む今,「主権者教育」に関心が集まっている。

以下,投票を促すだけではない主権者教育の具体的な取組事例を紹介したい。

NEXT CONEXION(ネクストコネクション)は子供・若者の主権者意識と学ぶ力を伸ばす活動を行っているNPO法人である。小学生から大学生を対象に,政治や社会を楽しみながら学ぶ講座を提供している。

社会科をはじめとした学校での授業と実際の世の中の関連性が見えれば,子供たちはもっと社会や政治のことに興味を持ち,学習意欲も向上するのではないか,という考えのもと,家族,学校,地域など子供が身近に感じるテーマを取り上げ,ボードゲームなど友達と一緒に楽しく学べる手法を用い,模擬裁判や模擬投票などの模擬体験を行うなど,子供が楽しいと思える要素をうまく取り入れたプログラムを行っている。

全体の様子

テーマについては,例えば,

  • 自分が18歳になったときに,どういう生活をしているのかシミュレーションし,働くことやお金の使い方,経済の仕組みを学ぶ
  • 市長になって,政治や行政の役割をシミュレーションし,街の仕組みや自分達の生活と政治の関係を学ぶ

といったキャリア形成やまちづくりに関するテーマから,

  • マナーとルールの意味の違いなどを考えながら,世の中と「自由」の関係について学ぶ
  • 自ら命を絶つことについて意見交換し,生きることの価値を考える

といった道徳や人権に関するテーマまで,幅広い分野を扱う。

また,実施に際しては,異なる年齢のグループを作り,意見交換を通して様々な視点に触れ,お互いの意見を大切にしながら,自分たちなりの答えをまとめるようにしており,グループ内での意思決定のプロセスを大事にしている。

異年齢で意見交換する様子

難しいテーマもあるが,子供たちは積極的にプログラムに臨んでおり,参加者からは「他の人の意見がきけてよかった」,「意外と身近な問題であることが分かった」といった感想が聞かれる。

自分たちの未来を考える力を身に付け,「生きる力(知恵と感覚)」を育む。プログラムへの参加がそのきっかけを与えている。

(3)法教育(法務省)

法務省は,法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方や公正な判断力,社会への参加意識を身に付けるための教育(法教育)の普及・発展のため,以下をはじめ様々な取組を行っている53

  • 現行学習指導要領を踏まえた,学校教育における法教育の実践の在り方や教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方について多角的な視点から検討を行うため,法務省で開催された法教育推進協議会54において,学校における法教育の実施状況について調査している。平成26(2014)年度には普通科高等学校,平成27(2015)年度には専門学科及び総合学科高等学校の調査研究を行った。
  • 調査研究は,法教育授業の一助となる教材の作成などに役立てており,平成25(2013)年度には小学生向け法教育教材を,平成26年度には中学生向け法教育教材を作成し,全国の小中学校,教育委員会などに配布した。また,平成28(2016)年3月に法教育推進協議会の下に,実際に学校現場で教鞭を執っている教職員や法律関係者を構成員とする教材作成部会を設置し,高校生向け法教育教材並びに小学生向け及び中学生向け視聴覚教材の作成に向けた検討を行っている。
  • 学校現場などへ法教育情報を提供することによって,法教育の積極的な実践を後押しするため,法教育に関するリーフレットを作成し,全国の教育委員会などに配布している。
  • 学校などの要請に応じて,法務省の職員を講師として派遣し,教員や児童・生徒に対して法的なものの考え方などについて説明する法教育授業を実施している(第2-52図)。
    第2-52図 職員による法教育授業

(4)租税教育(国税庁)

国税庁は,小学生から社会人手前までの子供や若者が租税の意義や役割を正しく理解し,健全な納税者意識を養うことができるよう,租税教育推進関係省庁等協議会(国税庁,総務省及び文部科学省で構成)や民間団体と連携しながら,以下の取組を行い,租税教育の充実に向けた環境整備や支援に努めている55

  • 都道府県に設置された租税教育推進協議会(国,地方公共団体,教育関係者などで構成)を中心に,民間団体と連携・協力し,学校からの要請に基づく租税教室への講師派遣や,学校の教員を対象とした講習会の開催,租税教育用副教材の作成・配付,税に関する作文の募集などの実施
  • 国税庁ホームページに「税の学習コーナー」56を開設し,子供が自ら楽しみながら税を学習できるようクイズやゲームといったコンテンツの提供
  • 学校の教員をはじめ租税教育を行う指導者が利用できる電子媒体の教材である「租税教育用教材」の提供

(5)金融経済教育(金融庁)

金融経済教育の意義・目的は,金融リテラシーの向上を通じて,国民一人一人が経済的に自立し,より良い暮らしを送っていくことを可能とすることなどにある。そのため金融庁は,以下の取組を行うことにより,金融リテラシーの向上を図っている。

  • 金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において,「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」を平成26(2014)年6月に作成(平成27年6月に改訂)
  • 大学生に対し,「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を関係団体と連携して8大学で実施
  • 「基礎から学べる金融ガイド」57や「最低限身に付けるべき金融リテラシー」58(第2-53図)を金融庁ホームページで公表し,全国の高校・高専・短大・大学にも無償で配布。また,金融庁・財務局・財務事務所から高校などへ講師を派遣
    第2-53図 金融経済教育のための広報啓発資料

(6)労働者の権利・義務に関する教育(厚生労働省)

厚生労働省は,高校生などのより早い段階から労働法教育を実施するために,高校での労働法教育プログラムや指導者用資料等を作成し,平成29(2017)年3月に配布するなど,高校等における労働法に関する知識のさらなる周知・啓発に取り組んでいる。

(7)消費者教育(消費者庁,文部科学省)

近年,経済の仕組みの変化や規制緩和の流れの中で,消費者トラブルは多発し,その内容も複雑化・高度化している。この中で,個々の消費者が豊かな生活を実現していくためには,子供の頃から経済行為の主体たる消費者としての基礎的な知識を身に付け,主体的に責任を持って意思決定を行いうる能力を持った消費者となることが重要である。

政府では,「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(平成25年6月閣議決定)59に基づき,消費者教育を推進している。

消費者庁は,この基本方針の見直しに向けた論点整理及び若年者に対する消費者教育の機会の充実等の社会情勢等の変化に対応した課題について消費者教育推進会議で検討している。また,消費者教育関連の情報を集約した消費者教育ポータルサイト60において,最新教材等の収集・掲載等の運用などを行っている(第2-54図)。

第2-54図 消費者教育ポータルサイト

文部科学省は,高等学校において,消費生活に係る知識など自立した主体となるために必要となる知識を,生徒が自分自身との関わりの中で捉える工夫など,実社会における課題の解決に取り組む実践的な学習プログラムの開発に係る実践研究を実施した61。社会教育においては,各地域における消費者教育の推進を図るため,消費者教育の実践事例の報告及び多様な主体との連携・協働による消費者教育を促進する場として「消費者教育フェスタ」を実施した。また,地域における消費者教育の推進体制作りを支援するため,消費者教育アドバイザーの派遣や実証的調査研究を行っている。

(8)社会保障制度についての情報提供・意識啓発(厚生労働省)

医療・介護・年金・雇用などの社会保障は,国民が安心して生活をする上で必須の制度である。子供や若者が給付と負担の構造や社会保障の意義を理解し当事者意識を持って考えることができるようにすることが重要である。

厚生労働省は,有識者会議「社会保障の教育推進に関する検討会」において学校における社会保障教育の在り方について検討を行い,今後取り組むべき課題を整理した報告書を平成26(2014)年7月に公表した。また,検討会において作成した高校生向け教材を全国の高等学校に無償配布するとともに,教員向けの研修会を実施するなど,教育現場への普及・啓発活動を行っている。

(9)外交や防衛についての情報提供・意識啓発(外務省,防衛省)

外務省は,外交問題に関する子供や若者の理解を深めるため,以下の取組を行っている。

  • 外務省ホームページにおいて,「キッズ外務省」62をはじめ,動画や画像を活用した理解しやすいコンテンツの制作に努めるとともに,外交をより身近に感じられるよう外務省職員のエッセイやインタビュー記事といった「生の声」を掲載
  • 外務省職員が全国各地の高校に赴き講演する「高校講座」(平成28年度は120校)や全国各地の大学に赴き講演を行う「外交講座」(平成28年度は57講座)の実施
  • 外務省の仕事の内容を紹介し,省内見学を通じて外交に対する関心を高めてもらうため,外務省への訪問を希望する小中高校生の受入れ(平成28年度は,計125件の2,358名が外務省を訪問)
  • 若手外務省職員との直接的な意見交換・交流の機会を通じて,外交政策への理解を深めてもらうための外務省セミナー「学生と語る」の実施
  • 学生を対象としたプレゼンテーション能力を競う「国際問題プレゼンテーション・コンテスト」の開催

防衛省は,防衛省・自衛隊や防衛施策に関する子供や若者の理解を深めるため,以下の取組を行っている。

  • 小中高校生による部隊見学や隊内生活体験,大学生・大学院生による自衛隊生活体験ツアーの受入れ(小中高校生による部隊見学などについて平成27年度2,823件,延べ参加者数49,811人)
  • 自衛隊音楽まつりや富士総合火力演習において,小学生から大学生などを対象とした特別枠を設け優先的に案内
  • 若い世代をはじめとする幅広い層に親しみをもってもらえるよう,「まんがで読む防衛白書」(平成28年版は「防衛装備品と防衛装備庁の任務」をテーマに紹介)を作成
  • ソーシャルメディアを活用。また,防衛省ホームページの一部をスマートフォンでの閲覧用に最適化して提供

2 ボランティアなど社会参加活動の推進(文部科学省)

学校教育では,総合的な学習の時間や特別活動において,子供の社会性や豊かな人間性を育むため,ボランティア活動をはじめとする社会参加活動が行われている。

青少年教育施設では,ボランティアに関する各種事業が実施され,子供や若者が社会性を育む機会が提供されている。独立行政法人国立青少年教育振興機構は,学生ボランティアを支援する大学と地域関係機関の担当者の連携協力を深めるとともに学生間の交流と学び合いの機会を提供するため,「学生ボランティアと支援者が集う全国研究交流集会」を実施している。


53 http://www.moj.go.jp/housei/shihouhousei/index2.html
54 http://www.moj.go.jp/shingi1/kanbou_houkyo_kyougikai_index.html
55 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/sozei_kyoiku/index.htm
56 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/index.htm
57 http://www.fsa.go.jp/teach/kou3.pdf
58 http://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20131129-1/01.pdf
59 http://www.caa.go.jp/information/index17.html
60 http://www.caa.go.jp/kportal/index.php
61 http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/syouhisha/
62 http://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/index.html
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