総合科学技術会議 科学技術システム改革専門調査会 産学官連携プロジェクト第3回会合議事要旨(案)

 

 

1.日時: 平成13年8月31日(水)13:00〜15:00

2.場所: 虎ノ門パストラル新館5F 蘭の間

3.出席者:

           佐々木 元     日本電気株式会社代表取締役会長 (当プロジェクト座長)

 

尾身 幸次   科学技術政策担当大臣

仲道 俊哉   大臣政務官

 

井村 裕夫     総合科学技術会議議員

桑原  洋                    

前田勝之助                   同   (科学技術システム改革専門調査会 会長)

阿部 博之        東北大学長   (当プロジェクト座長代理)

青木 昌彦        スタンフォード大学教授

安西 祐一郎    慶応義塾塾長

小野田 武        三菱化学株式会社顧問

笠見 昭信     株式会社東芝監査役

岸   輝雄        独立行政法人物質・材料研究機構理事長

黒川  清        東海大学医学部長

関澤  義           富士通株式会社取締役会長

瀬谷 博道        旭硝子株式会社代表取締役会長

南谷  崇        東京大学先端科学技術研究センター長

堀場 雅夫        堀場製作所取締役会長

松尾  稔           名古屋大学長

山下 義通     株式会社21世紀産業戦略研究所代表取締役社長

山本 貴史     株式会社先端科学技術インキュベーションセンター代表取締役社長

 

              (招聘者)

              田中 道七        立命館大学副学長

              山野井 昭雄        (社)経済団体連合会 産業技術委員会 産学官連携推進部会長

 

4.議題:

l                  有識者ヒアリング

l                  その他

 

5.議事要旨

(冒頭、今回初めて出席の関澤委員及び堀場委員、招聘者の田中副学長及び山野井部会長の紹介。)

 

(1)有識者ヒアリング

 

①青木委員

(資料1−1に基づき説明。)

 

②笠見委員

(資料1−2に基づき説明。その後、若干の質疑応答等)

 

マッチングファンドで行った研究の成果としての特許については、独法化された後はわからないが、現在は国立大学と企業の間で行われる場合には国と企業との共有特許となる。国との共有は使いづらいという批判があるが、この場合に帰属のあり方をどう考えるか。

 

特許の権利は発明者に帰属すべきというのが原則。したがって、発明者が企業側にある場合には企業に、発明者が大学にある場合にはこれから非公務員型を指向するわけであるから大学帰属を明確にすべき。

 

③田中 立命館大学副学長

(資料1−3に基づき説明。)

 

④山野井 経団連産学官連携推進部会長(味の素技術特別顧問)

(資料1−4に基づき説明。)

 

⑤全体を含めたディスカッション

 

青木委員の方から情報化時代の本質としてのモジュール化の提案があった。産学官連携というテーマでお話になられたと思うが、技術開発においても非常に重要な考え方。特に、ナノテクノロジー・材料のように情報が分散する分野においては、分散されたものをどうやってつなげるかが重要。このときにはこのモジュールをつなげるインタフェースをどうしていくかをよく考えないといけない。次に、笠見委員の若手に世界へ夢を与える、人材の流動性ということを取り上げられた。これをやって行くには、教育や仕事のシステムがグローバルスタンダードになっていかないといけないのではないか。田中先生に関して、技術のロードマップは非常に大事である。化学の世界では相当深刻に取り上げられてきていて、化学戦略推進機構という産学官の組織を作って4年間議論を進めてきた。ここでは、4分の1世紀先をみた戦略を考えてそれを裏付ける技術のロードマップを設定し、経済産業省のプログラムにも反映させている。その他の分野でもやっているだろう。これは、決して産総研の仕事ではない。われわれは1000名の先生が入って対応している。山野井先生のお話にあったように、産業界が大学をあまりにも知らなすぎるのが問題。産業人が大学を評価することをもっとやってもいいのでは。それを産業界の或いは社会の共通財産としていってもいいのではないか。

 

近時産学連携の声が高まったが、何故こんなになったのか考えると、バイオの分野で遅れたということがある。バイオの問題はサイエンスの問題であり、学即ビジネスという世界でこのところ立ち遅れてしまった。これを取り上げることによって産学官連携の契機となるのではないか。ナノテクノロジーも同じような問題がある。実例をうまくとりあげて問題点をとりあげて、一般論ではなく具体的に議論した方がいいのでは。その方がソリューションも出していけるのではないか。

 

次回以降の会合の中で、適宜検討して行きたい。

 

大学と企業の基本的なスタンスの違いは、大学は研究の目的・方法を自由に選択できるというのが大きく違う点。日本の大学が重箱の隅をつつくような形になっていて、実用化を視野に入れたジェネリックなものをしないようになってきているのを変えるためには、規制の緩和・撤廃によりマーケットメカニズムが働くようにすることのほうがメリットがあるのではないか。人事・労務は自主規制の色彩が強い。学というときに国立大学のことをイメージされて議論される。私立大学は国家公務員に関する縛りがないし、日本の学生の75%を抱えているが、大学全般について人事・労務・給与体系等の自由化を促進する方策を具体的に工夫すべき。あとは税制。私大の寄付金税制の問題。国立大学の独立行政法人移行後の寄付金税制はどうなるのかということも検討されているとは聞いていない。イコールフッティングが重要。年金のポータビリティの問題。

兼業については国立と私立の兼業は許可をとればできるが、国立と私立の完全な兼担はできない。それからモビリティのことを考えると年金のポータビリティの問題が大きい。

大学院生の生活費を含めた支援も重要。ポスドク問題ということもいわれているが、ポスドクよりも大学ドクターのほうが大きな問題。ドクターは基本的に非常に狭いと批判を受けているが、ドクターに行きたいといっている人間はクリエイティブなことを求めている学生が多い。この芽を摘んでいるのは、大学院生、特に博士課程学生に対する生活費を含めた支援の問題だと思う。ほかにも工業等規制法などの縛りがある。この辺りの一つ一つに対して緩和・撤廃していくこと、すなわち、パイプのつまりを掃除すれば相当のことはできると思っている。

 

(2)議事要旨の確認等

(議事要旨について了承。また、本日の資料も公表する旨確認。)

 

大臣

本日は、有意義な御意見をいただき感謝。目が覚める思いの御意見もあったし、従来から問題意識を持っていた点もあった。長い間日本の経済社会がキャッチアップの時代に順調であったために、このやり方でいいんだというコンセンサスができていた。その間、世界全体がいろいろな形で大きな変革を遂げていたときに我が国は乗り遅れた。これは、政治も行政も企業も大学もみんなそうだと思っている。これを直して、社会全体のシステムとして競争力をもてるようにしていかねばならない。産業界・学界の方におかれても、新たなマーケットメカニズムの中で競争の中で勝ち抜いていただいて日本全体の力をあげていかねばならないと思っている。

これまで11月19日産学官連携サミットをやるということを申し上げてきた。同時に地方でもやるべきではないかという話もあり、地域産学官連携、地域クラスターの形成ということで、各地で産学官連携サミットを開催し全体として盛り上げていこうと考えている。別にその地域の中だけで産学官連携をする必要はないが、日本全体を動かすという観点から、中央だけでなくて地方においても、クラスターという意味も含めて、連携を進めて行きたいと思っている。地域科学技術の振興というテーマで、産学官連携、大学発ベンチャー、中小企業の技術開発などのキーワードで各地で産学官連携サミットをやっていただき、日本全体の流れを作って行きたい。今年度中に主な地域ではすべて開催し、自分もできるだけ参上し旗を振りたいと思っている。

もう一つは、来年度予算、補正予算において、地域の科学技術振興を政策の柱に上げていきたい。特に補正予算においては、今まで道路・橋といったディマンドサイドのものを多くやってきたが、サプライサイドという意味で産学官連携に補正予算を使っていきたいと考えている。地域における中小企業の技術開発とか、大学発ベンチャーとか、産学官連携、コーディネータといったところのてこ入れに補正予算を出して行きたいと思っている。3000億から5000億という額を考えており、科学技術の世界では一桁大きい施策になる。産学官連携に関しては、これまで十分な予算措置がなかったが、各省を経由して、予算措置の面からも支援をしていこうと思っている。道路等の公共投資のように箇所付けだけすればいいというものではない。具体的な案を詰めていくのは、手間はかかるし使い勝手は悪いが、このような模索をする中で、現場で産学官連携の活性化が進むのが重要だと思っている。

先ほどから出ている制度改正についても直してうまくいけるような体制を政策的にもっていきたい。本日の会合でも出た制度改正の部分についてはレポートとして書き込んで、これをある種の意思統一として、各省に受け止めていただいて、全部の壁を取り除き、これを活用して、意欲のある大学等が活性化して発展できるよう、また、競争できるような枠組みを作っていくのかという点について議論いただきたい。それを政治・行政にのせて、1から2年のうちに日本の産学官連携とか企業と大学の連携、ベンチャーの育成などのルールについて、社会的な風土・体質も含めてがらっと変えていきたい。

 

(3) その他

 次回会合は、9月26日(水)15:00〜17:00に開催予定。

以上