MITの技術の所有、配分及び商業化についてのガイド(仮訳)
Guide To The Ownership, Distribution and Commercial Development
Of MIT Technology
1999年6月
第一章 はじめに
1.0 知的財産及び関連権利
この文書は、MITの教員・スタッフ及び学生とMITのプログラムに参加するその他の人々が開発した技術の所有、配分、商業化について取り扱う。この方針は、メインキャンパス、リンカーン研究所およびその他のMITのプログラムに等しく適用される(リンカーン研究所に雇用された者はこの書類の目的に照し外部からの支援を受けた研究スタッフと考えられる。)。「技術」という言葉はこの文書では広義に捉え、技術革新、発明、発見、書き物ないしはコンピュータ・ソフトウェアを含む種々の形態の情報も含まれる。
技術の所有と処理を管理する主な権利は「知的財産」権として知られており、これらは第一義的には、法律により与えられる特許、著作権、商標や集積回路のマスクワークの保護をさす。
例えば、技術の配分と商業化は、特許や著作権といった知的財産権の移転又はライセンシングによって実施される。別の例では、技術の配分と商業化は、生物的器官、種の多様性又はコンピュータ・ソフトウェアのケースのように、技術が物理的・実態的な形態となることにより促進され、またはそれによって初めて成立する。
従って、この方針は、知的財産権の形をとった技術に関連する所有、配分、商業化の権利にとどまらず、実態的な形の技術の使用及び配分を管理する方針と手続きを規定する。
以下のアウトラインは、知的財産権に関する限定的な範囲のものである。MITでは、これら権利のあらゆるものに関するさらなる情報は、TLOに問い合わせるべきである。
1.1 特許とその権利
特許は米国特許商標庁から与えられ、米国内での発明の作成、使用又は販売の排他的権利及び登録から20年間の領域と所有を発明者に与えるもの。外国の特許制度は国によって異なるが、米国においては最初に発明を書き記した刊行物の公表から12か月は特許の出願のために権利が許されるという特徴をもち、その期間を優先的期間(Grace Period)という。他のほとんどの国では公表(書き記したものでも口頭でも)より以前に出願されていなければ特許にはならないが、仮に公表の前に米国内で出願されていれば、出願者は12ヶ月の間は米国の外の多くの国で出願の権利を失わずにいられる。
1.2 著作権
著作権法で規定するとおり、著作権の所有者は、作品の複製を作成し、派生的な作品を準備し、公に作品を販売若しくは展示又は実演する排他的権利を有する。
連邦著作権法の下では、著作権は、直接又は機械や器具の助けにより、知覚され、再生産され又は伝達されることができる表現のいかなる有形の媒介物を通じても確定できる「原作が著作者に由来する作品」に存する。
個々の著者にとって、作品の著作権保護は著者の生涯に加えて70年間継続する。雇用者にとっては、作品の著作権保護は公開の日時から95年間継続する。(98年11月現在)
「アイデア」を保護する特許とは対照的に、著作権は、特別の文学作品、音楽作品、コンピュータプログラム、ビデオ、動画、音響録音、写真、彫刻などの「芸術的表現」を対象とするものである。ここに「表現」とは、具体化され、図解され又は説明されるものであり、「アイデア」を保護するものではない。
1.3 商標・サービスマーク
商標及びサービスマークは、ある組織がその財及びサービスについて同一のものと確認し、他の財及びサービスと区別するために採用する言葉、名称、象徴又は図案(又はその組み合わせ)である。合衆国においては、商標の所有は、一般に、財やサービスの起源を同一のものと確認する言葉の使用を通じて得られるものである。89年11月発効の法の規定では、組織は、ある特定の言葉を使う意図に基づき商標の保護を登録することができる。商標及びサービスマークの所有は、連邦又は州に登録するかどうかによるものではなく、商標を使用するかどうかによる。商標及びサービスマークの登録は州及び連邦の双方のレベルにおいても得られる。しかしながら、商標の連邦への登録を申請するためには、州間通商において使用されなければならない。
1.4 マスクワークス
マスクワークとは、半導体チップ製品の、方向付けされ、金属の三次元パターンで、絶縁し、又は半導体の層に代表されるようなイメージに関連する一連のものと定義される。84年の半導体チップ法のもとでは、マスクワークの保護は10年間継続され、マスクワークの資格を与える所有者には、その実施の排他的権利が与えられる。マスクワークは連邦著作権局で登録される。最初の商業実施から2年以内の申請を怠った場合には、排他的権利が決定する。
1.5 有形の研究資産
「有形研究資産」とは、知的所有権のような無形の形態のものとは区別される有形な研究成果のことである。有形資産の例には、集積回路のチップ、コンピュータ・ソフトウェア、生物的器官、工学的プロトタイプ、工学設計、他の物理的に分配できる資産を含む。
しかし、有形研究資産は、しばしば、特許化可能な生物器官や、特許化又は著作権化され有形資産と関係ある無形資産権を有することがあるが、適切な場合には、有形研究資産は、後に説明するが、公式の契約や、融資合意、書簡合意又はユーザーライセンス契約の合意のような契約上の合意の形態をとることで知的所有権保護の安全性を確保することなく分配されることがある。
1.6 業務上の秘密
業務上の秘密に関する法律は、ビジネスで使用されるほとんどいかなる秘密にも適用され、業務上の秘密の所有者に競争上の優位性を与える。それは価値のある所有者の情報を保護するために使用され、ソフトウェアの保護のために共通に使用される形態である。著作権とは異なり、業務上の秘密についての連邦の法令はない。業務上の秘密に関する法令は個々の州によって決定されているが、一般には似通った原則を支持している。このタイプの保護の最も重要な視点は、秘密性である。その保護は、業務上の秘密が維持されている限りは合法的に有効であると言える。業務上の秘密が使用されている場合に保護を維持するためには、秘密を暴露しないように契約的な合意によって秘密へのアクセスの可能な個々の人を縛る必要がある。このような合意は非公表合意又は機密合意と呼ばれる。
研究プロジェクトに関連して使用される第三者の機密のマテリアルの保護に関するMITの方針は、研究所の研究方針声明に明記されており、これはOffice of Sponsored Programsで入手可能である。
第2章 MITの方針の声明
2.0 全般的方針の声明
卓越した教育と研究を公約しているMITの義務を果たすために、MITの研究成果を迅速かつ広く普及することや学者間で自由に情報交換することは必須なことである。所有、配分及び商業化は、公的サービスへのMITのコミットの重要な一面でもある技術移転の文脈の中で問題となってくる。しかし、技術移転は教育と研究に付随するものであるため、関係者の権利を規定し保護せんがために必要最小限の期間を超えて情報の普及を遅らせるべきではない。
2.1 特許、著作権の所有の方針の声明
2.1.5で示す学生の学位論文を除けば、発明、マスクワークス、有形研究資産及びマテリアルの著作権の所有は、ソフトウェアも含めて、MITの教授、学生、スタッフその他MITプログラムの参加者(客員を含む)が作成し又は創造したものは、以下のとおりの取り扱いとなる。
MITの所有
(a)MITの教授、学生、スタッフその他MITプログラムの参加者(客員も含む)又はMITファンドや施設を使用した者が開発した発明、ソフトウェアの著作権、マスクワークス、有形の研究資産及び登録商標は、以下のいずれかに該当する場合、MITの所有になる。
(ア) 知的財産権がMITとのスポンサー研究合意の期間中、ないしは右合意に従って開発された、又は
(イ) 知的財産権が2.1.2に規定するように、MITの管理するファンドや施設を相当程度使用して開発された
(b)著作権化されたソフトウェアを含む全ての著作権は、著作権法に規定される「雇われた業務」として創作され、又は著作権の移転や所有がMITに帰することとしたMITとの書面の合意に従って創作された場合、MITの所有となる。
発明者・著者の所有
知的所有権が、MIT所有として適用される上記のいずれの状態でもない場合、発明者及び著者が特許、著作権、マテリアルを所有する。
2.1.1スポンサー研究とその他の合意
特許:連邦政府がスポンサーした研究合意は法令及び規則に従う。その際、着想した発明や、研究を実施することによって初めて実現した発明について、MITが権利を取得する。MITの所有については、政府に対して非独占的なライセンスをすることと、MITが権利を保持しライセンシングやその他の方法で発明を実用的な応用に発展させる効果的な段階をとることとが条件とされている。
企業がスポンサーした契約では、MITが特許の所有を保持し、スポンサーにはライセンスの権利を得る選択肢が与えられる。
著作権:通常は、連邦政府がスポンサーする研究契約によって、政府には、研究の実施により開発された著作権化できるマテリアルについて特別の権利が与えられる。これらの権利は、政府の中にのみ存在するこのマテリアルに対する権利からなる。しかし、しばしば、それらの権利が、MITに帰属する権利とともに政府に対するロイヤリティー無料のライセンスであることのほうが多い。
スポンサー研究合意の文書により創造された作品の場合には、著作権化できる作品の著者は、報告の様式や、公表の前にスポンサーに予め通知すること等について契約文書があることを知っておくべきである。
全般:MITに所属する者や客員の者はOffice of Sponsored Programs(OSP)の知的財産担当者に研究契約の文言の解釈について情報と支援を求めなければならない。リンカーン研究所のスタッフや客員は所長のオフィスに連絡しなければならない。スポンサー研究の合意の規定は、教授やスタッフによる発明だけでなく、MITが費用を支払っているかどうかに拘わらず、かかる合意によって支援されている研究に参画する学生や客員による発明にも適用される。従って、研究に参加する全ての人は、MITに権利を譲渡するとともに、発明と権利の所有に関する情報の合意に署名する義務があることを周知徹底することが不可欠である。
2.1.2 MITの管理部門の利用
MITの教授、学生、スタッフ、客員や他のMITファンドや施設を相当程度使用しているMITプログラムの参加者によって、発明、ソフトウェア、その他の著作権化できるマテリアル、マスクワーク、有形研究資産が開発された場合、MITが特許、著作権、又は他の有形な知的財産を所有する。仮にマテリアルがスポンサー研究や第3者の権利を規定する合意によるものでなければ、MITのファンドや施設が相当程度使用されたかどうかが、発明者/著者の研究所の所長か部長により精査され、付録Aの様式1の形式の勧告がTLOに対して発出される。
MITは、「相当程度の使用」には、オフィス、図書館、マシンショップ又はアテナ・プロジェクトのデスクトップワークステーション、通信及び保管サーバーの使用をもって、MITの空間や施設の相当程度の使用とは解釈しないし、制約のない勘定から支払われる給与もMITのファンドの使用とは解釈しない。ただし、あるマテリアルの開発を支援するために特別に支払われているファンドのケースは例外である。
教師との共同開発によるテキストは、仮にテキストがテキスト開発支援のための特別のMIT経営ファンドから支出されているのでなければ「相当程度の使用」のカテゴリーからは除外される。
一般に、以下のケースの場合には、発明、ソフトウェア又は他の著作権化可能なマテリアル、マスクワーク、有形研究資産が、MITファンド又は施設を使用して開発されたものとは考えない。
(1)制約のないファンドの最低額のみが使用されている。かつ
(2)発明、ソフトウェア、著作権化可能なマテリアル、マスクワーク、又は有形研究資産が、研究支援体制又はスポンサー・プログラムの下で発明者/著者の研究のために割り当てられた範囲の外で開発されている。かつ
(3)相当程度のMIT施設の使用時間が最低時間のみであり、又は相当程度ではない施設や設備が使用されただけである。オフィス、図書館、マシンショップ施設、伝統的なデスクトップのパソコンやアテナ・プロジェクトなど、相当程度とは考えられない施設や設備を使用した。かつ、
(4)開発が発明者/著者の雇用時間外の人件費の中で実施されている。
発明、ソフトウェア又は著作権化可能なマテリアル、マスクワーク、有形研究資産が、スポンサー研究や他の合意(設備合意)によるものでないが相当程度のMITファンド又は施設を使用して開発された場合、TLOは、その裁量で、公共の利益に合致するべく、発明者/著者に、排他的又は非排他的なロイヤリティーベースのライセンスを行う。発明者/著者は、知的財産権の商業化において技術的、財政的な成果をあげなければならず、もし発明者や著者が合理的な期間内(一般には3年以内)に効果的な普及を達成できなかった場合には、TLOはライセンスを終了させる権利がある。また、この方針のガイドの下で、ロイヤリティを共有する権利を延長することで、ライセンスを発明者/著者に付与することができる。このようなライセンスが発行された場合、発明者/著者は、特許権の申請、実行、維持の費用を引き受けることが要求される。
2.1.3 雇用による役務
雇用されている者:「雇用による役務」は、法に規定されているように、著者の雇用の期間中に考案された役務の成果をいう。この場合の役務の成果たる著作権は、雇用者に帰属する。たとえば、スタッフ・プログラマー又は大学刊行物のライターに与えられた役務の成果は、著者の雇用の期間に創作されておりMITの所有権と考えられる。これが、すべての雇用による役務はMITが所有するというMITの方針である。
雇用されていない者:著作権法の下では、命令により雇用されていない者が行った役務の著作権は、特に契約文書がない場合には、命令した者ではなく著者の所有となる。すべてのMITの関係者は、個別に契約を行う際には任命された役務の所有がMITに属するべく必ず書面で合意するようにとの注意を受けている。ただし、特別の状況が適用され、著者が所有を保持するという相互の合意がある場合を除く。
2.1.4 独立による役務
MITは、教授、スタッフ、学生が任命された研究の範囲外でMIT(管理的資源)を相当程度は活用せずに行った書籍、論文及び他の学究的刊行物、又は、ポピュラー小説、詩、樂曲の作曲、他の芸術的な想像力による役務の所有権を主張しない。
さらに、スポンサー研究又は他の合意の規定、著作権法の運用又はMIT方針の結果として、このような学究的又は芸術的な役務の著作権がMITの所有に存するような状況の中で、MITは、著者の要求に応え、又はスポンサーや研究所長、部長の意向と合致する程度まで、この役務の著者に著作権を与える。
2.1.5 学位論文
学位論文の著作権の所有は、学部規定2.71に規定されている。学生は、以下に当てはまらない学位論文について著作権を有する。
(i)学生が、MITの管理するファンドからの賃金、給与、手当て又はグラントの形態の財政的な支援を受けて行った研究を含む場合、又は
(ii)著作権の制約を課すような条件の下で、MITから提供された施設や設備を全面的に又は一部使用して実施された研究を含む場合。
学生が著作権の所有権を保持する場合でも、学生は、学位論文のコピーを作成し、公然と配布することについてのロイヤリティー無料の許可をMITに認めなければならない。
NOTE:著作権の制限がなくて、MITの施設や設備を相当程度使用した場合、上の(ii)によって、学生は学位論文の著作権を有する。しかしながら、学位論文に含まれるソフトウェアコード、特許権化可能な課題や他の知的所有権は上の2.1.2の項に従う。
2.2 商標・サービスマーク
MITで開発された財及びサービスに関する商標及びサービスマークは、MITが所有する。
2.3 ソフトウェアの取得
MITで使用されたソフトウェアやデータベースがユーザー又は第三者に所有され、かつ著作権法や他の法令により保護されている場合であっても、ライセンス又は他の契約合意に従わなければならない場合であっても、MITの方針は、ユーザーは、ソフトウェア又はデータベースの所有者によって課されるいかなる法的な制約に従うということである。ソフトウェア又はデータベースの所有者は、その制約の内容をMITに通知する責務がある。
第3章 技術評価、保護と普及
3.0 責務
TLOは、MITの技術を公共の使用と利益のために移転することを容易にする責務を負う。TLOは、この第三章に述べるとおり、評価し、所有権の保護を獲得し、研究目的の技術の分配を支援する。TLOは、また、第4章で述べるとおり、潜在的な市場を明確に示し、ライセンス合意の交渉を行うことにより選択された技術の商業的な開発を支援する。
3.1 公表
TLOとのコンタクトを行う最初の段階は、通常は、MITの「技術公表様式」(付録Aの様式2参照)を使用する。リンカーン研究所は例外で、リンカーン研所長事務所からの手続き様式が先に求められる。「技術公表様式」はTLOで入手できる。「技術公表様式」が提出されると、「技術公表様式」はTLOの行動を開始させる。TLOは、特許化(又は他の保護方法)のための投資及び技術のマーケッティングを行う。技術におけるMITの所有権の譲渡(付録Aの様式1)など特にMITに対して他に要求する文書が添付されていればその限りではない。
スポンサー・プログラム:スポンサー研究の規定や他の合意は、通常、発明の報告、技術データ、ソフトウェアのような著作権化可能な著作物に関する義務を生ずる。特に、スポンサー研究の下で開発された発明及び著作権化可能な著作物があるときは、「技術公表様式」を提出することで迅速にTLOに報告しなければならない。TLOは、研究スポンサーに対するMITの義務を遂行するOSP知的財産官に対して「技術公表様式」のコピーを転送する。
他のプログラム:MITで開発された発明又は技術は、それが雇用による役務かMITのファンドや施設を相当程度使用したものかにかかわらず、「技術公表様式」を使用してTLOに属することになる。個人で所有されている技術は、技術の所有者がTLOが技術の商業化を行うことを望まない限り、TLOに対して公表される必要はない。このような場合、技術は「技術公表様式」を用いてTLOの所有となる。
「技術公表様式」は、TLOに技術を報告するのに役に立つ。ケースナンバーが報告された技術に対して与えられ、TLOライセンシング担当官にそのケースの評価が命じられる。
3.2 特許:保護
特許の保護は、時々、職業的立場などのさまざまな非商業的理由のために求められているが、MITは、仮にその発明が知的に有利なものであり、それにもかかわらずスポンサーに要求されなければ、商業的に魅力的でない発明の保護をしようとしない。MITは、通常、商業的なライセンシングを追求し、スポンサー研究の合意の文書に従うために、発明に関する特許の保護を追求する。発明に関する特許を獲得する手続きは、第4章(商業開発)に述べている。
まず理解しなければならない重要なことは、発明を記述するあらゆる出版物(又は口頭による発表)がその発明の特許を申請する前に外国で特許化が全然なされないようにすることや、出版から1年以内に特許の申請がなされなければ米国での保護が不可能になることである。出版物と特許権の関係については、TLOと議論されなければならず、また、出版が遅れないよう特許の申請を速やかに決定しなければならない。
3.3 著作権:権利の主張と登録
書籍、記事、出版物の著作権の保護を追求するのは、著者を認識し、作品の高潔さを保護するためである。それが重要なのは、MITが著作権化できるマテリアルを商業的出版社などにライセンスし、スポンサー研究合意に従うためでもある。
著作権が確立するのは、有形の媒介物において表現が固定された時である。著作権の法令に述べられている期間中に著作権を維持するためには、著作権の通知が著作権化可能なマテリアルに添付されなければならない。適切な通知を怠った場合には、作品の最初の公表から一定の期間が経過した後に著作権が失われる。
MIT所有の作品について著作権を保護するためには以下の通知が適用されている。
“Copyright c [Year]MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY.
All
rights reserved.”
通知の中の日付は作品が最初に発表された年でなければならない。この表記以外の通知はMIT所有の作品には使用されない。
さらに、著作権保護を追加するため、作品を連邦著作権局にその公式の様式で登録することもある。
著作権の通知及び登録に関する問い合わせはTLOで取り扱う。
3.4 商標サービスマーク:権利の主張と登録
商標及びサービスマークは、MITの活動や行事、若しくはコンピュータ・プログラムのような技術開発に関連するこれらの名称や象徴を保護するために使用される。商標の保護登録の前に、商標のあとの“TM”や、サービスマークのあとの“SM”の称号は、所有権の主張についての適切な注意を与える。商標のための“Rの称号は、連邦の登録後に限って使用される。
MIT所有の技術を保護し、製品、行事、活動、サービス等の起源としてMITを示すための商標及びサービスマークの使用は、TLOの指示のみで定められている。注目すべき重要な点は、商標の保護はマークの掲載者の側にも一定の義務を帯びているということである。したがって、MITを代表する商標及びサービスマークの使用及び登録は、TLOに問い合わせなければならない。
3.5 マスクワーク:権利の主張と登録
マスクワークの保護は最初の商業化の登録から始まる。もし、保護のための登録が最初の商業化から2年以内に実施されない場合には、マスクワークの保護は失われ、著作権の消滅状態(Public Domain)に入ることになる。
マスクワークの権利を保護するためには、マスクワークを組み入れたすべてのMIT所有の半導体チップ製品に以下の通知が適用されなければならない。
“Mask work “M” or (M)MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY”
マスクワークの通知及び登録に関する問い合わせはTLOで取り扱う。
3.6 有形の研究資産(TRP)
生物的マテリアルやコンピュータ・ソフトウェアなどの有形研究資産(TRP)は、しばしば適切に特許化又は著作権化され、そして商業目的でライセンスされている。
しかしながら、これやその他のTRPの形態は、一般的には、商業的ライセンスにあるものも含め、理解のための単純なレターの形式もしくはもっと公式のライセンスの形式で、研究目的のためだけに同時に配分される。
以下のセクションでは、研究および他の非商業的な目的のためのTRPの普及についてのみ取り扱う。TRPの商業的なライセンシングは第4章で取り扱う。
3.6.1 科学研究にとっての成果普及
MITの方針は、学術的な科学とその基礎的な目標の伝統を維持しつつ、科学研究の結果は、他に対してオープンな形で速やかに利用可能となるべきであるということである。学究的な交換や出版を通じた普及の伝統的な方式は、ほとんどのTRPについては十分に効果的であるとはいえないため、MITの方針としては、有形なこれらの研究結果については、また、速やかにオープンな形で他の科学者に非商業的で科学的な研究のために利用可能とされるべきである。ただし、それは、この配分が、安全性の点や、配分の前にTRPが十分に性格付けられて開発される必要性の点のために不適切ということでなく、さらに、そのような配分が他の義務との間で互換可能なものでなければ、という前提である。
3.6.2 TRPの管理
TRPが、スポンサー研究又は他の合意による研究の期間に開発された場合は、開発、貯蔵、配分及び使用の管理は、OSP知的財産担当官やリンカーン研の所長オフィスに相談するべき主任研究員の責任である。また、MIT資源の相当程度の使用が認められれば、TRPの管理は、研究所の所長と学部の長とTLOとで共同で行うことになる。管理の責任には、TRPの分配がこの方針に基づいて科学的使用のために研究所間を超えて作成される場合に、それをやるべきか、やるならいつやるべきかについて決定することまでも含む。
3.6.3 潜在的に商業価値を持ったTRP
商業化の考慮のために科学的な情報の交換を妨げてはならない。しかしながら、TRPは、科学的価値と同様に潜在的な商業的価値を有しており、価値を損なわず商業化を妨げない方法で、TRPを科学的な使用について利用可能にしたいと希望する主任研究員は、TLOのガイダンスを求めなければならない。
3.6.4 TRPの確定
TRPの各々のアイテムは、MITや外部で開発された他の類似のアイテムとは区別可能で明確な認識可能なコードと名前を持たなければならない。適切な認識システムを開発するためにはTLOに相談しなければならない。
3.6.5 生物のTRPの研究仲間への配布
生物的なマテリアルは、多くの場合、特許化できるし、さまざまな特許ライセンスのタイプで商業目的にライセンスできる。それらは、特許の保護の有無に拘わらず商業及び/又は研究の目的に配分可能な有形研究資産の形態をしている。
MITが所有する生物学的TRPは、通常、最低条件のみを付して研究目的のために配分される。いかなるこのような配分も、バイオ材料の商業化や商業利用又は移転はできない受取人による合意に従う。そのようなバイオ材料の使用のための合意の例としては、この方針の付録に示されている(付録A様式3「材料移転合意」参照)。さらに、主任研究員は、その後の使用を管理するが、その際、生物的マテリアルを使用するときの特別の研究プロトコールに従うように受取人に求める。
生物学的TRPを研究所の外の研究仲間に配分するときには、マテリアル及び取扱いの費用は、受取人の負担となり、これらの費用を支出した勘定に戻される。TRPの配分に費用がかかった場合には、会計検査のために適当な文書を残さなければならない。
もし、バイオハザード又は他の特別の生物学的TRPの輸送、貯蔵又は使用に伴うリスクの可能性がある場合、あるいは、もし受取人が診療研究のためにTRPを使用しそうな場合、信頼と保証責任のある否認者の適切な様式で、TLOにコンタクトし、助言を求めなければならない。
もし、生物学的TRPがスポンサー研究合意の下に開発された場合、非商業目的で配分する以前に、TRPに関する契約上の義務の可能性のあるものについて、TLOにコンタクトし、助言を求めなければならない。特許又は特許の適用の一部である生物学的TRPの配分は、TLOを通じて調整しなければならない。
3.6.6 研究目的のコンピュータ・ソフトウェアの配布
MITの所有するコンピュータ・ソフトウェアの研究目的のための仲間への配分は、そのソフトウェアが潜在的に商業的価値を有する場合や、主任研究員がその後の使用を管理したいと希望する場合や、あるいは、スポンサー研究合意に基づくものである場合、TLOを通じて調整しなければならない。
TLOは、商業的価値を維持するのに必要な配分合意の規定を提供し、登録商標や著作権の登録の調整を適切に行う。
TLOは、再生産と配分に関する費用を賄う名目上の総額を受取り人に請け負わせつつ、非商業的な研究使用のためのソフトウェアの配分のサービスを行う。TLOは、郵便料金も含めて管理上の詳細な資金の取扱いのほか、非商業的な使用のためのソフトウェアの提供やこれら費用を学部に戻すことに関係する学部の費用を集金するために調整を行う。
3.6.7 その他TRP
生物学的TRP以外のTRPの配分は、コンピュータ・ソフトウェアのためのこの方針のアウトラインの手続きに従わなければならない。
第4部 商業化
4.0 はじめに
大学の第一の機能は教育、研究および公共サービスであることは永く知られてきた。MITはこの公共サービスの文脈でMIT研究の成果を公共の使用と利益にもたらすためになされた努力を支援している。
多くの場合、単なる研究成果の出版物でもMIT研究を公共に移転するには十分である。そうでなくても、その資源を公共による利用の資するべく製品及びプロセスの開発に投資するため、知的財産権を保護し、ライセンス権を譲渡することにより、企業を奨励することが必要である。
4.1 商業化全般
TLOは、商業化する第三者を明確に示しつつ、技術のための市場の研究を行うことにより技術のライセンシングを追求する。その際、ライセンスを受ける可能性のある者との協議に入り、適切なライセンス又は合意の交渉を行い、進展の監視を行い、MITのロイヤリティ方針に沿った発明者/著者へのロイヤリティの分配を行う。適切と考えられる場合には、MITは、現金のロイヤリティの替わりにエクイティ・ポジションを受け入れる。
4.1.1 発明者、著者の援助
例外はあるが、発明者/著者の支援と協力はライセンスの成功に不可欠である。
4.1.2 発明者、著者の保有する技術
個人的に保有する技術の開発を追求するMITの教員、スタッフや学生は、TLOを通じて、「技術公表様式」を提出することにより、その技術の評価を申し出る。TLOは商業的な可能性を評価し、通常のロイヤリティーの配分方針の下に、その技術がTLOによるライセンシングを受け入れられるかどうか決めることになる。
教員、スタッフ及び学生は、個人が所有する技術を商業化することについて他のメカニズムを使うことも同様に自由であるが、商業化に先立って、技術がスポンサー研究やその他の合意によるものでないこと、ないしは雇用による使役ではないこと、あるいはMITの管理する特別のファンドや施設の相当程度の使用の結果でないことを確かめておかなければならない。仮にこれらの条件のいずれかが適用される場合、発明者/著者は、TLOに知的財産の適切なライセンス、又は第4章に規定するMITの権利放棄を要請しなければならない。権利放棄請求は付録Aの様式1による。
4.1.3 将来の発明のコミットメント
技術の改良が予想されたとしても、将来の発明のライセンスを約束しないのがMITの方針である。補助的な特許やライセンスされたソフトウェアに限定された派生的な著作を扱うことだけが時に例外としてありうる。
4.1.4 コンサルティング契約
TLOは、ライセンス合意の一環として個々の発明者/著者のコンサルタント契約の交渉を行わない。
4.2 特許
4.2.1 評価
いったん発明を公開する「技術公表様式」がTLOに提出されると、指名された技術ライセンシング担当者は、その発明について、特許化の可能性、商業的潜在性、スポンサーに対する義務に関して評価するプロセスを開始する。最初のステップは、典型的な発明者との会合である。TLOは同時に発明者のひとりにTLOのアカウントでMIT図書館のコンピューター化した検索サービスを活用して以前の文献の検索に参加することを求める。企業とのコンタクトは、評価プロセスの関係者として行われる。
4.2.2 スポンサー・プログラム
もし、発明がスポンサー研究のプロジェクトから生じたものであるならば、TLOは特許申請をし、契約条件に沿った適切なライセンシングを交渉する。OSP知的財産担当者は個々の研究合意の特別の特許条件についての情報を求められる。
4.2.3 MITの権利放棄
発明者からの要求があり、そしてMITの裁量によりMITは権利を辞退することもある。それは、それが社会への技術移転を向上し、MITの第三者への義務とも一致し、かつあとに示すような利益相反を含むことがないとMITが考える状況においてである。「辞退」することによって、MITは、MITの発明者が所有権を追求するする方法を明確にしつつ、当該技術の契約上の権利を行使しないことに同意する。発明者は、付録A の様式1の書類を提出することによってMITが辞退することを請求する。
連邦機関がスポンサーの場合、MITによるすべての「辞退」の場合も連邦政府に発明を供与しなければならない。つづいて、発明者は、政府機関に自分自身への権利の供与を直接請求する。連邦の研究合意は、一般に、公共の利益の実施、所有権の譲渡についての連邦政府の承認や、ライセンシングを望むかどうかや、ある種のライセンス権利を連邦政府が保持することに関する義務を条件として、結果として得られた発明の権利を大学が取得すると規定した統一的な特許法に従う。個々の発明者に所有権の取得を認める連邦のスポンサーによる決定は、一般には、連邦政府が、議論の上で自らのためにこれらの権利を保持しつつ、ケースバイケースで行われる。
企業がスポンサーの場合、発明者に有利となるような権利の供与を行う前に、MITは、通常は、スポンサーの承認を求めなければならない。
4.2.4 MITの権利の発明者へのライセンシング
MITの教員、スタッフ及び学生の発明者は、ライセンシングによって技術移転が向上し、第三者に対するMITの義務とも一致し、さらに利益相反を含まない場合には、MIT所有の発明を商業的に発展させるためにライセンスを要求することもある。
4.2.5 利益相反、コミットメント
以下の要素のいずれかは、発明者には4.2に基づき、著者には4.3に基づき、MITの権利を放棄するかライセンシングする前に考慮されるべき利益相反を意味する。
(1) MITの学生への教育的責任に関する有害な影響
(2) 時間ないしはエフォートの方針の規定についてMITに対する発明者/著者の雇用条件に対する不当な影響
(3) 一般公衆のニーズに奉仕するMITの義務についての有害な効果
(4) MITの方針と手続きに規定される潜在的な利益相反
仮に、発明者/著者がライセンスを受けた小規模できちんと管理される企業の普通株か、創立者株又はオプションポジションを保有しているかすぐに獲得すれば、MITは、研究担当副学長の承認を得た場合にのみ、ロイヤリティーの代わりに普通株を受け取ることができる。
もし、発明者/著者がエクイティ・ポジションを持つ企業にライセンスが供与されると、発明者/著者は「相反回避ステートメント」(付録A様式4参照)に署名することを要求される。もし、MITが知的財産権の全部又は部分の代わりに普通株を受け取るならば、MITは、企業に対して、普通株ポジションを保持するか、ないしは受取ろうとする発明者/著者にすべての普通株か、又は知的財産権ないし企業運営の双方に対する発明者/著者の貢献を反映するオプションシェアを与えることを期待する。このような発明者/著者は、ライセンスに対して支払われる普通株のシェアを受取るのではない。MITはこの要素を考慮に入れて企業との交渉に臨む。すべての発明者/著者のため、MITは、MIT方針の下で現金支払いであればMITが彼らに配分されていたであろう比率の普通株を、企業が発明者/著者に配分することを求める。
4.2.6 研究ファンディング株
MIT(TLOを通じて)又はMITの発明者は、以下の場合でなければ、株の利益(ストックス、オプション、ワラント又は株式に転換できるその他の資金ツールを含む)を持つライセンス保持者から研究資金を受け取らない。
(Ⅰ)研究が、ライセンスされた特許の要求のみによる発明や、ライセンスされたソフトウェアの派生的な成果であるソフトウェアまでは到達しそうにない。
(Ⅱ)研究が、発明者のラボグループによって指揮されない。
(Ⅲ)発明者の学生は、ライセンス取得者によって資金提供されるいかなるプロジェクトにも参加していない。
発明者/著者が、小規模企業から研究資金を獲得するために普通株を避けたい場合、MITは、一般的には、ライセンス合意を通じて株式の受取りを避けることになる。そのような場合においては、TLOは、ライセンス合意において、発明者が後日に株式を獲得するような調整をしないよう求め、研究合意の終了後少なくとも2年間までは株式を求める交渉は避ける。
4.3 著作権
4.3.1 TLOによる商業化
MITの所有する著作権化可能な作品は、この方針に準じた他の取り決めがない場合には、通常、TLOを通じてライセンスされる。MITが所有していない著作権化可能なマテリアルは、また、著者が技術公表様式をTLOに提出し、TLOによるライセンスを受け入れた場合には、TLOを通じてライセンスされる。
コンピュータ・ソフトウェア:MITが権利を有するコンピュータ・ソフトウェアは、特許化又は著作権化され、TLOを通じ、様々な形態の特許又は著作権のライセンスによって、MITが商業目的に使用することが可能となる。著者やその学部/研究所は、この方針でさらに述べるとおりライセンシングで稼いだロイヤリティを共有する。著者が研究目的又はTRPとして、商業的にライセンスされたソフトウェアを配分することを望む場合、このライセンシングは、TLOと調整しなければならない。
ビデオ作品:この方針は、MITの施設やMIT内の学部や研究所により特別に委任されたものを使用することにより作成されたビデオ策人の商業化及び所有権を規定していない。合意に基づいて開発されたビデオ作品は、その合意の規定に従う。他のMIT所有のビデオ作品に関する権利の決定は、そのような方針が規定されるまでは、ケース・バイ・ケースでなされる。
4.3.2 MITの著者の権利放棄
仮にそうする権利があるとすると、MITは、著者からの求め又はMITの裁量で、MITが、技術の一般への移転を高め、第三者に対するMITの責務に合致し、以下に規定する利益の相反を含まないものであると信じる状況において「身を引く」ことができる。「身を引く」ことにより、MITは、MITの著者が所有を求める方法を明確にしつつ、技術についての契約上の権利を実施しないことに合意する。著者は、付録Aの様式1の文書を提出することによりMITが「身を引く」ことを求める。
連邦研究合意は、現在は、著作権化可能な技術的なデータやコンピュータ・ソフトウェアに関しては大きなばらつきがあるが、一般には、大学は、著作権を有し、ほとんどのマテリアルの配分を管理する権利を有する。いくつかの有力な組織は、コンピュータソフトウェアについての相当程度の管理ができるが、制約のある環境下でのみ放棄する。
スポンサーがライセンスの権利を得る産業のスポンサーシップの場合、MITは、通常、著者の利益ために、所有権を手放す前にスポンサーの承諾を求めなければならない。
4.3.3 著者の管理の他の形態
MITの第三者に対する責務に合致する場合、MIT教員、スタッフ又は学生の著者は、研究所長や学部の長及びすべての共同著者の合意を得て、MIT所有の作品を商業的に開発するためにTLOにライセンスを要求することや、作品が、ロイヤリティ無料のライセンスで公に流通することを求めること、作品を著作権消滅状態(Public domain)にすることができる。
著者に対するライセンシング:著者は、商業的なライセンスの権利を認めることにより、マテリアルの著作権の管理を求めることができる。
公共の利益に合致すれば、MITは、著者の管理をもとめることができるが、MITは、内部目的の使用の権利や、適切なロイヤリティの支払いの権利、もし、著者が合意したような効果的な普及が達成できなかったときには3年以内にそのライセンスの権利を取り上げる権利により、作品に対する権利を保持する。さらに加えて、そのような取り決めは、4.2.5に述べられているMITの利益相反及びコミットメントの方針に従う。
典型的に多方面の著者と長い開発期間を含む大型プロジェクトに関係するこのような要求は、普及のための最も効果的な道筋を決定しつつ、TLOとの議論と特別の交渉を必要とする。
MITは、この方針の下で90日以内になされる著者の要求に応える。しかし、作品−一般にはソフトウェアであるが−が、適切なアセスメントができるほど十分に開発されていない場合、MITは、著者の要求に応える前に追加的な開発を求めることができる。
著作権消滅状態(Public domain):著者は、もし、たとえば、コンピュータ・オペレーティング・システムのような新しい標準を構築する方法を供給する場合のように、それが広く使用されることを促進するのであれば、コンピュータ・ソフトウェアも含めて著作権化できるマテリアルを著作権消滅状態(Public domain)に置くことを要求することができる。
著作権消滅状態への要求に応えるにあたって、MITは、アクセスの向上のメリット、作品の複雑さ、効果的な公共の使用に向いているかどうか、その品質は維持されるかどうか、及び著者がこの普及の方式を追求する理由について熟慮する。
4.4 商標・サービスマーク
MITが所有する商標及びサービスマークは、TLOを通じてライセンスされる。この手続きのいかなる例外についても、予め研究担当副学長による認可が必要である。
4.5 マスクワークス
MITが所有するマスクワークスは、TLOを通じてライセンスされる。この手続きのいかなる例外についても、予め研究担当副学長による認可が必要である。MITが所有していないマスクワークスについては、MIT関連のマスクワークス開発者によってライセンスがオファーされ、TLOがこれを受け入れた場合には、同様に、TLOを通じてライセンスされる。
4.6 TRP(有形研究資産)
MITの方針では、MIT所有のTRPのいかなる商業的な配分もTLOのみを通じで取り扱われる。ソフトウェアは特許化可能な発明と同様な方法でTLOに提出されるべきで、そのために、最初のステップは準備をし、技術公表様式(付録A様式2参照)を提出することである。
もし、研究活動の結果としてMITで開発されたTRPが商業目的で外部ユーザーに配分される場合、配分合意に含まれていなければならないのは、所有権の使用について記す文言も含めTLOが交渉する規定、MITのTRPやそこから派生した製品に関する制限、有形資産の使用にも関連するようなあらゆる無形資産の権利(特許などの)に関係するものも含めた他の型通りのライセンス合意の文言である。
4.7 ロイヤリティーの配分―一般論
技術ライセンスのためにMITの前年の会計年度に受取ったロイヤリティ収入は、年間に1度、次により配分される。
ステップ
1.全ロイヤリティー収入から15%控除 |
この控除は、TLOの費用を負担するために向けられる。 |
2.その後、現金支払いコストや、ある場合には留保分を控除し、「調整後のロイヤリティ収入」になる。 |
現金支払コストは、特許の申請、行使、維持の費用や特別なマーケティング費用といった特別なケースに直接割当てられる支出である。 MITの次の会計年度中の現金支出コストが見積もられ、将来の収入がなさそうな場合、留保分が控除される。過剰な留保分は、見積り費用が支払われれば、速やかに配分される。 |
3.「調整後のロイヤリティー収入」の1/3を発明者・著者に配分する。
4.「調整後のロイヤリティー収入」の残り2/3は、当該年の学部(Department)ごとの「調整後のロイヤリティー収入」の残りのすべてを集めた当該学部の(又は研究所:注1)プール金の一部となる。その後以下の2つを差し引く。
(Ⅰ)当該学部のすべての発明に要した特許費用で戻らないもの、及び
(Ⅱ)15%の控除を超過するTLO運営費のプロラタ型の費用割当てをされたもの。
15%とTLOの運営費用の現在のプロラタ比率の間の差を引く/加える。
学部のプール金は、実績があ(+)れば、以下に分けられる。
1/2 MIT General Fund
1/2 研究所/学部
もし、学部のプール金に実績がな(−)ければ、General Fundが費用を吸収する。
注 1 学部プールの「学部シェア」の配分は、当該学部が発明を生むもとになった研究契約を管理した組織であれば当該学部へ配分され、さもなければ、学部横断的な研究所が研究契約を管理した場合には学部横断的な研究所に配分される。
注2 ある程度の特許費用はMITの間接経費率の一要素であり、このためすべての研究スポンサーによって負担される。これは、複雑さを避けるため上記の計算からは意図的に考慮されていない。
4.8 ロイヤリティーの配分―特別のケース
場合によっては、個人向けのロイヤリティの配分は、非現実的であるか、不適切である。たとえば、研究所のプロジェクトとしてマテリアルが開発されたり、著者/発明者が容易には特定できないような場合である。TLOのディレクターは、主任研究員(又はスポンサー合意の下でなければ研究所の所長/学部の長)と相談しつつ、開発の状況について確認できれば見直す。一般にこのような場合には、ロイヤリティは、学部又は研究所とMITのジェネラル・ファンドとの間で対等に分割する。個人へのロイヤリティの分配が勧められない場合のような状況では、収入の配分は研究担当副学長の承認の対象となる。
4.9 著作権・特許委員会
現在の学長の委員会がTLOの運営を監督している。この委員会にはTLOが全般的に貢献している技術領域からの代表が含まれる。この委員会は、時々、特定の技術分野の専門家からなる小委員会を設けることができ、その機能は、当該技術の実施に関連する方針を勧告することである。
4.10 利益相反 ライセンシングオフィスのスタッフ
現在及び将来にわたって利益相反が起きないようにするため、TLOの個々のスタッフメンバーは、MITの知的財産をライセンスした非公益企業に個人的に投資してはならない。もし、スタッフメンバーが、ベンチャー・ファンドのパートナーである場合には、そのファンドが投資されているいかなる企業とのライセンス交渉にも参加してはならないし、パートナーに一票投じる人はそのファンドにMIT企業を勧めてはならない。TLOのスタッフメンバーは、また、TLOの公的企業に対するライセンスに関するかれらの知識は、企業の株式に影響を与えかねないようないかなる方法でも普及されないことや、また、知識が彼ら自身や家族、友人又は職場の同僚によって投資目的に使用されないための特別の責任を負っている。(利益相反の追加的なガイドラインは4.2.5を参照)
第5章 教授、学生、スタッフ、客員の責務
5.0 一般的な方針
MITの方針では、MITによって雇用されている個人、ないしはスポンサー研究プロジェクトに参加している個人、MITの管理するファンドや設備を利用している個人は、この方針に記述されているとおり、技術の所有権についての原則を受け入れるべきである。かかる理解を徹底するため、すべての参画者は次の方針に沿った「発明と所有の情報に関する合意」に署名することになる。
5.1 個人の発明と所有の情報に関する合意
5.1.1 誰が署名するべきか
MITの個人、すなわち
(a) スポンサー研究ないしはMITが資金提供するプロジェクトから支援をうける者
(b) 又は、このプロジェクトから給与又は他の支援が受取れるか否かを問わず、またはMITが管理するファンドや施設の利用を相当程度活用することを通じて、スポンサー研究かMITのファンドのプロジェクトの下で、発明を考案し、実践し、或いは技術を発展させることができるポジションにいる者は、「MIT発明と所有の情報に関する合意」に署名しなければならない。この要求は、MITの職員のみならず、客員の科学者やフェローその他の者にも特別に広げて適用することを留意すべき。
5.1.2 管理部門(アドミニストレーション)
個々のMITの研究所や学部は、将来又は現在スポンサープロジェクトに関与するか、MITのファンドや、研究所又は学部が管理する施設を使う可能性を相当程度持つかをしているすべての教員、学生、スタッフ及び客員は、「発明と所有の情報に関する合意」に署名していることを管理部門の担当者を通じて徹底する責任がある。TLOは、研究所や学部のこの要求への遵守状況を監視する。すべての「発明と所有の情報に関する合意」は、1通は署名者、1通は研究所又は学部、もう1通はTLOへ送付するため、計3通に署名しなければならない。
「発明と所有の情報に関する合意」の様式は、TLOから入手できる。TLOはこの合意に関連して生ずるいかなる質問についても手助けする。(付録A様式5及び6参照)
第6部 管理部門(アドミニストレーション)
6.1 研究担当副学長
研究担当副学長は、この文書に関連する解釈について議論となるいかなる問題についても最終決定者である。非常事態の際には、研究担当副学長は通常の手続きの例外についても承認する。
6.2 スポンサープログラムオフィス(OSP)
OSPは、研究グラント及びコントラクトの外部スポンサーとのすべてのMIT合意の交渉・執行・管理の責任を有するとともに、外部グラント及びコントラクトの下で開発された技術におけるスポンサーの権利が保護されていることを保証する責任を有する。OSPの知的財産担当者は、グラントやコントラクトの知的財産の規定の交渉と解釈においてすべての主任研究者とスポンサープログラムの管理者を手助けすることが可能である。
研究のプライオリティは、技術開発のプライオリティに勝る。このように、MITにおける研究の結果についての公共の利用を妨げるいかなるグラントやコントラクトも受け入れられない。不透明な状況や、プライオリティの議論に決着がつかない場合は、研究担当副学長が最終決定者である。
6.3 テクノロジーライセンシングオフィス(TLO)
MITのTLOは2つの主要な目標を持っている。第1は、MITで開発された技術の公共の利用と恩恵に向けて移転を促進することである。第2は、第1と一致する場合、MITの研究と教育を支援する制限のない収入の追加的なソースを提供することである。TLOは、出版、会議やコンサルティングを通じて、通常の技術や学術の情報の流れをさまたげない方法で、MITの技術開発者や企業とともに働く。