資料2

 
総合科学技術会議 科学技術システム改革専門調査会 産学官連携プロジェクト第1回会合議事要旨(案)

 

1.日時:平成13年8月3日(金)16:00〜18:00

2.場所:虎ノ門パストラル新館4F アイリスガーデン

3.出席者

           佐々木 元          日本電気株式会社代表取締役会長 (当プロジェクト座長)

 

尾身 幸次            科学技術政策担当大臣

仲道 俊哉            大臣政務官

 

石井 紫郎          総合科学技術会議議員

井村 裕夫                       

桑原  洋                       

前田勝之助                       同   (科学技術システム改革専門調査会 会長)

青木 昌彦             スタンフォード大学教授

阿部 博之             東北大学長

安西祐一郎           慶応義塾塾長

生駒 俊明          日本テキサス・インスツルメンツ株式会社代表取締役社長

小野田 武          三菱化学株式会社顧問

笠見 昭信          株式会社東芝監査役

岸  輝雄           独立行政法人物質・材料研究機構理事長

黒川  清           東海大学医学部長

南谷  崇           東京大学先端科学技術研究センター長

松尾  稔           名古屋大学長

山下 義通          株式会社21世紀産業戦略研究所代表取締役社長

山本 貴史          株式会社先端科学技術インキュベーションセンター代表取締役社長

 

 

4.議題:

l                  産学官連携プロジェクトの運営

l                  産学官連携施策の現状

 

5.議事要旨

(冒頭、前田科学技術システム改革専門調査会会長及び当プロジェクトの佐々木座長より挨拶)

 

前田科学技術システム改革専門調査会会長挨拶要旨

本年3月に閣議決定された第2期科学技術基本計画に基づいた新しい科学技術政策が始まった。この基本計画では、国家戦略を明確にしつつ重点分野を設けるとともに、産業技術力の強化を目指しており、これを実現するためには効率的な産学官連携が不可欠とされた。産学官連携については従来からその重要性が強調されてきており様々な取組も行われてきているが、研究成果の社会還元という観点からは残念ながら十分な効果を上げ切れなかった。新産業の創出を含めて具体的な成果が上がるよう、産学官連携のシステムを見直すことが喫緊の課題である。このような認識の下、尾身大臣や仲道政務官の指導の下、この課題を専門的かつ集中的に議論するために、科学技術システム改革専門調査会に産学官連携プロジェクトを設置し、メンバーの方々には就任を受諾いただき感謝する。また、佐々木NEC会長には座長をお引き受けいただき感謝する。難しいテーマだが時間も限られている。熱心な議論の中から新たな産学官連携の在り方について具体的な提案をいただけることを期待する。

 

佐々木会長挨拶要旨

手ごたえのあるテーマをいただいた。100日プロジェクトのような取組が必要。委員の皆様におかれては、御多忙のところご足労いただくがよろしくお願いする次第。

 

(1)産学官連携プロジェクトの運営

(資料確認、総合科学技術会議の概要、運営要領(案)についての説明。運営要領については、第4条で当プロジェクトは「原則として公開する」とあったが、制度改革等を議論する会合であり委員に忌憚のない議論をいただきたいという声もあったので、「座長が適当と認めるときは、プロジェクト会合を公開できるものとする。」という趣旨で修正することとなった。第1回会合は公開で実施することとした。)

 

尾身科学技術政策担当大臣挨拶

科学技術の分野では、基本計画が第2期に入った。重点分野を決めて一層の飛躍を目指すことをはじめ、5年間の研究開発投資の目標を24兆円とした。同時に、第1期の反省から、依然研究開発システムに大きな改善の余地があると認識。特に、日本は産学官連携が遅れている。今まで、欧米の国々と比べ大学の頭脳を産業の発展に活用していない。或いは、産学のお互いが連携してお互いに刺激をしあうという点が非常に乏しく、そのため大きなハンディキャップをおっている。米国ではビジネス、アカデミー関係の方々の協力が進んでいるのに対して、我が国においては様々な制度的欠陥があり、また風土の違いもありうまく進んでいない。一つは大学の制度に問題がある。国立大学が公務員であるため、共同研究についても、大学の研究成果を民間の技術開発に指導あるいは協力という形で移転する場合にも、米国では報酬を得られない。日本では、国立大学の規制の中でリジッドな規制があって弾力的にいっておらず、解決していかねばならない。また、風土の問題としては、学問は世俗的なところに使うべきではなく、真理の探究に使うべきであるという考え方があり、民間との距離を遠くさせている。キャッチアップの時代には、欧米の技術を投入し改良の努力をすればよかったが、これからの、世界のfrontrunnerの時代には、科学技術の道のないところに道を作っていかねばならず、いわゆる企業の改良型研究開発では追いつかず、新しい原理の発見・発明等の成果を産業化に結びつけていかねばならない。小泉内閣においては国立大学を独立行政法人にしていくという流れの中で非公務員型ということも打ち出されており、今までの大学の在り方を抜本的に改めていかねばならない、また、民間と大学の協力を強力に推し進めていって、大学の頭脳を日本経済の発展、科学技術の発展に役立てていかねばならない、そういう側面が強くなってきた。このためには制度を改正するシステムを改正すると同時に日本全体の風土も変えていかねばならない。当プロジェクトチームには大事な役割を担っていただかねばならない。

他方、このプロジェクトでの議論と同時に、産学官連携サミットというのも企画している。11月19日に大学側は百あまりの学長総長に集まっていただく。民間側は研究開発に関わりの深い主要な企業百社以上の方に集まっていただく。民間側の代表は、経団連の今井会長、学会の代表は吉川先生にお願いしてつなぎを自分がする。そういう中で、どういう政策をどうしていけばよいか、どういう制度改革をしていけばよいか、既存の制度にとらわれることなくゼロベースで検討いただき、21世紀の科学技術のベストのあり方を考えていきたい。今までの行きがかりをいうのを頭から捨象して、何が産学官連携、科学技術の発展に向けて必要か、一番いい方法かということを議論いただき結論を出していただきたい。その成果をあるべき姿としてわきまえて、政治の場、行政の場で受け止めて変革を行っていく。少なくとも、資金の面、研究開発制度の面では欧米に遜色のないものとしていきたい。皆様におかれては、若者のような気持ちで新しい日本を作ることに力を貸していただきたい。自分もこの職について、科学技術が世界の中でトップ水準となり、科学技術創造立国を目指していく日本の姿勢をしっかり示し、何年か後にはこれが成果として確実にでてくるように全力で頑張っていきたい。

 

仲道大臣政務官挨拶

今、尾身大臣からもお話があったが、産学官連携はこれまでも随分強調されてきたが、いままで障害等もあり十分成果が上がっていない。このたび、尾身大臣のリーダーシップの下でプロジェクトができたことを喜ばしく思っているし、成果のあるものになっていくことを期待しており、科学技術という点でも大きな飛躍につながることを期待している。産学官連携が本当の意味でうまくいくようしていきたい。

 

(2)産学官連携施策の現状

(文部科学省加藤課長説明、経済産業省堅尾課長説明の後、フリーディスカッション)

 

産学官連携については同じ議論が何年も続いており、今、思い切って何をやるかというのがもっとも大事。常に、大学が閉鎖的で「たこつぼ」的といわれている。産業界の問題は大企業指向の人がずっといるので、これを変更するのは並大抵の話ではない。「フルタイム、終身雇用、年功序列、大きな退職金」のシステムできているわけで、日本ではサラリーマンを作ってきており、プロを作ってきているわけではない。それに比べて米国は個人の自立と移動が自由。日本は移動できないシステムで50年間やってきた。これを根底から覆すのは大変。みんな変わろうというのは難しい。

人材が動かせるようにしなければいけない。今のように年金、退職金等のシステムから動くと不利だというシステムでは困る。なぜ、米国の一流大学は全部私立大学なのか、なぜ、75%の学生は州立大学で教育を受けているのか、日本ではなぜ75%の大学生は私立なのか、よく考える必要がある。全員が変わるのは難しい。しかし、変わりたいという馬力のある人間が足を引っ張られないようにすべき。ポジティブなメッセージを国民に見せていくことが重要。変わった人がいるのを知らせることが重要。そうすればシステムの中から必ず人は出てくる。大企業指向もよいが、人とは違ったことをやる人に選択肢を与えることが必要。人の問題である。

 

産学協同を進める上で、組織いじりは賛成ではない。研究開発は人の問題であり、産学官連携も核心は人の問題、人事の問題であり、大学についても非公務員型が絶対必要。

大学発ベンチャーということが話題となっているが、スタンフォードでは大学でベンチャー育成をやっているわけではない。インキュベーター専門の仲介機関は大学の外にあって大学と連携して進めるべきであり、大学の中でインキュベーター機能をやることは慎重に対応すべき。スタンフォード大学のCenter for Integrated Systemでやっていることは基礎研究。産学協同の組織としてStanford Research Instituteを作ったが、結局スピンアウトして、今ではプライベートな組織として存在している。機能分化をして、大学は大学の機能に特化して、産学連携の機能は、大学の近辺に育成することを検討していきたい。ベンチャー投資についても、大学は投資していない。大学のエンダウメントのポートフォリオの選択としてベンチャーキャピタルファンドに投資しているが、国債を買うことと同じディメンションでのこと。ベンチャーへの投資は大学の外にあるベンチャーキャピタリストがやっている。大学と産業界の連携は、両者の区別をなくすのではなく、それぞれの機能を明確にして連携の仲介機関をどうやって育成するかと考えていくべき。

 

抜本的措置が必要だし、産学の役割をクリアに分けていかねばならない。常日頃から人で決すると思っており、つなげる人、両方の知識をもっている人が必要。どういう人が欠落しているかという点について思わぬウィークポイントがあるのに気がついた。大学のうち産学連携の対象になるところは百くらいだが、企業は何万とある。何万もある企業のそれぞれが百の大学にパートナー探したほうが効率的。そう考えるとき、目利き人材がいないのは企業サイド。早急な手当てが必要。自分は既存の企業におり既存の企業をパワーアップしたいという思いは強い。人材の不足を補うシステムを検討させていただきたい。

 

自分も年間2億円で6年間産が応援する基礎研究をやってきた。技術移転はタブーだったが最近はできるようになった。制度が変わり、規制は緩和された。米国は官や大学が主導しなくてもベンチャーはできる。産学連携は、産業側が積極的に金を出してやっている。米国と日本ではベンチャーという観点では大きく違うのは確か。日本ではおかみが主導する体質が抜けていない。こういう場で産学連携を議論するのに反対はしないが、ボールは大学側に投げられたという意識が強い。

文科省、経済省、内閣府の3つの役所はどうリンクしているのか。産学連携が進まない象徴ではないか。個々の問題点の指摘だけでなく、何のために産学連携をやるのかを問い直したい。米国のモチベーションは大企業がつぶれたこと。その狭間で大学発ベンチャーが伸びてきた。日本では入れ替えは殆どない。ベンチャーが出てくるとしても、あっという間に大企業が取り上げてしまう。基本的には産業競争力強化、人材育成でいい。産業界が必要とするところにどうやって人を集めるか。その辺の基本をもう少し考えて対応していくことが必要。筋道を示していくことが必要。例でいい。

 

いかに世界の中で競争力を確保するか、そのために、どうやっていい人材を育成するかが産業界の最重要課題。大企業も今は安定とはいえない。世界各地でそれぞれの状況に応じて、若い人がエネルギーをもって頑張っている。ある人はscientificなところで頑張っており、ある人は自分たちのアイディアが産業界に役立てられないかと頑張っているが、いずれにしても彼らのエネルギー、力強さを感じる。このような若い優秀な人材をどう育てるか。人材がうまく回る社会システムの構築がポイント。ケンブリッジ大学も5年間で大きく変わった。いい人材を育てるためにどこと競争するのか。米国でもスタンフォード大学とUCバークレーがすぐそばにあるが、工学部長がほぼ同時期に代わって人材や成果を競っている。競争原理がベースになっている。学部の枠を越えて競争している。企業も世界で競争せねばならないので外国にも研究所を作っているが、大部分の若い人たちは日本で採用している。そのために大学と良いインターアクションを起こして日本で優秀な人材を育てていきたい。大学のマネジメントと問題意識を共有することが重要。

両省の話を聞いて、1個1個は非常に重要な効果のある施策かもしれないが、トータルとして日本としてどういう社会にしていくかという点が共有できていないと感じた。

 

研究開発と事業と人材育成が混在している。ベンチャー育成は事業の育成で研究開発ではない。人を育てることが重要で、人材のモビリティを上げることが重要。産業界は、給与体系から年金まで自主規制と国の規制でがんじがらめになっていて、学生にインセンティブがない。成功例を作っていく上でも税制改正が重要。失敗する可能性が高いことを学生にやれとはいえない。

寄附の税制が問題だが。私立大学への税金規制はあまり議論されていない。国立大学とのイコールフッティングが重要。同じバックグラウンドで動けるようにせねばならない。国立大学の法人化の議論で税制の問題はどうなるのか議論されているところを聞かない。これからの国に活力をもたらすためには、人材育成のための制度を一つ一つ具体的に乗り越えていくことが重要。

 

民間の研究費が海外の研究機関に流れてしまうのをおそれている。よくみていかねばならない。これだけ議論して何故うまくいかないのか。遅いのか。あるべき論はたくさんあるが、時間の関数として扱われていない。30年かけてあるべき姿にしてもしようがない。どのぐらいの時間で何をするかについて決めることが必要。

 

責任体制の明確化、研究費の配分、評価の責任がどこにあるのかがはっきりしていない。教官の認識の問題をどうしていくのかということも問題。研究費が増加したことで舞い上がっている。これが正当に評価をうけているか、責任を誰がとっているのか疑問。次に、大学は明日の産業に役立つことばかりをやるべきではなく、広い意味での社会貢献をしていくべき。また、中央で何もかもやりすぎている。地域を活用してほしい。

 

尾身大臣

閣議があるので一足先に退席するがその前に一言。これまで議論はなされていても進んでいないといわれてきているが、必ずやるつもり。そのためには何がベストかはっきりさせていかねばならないし、それも聞きっ放しではいけないと思っている。小泉内閣だから小泉流でやる。何が一番かということを議論していただきたい。あと、私学の税制についての指摘があったが、断行するつもり。従来、税制面からの理論武装が弱かったので、理論武装をやって対応する。自分も税調のメンバーでもあるので、よく皆様の考えを身に着けて必要な制度改正をやりたい。

 

当プロジェクトで何を議論するのかということを考えていた。11月中旬にまとめようということだが、何をやるのか。タイムスケジュールを含めたアクションプランを作ってはどうか。

ここは総合科学技術会議の議論である。科学技術政策は戦略的重点化を図っている。一般論としての産学官連携を扱うだけでなく、重点化した部分における産学官連携を考えていくことも必要。

 

アメリカにビジネスハイヤーエデュケーションフォーラムというのがある。最大の課題は教育と産学官連携の議論。アメリカでは産学協力を長くやっているがその中で生じていた問題をどうやって解決していくのか。大学には大学本来の使命であり、一方産業界の立場もある。お互いの立場を理解しながら対応していかねばならない。

日本と米国は社会システムが大きく違う。米国流をそのまま取り入れることはできない。英国も大きく変わってきている。1968年にリサーチパークを作った。80年代まで延びなかった。それが延びたのは成功例が出たからだと聞いた。成功例を作っていくことが必要。そして英国の例も学んでみるべきである。

 

問題はなぜ実行できないのか、それに尽きる。10数年前から企業が国を選ぶ時代になってきている。少しずつは改善されてきているが、現に自分の会社も半分以上が国外で事業をしているのは、ここ10年我が国の環境整備ができていないからである。企業は、産学連携をやる上でも大学を選ぶ。頭ごなしに海外を選ぶ場合もある。何かがあるから結果的にそうなってきている。本質的な点と、日本のシステムに内在するものとがあるが、その辺を改革しないといけない。

大上段に振りかぶらなくてもアクションプランはできる。日本の特徴を活かしながら、抵抗勢力を排除して成功例を築き上げていく。責任体制、産学連携の司令塔は誰かなども含め、シャープなまとめを期待する。

 

産学連携推進のための処方箋がうまくいかないのは、処方箋がキャッチアップ型から抜け出てないからではないか。科学技術はフロントランナーになったという自覚があるが、そういう中で産学官連携についてもキャッチアップ型から脱却できていないのではないか。縦社会という社会構造が科学技術のキャッチアップにはうまくいった。システムを変えようということになると社会構造そのものに手を突っ込むことになる。そこに隘路が立ちはだかっているのではないか。社会構造は歴史的になかなか変わりにくいものと文化人類学でいわれている。縦社会的な構造を持っている我が国では、米国型のインキュベーションではうまくいかないのではないか。日本型のシステムを考えないといけない。我々自身が、ビヘイビアの中に米国型で行くのを防げる部分があるではないか。

 

アクションプランは今がチャンスだと思っている。研究開発という目でみると量的に主体となるのは学生。学生についての議論が足りないのではないか。大学の中での学生の役割について、学生の人達に新たな動機を与えるメッセージを出していくことが必要であり、今までの大学という常識を超えたメッセージが必要。

産学官連携の中での基礎研究の捉え方。基礎研究については自由度が必要と理解しているが、百くらいあるとすると半分くらいが産学官連携の中で国の研究戦略が練られる、半分は独自判断の基礎研究をやるといった選択があるのではないか。国は研究の自由度を強調しすぎているきらいがある。企業があてにできる基礎研究も重要視してゆく必要がある。

 

仲道大臣政務官

これまでの各省の検討を内閣府で統合した形でとりあげようということでこの会議ができたことを理解いただきたい。小泉内閣では一内閣一大臣であり、その大臣が強い意志で実行すると言っている。

党政調の立国調査会の決議においても、産学官連携をやるということになっている。前向きな議論をお願いしたい。

 

(3) その他

 次回会合は、8月22日(水)16:00〜18:00。

 阿部委員、黒川委員、南谷委員、山本委員よりヒアリングを予定。

以上