総合科学技術会議 科学技術システム改革専門調査会 産学官連携プロジェクト第2回会合議事要旨(案)

 

 

1.日時: 平成13年8月22日(水)16:00〜18:00

2.場所: 虎ノ門パストラル新館5F 蘭の間

3.出席者:

           佐々木 元     日本電気株式会社代表取締役会長 (当プロジェクト座長)

 

尾身 幸次   科学技術政策担当大臣

仲道 俊哉   大臣政務官

 

井村 裕夫     総合科学技術会議議員

桑原  洋                    

前田勝之助                   同   (科学技術システム改革専門調査会 会長)

阿部 博之        東北大学長   (当プロジェクト座長代理)

小野田 武        三菱化学株式会社顧問

笠見 昭信     株式会社東芝監査役

黒川  清        東海大学医学部長

瀬谷 博道        旭硝子株式会社代表取締役会長

南谷  崇        東京大学先端科学技術研究センター長

山下 義通     株式会社21世紀産業戦略研究所代表取締役社長

山本 貴史     株式会社先端科学技術インキュベーションセンター代表取締役社長

 

4.議題:

l                  有識者ヒアリング

l                  その他

 

5.議事要旨

(冒頭、運営要領についての確認及び今回初めて出席の瀬谷委員の紹介。)

 

(1)有識者ヒアリング

 

①阿部委員

(資料1−1に基づき説明。その後、質疑応答等)

 

前段部分、留意事項は全面的に賛同する。しかし、個別事項について、国立大学を全部横並びで捉えた方針・制度整備というように感じられるが、個々の大学の自由意志、自由度の確保も重要なのではないか。

 

ご指摘の点を否定しているつもりではない。産学官連携で大きな課題は、国立大学の産学官連携だろうと思ったので、本日はそれを個別事項として取り上げた。また、競争力ある優れた大学を相当数作るということは、すべての大学をそうするということではない。大学の自由度の確保については全面的に賛成。

 

2(2)で教員が個人レベルで対応することの問題について取り上げられたが、産業界も各社が個別にお願いすることもあるかと思うが、共通的な課題・研究テーマについてはまとまってお願いすることもあるかと思う。これにより資金的にもかなりの金額が動かせるかもしれないし、産業界側も大学側に適切なコメントもできるかもしれない。そういう大きなくくりで産学官連携を考えていくという視点もあるのではないか。半導体では半導体理工学研究センターというものがこういった機能をもっている。これも一つの方向かと思う。

 

半導体理工学研究センターは95年くらいに作られ、大学に対してやってほしい研究を公募というプログラムで実施するというもの。これにより、大学の半導体研究者は非常に刺激を受けた。企業がやってほしいことに大学が提案するという仕組みができた。今までの国の研究費制度にはない緊張感があった。

 

国際的にも魅力的であり、研究競争力において優れ、内外から競って学生や研究者が集まるような大学の整備を是非目指していくべき。個々の事項は重要だが、もっと基本的なポイントが欠けていると思っている。流動性の問題ということなどが挙げられると思っている。大学の立場から切り札になるようなことはどういうことがあるか。

 

処方箋まで申し上げるには至っていないが、日本の様々な改革は国内事情が優先されていることがなかなかいい方向に進まない大きなポイント。国際的に魅力ある大学というのは、アメリカンスタンダードにも十分対応できなければならないし、日本のよさも兼ね備えないといけない。そういう視点で大学の改革を考えているということを抽象的かもしれないが考えている。すると、国公立私立問題もあるがこれはどうでもいいのかといわれるが、最終的にはそういう問題もあるが、第一に既得権の調整だけをしては進まないということを指摘したかった。

 

国際的な一流の頭脳が集まるためには、大学もそうであるが生活環境も重要。テクノパークを作るのであれば、英語でとにかく生活できるようにするなど、周辺環境も含めた国際化が必要。

 

②黒川委員

(資料1−2に基づき説明。その後、質疑応答等)

 

パート3の3年以内の実現の箇所がポイント。

ベンチャーはシステムではなくスピリットであるという指摘であるが、人間のもともとの性格の問題も大きい。したがって、そこのところのインセンティブをどうつけるかということが課題。

 

知り合いでハーバードでの職を3年で投げだして、ヴァンダービルトに行った人間がいる。研究者は、自分のやりたい研究をやれるかという点で動いているというのが米国。Indirect costでインセンティブが与えられれば移動するようになる。

 

Indirect costの問題について申し上げる。諸外国の事例も含め議論し、さらに財政当局との調整等もあって現在の姿になっている。米国ではF&A(facilities & administration)と名前が変わっている。建物を建てるのにお金が必要になる。私立大学は借金をして人を雇ってその研究者が研究費をとってきてF&Aで返す仕組みになっている。F&Aについて、公立大学が低いのは、建物などの施設費は州政府が出すので、facility整備の分が私立大学に比して小さい。私立大学は、今後F&Aの割合をどんどん増やしていってもいいのではないか。たくさん金がとれるところはいい大学であるから仕組み的に成り立つのではないか。問題になっている国立大学の施設整備もindirect costでできるようにしていければというのも一案。

 

③南谷委員

(資料1−3に基づき説明。その後質疑応答等)

 

制度で決めておいて自由にやれるところはどこかをはっきりさせておくのが重要ではないか。

 

UCサンタバーバラに行った青色ダイオードの中村さんには、おそらく、3年間はシードマネーが保証されているが、その後は自分で稼いでくるような仕組みで教授になっていると思う。

自分は、東海大学に移ったときには学部長として移ったが、研究をやらないと面白くないと思ったので、大学に頼んでラボのスペースだけもらって、研究費は出すから研究者は自分で調達し、一人分だけの人件費を見てもらうことで対応することになった。また、外部資金を獲得してきて、それで正式な職員で年俸制で雇う仕組みを作って対応している。しかし、それでも人は来てくれるし、そのような人間がさらに研究費を稼いでくるから研究室は自己増殖してくる。現在、ラボには二十数人の研究者を抱えるまでに大きくなったが、大学から人件費を得ているのは依然一人だけ。これはやる気の問題である。国立大学ではこれはやりにくいので、制度改革のときに重要な視点である。

 

先端研のセンター長のマネジメントの権限がどれくらいあるのか。企業の場合はミッションが決まっているからミッションにしたがって評価もできる。センター長が大きな権限をもって評価し資金等の配分を行うべきだと思う。自由度の確保にはその裏返しとして責任が伴うが、この自由度確保と責任の果たし方がポイントだと思う。

 

権限は学内の他の部局長と同じであり、それほどない。幸いセンターには資金は入ってくるので、今意見発表において申し上げたことは実行できるだろうし、先端研の教授会でも承認されているのでうまくいくと確信している。

 

④山本委員

(資料1−4に基づき説明。)

 

本日は時間の都合もあるので、次回のヒアリングも踏まえ、次々回、9月の会合で改めて議論いただくこととしたい。

 

(2)議事要旨の確認等

(議事要旨について了承。また、本日の資料も公表する旨確認。)

 

(大臣)

本日は、有意義な御意見をいただき感謝。

グローバルスタンダードといわれる中で、日本の大学、企業の研究開発の体制の改革をしていかねばならない。好むと好まざるとに問わず、グローバルスタンダードを採用しないと取り残されてしまう。日本が伝統的な流れの中でできない理由を説明すれば山ほどあるが、できないまま済ませているともう一段と高いところにいけない。是非前向きに改革をする方向でここでも議論いただき、それをあらゆる政治的な力を使って実現して行きたい。当面こうしたいというお考えについても、できるところはどんどんライフワークとしてやっていきたい。次回以降も話を伺うことになるが今回はこういう感じ方をしたということを申し上げる次第。

 

(3) その他

 次回会合は、8月31日(金)13:00〜15:00。虎ノ門パストラル蘭の間。

 青木委員、笠見委員、田中立命館大学副学長、山野井経団連産業技術委員会産学官連携推進部会長(味の素技術特別顧問)の4名よりヒアリングを予定。

以上