機関名 関西大学先端科学技術推進機構・産学連携センター
リンク先 http://www.kansai-u.ac.jp/ordist/

展示内容:
○生分解性繊維

関西大学工学部教養化学教室 戸倉清一、田村 裕

生分解性で生体親和性の生活廃棄物を機能化して付加価値の高いものに転換して再利用する研究を行っている。カニやエビなどの甲殻類やイカの背骨などの主成分であるキチン、海草類に含まれるアルギン酸さらに動物の支持組織に含まれるゼラチンさらに再生不可能な古紙等を医用材料や食品へ応用するための成形加工技術を開発している。カニ、エビ、イカの背骨等の主成分で生体内消化性で低毒性のキチンやキトサンを低毒性溶媒に溶かし湿式紡糸する技術の開発に成功している。
動物の中心支持組織タンパクのコラーゲンを熱編成させたゼラチンは食品や写真フイルム表面加工材として知られているが、デジタルカメラの普及で需要が大幅に減少している。このゾルーゲル変化する低毒性で生体親和性も高いタンパク質である動物由来ゼラチンの水溶液から乾式紡糸で細い繊維に加工する技術も開発している。
さらに、海草類に含まれるアルギン酸は陰イオン性で生体親和性の高い多糖で食品や化粧品、医用材へ応用されているが、アルギン酸繊維と同じ紡糸行程で陽イオン性のキトサンをコートした繊維、ゼラチンをコートした繊維等を作る技術を開発している。

ゼラチン繊維
ゼラチン繊維


○紫外光とオゾンの促進酸化作用を利用した自己循環型装置による排水中の有害有機物の分解処理

関西大学工学部化学工学科 山本秀樹

研究概要
近年、生殖阻害や変異原性の発生などに代表される難分解性で微量の化学物質による環境汚染が問題となっている。これらの難分解性物質は人体に悪影響を与える危険性があるが、従来の処理法では十分に除去されている確証が得られておらずさらに高度な処理法が望まれている。有機物を完全分解に有効とされている方法に促進酸化処理がある。促進酸化処理法は、オゾン、紫外線、過酸化水素、超音波、電子ビームなどの組み合わせによりヒドロキシラジカルを生成し、その強力な酸化力により水中の難分解性有機物を酸化分解する水処理技術である。本研究では、オゾンと紫外光を併用して促進酸化処理を行う装置の開発を行っている。設計・試作した装置はオゾンの生成機構を内蔵しており、生成オゾンと装置内の紫外線ランプからの紫外光による促進酸化作用で有害有機物を含有した排水の分解処理が行うことが可能である。

研究設備
自己循環型促進酸化装置
キャピラリーガスクロマトグラフ
溶存オゾン測定
簡易COD
メーター

今後の発展性と応用可能な分野
本装置は地下水や河川中に含まれる微量の有害有機物質の分解除去を目的としている。本装置による有機物の含有溶液の連続分解試験を行った結果、オゾンと紫外光による促進酸化効果が確認された。有機物の分解率において25%の併用効果が確認された。分解処理後の有機物質は、ギ酸や酢酸などに低分子化していることが確認されている。促進酸化処理は、その強力な酸化分解力で有機物質の完全分解が行え、二次廃棄物の生成がないといった特徴があり、水中のダイオキシンや環境ホルモンの無害化に有効とされている。本装置は廃水処理、浄水・用水、下水処理など他分野にわたる適応が期待される。また、本装置の適応により、オゾンの生成コストの削減や省スペースかにつながると考えられる。
オゾンー紫外光併用処理装置


○未利用資源大根葉からの冷凍食品品質保持剤とその残渣の利用

関西大学工学部生物工学科 河原秀久、小幡 斉

南極などのような低温下で生育することができる生物の低温、凍結耐性に強く関連していることが報告されている不凍タンパク質・ペプチドを工業的に安価に製造する技術を開発してきた。さらに、不凍タンパク質・ペプチド以外にも、生物の凍結耐性に関与している細胞物質、特に、氷結晶制御に関与した物質ついて広く検索を行ってきた。これら物質は、不凍タンパク質[特許公開済](氷結晶の成長阻害・結晶形態制御・再結晶化抑制・凍結温度低下、細胞質膜安定化)、抗氷核活性物質(異物による核形成阻害・過冷却温度低下)、凍結保護タンパク質[特許公開済](凍結による細胞内タンパク質変性からの保護)などである。これら物質を生産する微生物や多く含有する未利用資源を発見している。
これら3種の物質のうち、食品の冷凍保存に有望な不凍タンパク質・ペプチドは、冬野菜などの未利用(大根葉・ゴボウの葉など)あるいは商品価値の低い野菜などから安価に効率的に製造できる技術も構築できている。
また、食品以外の医療分野や研究分野で使用する各種細胞保存液(臓器、血液成分、細胞、受精卵、精子など)においては既に論文などで報告している細菌を用いて製造し、その保存液は全て共同開発などを行なう予定である。
(有)ビック・ワールド(平成15年12月設立)は、これら技術シーズを用いて、冬野菜などから抽出したエキスを主力製品(不凍タンパク質・ペプチド)として製造・販売を行う。この使用の方法は、加工食品への添加、鮮魚・鮮肉などへの浸漬、野菜や果物への栽培時の添加、家畜・養殖魚への吸餌などであり、現在、ユーザーとなる各企業と共同研究により技術を構築中である。
一方、医療・試薬分野においては、上記3種の物質を単独あるいは組み合わせて、既存の保存液の成分(グリセロールやトレハロースやラフィノースなど低分子)と組み合わせて、新たに保存液の開発および製造販売を行う。この対象は、臓器移植用の保存液(既存より保存時間が長くなる)、再生医療分野における幹細胞の保存液(既存の保存液では40%以下になる)、各種家畜などの受精卵・精子保存液(既存より保存率の増大)、血小板やさい帯血などの保存液である。このうち、再生医療分野における保存液は、ビジネス事業としては未開拓分野であるし、保存性の悪い血小板保存などにおいては、事業としてはかなり将来に期待できる。
下図は、氷結晶制御物質を利用したビジネスプラン案である。

キーワード
生分解性繊維
無害化処理
不凍タンパク質

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