機関名 |
関西学院大学 |
URL |
http://www.kwansei.ac.jp/kenkyu/ |
展示内容:
SiCは従来のSi半導体に代わる次世代半導体として期待されている。しかし品質、コストの点で実用化途上にあり、また特許戦略としても従来技術に抵触しない独自の技術体系の確立が求められている。SiCデバイスの開発にはSiプロセスよりも高温環境を必須とする多くの物理的・装置的制限が存在する。そこで関西学院大学では独自のSiCプロセス技術展開を行うことを目的に、まず装置環境の差別化戦略を実施することにし、従来の装置環境では実現が困難であった高温清浄雰囲気下でのSiCプロセスを可能にする“カーボンフリー高温真空加熱炉”を岩崎電気株式会社とともに開発した。本装置は4インチという大面積基板を2000℃以上の高温真空環境下で長時間安定保持することが可能な他、従来技術では実現が困難であった急速な高温アニール処理(3分以内に2000℃)を極めて良好な再現性を保持したまま行える機能をもつ。いずれの機能も、加熱機構そのものの再構築と、従来型高温炉において一般的に用いられてきたグラファイト部材を廃したことにより実現したものである。同製品は岩崎電気株式会社が製造し、伯東株式会社を通じて、平成16年4月より販売が開始された。また、装置内の均熱領域に試料を配置するための坩堝を設置するが、その材料には試料温度以上の高温環境下で安定した化学的・物理的耐性が必要とされる。そのため、我々は化合物の中で最も高い融点をもつ材料の一つであるTaC製坩堝を開発した(兵庫県COEプログラム事業:H15-16)。
開発した新型の高温真空加熱装置およびTaC坩堝の機能を利用して、以下の2つの具体的なSiCプロセス技術への展開を図った。1.SiCパワーデバイス実現に向けて、従来法に比べてSiCエピタキシャル膜の高速成長および欠陥低減を可能にする独自のSiC液相成長技術と、2.反転型MOS構造実現への必須技術であるイオン注入後表面の完全平坦化を可能にするSiCアニール法である。いずれの技術も実現可能性への検討に対して大きな努力が払われてきたにもかかわらず、従来実現が困難であったものである。
1.のSiC成長技術は、成長速度が1時間当たり100μmと従来のCVD法に比べて20-30倍速く、また基板上の欠陥を遮へいするため、高耐圧のパワーデバイス開発に必要な高品質の厚膜成長が期待されるものである。本技術は(財)新産業創造研究機構を管理法人としたNEDO技術開発機構のマッチングファンド事業(H14-15)を受けて開発し、その後さらなる実用化展開を図ったもので、平成17年4月にエコトロン株式会社と(財)新産業創造研究機構との間でその基本特許について独占実施権契約の締結に至った。
2.のイオン注入後のSiCアニール技術に関しては、プロセス温度が1600℃以上の高温かつ短時間での温度制御が必要とされるため、従来の加熱装置では制御が難しく、十分な電気的活性化率を得ようとするとSiC基板表面の不安定性が顕在化するため、“荒れ”を抑制するのが困難であった。今回開発した高温真空加熱炉を用いた短時間アニール機能と、独自に開発したプロセス技術を融合することにより、活性化と表面平坦化という相反する特性が同時に可能になる。現在、活性化後の表面荒れについてはエピタキシャル成長終了後の平坦性とほぼ同一のものが得られており、従来から報告されているSiCアニール技術に対する優位性を実証した。本装置を用いることにより、大面積基板を複数枚かつ同時処理が可能であることから、高スループットを有する生産技術として位置づけられ、岩崎電気株式会社において事業化展開が進んでいる。
<図1>
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キーワード |
SiC液相成長 |
SiCアニール |
高温真空加熱炉 |