展示内容:
多くの上皮性癌細胞は、ムチンと呼ばれる糖タンパク質を産生し、癌組織や癌患者の血液中に分泌する。これらの物質の中には癌のマ−カ−となっているものもある。また、一般的にこのような物質が血流中に多く存在する癌患者の5年生存率は低いことが知られているが、生物学的な意義についてはほとんど解明されていない。我々はこの物質がリガンドとなり免疫機構に影響する二つの現象を見いだした。単球/マクロファ-ジ上のスカベンジャ−リセプタ−を介してムチンは単球/マクロファ−ジを活
性化し、IL-1などのサイトカインやPGE2を産生する。癌組織における活性化は過剰なPGE2の産生をもたらし、VEGFの産生、アポト−シスの抑制、免疫機構
の抑制などをもたらす。また、ムチンは多くの免疫担当細胞に発現しているSiglec familyに認識される。多くのSiglec
family分子は細胞内に抑制性のシグナルを伝達する。これらの解析を通して以下のような臨床的応用が可能であると考えられる。
(1)担癌状態における免疫能力の回復
(2)免疫担当細胞上のSiglec familyを介した白血病の治療
(3)B細胞上のSiglec2を介した免疫抑制による抗アレルギ−剤の開発
(4)NK細胞上のSIglec7を介した免疫抑制による免疫抑制剤の開発
|