人工知能と人間社会に関する懇談会 意見募集の結果について
背景
近年の人工知能の進歩と社会への普及のスピードは著しく、それが人間社会にもたらす利益やリスクについて、世界中で様々な議論が巻き起こっています。 内閣府では、第5期科学技術基本計画で掲げたSociety 5.0の実現の鍵である人工知能の研究開発を健全に進展させるべく、人工知能と人間社会の関わりについて検討を行うため、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の下に「人工知能と人間社会に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)を設置し開催しています。当懇談会では、人工知能と人間社会の関わりについて、倫理、法、経済、社会、教育、研究開発等の点から、「移動」や「製造」等の事例ごとに、具体的に検討を深めていきます。特に、既に実現されている技術、または近く実現される技術が利用される事例に焦点をあてて議論を進める予定です。つきましては、懇談会の議論に様々な御意見を反映させるため、検討項目と事例ごとに、将来に備えて議論しておくべき論点など、意見を広く募集しました。
結果
- 意見募集期間 7月7日~7月31日
- 投稿数 110件(無関係な書き込みは除く)
- 検討事項と事例の内訳
回答された検討事項
意見者の内訳
主な御意見の抜粋
1.人工知能の利活用の推進について
- 認知症のお年寄りの夜中の服薬管理、徘徊(というよりお出かけ)のフォローなど、AI+ロボット技術により早急に支援する必要が有ります。家族が眠れなくなると、在宅介護はすぐ崩壊します。
- 中央省庁が行政・立法業務の支援として人工知能を活用することの意義と可能性および危険性、そしてその場合に必要となる法整備と公務員倫理規定を検討するべきである。
- 教育および基礎研究には、人の行動データのようなビッグデータを匿名化したうえで、使いやすくしていただきたい。
- MRIやCTにおける情報には現在利用されている以上の情報があるのは疑いがない。この内容を発掘する際に、deeplearningを用いた技術開発や、診断開発は今後の医療に必須であろう。また、医療ミスを減らす取り組みにも役立つと考えられる。
- 高齢者・障害者にとって完全自動運転は必須と考えます。過疎地に住んでいても通院・買い物等の自由度が大いに上がるので、QOL向上は確実です。
2.人工知能の研究開発の推進について
- ロボット、人工知能、量子コンピュータにより多くの資金と人材を投入すべきです。何故なら、日本はこれらの研究で遅れをとっているからです。
- 人工知能に対する期待として、人間と自由に会話でき、人間と同様に様々なことを思考し知的作業を実行することができるロボットである。そのようなロボットの研究開発を促進すべきである。
- 教育支援や育児支援にロボット技術を活かす研究開発が世界中の産官学において急速に活発化している。技術視点のみならず、社会的受容性や倫理的側面も含めた研究開発を推し進めていくべきである。
- 高齢化・人口減少社会における問題を解決できる手段として、人工知能の開発と社会実装を強力に推進するべきである。
- 人工知能の研究開発には,倫理面などの規制緩和/規制の再設定,などを考慮する必要がある.つまり,研究開発することだけを先行すると,危ないことをするマシンを作りかねない恐れあり。
3.事故等の責任や法整備について
- 自動運転による事故、自動取引による経済の混乱等のトラブルが発生した際に、事故等を調査する事故調査委員会等の組織体制と権限を事前に定めておいた方がいいと思います。
- 人工知能プログラムを利用したFinTechによる株取り引きが盛んだが、極端な高速トレードは適正に規制すべきだと思う。
- もし、AIが個人または法人の権利行為を代理したり、AIが個人または法人から委任されたり、個人または法人と直接取引したりする立場を想定するのであれば、制限行為能力者制度を参考にAI向けの人格を定義する必要があるのではないか。
- 利用されるデータの収集方法と管理方法、使用範囲に関する法整備を検討すべきであると考えます。
- リスク分析は重要で、現段階でどのようなものが考えられるかを項目別に洗い出しし、現状の法律と照らし合わせた際、何が問題かを考える必要がある。
4.人工知能の悪用、暴走について
- 悪意あるものによってウイルスの作成技術やハッキング技術が向上していくよう設計されたAIがネットにつながると、AIによるクラックやハッキングやウイルスの蔓延が起きる。
- 人工知能プログラムを利用したFinTechによる株取り引きが盛んだが、極端な高速トレードは適正に規制すべきだと思う。
- AIは人類を絶滅させ地球環境の浄化を考えるはずです。
- 戦争での人工知能利活用、政府による人民支配のための人工知能利活用、企業による排人間的な人工知能利活用、マネーロンダリング等といった「悪用」についても分け隔てなく論ずるべきである。
- 技術の悪用によって、望んでいない人の診断を(例えば、音声、表情、行動データによって)第三者が行う可能性
- 超知能(あるいは超知能から生まれるであろう心)が人類に望ましくないものにならないようにするために、即座に超知能を修正することができるように、今から超知能の作り方の指針を定めておくべきである。
5.人工知能による労働力の補完、代替について
- AIを活用するしないについて結論は、日本はAIを最大限活用するしかないと思うのです。労働力不足はますます深刻化しています
- 労働者が少なくなるというのであればロボットや人工知能、ICTを発展させたほうが世界に対して見本になります。
- 人工知能(AI)が進歩していくと、今後10~20年以内に現在存在する職業の約半数の労働者が失業すると予想されているが、時間をかけて職種の転換を図っていくことが必要だと思う。AIが人間の知能を超えたシンギュラリティに達する時点では、AIを搭載したロボットに人間の仕事を担わせるとよい。
- 危険だったり、人が嫌がる仕事をAIロボットにさせるといいと思います。また、動物愛護の観点から過酷な仕事である盲導犬をなくし、ロボットに切り替えてもらいたいです。
- 製造業における人出不足の対策としてAI搭載の製造ロボットの開発・導入の緊急性が高いと考えます。
6.人工知能による雇用喪失について
- AIに代替できる職業では失業者が増え、賃金についても人工知能ロボットを導入するよりも安い賃金まで落ちていくと思うが、どう対策していくのか。
- 職業が技術の進展によって新陳代謝する度合いを超えて、人が人の居場所を人工知能を活用してコスト低減のために代替しようとする行為に対し一定の抑止圧力と人工知能と人類の共生における調和が生まれるよう検討すべきである。
- 人工知能の導入に関しては雇用不安による反発等も考えられます。雇用不安を生まない雇用対策についても検討しておいた方がいいと思います。
- 我々国民の一番の心配は自分の仕事がなくならないかという不安です。とくにこれからの日本を背負っていく今の子供たちや若者の将来が不安です。確実に仕事の量が減ると思います。
7.教育、人材育成について
- 全てをロボット任せにした場合、次の人材・技能者を育成することができず、技術が衰退していく要因ともなる。
- コンピュータの能力は、ますます進化していくであろう。しかし、だからと言って、人間の存在価値がなくなるわけではない。人間は機械とは全く異なる存在であることを前提とした教育・研究が必要である。
- 情報化ですでに意義が問われつつある高等教育の存在がAIによって、ますます希薄化することが予想されます。暗記力計算力などで優劣をつけるのではなく発想力とそれを支える基礎学力に重点を置く価値観への社会全般の転換が急務です。
- 人工知能導入に向けて、すべては国民の理解が必要。理解を深め、正しい情報を認識させる教育が必要。
- 一部のジャーナリストが想像を掻き立て、機械が自我を持って人類と対立するようなストーリーを信じ込ませてしまっているが、科学に基づく正しい知識の啓蒙が必要ではないだろうか?
8.その他
- 人工知能への依存について: AIがなくてはならない社会となったとき、老いも若きもAIに依存し、何事もAIの判断にゆだねることになる。人間の判断能力の退化は著しく進んでしまう。
- 人工知能への倫理の実装について:倫理学では頻繁に議論される「トロリー問題」であるわけですが、人工知能がどのように振る舞うべきなのか?功利主義的にプログラミングするべきなのか、 広い視点から議論して欲しいと思います。
- セキュリティ対策について:多くの実世界のデバイスに人工知能が実装されていくと、そのシステムを狂わせることのできるポイントも増えて行く。また、いろいろなデバイスが連携しあい、サイバーな空間だけにはとどまらない複雑な攻撃も増えていく。そのような、サイバーとフィジカルな空間で複雑に絡み合うセキュリティの脅威にどう対応していくか。
- ベーシックインカムについて:日進月歩で進む人工知能は、もはや多くの労働者達の地位を奪い、また、人間を介しない生産を飛躍的に向上させていることと思われる。来る人工知能社会におけるベーシックインカムのあり方。その検討が喫緊の課題であると思われる。