平成14年度第4回OTO推進会議専門家会議議事要旨


1 日時 平成15年1月20日(月)14:00〜16:00

2 場所 内閣府共用第4特別会議室(406号室)

3 出席者

(OTO推進会議)
大河原推進会議議長、谷村委員(議長)、片田委員、北岡委員、行天委員、黒田委員、佐々波委員、眞木委員、松下委員、權委員、金森委員、兼重委員、高瀬委員、千野委員、西村委員、本田委員、宮智委員、村上委員

(所管省庁)
財務省関税局総務課 振角総務課長
財務省関税局事務管理室 菅原事務管理室長

(OTO事務局)
加藤大臣官房審議官、塩澤参事官、渡辺企画官、岡参事官補佐

4 議題

(1)NACCS料金の低廉化
(2)その他

5 審議の概要

議題 NACCS料金の低廉化

(1)事務局から、提起された課題、所管省庁による措置の概要(案件を巡る背景)及び課題・論点について説明

(課題・論点)
○ NACCSの利用料金は総経費を充足するように決められているので、利用料金を低廉化するためには、総経費を削減させるための方策を積極的に行なうことが重要である。
1) 経費の約8割はシステム開発・運営の費用が占めているなか、システム開発・運営の費用を削減させるためには、どのような方策を行っているのか。かつ、具体的にはどの程度の効果が挙がっているのか。

2) システムの開発あるいは更新時において、費用対効果の面から分析や検証が行われているのか。積極的にそのような分析・検証を行ない、その結果を公表することが必要ではないのか。

○ 通関情報処理センターの貸借対照表をみると、多額の剰余金・引当金(14年3月末68億円)が累積されており、平成13年度単年度においても7億5千万円の利益金が生じている。
3) 1年間のシステム使用料収入が115億円の中で、68億円の累積額はあまりに大きすぎるのではないか。剰余金・引当金は基本的には利用者に還元すべきで、剰余金・引当金がある程度累積した場合は速やかに料金低下に還元するようにすべきではないのか。

4) 通関情報処理センターでは料金見直しの機会については、4年ごとに収支が均衡するように料金を設定し、5年目は全面的に見直し、経済事情等に合わせて弾力的に見直すとしているが、それではあまりに遅く、また弾力的な見直しの詳細な内容が不明なのではないのか。

5) SeaーNACCSに関して、平成15年度は5年目の全面的な料金設定の見直しの年次にあたるが、多額の剰余金・引当金が累積されている現状からみると、料金の低廉化を実現できるのではないのか。

6) NACCSの料金体系では、入力項目が増えるにつれて利用者の料金負担が大きくなるため、求められるべき入力項目については、必要最低限にすべきである。書類申請時において必要なかった情報について、NACCS申請時に入力項目として求められているとの利用者の声があるが、そのような項目については、NACCSの入力項目としてなくすか、あるいは料金負担を求めないようにすべきではないのか。

○ 通関情報処理センターはNACCSの運営・管理の業務を独占的に行っている以上、その料金が適正な価格であるかどうか検証するためには、一層の情報の公開等、利用料金の透明性を確保することは重要である。

7) 「利用料金に係る情報も含め、一層の情報公開に取り組んでいく予定」とあるが、具体的にはどのような項目について情報公開を行なうのか。

8) 経費の総額に対する国の負担部分、民間の負担部分というように負担を官民で分担しているが、官民共通負担部分の割合を59:41(国:民間)と算定している根拠・基準は何か。

○ 「今後の料金体系の見直し」に関して
9) センター内に内部組織として「Air-NACCSの利用料金研究会」を立ち上げたということであるが、有識者を含めた中立的な検討の場である第三者機関を速やかに設けるべきではないのか。

10) また、現在の段階での第三者機関において検討すべき内容、見直しの方向性を具体的に示し、さらに検討スケジュール等を明らかにすべきではないのか。例えば、規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定のあり方や、費用対効果分析等に基づいたコスト削減の方策等について検討すべきではないのか。

11) SeaーNACCSに関しても同様な有識者を中心とした第三者機関を設置し、中立的な立場から多角的な視点で利用料金を決定すべきではないのか。

(2)所管省庁からの説明

1) ア.通関情報処理センター(以下「センター」という。)は、システムの開発に関し、例えば、平成13年の航空システム更改の際には、旧航空システム及び海上システムの業務処理プログラムをできる限り流用するとともに、システム利用者とも協議のうえシステム対象業務の見直しを行い利用頻度の少ない一部業務を廃止することにより業務処理プログラムの開発コストの抑制を図っている。また、この間、開発費用を含むシステム開発全般について外部専門家の意見を聴取し、精査しているところである。
 その結果、専用端末の廃止やハードウェア及び回線の見直しによる経費削減と合わせ、航空システムに係る情報処理設備使用料については、平成12年度の63億円から平成14年度の39億円に大幅に削減されている。

イ.また、センターは、システム運用面に関しては、ヘルプデスクの運用事務、電算機運転代行等を外部委託することにより、経費の削減に努めている。

ウ.今後とも、競争入札の範囲の拡大及びセンターの業務の外部化並びに外部専門家によるコンサルタントの利用などにより、更なる経費の削減に努めていくものと承知している。

2) ア. 費用対効果に関しては、通関時間の短縮を実現しつつ、国際貨物業務の処理に係る人件費の抑制にも寄与しており、これらの効果はNACCSのシステム開発経費に対し十分なものと考えている。

イ. また、企業会計原則を基本に作成される財務諸表の公表に加え、センターの独立行政法人化により第三者機関(財務省及び総務省の評価委員会)による厳正な評価の対象となることや中期計画の公表が義務付けられていることにより、業務運営の一層の透明化が図られることとなると考えている。
参考)申告から許可に要する時間の推移
            航空      海上
   平成 3年2月  2.3時間  26.1時間
   平成13年3月  0.6時間   4.9時間

3) ア.センターの剰余金は、経済・社会情勢の変動により収支状況が悪化した場合においても利用料金を値上げすることなく運営するために備えた積立金であり、また、プログラム変更等引当金は、利用者の要望によるシステムの機能改善等に必要なプログラム改変費用に充てるため積み立てられてきたものであり、このような剰余金、プログラム変更等引当金の活用を通じて利用者に還元されていくものと考えている。

イ.なお、平成14年4月にシステムの利用料金の引下げを行っており、この結果短期的には収入が不足することが予想されるため、剰余金を取り崩すことを予定している。

4) センターは、AirーNACCSの利用料金を4年ごとに収支が均衡するよう設定し、5年目に見直すこととしているが、これはシステムライフである8年を前半と後半に分けて料金設定を行うという考え方に基づいたものであり、これが遅すぎるとは必ずしも言えないものと考えている。

5) ア.SeaーNACCSの利用料金については、平成14年4月より、利用者の最近の利用状況や今後の利用拡大の見込み等を勘案し、大幅な料金引下げを実施したところであり、その結果、短期的には、引下げの影響による収入不足が予想されている。

イ.このような状況にあって、平成15年度に更なる利用料金の引下げを実施することは難しいのではないかと考えている。

6) NACCSの入力項目は、センターとシステム利用者とが協議の上決定しているものである。
 書類申請時において必要なかった項目でNACCSの入力項目となっているものについては、システム処理上必要な項目のほか、書類申請時においても必要に応じ聴取していた事項である。そのため、必要に応じ聴取していた事項については、NACCSでは入力項目としているものの、ほとんどは必須入力項目(必ず入力しなければならない項目)ではなく任意入力項目(分からない等の場合、入力不要な項目)としているものである。
 なお、NACCSの利用料金は、業務毎に定められた料金であって入力項目毎に定められた料金となっていない。

7) センターは、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」に基づき情報公開を行っており、原則全ての情報が開示可能となっている。
 なお、センターのホームページにおいて、従来の財務諸表や行政コスト計算書等に加え、昨年秋にはセンターの予算、システムの利用状況、利用料金の概要等について追加掲載を行っているところであり、今後ともホームページ掲載項目の拡大に努めていくものと承知している。

8) 官民共通負担部分の割合(59:41)は、システムの利用実績に基づき算出した国及び民間それぞれのコンピューターの使用度合いである。
 具体的には、例えば、倉庫業者が貨物の在庫状況を照会するための「保税蔵置場在庫状況照会」業務は民間100%使用、税関が関税の納付を確認するための「領収確認」業務は国100%使用であり、通関手続業務で民間手続を同時に行っているような業務は国、民間双方の使用としているが、このような業務毎の使用度合いを個別業務毎に算出し、これをシステムの利用実績に基づき集計した比率が官民共通負担部分の割合(59:41)である。

9) センターの内部組織として立ち上げた研究会は、中立的な検討の場である第三者機関を準備するための作業を行っており、平成15年度の早い時期には設置できるものと考えている。

10) AirーNACCSの利用料金のあり方について、規模の経済性に配慮した料金体系や費用対効果分析等に基づいたコスト削減の方策等を含め、平成16年度の早い時期までに一定の結論を得られるよう検討して頂くことを考えているが、具体的な細かい内容については、これから第三者機関での議論において決められるものと考えている。

11) SeaーNACCSに関する有識者を含めた中立的な検討の場としての第三者機関の設置については、Air-NACCSに関しての第三者機関での成果を踏まえて検討して参りたい。


(3)委員からの主な発言と所管省庁の応答

ア(委員)
 センターが行った情報処理設備使用料の削減については努力を評価したいが、民間企業ではコストの削減をしようと思ったら、主要な業務費用を削減するのは当然で、一般管理費の見直しにも必ず手をつける。それで、このセンターの給与体系はどういうものを基準にしているか。また、12年度決算書から計算すると、職員の平均給与(約800万円)は民間企業に比べ高過ぎるような気がするし、常勤役員の平均給与も2,000万円を超えており、業務に比して問題ではないか。財務省としては妥当な金額と考えるのか。

(財務省)
 センターの給与は公務員の給与体系に準拠している。センターは規模の割に小さな事務所が多いため、事務所長とか役付の人数が多くなっているという特殊事情もあり、平均給与が若干高くなっているのかと考えている。ただ、それが不適切なものとは考えていない。また、役員の給与については、14年4月に平均1割の給与削減を行い、また、昨年の人事院勧告で公務員給与が下がったことを受けて、今年もまた引き下げを行っている。
イ(委員)
 平成14年9月に立ち上げた「Air-NACCSの利用料金研究会」の構成について伺いたい。平成13年の「次期航空システム利用料金に関する検討会」は、常勤理事が司会をして議事をまとめながら進行していて、それに対して第三者がいなくて、利用者だけが13社出てきても、全く公正を欠く運営である。研究会が似たような構成であったとしますと、その研究会の結論を追認するような第三者機関になっては困る。一体その研究会はどの程度の公正さなり、資料提供が期待できるのか。
(財務省)
 「Air-NACCS利用料金研究会」は、センター内に立ち上げているもので、センターの職員によって構成しており、基礎的情報の収集や基礎資料の整理等、第三者機関へ向けた準備作業を行っているものである。第三者機関を立ち上げた場合には、この研究会は役割を終えるもので、第三者機関の議論に対して何らかの影響を及ぼすようなものであってはならないと考えている。
(委員)
 15年度に中立的な検討を行う第三者機関が活動されるのは非常にいいことであり、大いに期待しますが、それがセンターの研究会の結論を追認するだけの機関になっては困るので、審議の十分な公開をすべきである。十分な公開というのを定性的に言ったところでしようがないので、少なくとも議事の概要ではなくて議事録を必ず公開すべきである。それから、もしも第三者機関の審議のときにオブザーバーとして参加したいという申し入れがあったら、それは必ず受け入れるようにすべきである。それぐらい公開に対して前向きな姿勢で望むべきである。

ウ(委員)
 2つ質問をしたい。1つは、最近日本の港湾とか空港がコスト、利便性、効率性等において国際競争力が失われているのではないかという議論がある。この通関手続という分野に限った場合、現在の日本の国際競争力を示すようなデータがあれば教えてほしい。
 2番目の質問は、コンピューターソフトのアウトソーシングの問題というのは、この件に限らず日本では非常に遅れているというのが定説になっている。1つの大きな原因は、日本ではハードウェアのサプライアの力が非常に強くて、そのソフトウェアについてもどうしてもハードのサプライアの意見に従ってしまい、より広い競争の中で一番コストも安く、効率の高いものが選べないという場合が多いという話を聞く。NACCSの場合は、ソフトのアウトソーシングについてはどんなことをやろうとし、また現にどこまでやっているのかを教えてほしい。

(財務省)
 各国の税関手続システムの利用料の比較は、その仕方が結構難しい。日本は現在輸入申告で見ると従量料金が1件60円、基本料金が月 5,000円で年6万円とすると、 1,000件ぐらい申告する方の場合、合計で1件 120円ぐらいになる。1件当たりどのぐらいになるか従量料金を他国と比べてみると、例えばシンガポール 170円、香港 200円、釜山 240円、ロッテルダムは 130円と日本の方が低くなっており、日本は国際的に見て妥当な水準であると考えている。我々としては、このシステム利用料については、14年4月の引下げにより国際的な競争力は十分有していると思っている。
 第2点目のコンピューターのハードウェアメーカーに引きずられるということですが、基本的にNACCSの場合には信頼性等の観点からメインフレームを使っており、その場合には、メーカーに依存する部分は若干あると考えている。その中でも、メインフレームで行う必要のない業務については、できる限りメーカー依存性のないUNIXサーバーを使い、サーバーとメインフレームとを組み合わせるという形で、できる限りメーカー依存性を低くしていきたいと考えている。
 全体をUNIXサーバーにすることについては、NACCSのシステム全体の信頼性の維持を考えると、現段階ではまだ難しい面がある。将来的にはUNIXの機能の発展により、メインフレームに頼らなくても済むような可能性もあると考えている。また、アメリカ合衆国の税関が今後導入を検討しているACE(エース)というシステムはメインフレームを使うと聞いている。できる限り信頼性を維持しつつ、メーカーに依存する形にならないような方法がないかということは、常なる課題だと考えている。
 netNACCSについては、いろいろな人がアクセスできるようにしようということで、インターネットでNACCSにつなげるように現在準備をしており、3月に稼動する予定ですが、基本料金は無料とすることとしている。また、メインフレームとは切り離しているので、これは競争入札を行いました。今後とも、できるだけ低廉なコストで資材の調達も図っていきたいと考えている。
エ(委員)
 回線使用料等が平成12年から比べると大体半分近く下がって、大変結構ですけれども、剰余金との関係において利益金が生じたというのは、この間下がったのが反映されなかったためか。
(財務省)
 剰余金がたまったということは、要するに収入が支出より多かったということであるが、種々の努力によって支出が下がったこと、また、かつては専用端末を使っていて、専用端末機1台当たりの料金であったので、専用端末機の台数の増加により、利用料収入が伸びたことなど、いろいろな要素があって積み上がったものと考えている。
(委員)
 急速な技術進歩がある中で、それを迅速に料金に反映させるというのが基本線ではないか。
(財務省)
 海上システムについては、新システムのスタートから2年半という短期間で、そのときの収支状況や今後の利用見込み、その当時の利用状況等を勘案して、これだけの値下げを行ったということである。この値下げを行うことによって、当年度は7億円ぐらいの赤字になる見込みであるが、今後利用量が増えれば次第に収支均衡すると考えている。
オ(委員)
 日本の料金は非常に高いので、諸外国の方に貨物が移るというような話を聞いているので、どのくらい需要が増えれば赤字を解消できるのでしょうか。損益計算は、需要予測、収支を4年間に一遍ということですと、かなりぶれるのではないか。
(財務省)
 港湾利用料が高いというのは、必ずしも税関だけでなく全体を言っており、港湾荷役料とかの人件費が高いこと等があって、港湾荷役に伴うコストがかなり高いということである。全体に係るコストを 100とすると、この通関処理のコンピューターに伴う費用というのは1%以内ですので、これが仮に少し下がったといって、需要が急に増えるというのはなかなか難しいのかと考えている。全体として競争力を上げるために、特にスーパー中枢港湾ということで競争力を有しなければならないところについては、コストを3割ぐらい下げるということを国土交通省も言っており、その観点からも我々も協力しなければならないと思っている。
カ(委員)
 剰余金がたまったので、それで料金を安くして、今年は7億の赤字になるので、それは剰余金で取り崩すが、それ以後は収支とんとんになることを目指していると聞いたのですが、剰余金の説明からすると、いわば料金を下げなかったためにたまったものになるわけです。それに対しての還元というのはどういう形で考えているのか。
(財務省)
 還元については、いろいろな制度の改正への対応や、また民間側からの使い勝手向上のための要望があって、毎年プログラムを変更する必要があり、プログラム変更等引当金を取り崩して、これらのシステムの改変を行っており、そういう形でプログラム変更等引当金を還元していくということです。
キ(委員)
 独立行政法人について、諸外国との比較で、我が国の形態が特異性を持っているのか、それとも諸外国と同じようなものなのか。
 それから、8年間の前半、後半というお話があったが、この世界は日進月歩ですので、4年という仕切りでいいのか。
 もう1つ、メインフレーム、UNIXの話ですが、世の中の流れはやはりUNIX、Linuxで動いている。
(財務省)
 独立行政法人はイギリスにある制度で、税関手続システムについて、これに近い形態で運営を行っているのはシンガポールであったと思う。
 そのほかの国でも官民の業務を一緒に行っているところもあるし、あるいは官民の業務を切り離して行っている国もあるかと思う。
 8年間のうちの4年間で料金を設定するのでは遅過ぎるのではないかということであるが、当初、料金を決めるときにどの程度の期間を見込むかということであり、8年のシステムライフであったことから、半分の4年で設定したものである。そのときの収支状況、今後の伸びの予測等を勘案して、弾力的に見直していくものと承知している。なお、海上の場合、スタートから2年6カ月で現実に見直しを行っている。
ク(委員)
 累積された剰余金・引当金が68億円で、13年度単年度でも7億 5,000万円の利益金で、1年間のシステム使用料収入が 115億円の中で68億円の累積額が余りに大きいという論点についての回答は、いずれ金がいるときがあるかもしれないからと書いてあるだけで、この剰余金・引当金の規模が実際の仕事に比べて過大なのか過少なのかというのは、どう考えるのか。また、このお金はどうなっているか。
(財務省)
 過去プログラム変更等引当金を一番多額に取り崩したのが、地方消費税に係るプログラムの変更等で年間25億取り崩した実績もあり、毎年数億円ぐらいプログラム変更のためにはお金がかかるということです。その程度の金額というのは必要と考えている。
 もう1つは剰余金であるが、これは赤字になった場合に備えてこの程度の金額が必要だということである。今回、通関情報処理センターが独立行政法人になるのに際し、今後、積立金としてこの程度は必要だということで我々は説明をして、新法人に承継することとなっている。
この剰余金・引当金というのはどういう形で積んでいるのかということであるが、これは現預金という形で、流動資産85億円のうち現金・預金が74億円ある。
(委員)
 多額の剰余金・引当金が生じた場合には、どういう基準で取り崩すのか。それから、還元の方策として、例えば利用者に還元する何か明確なルールがあるのかどうか。本来はルールがきっちりしてあるべきで、そのルールがないままにやっているので、非常に議論がおかしくなるのではないかと思う。もし、ないとすれば、ぜひ明確なルールをつくっておく必要があるのではないか。
(財務省)
 剰余金については、赤字の場合に取り崩すということになっており、これは赤字のときにしか取り崩せないと法律上規定されている。
 それから、プログラム変更等引当金につきましては、システムの改変をするためのプログラムの変更に係る費用についてあらかじめ予算に定められた金額の範囲内で取り崩すことができると、これは通関情報処理センターの会計規程実施細則で規定されている。
(委員)
 そうすると、一般的には余ったらいかんともなしがたいということになる。今のルールのままでいくと、多額の剰余金が出るシステムになっているのではないか。
(財務省)
 それに対しては、このプログラム変更等引当金により毎年数億円のプログラムの改変を行ってきており、その度ごとに引当金を取り崩しているので、最近かなり減少してきている。
 剰余金については、これは基本的には利益が出れば積み立てるし、赤字になれば取り崩しということで、今20億円ちょっとぐらいあるが、本年度についても7億円ぐらい赤字になるということですので、そこで全体として調整されていくと考えている。
(委員)
 要するに成り行き任せということか。もしどんどんたまっていったら、今のシステムではいかんともなしがたい。それに対する処置は今のルールではないということか。
(財務省)
 今の法律とは現在の法律で、これは10月1日でなくなって、新たな独立行政法人になり、独立行政法人通則法に基づいて運営される。その中で、基本的にはシステムの性格からいって、中期的に収支均衡させるというような考え方で中期計画等は立てられていくだろうと考えている。したがって、一方的に積み上がったり、一方に赤字が累積したりというようなことがないように運営していくだろうと考えている。
(委員)
 どんどん累積してきたというところに問題の焦点があるわけだから、特に独立行政法人になって、今までの法律の枠を外れるならば、なおさら何か1つのルールを明確にされる必要があるのではないか。
 中期計画というのは、中期計画が恣意的に動かされるのではなく、やはり1つのルールがあって、それによって管理されるべきものではないか。
(財務省)
 基本的には言っておられる趣旨はわかるが、今の法律のもとでは、今申し上げた場合にしか取り崩しができないことから、独立行政法人になるときに、今おっしゃった趣旨を踏まえて適切なルールをつくって、それに基づいて中期計画を立てて、これは第三者による評価も受けることになっているので、その辺は努力していきたい。
ケ(委員)
 財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、法務省の6省で、輸出入・港湾手続等の行政サービスをワンストップでやれるというふうにするのは非常に利用者の利便性も高くなり、それから経済性も高まると思う。各省間の話し合いが進んでいるのかどうかよくわかりませんけれども、こういう面についても大いに推進すべきである。
(財務省)
 我々としても、税関が一つのキーの役所でもあるので、他省庁に幅広く呼びかけておりまして、ことしの夏に稼働すべく今最後の作業を進めているところである。
コ(委員)
 独立行政法人をどういうふうに運営するかということは、もう決まってしまっているか、それとも、これから決めるのか。
 普通は、全体の管理費に対して何%ぐらい剰余金があれば運営できるものかとかを考え、余ったものはいろいろな手だてをつくって、余り不当に大きい剰余金が生じないような措置をとります。その辺のフレキシビリティーは、独立行政法人になることによって非常に増すと思う。
 政令、省令でいろいろなことが決められるとなると、政令、省令の内容というのは、やはり官庁が非常に大きな影響力を及ぼすわけです。どういう見通しでやっているのか。
(財務省)
 通則法は成立しており、個別法も今回成立したが、今後、政令、省令、更には、中期計画が今後定められていく。
 基本的な考え方は、もちろん独立行政法人通則法とか、個別法で決まっており、政省令というのは、どちらかというと、非常に技術的なものですので、考え方として、中期目標をどういうふうに設定するかというのはあるとは思う。それで、その目標に対してどのようにその組織を運営していくかということは、これは独立行政法人の長である理事長の権限ということになっている。
 要するに、独立行政法人になることにより、これからは、ある意味で言うと、財務省の関与する部分が減っていくのだろうと考えている。
サ(委員)
 行政機関から独立することによって、どれほど不当な支出が抑えられるかということが1つの関心事です。もう一つの関心事は、国際的な競争力に対してどういう影響があるかということです。
 官庁関係は港湾に生ずる費用の1%ぐらいしかないから全体には大して影響はないというような話でしたが、そうすると残りの99%で、例えば荷揚げの費用が高いとか、そういう税関外の競争力で港湾の競争力が決まるのか。
(財務省)
 国土交通省は港湾全体を見ている立場であるので、韓国とか、あるいは台湾とかと競争していくためには今のコストを下げざるを得ないだろうというふうに見ている。たしか、特定の港に絞ってスーパー中枢港湾というのをつくって、3割ぐらいコストを下げてやっと釜山とかと競争できるようになる。そのために、いろいろなところで経費削減を図っていこうとしており、我々も昨年、海上の利用料金を大幅に引き下げた。
 税関は、現在、主要港湾において、港湾の24時間フルオープン化に対応するトライアルを去年の10月から行っており、他の官庁もできるだけ参加していただくようにお願いしているところで、我々としても、できる限りの努力はしているところである。
シ(委員)
 センターが経費削減のため努力し、料金の引下げを行っていることは評価したい。 もともとNACCSの料金問題を提起した者と話合いをしているのか。
(財務省)
 問題を提起した在日米国商工会議所(ACCJ)とは意見交換しており、平成15年度の早い時期に第三者機関を設置することについても話している。
ス(委員)
 Sea-NACCSの問題について、財務省の回答が、その第三者機関の設置はAir-NACCSに関しての第三者機関の成果を踏まえて検討するとなっているが、この点、同じような基本的なスキームであるので、これは早期にできるだけ同じように第三者機関を設置するということを準備することが必要ではないか。
(財務省)
 更改の時期も違っており、また、海の方は値下げの直後ということもあるが、検討させていただく。ただ、海と空とを両方やるような第三者機関は、申立者のACCJの方は、空についての第三者機関ということにかなりこだわっているので、空については独立して持たざるを得ないと思う。海について、別途持つことについては前向きに検討させていただきたい。
セ(委員)
 そもそものACCJの苦情は、大口需要者のコストは、とにかくコストは下がっているのだから、その分を勘案して大口需要者に対する優遇措置が考えられるべきだということに対して、それがたな上げされずに今度の第三者機関で議論されるのか。
(財務省)
それはきちんと議論するということである。

(5)議長による総括

 NACCSの利用料金については、総経費を充足するように決められているので、利用料金を低廉化するためには、総経費を削減させるための方策を積極的に行うことが不可欠である。平成13年度のOTO対策本部で決定されたように、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発にかかる競争入札の徹底、業務の外部化等を通じて、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進し、速やかに講ずべき措置の具体化に取り組むことはいうまでもなく、システムの開発運営において、費用対効果の観点から十分に検討を行うなど、一般管理費等を含めまして一層の総経費削減策を図るべきである。
 次に、利用料金につきまして、5年目に全面見直しを行い、経済事情等に応じて弾力的に対応するという現行の見直し方法では、あまりにも遅く、やはり迅速性に欠けており、今生じているような多額の剰余金・引当金の累積を生み出す要因となっている。さらに、多額にのぼる剰余金・引当金については利用者に還元するためのルールが明らかでなく、不透明な状況にある。時々の経済事情、財務状況に応じて、柔軟に料金の見直しを行い、剰余金・引当金の利用者への還元するためのルールを明確にし、多額の剰余金・引当金や更に諸経費の削減の成果を速やかに利用料金に還元させて、利用料金の一層の低廉化を実現するべきである。
 それから、「Air-NACCSの利用料金研究会」における検討を進め、再三申し上げているように、早急に有識者を中心とした第三者機関を設置すべきである。その第三者機関におきまして、規模の経済性に考慮しつつ合理的な料金設定のあり方、費用対効果分析等に基づいたコスト削減の方策等、今後の検討内容、見直しの方向性等について検討を行うべきである。その検討を行う際には、広く情報を公開し、例えば議事録の公開や、必要に応じてオブザーバーの参加を認めるなど、できる限り中立性、透明性を確保すべきである。さらに、Sea-NACCSにつきましても、同様な有識者を中心とした第三者機関を設置し、中立的な立場から多角的な視点で利用料金を決定すべきである。

 

(速報のため事後修正の可能性あり)

[問い合わせ先]内閣府市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-0384(直通)