平成11年度第4回OTO専門家会議議事要旨


1 日時 平成12年1月24日(月) 15:00〜16:50

2 場所 経済企画庁特別会議室(436号室)

3 出席者

(OTO推進会議)

大河原推進会議議長、谷村委員(議長)、久米委員、小柴委員、佐々波委員、島野委員、豊島委員、眞木委員、八城委員、山本委員、金森委員、兼重委員、塚田委員、本田委員、宮智委員、村上委員、朴委員
(問題提起者)
議題1:下島東京商工会議所理事・国際部長、岡山東京商工会議所国際部国際経済担当課長 他
(所管省庁)
運輸省 千代海上交通局港運課長 他
(OTO事務局)
経済企画庁 薦田調整局審議官、市川調整局貿易投資対策官


4 議題

(1)港湾業務への市場原理導入

(2)個別に順次審議すべきとされたもの以外の案件についての検討状況

(3)その他


5 審議の概要

議題1 港湾業務への市場原理導入

○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針等について説明

(問題の所在)

市場原理導入の早期実施


○問題提起者より提起内容につき説明

(1)東京商工会議所の会員は、90%以上が中小企業・零細企業であり、現在の経済環境下で、非常に厳しい経営を余儀なくされており、コストの削減は一刻を争う問題である。すでに平成9年に、行政改革委員会から規制緩和の最終意見が出されているので、できるだけ早くこれが実施されることを求める。また、規制緩和が実施された結果として、実際に何がどう変るのかが最も重要である。

(2)海外の港から日本の港までの海上運賃と、日本の港から近隣の市内までの陸上運賃がほぼ同額であることや、国内の港を利用して積替えるより、韓国の釜山で積替えを行った方が安いこと等で示されるように、港湾へ出入りできる運送業者が限られていて競争が働かないことが、日本の国内輸送コストを高すぎるものにしている。

(3)一般の陸運業者の場合、トラックのドライバーが貨物の積み下ろしを当然の業務として行っているが、港湾関係のドライバーは貨物の積み下ろしを一切行わない。同じ陸運業者でも、港湾運送業者は、その他の運送業者より優遇され、何の保護も受けていない他の業種との格差はより著しいものとなっている。このことが輸入品のコストを高め、そのつけを国民全体で負わされることとなっている。

(4)港湾業務に真の競争原理を導入して輸入コストを引下げ、サービスを向上することは、輸入業者やメーカー、消費者にとってのみならず、物流拠点の外国港湾へのシフトを防ぐ意味で港湾関係業者にとってもプラスであり、その利益は国民全体で享受できるものである。過去の経緯はあるにしても、今後、諸外国に負けない港湾業務システムを構築し、日本経済再生の基礎を築いていただきたい。

○所管省庁から対処方針につき説明
(1)港湾運送事業に関しては、国の内外から、荷役料が高い、日曜・夜間荷役におけるサービスが劣っている旨の指摘を受けている。また、香港、シンガポール等東アジアの諸港の荷役量が非常に大きな伸びを示しているのに比べて、横浜、神戸等日本を代表する港の荷役量の伸びがそうなっていないことも認識している。

(2)運輸省としても、その要因が、一つには現行の参入規制と料金認可制により競争原
理が働かないことであると認識しており、現在この点を変えるべく作業を進めているところである。具体的には、昨年6月の運輸政策審議会の最終答申を踏まえて本年1月から始まっている通常国会に港湾運送事業法改正法案を提出すべく準備中であり、これが可決・成立すれば本年内(秋頃)に規制緩和を実施することとなる。

(3)港湾運送事業については、歴史的な経緯があり、戦後の一時期、悪質な事業者が入り込んだり組合活動が盛んになったりして荷役が混乱する状況が発生し、他方で日本の貿易は伸びている時期であったことから、とにかく安定した荷役の体制を作るべきとの要請を受け、免許制による参入規制と料金認可制により、適切な事業者を選別し、その経営の安定化を図る現行の体制が構築されたものである。

(4)その結果、現在では安定した荷役体制は達成されたと評価できる。今後は更に上の目標である経済性、効率性を目指すべきとの要請が強く、このためには免許制は足を引っ張るものであるので、これを廃止すべく作業中である。

(5)規制緩和の実施にあたっては、主要9港(コンテナ荷役の95%、全貿易額の80%)から行い、その後に他の港湾に拡げていくという段階的な方式で行う。また、市場破壊的な競争状態に陥って労働関係が悪化し、港湾という代替手段のない限られた場所でストが常態化してしまうような事態は避けたいため、混乱のない形で規制緩和を進めていく方針である。

(6)港湾の業務は、10人から20人程度が1チームとなって行うため、事業者は一定の労働者を抱える必要があるが、中小企業、零細業者が多いため波動性に対応できず労働力が遊休化してしまう非効率が生じやすい。このため、規制緩和に合わせて事業協同組合化をすすめることで効率化を図っていくべきと考える。

(7)日本の港までの海上運賃と日本の港から近隣への国内運賃がほぼ同額との点については、運輸省として個別に検討はしていないが、一般論として、外航の場合は規模の利益が働いて運賃を低額に抑え易いこと、日本国内での人件費が一般的にどうしても高いこと等が影響しているとみられる。この結果として、港湾諸料金の国際比較においても、日本の港がシンガポール、釜山、高雄等に比べて2倍以上となっている。だからと言って現状は止むを得ないと考えている訳ではなく、港湾運送事業においても、できるだけコストの低減を実現すべく、法改正を始めとする諸作業に取組んでいるところである。

○この後、審議

(委員の主な発言)

(1)行政改革委員会最終意見にある、一体として取組む関係省庁に警察庁と公正取引委員会は入っているか。というのは、同最終意見に欠格事由に暴対法等違反者を追加するとの項目があるが、組織暴力は港湾運送事業法が昭和26年に施行された後に浸透した経緯もあり、そういう状況が根底にある中で規制緩和を実施しても素性の良い民間企業が本当に新規参入でき、コスト低下が真にもたらされるのか、組織暴力が却って蔓延することにならないか、警察は民事不介入の原則を最大限狭めてでも介入してくれるのか、という懸念があるからである。また、素性の良い新規業者が参入しても、組織暴力に関係した既存業者との談合で調整をつけざるを得ず、結局高い談合価格が維持されるという事態も予測されるが、公取も極力乗り込んで行くという用意はあるのか。警察、公取等がそこまで踏み込んで規制緩和に取組むのでなければ、この規制緩和は絵に画いた餅となる。

(2)港湾運送事業法第2条は、はしけといかだの話ばかりだが、現在主流のコンテナ荷役・運送については、改正法案で取扱っているのか。

(3)競争原理の導入でコストが低減するには、素性の良い企業の新規参入が必要である。他方、運輸省の方針では中小・零細業者を協業化して運輸省の指導のもとで規制緩和を行うとのことであり、競争原理導入の趣旨とは相違しているのではないかと思われる。運輸省としては、運輸省主導でなければ規制緩和できない、と考えているのか。

(4)平成9年に行政改革委員会で最終意見が出ているのだから、運輸省としてはこれを受けてすぐに実施への努力をすべきだったと考えるが、何故平成11年6月の運輸政策審議会の最終答申が出るまで対応を遅らせたのか。同じ案件がOTOで過去にも提起されているのだから、審議会に諮らずとも運輸省としてもっと早く実施すべきではないか。保護を続けるほど港湾業務の効率化が遅れることとなってしまう。

(5)料金認可制の下では、荷役料金については、実勢料金が認可料金よりかなり低いレベルにあると言われてきたが、実態はどうか。また、料金届出制の今後の方式について、個別企業が個々に届出を行うのか、業界団体が一括して届出を行うのか。個別企業が個々に届出を行う場合、運輸省としては価格に差異が生じることを想定あるいは期待しているのか。

(6)主要9港以外の地方港についての規制緩和はどうなるのか。

(7)平成9年に行政改革委員会の最終意見が出てから3年目に入っており、この間に日本の港が失ったシェアは相当高いと言われているが、どの程度か。

(8)是非新規参入が保証されるようにしていただきたい。時間軸を年単位で測ってよいのか。極端に言えば、4月1日時点で来年度中というと、実は2年かかることになる。

(所管省の主な発言)
(1)港湾事業は、従来、その労働が苛酷なため日雇い稼業的な労働者を使って行う事業であったこともあり、戦前は、警察が鑑札というものを出して、いわゆる社会規制の下に置いていた。戦後、GHQの指導で自由化されたが、暴力団が入りこみ、悪質事業者が采配を行うようになってしまったため、そうした状況を排除すべく港湾運送事業法における規制がなされ、港湾労働法を制定して、原則職業安定所を通じてしか港湾労働力を調達できないようにするなどして取組んできた。現在では港湾労働から暴力団を一掃することに成功したと考えている。今回の規制緩和は、警察庁とも連携しつつ行ってきている。なお、公取とも意見交換はしており、届出制への移行に伴う新たな料金変更命令等は本来公取的な業務であるが、事業を熟知する運輸省がこれらの措置を行うこととなったものである。

(2)コンテナの荷役・運送については、港湾運送事業法第2条第1項の一般運送事業として従来より扱われており、従来からコンテナ業務に対応したものとなっている。なお、第2項のはしけ、いかだは全く形態の異なる業務であるので、別途の免許が必要であるために区別されているものである。

(3)集約・協業化は運輸省主導でやる、というわけではなく、規制緩和の結果として実現されるべきものと考えるが、時間がかかるであろうため中小・零細業者の再編・効率化へ向けて先ずは運輸省が後ろから押すことで、事業の集約・協業化に向け一歩踏み出してもらえばと考えている。

(4)平成9年の行政改革委員会の最終意見が出た段階では、事業者、労働組合が規制緩和に激しく反対していた。港湾労組は、日本でも数少ない横割の産業別労働組合であり、ストが起これば日本全国の港が機能を停止してしまうこともあり、審議会の場で事業者、労働組合、荷主等の代表者を入れてコンセンサスを得ながら進める必要があった。ある程度のコンセンサスを得ながら進めないと、規制緩和の実があげられないと認識している。

(5)現在、一般認可料金の他に、事業者の個別の事情や経営努力を考慮した特殊認可料金というものがあり、これは実勢にほぼ近く、また、事業者ごとに相違した価格となっている。今後はこの特殊認可料金と同様の考え方が一般的になるとの認識である。

(6)地方港は、事業者も小規模で荷役量も少ないため、大規模業者が参入するとその影響が大きいことから、まずは太宗を占める主要9港にて規制緩和を先行させて行うものである。

(7)過去10年の貨物取扱量のデータでは、香港、シンガポールは7倍に増えているのに対し、横浜、神戸は2倍にも達していない。

○議長による総括
・運輸省においては、事業免許制を許可制へ、料金認可制を届出制へ変更すべく法改正作業を行っているとのことであるので、改正法案の可決・成立後は、本年中に実施するとされた事項を、できるだけ早急に実施すべきである。

・事務局で所管省庁とも調整の上、できるだけ具体的な内容を盛り込んだ報告書の原案を作成し、報告いただきたい。その上で必要に応じ更なる検討を加えることとしたい。


議題2 個別に順次審議すべきとされたもの以外の案件についての検討状況

○事務局から説明

個別に順次審議すべきとされた案件以外の次の14案件について、事務局から問題提起内容、所管省庁の対処方針、その後の状況等について説明。
1-4 イマザリルの使用の許可
1-8 植物検疫基準の見直し
2-3 化粧品のラベル表示方法の変更及び化粧品規制制度改正の実施スケジュールの明確化
4-2 キャンピングカー等に関する車幅の上限の見直し及び特殊車両通行許可等のあり方の見直し
8-2 グルタルアルデヒドの変異原性確認試験方法の国際的整合化
1-1 食品表示規制の弾力的運用
1-2 植物検疫基準の緩和(キウイフルーツ)
1-3 植物検疫基準の緩和(リンゴ)
1-5 酪農産物輸入制度の改善
1-6 海苔輸入手続きの改善
3-1 毒劇物の輸入業登録の簡素化
5-2 建設工事における排他的な物品調達の是正
7-1 韓国の特殊車両の一時的な通関
7-2 阪神地域の港のとん税納付の統合化
○議長発言(総括)
本来なら、事務局からの説明を踏まえ、各委員から意見を聴取することになっているが、十分な時間がないことから、次のような取り扱いとしたい。
(1)問題提起された案件については、11月の推進会議以降、問題提起者の理解、納得を得られた案件、例えば、韓国大使館提起の「海苔輸入手続きの改善」などがあり、評価すべきことである。一方、問題提起者の納得を得られていないものもいくつかみられるが、これらの案件の中には、今後、我が国の市場開放の観点から重要な問題が多く含まれており、それぞれ適切に対応していく必要がある。
(2)そこで、これらの案件について意見のある委員は、事務局に述べること。
(3)今後、事務局と所管省庁は、委員の意見も踏まえ、更なる改善等の検討も含めて引き続き対応を進めること。
(4)その検討結果については、専門家会議に再度報告し、各委員の意見を聴取した上で、これらの案件についての推進会議の意見を報告書に取りまとめる。
議題3 その他
次回の専門家会議の日程について事務局から説明。
以 上

(速報のため事後修正の可能性あり)

[問合せ先]経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-5469 (直通)