平成11年度第5回OTO専門家会議議事要旨


1 日時 平成12年1月26日(水) 14:00〜15:50

2 場所 経済企画庁官房特別会議室(729号室)

3 出席者

(OTO推進会議)

大河原推進会議議長、豊島委員(議長)、行天委員、久米委員、眞木委員、山本委員、金森委員、兼重委員、高瀬委員、塚田委員、宮智委員
(問題提起者)
岡山東京商工会議所国際部国際経済担当課長 他
(所管省庁)
大蔵省 振角関税局業務課長 他
(OTO対策本部)
経済企画庁 小池総括政務次官
(OTO事務局)
経済企画庁 薦田調整局審議官、市川調整局貿易投資対策官


4 議題

(1)税関職員による出張検査の導入

(2)インターネットを利用したNACCS等通関手続の改善

(3)その他

5 審議の概要

議題1 税関職員による出張検査の導入

○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針等について説明

(問題の所在)

・高度な技術を利用した大型のX線検査装置の導入による検査時間の短縮と検査にかかる費用負担の軽減。


○問題提起者より提起内容につき説明

(1)全量取出検査は年間何件実施されているのか、その対象貨物の種類はどのようなものが何件あったのか、その結果問題があったものは何件でその内容は何か、等につき情報・統計を開示すべきである。その理由は、全量取出検査の有効性に疑問があり、同検査により検査に係る費用負担や通関の遅れの面で多大な損害を被っているにもかかわらず、その有意義性を判断するデータが何もないからである。

(2)水際での社会悪物品の摘発には賛成であり協力を惜しまないが、こうした社会目的のための強制的な検査ならば、それを実施する税関の側で費用を負担するのが筋である。

(3)検査を実施するに当っては、検査を受ける側が納得できるようその理由と目的を示してもらいたい。

(4)社会悪物品の取締という社会的目的を達成する一方で、輸入者の負担を軽減する改善案の呈示をお願いしたい。


○所管省庁から対処方針につき説明

(1)輸入者の負担軽減という問題提起者と同じ問題意識を持っており、このため「税関手続に関する関税率審議会企画部会懇談会」を立ち上げ、適正通関を確保する一方で輸入者の負担を軽減することを議論した。同懇談会委員の方には実際に検査の現場も見ていただいており、その結果「巧妙化する密輸手口に対抗するためにはテクノロジーを駆使した検査機器の導入が必要であり、このような取締機器の活用により、輸入者等に円滑な通関による利便性の向上及び負担の軽減というメリットを与えるものである」旨の取りまとめがなされた。

(2)近年、輸出入申告件数が大幅に増加している中、税関の定員は行政改革等により減少しているが、不正薬物押収量は傾向的に増加しており平成11年の実績では2.2トンを超え、過去最高となっている。

(3)限られた人員で効果的・効率的な取締を行うため、税関としては現在、警察、海上保安庁等の関係官庁や各国税関との連携強化、密輸関連情報の収集・分析の徹底、取締機器の充実等の施策を講じてきているが、今後、更に諸外国で導入され始めたハイテク機器の一つとしてコンテナーをまるごと検査できる大型X線機器を導入することも予定している。

(4)政策評価の一環として日米構造協議の際の、米国の提案を契機に「輸入の所要時間調査」を平成3年から実施しており、税関手続部分である輸入申告から許可までの時間は第1回調査から第5回調査の間に税関手続の電算化・簡易化等により5分の1にまで短縮しており、第5回調査の5.6時間というのは米国の7.8時間より短くなっている。このように、輸入者の負担を軽減するためできるだけのことは行っている。


○ この後、審議

(委員の主な発言)

(1)平成10年改正の通達「コンテナー貨物の検査について」によれば、輸入者が希望すれば港頭地区以外で検査を受けられるとなっているが、本件のように輸入者が希望していないのに港頭地区以外での検査を強制されるのは何故か。

(2)検査が実施された場合、検査に係る費用が、通関業者から輸入者へ「税関検査料」として請求されるが、これは全額国庫収入となるのか、それとも国と通関業者で按分するのか。

(3)問題提起者は検査に2〜3日を要すると言い、大蔵省はコンテナー貨物の検査時間が7.2時間という数字を出してきているが、この相違は何か。

(4)税関の検査方法が改善されていることは理解するが、申立者の求めることと大蔵省の回答との間にはかなりすれ違いがあるようにみえる。申立者が税関の相談室へ何回相談してもまともな回答がないと聞いているが、これでは税関相談室が十分に機能していないということになるので、一度総務庁の行政監察を受けることを提案する。

(5)リスク・マネジメントの観点からは、検査理由についてどこまで情報開示を進めるべきかの兼合いが難しいが、「ここまでは開示できるのではないか」ということに対する検討余地はないのか。

(6)検査に係る費用が高額であることは、港湾運送事業の問題もあり、こちらの方は運輸省の所管事項であるが、通関業者については税関が所管する立場にあるのだから、少なくとも通関業者が徴収する料金に対しては、検査を実施するにあたって何か指導監督できないか。

(7)コンテナーごと検査できる大型のX線検査装置が導入されるとのことであるが、いつ、どこの港に入るのか。これが我が国の主要港に導入されれば、時間の短縮と費用負担の軽減が実現し、問題提起者の要望はかなり解決するのではないか。


(所管省等の主な発言)

(1)港頭地区以外とは、港から遠く離れた内陸部等の場所を指しており、税関検査場へ運んで検査する場合は港頭地区以外での検査でなく、港頭地区での検査である。

(2)「税関検査料」として通関業者が輸入者に請求する費用は、検査に伴い生じた輸送費、荷役料、開梱包費等とみられるが、税関自体は検査において如何なる収入も得ておらず、これら港湾運送事業者が徴収する料金については大蔵省が所管できる立場にはない。また、税関は、こうした作業を行う業者の選定等にも一切関与していない。検査通知を受けた通関業者が自らあるいは港湾運送事業者等に委託してこれら作業を行っていると承知している。

(3)当省より提示した検査時間7.2時間というデータは、一定の調査期間において、コンテナー貨物等で検査を受けたもののみにつき、税関手続としての申告から許可までに要した時間を平均すると7.2時間ということである。
(問題提起者)その平均時間には見本検査や一部指定検査が含まれているとみられるが、問題にしているのは全量取出検査に要する時間であり、7.2時間という数字を出されても意味がない。例えば、午前10時に全量取出検査の通知を受けた場合、その通知書には早くて翌日、通常は翌々日の検査時間が指定されており、通知の日に全量取出検査が終ることはない。

(4)通知の日に全量取出検査が終了することはないとのことだが、個別のケースとしてはそうした翌日または翌々日に検査が持ち越されてしまう場合もあろう。ただし平均すれば、全量取出検査を含め検査場検査が実施された場合に要する通関時間は、申告から許可まで24時間以内となっているのが通常である。通関時間を短縮する1つの方策として、貨物が日本に到着する前に予備的に申告できる「予備申告制度」もあるので、これを利用すれば、検査対象となったとしても、ロスタイムを減少させることができる。

(5)税関の相談室が十分機能していないため総務庁の行政監察を受けるべきとのご指摘であるが、既に行政監察は何回も受けている。

(6)検査の件数、理由等については、その対象選定基準や具体的な検査件数を公表してしまうと、密輸をしようとする者にこちらの手口を教えてしまうこととなり、今後の検査に支障が生じるおそれがあるので、公表は困難である。ただし摘発データについては、先に述べた通り、お示ししている。また、欧米諸国においても同様の理由から、実際に公表している国は無いようである。さらに、検査費用の負担についても、知り得る限りの諸外国においては、輸入者の負担となっている。なお、輸入者の負担を軽減する観点から、前述した大型X線装置の導入に加え、「簡易申告制度」という、過去に関税法違反がないなど一定の要件を満たす輸入者には、納税申告の前に貨物の引取を可能とする制度を導入することとしており、このため改正法案を今国会に提出する予定であり、所管省庁としてはできる限りの努力を行っているところである。

(7)税関は通関業者が受取る通関業務料金につき、上限を設定して監督している。なお、港湾内で行われる荷役料や運送料等については、通関業に係るものではなく、港湾運送事業法における規定であり、運輸省の所管となる。

(8)大型のX線検査装置は1台数十億円かかることもあり、ようやく平成12年度内に横浜税関へ導入できる予定であり、コンテナーをまるごと検査できるため貨物をコンテナーから出す必要はなくなり、検査時間の短縮、検査費用の削減が図られるものと考えている。


○議長による総括

・本件については、全国的に同様の苦情や要望がこれまで度々寄せられてきたところであり、大蔵省としても検査時間の短縮と費用負担の軽減を図る方向で努力していることは認められる。今後、この方向に沿った努力を一層進めるとともに、コンテナー貨物の取扱の多い税関について、貨物をコンテナー詰めされた状態で検査できる高度な技術を利用した大型のX線検査装置の導入を進めて行くべきである。

・事務局で所管省庁とも調整の上、できるだけ具体的な内容を盛り込んだ報告書の原案を作成し、報告いただきたい。その上で必要に応じ更なる検討を加えることとしたい。

議題2 インターネットを活用したNACCS等通関手続の改善

○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針等について説明

(問題の所在)

・NACCS等通関手続のインターネット化の早期実現。


○問題提起者より提起内容につき説明

(1)インターネットを利用したNACCSの改善については、通産省の外為法関連手続きがインターネットを利用して行えるようになるとのことであり、通関手続きにおいても技術的な問題は解決不可能ではないと考える。現行のNACCSシステムでは、「専用回線での接続」しかできず、その初期投資費用や、月々の利用料金も高額となっているため、中小の貿易会社にとっては負担が大きい。インターネットであれば、誰でも簡単に接続でき、費用負担も少ないことから、インターネットで利用できるようシステムを改善すべきである。

(2)多くの中小企業は、流行に敏感でサイクルの短い商品を少量ずつ、多種にわたり取り扱っているのが現状である。流通の速度が何より大切であるが、税率が分からなければ国内での卸売価格を決められないため、事前教示の制度を利用して税関に税番・税率の照会を頻繁に行っている。しかし、現在の事前教示制度では、電子メールにより照会し回答を受けられるようになっているものの、文書による照会・回答と同様の効力は認められていない。その理由として、回答書の改ざんの可能性と電子情報の容量の限界があげられているが、インターネット上で銀行取引や株式売買が行われ、外為法関連の輸出入許可手続が実現する状況と比較すれば、本件の場合、改ざんの受益者はなく、そうしたリスクは相当に低いものと思われる。また、電子情報の容量といった技術的な問題は、解決が可能と考える。是非とも、効率的に業務を行えるよう、電子メールによる事前教示の照会・回答に、文書によるものと同様の効力を認めるべきである。

(3)現行の分類情報検索システムでは、過去の事前教示の事例がデータベース化されおり、税関官署に行けば利用できるが、多くの中小企業はなかなかその人的・時間的な余裕がない。インターネットで誰でもどこからでも検索できるようにすべきである。


○所管省庁から対処方針につき説明

(1)NACCSを専用回線にしている理由は、NACCSの利用者が、銀行取引や株式売買でのオンラインシステムの利用者のように不特定多数ではなく、特定の貿易関係業者、銀行等の限られた業者であることや、インターネットを利用した場合には、ネットワークの障害やセキュリティの面で問題があり、プロバイダーが介在することでこれら問題の所在や責任が不明確になるとの観点から、専用回線が良いとNACCSの利用者が判断したからであって、官側が一方的に押しつけているわけではない。さらに、主要業務である輸出入申告・許可関係だけでも年間4000万件という膨大な情報が行き来しており、かつ、国際物流に直結したシステムであるということを勘案すると、インターネットを利用することについては慎重にならざるを得ないと考えている。ただし、NACCSの利用者が本当にインターネットの導入を望むのであれば、こうした問題が技術的に解決可能かどうかについては、十分に研究していきたい。

(2)Eメールによる事前教示の場合、税関側が得られる情報が十分とはいえない場合が多い。文書による場合は、見本や詳しいカタログ等を提出いただくのが通常であるので判断がし易いが、Eメールではこれが不十分であるため、情報が少ないという条件の下での便宜的な回答として行っているものである。

(3)分類情報検索システムについては、インターネットを通じて検索できるシステムを導入していきたいと考えており、今後予算措置を講ずる方向で進めていきたい。


○この後、審議

(委員の主な発言)

(1)平成13年秋にAir-NACCSが更改されるとのことだが、できればその機会に是非インターネットでの利用も可能となるよう、前向きに検討を進めていただきたい。

(2)NACCSにインターネットを導入する場合、プロバイダーを介することによるセキュリティの問題やウイルスの問題があるが、これらを技術的に克服できる見込みはあるのか。

(3)大蔵省としては今後、現行のNACCSシステムについて、改良していくことで対応するのか、インターネット導入で対応するのか、どちらの方向で考えているのか。

(4)大蔵省の言うように、第3者に対して100%安全でなければインターネットが利用できないとすれば、永久にインターネットの導入はできないことになる。リスクがどの程度まで低下すれば導入可能と考えているのか。

(5)NACCSでやり取りされる情報には、取引企業情報、輸入する材料の成分比等、企業秘密に属するものも多いため、NACCSのインターネット化を進めるなら、そうした点について慎重に検討した上で行うべきである。

(6)Eメールによる事前教示については、文書によるものと同じ効力はないとしても、限られた情報の範囲で何とか参考となる回答をすべく努めている点は、むしろ進んだシステムであると評価できる。


(所管省の主な発言)

(1)平成11年10月のSea-NACCS更改の際は、利用者とも協議したが、セキュリティの観点からインターネットの導入が見送られた。ただし今後、技術的にセキュリティの問題が克服でき、民間利用者からインターネット導入の要望が強いのであれば、そうした方向も検討していきたい。

(2)自らの情報が第3者に知られる可能性があるというリスクを補ってでも、インターネットの利用が有効であると民間利用者が判断するのであれば、税関側がインターネットの利用を拒否する理由はない。それは民間利用者の判断に任されているものと考えている。

(3)NACCSの専用回線に関しては、昨年秋に更改されたSea-NACCSでは、最寄りのアクセスポイントまでダイヤルアップという方法により公衆回線を利用して接続することもできるようになった。この場合の回線使用料は、使用頻度の少ない利用者にとっては、専用回線のみを使用する場合に比べて、かなり少ない負担で済む。また、NACCSに新たに加入する場合の費用負担は、インターネットに新たに加入するのと比べて、同等かそれ以下のコストとなっている。


○議長による総括

・NACCSについては、2001年秋のAir-NACCS更改の際にインターネットを活用できるよう前向きに取組んで行くべきである。また、昨年10月に更改されたSea-NACCSについても、次期更改予定の2007年を待たずに出来るだけ早い時期にインターネットの活用を図るべきである。

・Eメールによる事前教示については、全てについて文書によるものと同じ効力を認めるのは困難であろうが、比較的複雑でなく判断の容易なものは認めていくという方向で検討すべきである。

・分類情報検索システムについては、インターネット導入へ向けての作業をできるだけ早く進め、その実現に努めるべきである。

・事務局で所管省庁とも調整の上、できるだけ具体的な内容を盛り込んだ報告書の原案を作成し、報告いただきたい。その上で必要に応じ更なる検討を加えることとしたい。


議題3 その他

次回の専門家会議の日程について事務局から説明。
以 上
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問合せ先]経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-5469 (直通)