平成16年度第1回OTO専門家会議議事要旨


1 日時 平成17年1月31日(月)15:00〜17:00

2 場所 内閣府共用第4特別会議室(406号室)

3 出席者

(OTO推進会議)
大河原推進会議議長、片田委員、北岡委員、黒田委員、佐々波委員、谷村委員、眞木委員(議長)、松下委員、金森委員、兼重委員、木村委員、高瀬委員、本田 委員、村上委員

(問題提起者等)
国内事業者、行政書士(参考人)

(所管省庁)
法務省入国管理局入国在留課 原田審査指導官  

(OTO事務局)
藤岡OTO室長(大臣官房審議官)、渡辺企画官、岩田参事官補佐

4 議題

(1) 外国人経営者の在留資格基準の明確化
(2) その他

5 審議の概要

(1) 事務局から問題提起の概要及びその論点について説明

1)  論点1 投資・経営活動の継続性について

 法務省によれば、赤字の継続は事業の継続性に疑問を生じせしめるとのことであるが、本件事例のように将来性が客観的に判断される場合、また赤字が研究開 発投資による一時的なものであるような場合には、こうした事情を加味した上で判断すべきではないか。
 当該事業は、事業の継続性が直ちに危ぶまれる状況にはない。現時点で在留資格を認めずに当該企業の活動を停止させてしまうことは適切か。

2) 論点2 事業所の確保に係る上陸審査基準について

 法務省令で求められている事業所の確保について、賃貸借契約の場合、法務省は原則会社名義又は代表者名義であることを求めているが、名義よりも使用され ている実態が重要ではないか。
 IT関連の様々な業態の増加に伴い、住居での起業も多くみられるようになっているところ、外国人にも住居での起業を認めるべきではないか。

3) 論点3 入国管理局の対応について

 不許可処分の通知書に理由が具体的に示されていない上、入国管理局の説明が一貫しなかったとのことである。こうした事態を回避するためにも、通知書には より具体的に理由を明示すべきではないか。
 OTOでは、平成12年3月に、「2人以上の常勤の職員が従事する規模」という基準が、職員数を要求しているものではなく、その程度の規模があれば足り る趣旨であることについて、ガイドラインを作成することを決定し、法務省では同年これを作成しているが、今般の事例では、投資額の確認は行われなかったと のことである。また、入国管理局が配布している「必要な書類等一覧」にも、投資額の確認に必要な資料は掲げられていないことから、当該基準の趣旨を改めて 徹底するとともに、申請者に求める書類等の見直しを行うべきではないか。
(2) 所管省庁から論点に対する回答について説明
1) 論点1 投資・経営活動の継続性について

 単に赤字が継続しているという事情のみをもって不許可とするものではない。各種事情を考慮している。他の事由により不許可となる場合においても、申請人 側の便宜などを考慮し、その点についても指摘している。
 事業の経営に従事する外国人から、「投資・経営」の在留資格の更新許可申請があった場合、当該活動が行われてきたか、今後その活動が継続的に行われるか を審査する。その前提として事業そのものについても、運営状況とともに、今後の継続性について審査を行っている。本件については、損失額が大きかったこと から、事業の継続性に関し、問題があるとの指摘を行ったもの。ただし、単に赤字が継続していたことのみをもって不許可とするものではない。

2) 論点2 事業所の確保に係る上陸審査基準について

 法務省令で求めている事業所の確保は、我が国に恒久的施設を設けて継続的に事業を営む場合に限ることとする趣旨であることから、事業所は相当額の投資を した事業を継続的に営むに足るものでなければならない。会社の所有であることまでは求めないが、賃貸借契約が会社名義で締結されていない場合は、原則とし て会社の施設とは認められない。
 また、従業員名義の場合、契約の継続自体が同従業員の意思如何に関わってくることになり、事業所が確保されているとは認められない。
 居住する住居での起業を一律に認めない取扱いまでは行っていないが、住居の賃貸契約が使用目的を「居住用」として締結されているときは、真に事業所であ るのかという問題に加え、契約違反が問われ契約が解除されることも考えられることから、事業所が確保されているとは認められない。
 事業所が確保されていると言えるためには、事業を行うために必要な設備を有する個人の施設ではない会社の施設が存在することが必要であるが、このことに ついては、今後入国管理局のホームページ等に掲載するなどして周知を図りたい。

3) 論点3 入国管理局の対応について

 不許可理由については、通知書の交付をもって示すこととしており、申請人が来庁し説明を求めた場合には、申請人側の便宜等を考慮して、口頭でも説明する こととしている。
 不許可理由の説明については、地方局に対して可能な範囲でより詳細な理由を通知書に記載するよう指示することとしたい。
 「投資・経営」の在留資格の取扱いについては,総合規制改革会議の第3次答申を踏まえ、入国管理局のホームページに具体的事例等を解説公表し、改めて制 度の周知徹底を図っているところであるが、提出資料の案内についても、当該取扱いが十分に理解できるよう見直しを行っていきたい。

(3) 問題提起者から提起内容の説明

1)  従業員名義では従業員が契約を解除する可能性があるとの指摘であるが、名義人は会社設立者で出資者であり、かつ取締役でもある。居住用の住居を事業所と して使用すると契約違反を問われるとの指摘があったが、家主からは承諾書という形で許可を受けている。入管の指摘はなかったので、提出はしていないが、入 管の担当者が来訪した際にはごらんいただいている。

2)  7年間日本で同じ会社、同じ事業所で、同じやり方で経営をしてきたが、今さら通常の更新がなぜ不許可になるのか理解できない。当方は経営者としての責任 があるので、不許可の理由については明確な説明があってしかるべき。しかしながら、入管の担当者からは常識という言葉で片付けられた。賃貸借契約の名義を 問題にしているが、実態があるのになぜ事務所の存在を認めないのか。
 入管の不許可により7年継続した会社の存続ができないことになる。なぜ経営の邪魔をするのか。これでは、「投資・経営」の在留資格の意味がなくなってし まう。

[行政書士](参考人)

1)  入手した法務省入国管理局の入国・在留審査要領によれば、「審査に当たっては、貸借対照表から500万円以上の資産規模が維持されているかを判断」する とあるが、地方入国管理局において配布されている提出資料一覧には貸借対照表が明記されていない。この根本的な原因は出入国管理及び難民認定法施行規則に 貸借対照表が記載されていないためではないか。
 また、在留資格に係る法務大臣の審査は実態審査であり、事業所の確保を判断する上で、賃貸契約の名義を絶対視すべきではない。
 さらに、今回のように7年間在留資格を認めてきたという事情がある場合には、申請人にとって不意打ちとならないように何らかの配慮があってしかるべき。 理由の通知には再申請の便宜を図るという重要な目的があるので、書面にて可能な限り具体的に行うべき。口頭による通知だと、言った言わないの問題、あるい は再申請時においても当該理由に係る説明が維持されるかどうかという不安が払拭されない。
 なお、平成12年のOTO対策本部決定に関連して、在留資格認定証明書交付申請に関わる不交付通知で、不交付理由が「在職中の職員が確認できず、常勤職 員2名以上が従事して営まれているとは認められません」となっている例がある。これは、2003年に実際に取扱った案件で、当初から常勤職員が2名以上い ないということを踏まえ投資額500万円以上であることを示したにも関わらず、不交付通知書における理由記載欄において職員数が問題視されたものである。

(4)  委員からの主な発言等

1)  投資額に関するガイドラインで示されている500万円という基準が全く無視されているようであるが、法務省におけるガイドラインの位置づけはどういうも のか。審査官が別にそれに従わなくても、問題にならないのか。
(法務省)投資額500万円あるのかどうか、維持されていることをもって審査するように平成12年に通達という形で地方局に 指示を出している。
2)  各種事情を考慮して判断しているとのことであるが、省令には、そのようには書いていない。通達されたガイドラインも無視されているような状態であること を考えれば、各種事情は審査官の常識に基づいて判断されているのではないかと思える。
(法務省)許可要件そのものは、入管法や省令で規定しており、解釈については、審査要領や通達等で全国統一的に行うことにし ている。
3)  問題提起者によれば、赤字の問題に関する入国管理局の説明ぶりが途中で変ったとのことであるが、こういうことはよくあることか。
(法務省)赤字の問題のみをもって判断しているということはない。
4)  法務省の回答に、事業所の賃貸契約が会社名義あるいは代表者名義でない場合、通常事業所が確保されているとは判断できないと「される」と書いてあるが、 こうした解釈の根拠は何か。またその根拠は、ガイドラインより強いのか弱いのか。
(法務省)一般的にそのような取扱いをしているということ。ガイドラインとほぼ同等。
5)  そうすると、平成11年度のときに我々はガイドラインを設定していただくことで成果が得られると思ったが、これは全く何の役にも立っていなかったという 話になる。法務省では今後も担当官の常識をガイドライン並みに扱っていくのか。
(法務省)ひとつの考え方ではそういったことになる。
6)  常識によって行政が執行されるというのはとんでもない話。ただし、基準が整備されてない段階はやむを得ず常識で判断するということは、やむを得ずあるか もしれない。そういう場合には事前に上司の決裁を得るのか。
(法務省)通常審査をする場合には、部内で決裁文書が各段階に上がり、許可か不許可か、という結論が出る仕組みになってお り、権限的には地方局長の 最終判断で決定している。
7)  平成8年度の問題提起プロセスの際、「投資・経営」の在留資格については、従業員数、事務所の大きさといった形式的な基準によるだけでなく、経営の実態 を見て柔軟に認めるように運用を見直すことを決めたが、担当官の常識が我々が議論してつくっていただいたガイドラインと同等に扱われるということであるな らば、この決定はむしろ恣意的な行政に大いに力を与える結果となったのではないかという気がする。したがって、年度末の報告書の起草に当たっては、こうい う過去の失敗を繰り返して、ますます恣意的な裁量行政が跋扈するようなことがないよう、十分ご配慮をいただきたい。

8)  問題提起者は事業所として使用する旨許可を取っているとのことであるが、それでも事業所の確保は認められないのか。
(法務省)そのことが分かっていれば、違った見方もあったかもしれない。
9)  出入国管理法は戦後間もなくできたものであるが、施行令とか省令とかというのは15年ぐらい前、ガイドラインは我々の注文で平成12年にできたもの。対 日投資や日本への観光客を増やそうという動きになったのはつい最近であり、こういう社会情勢の変化に基づいて、法律の解釈や省令は改正されるべきである。 ところが、我々のガイドラインができ、通達は確かに出されたが、ほとんど無視されたという事実がここにある。社会情勢の変化を法務省はどの程度考えに入れ ているのか。
(法務省)基準省令が社会情勢に全く合わなくなれば省庁間の協議をして変えるということになるのかもしれないが、例えば現在 500万円規模の投資額で相当 数の在留外国人が増えている。今回の事例は投資額よりも事業所の確保に問題があったもので、当面は我々の通達等でも運用は可能と考えている。
10)  通達などは実際には無視されているという、その裁量権の執行に問題があると思う。そもそも事業所の名義と事業所があるかどうかということの確認とはあま り関係がないのではないか。特にベンチャー企業、IT関係では関係がないのではないか。
(法務省)確かにIT関係の通信技術が進んでいることから、自宅で起業できるのは事実。しかしながら、今回のケースでは、自 宅用という契約が交わされた場合に、家主から契約違反を問われるおそれがある。事業所として事業が行われていることは確認しているが、家賃の支払いや光熱 費等といったものの支払いが会 社名義になっていないということでは、問題視される。
11)  7年も日本にいて、しかも多額の投資をして、それが急に滞在しちゃいけないということになれば、経済的な影響ははかり知れないものがある。そういうネガ ティブな結論を出すには相当重大な理由があったと思われるが、何が重大な理由なのか。法務省の方が形式主義に陥って、無理な判断をしているのではないか。 また、こういう裁量権を行使した決定を今後変更することはあり得るか。
(法務省)申請自体は1回不許可になったということで終わりにはならない。内容が是正されていれば、次の申請では許可という ことは日常的にある。
12)  問題提起者の再申請の審査に当たっては、この審議の結果が考慮されることを期待する。

13)  不許可の理由が議員などの指摘によって次々と出てきたということであるが、最初にきちんとした説明がなされなかった理由は何か。理由が分からなければ何 回も申請を繰り返すことになる。また、昼休み前で、時間がないからきちんとした対応がなされなかったという話もある。
(法務省)不許可の場合に、地方局に対してできる範囲の説明は口頭でやってほしいという指示は出している。接遇の問題につい ては、地方局に指導していきたい。
14)  赤字の原因や賃貸の使用目的などいろいろ分かった時点で不許可処分を取り消せばいい話ではないのか。前の不許可処分を維持して、その要件を頑張っている から、おかしなことになっているのではないか。
(法務省)現行の制度上は一度不許可にしたものについてはその後新たに事実が分かった場合には再度申請をしていただくことに なっている。事業所として使用 することへの家主の同意書を添えて再申請があれば新たな判断をすることになる。
15)  現時点で一番問題として残っているのは光熱費の契約の形態ということか。
(法務省)契約は会社又は代表者名義で行われることが望ましく、その上で自宅兼事務所として使用されているものであれば、光 熱水費等の案分などをみることになる。
16)  法務省は実態と形式のどちらを重視しているのか。
(法務省)実態と形式の両方で判断している。
17)  経営の実態を把握するというのは損益計算書と貸借対照表の両方をみても難しいこと。しかしながら、その貸借対照表もみていないという。経営の実態云々と いうのが本当に心配だったら、監査法人などと契約をして、そこの意見を聴取した方がはるかによい。あるいは、できないことはやめてしまって、形式的に定め ていることだけをみるという考え方もある。実態と形式の両方をみるという説明は立派だが、できないことをやると言っても意味がない。

18)  ガイドラインの趣旨が、地方の審査官にも分かるように、省令を変えて明確化すべきではないか。省令は15年ぐらい前にできたもので、その後の社会情勢の 変化や、投資及び観光を日本に誘致したいという最近の日本政府の方針を反映した省令をぜひつくっていただきたい。

19)  現場の審査官が許可、不許可の決定をした場合に、例えば地方局長がそれをレビューする仕組みはあるのか。あるいは現場の判断が最終的なものとなっている というのが実態であるのか。
(法務省)軽微な案件、許可案件みたいなもので、次長限りの決裁段階というものはあるが、重要な案件については局長が最終的 な判断をすることになっている。
20)  この問題については推進会議としても問題解決の方向性を出すべきではないか。

21)  制度としてもきちんと整備すべきではないか。ガイドラインとその解釈について問題がある。申請書類はガイドラインを踏まえた形に整備してもらう必要があ る。
(5) 議長による総括

1)  本件は、外国人経営者から寄せられた個別苦情の事例に基づいて、在留資格「投資・経営」の許可基準の明確化等に関して問題提起がなされたものである。

2)  「投資・経営」活動を行う上で当該事業の継続性が必要とされることについては、その考え方や判断基準が申請者に十分周知されていないと思われるところ、 その具体的事例等を解説し、公表すべきである。

3)  本件問題提起者の事例をみると、事業の継続性を判断するにあたり、取引や融資の現状、事業の将来性等が十分考慮されているか、という点については疑問が 残る。事業の継続性は総合的に判断すべきものである旨を各入国管理局に対して改めて周知徹底すべきである。

4)  法務省令で定める事業所の確保の基準については、事業所が賃貸である場合には会社あるいは代表者名義の契約であることが原則とのことであるが、実態がむ しろ重要との考え方もあり得る。どのような場合に事業所が確保されていると判断されるか、具体的事例等を解説し、公表すべきである。

5)  また、本件事例のように、IT関連のベンチャーなどでは住居での起業が合理的と考えられる場合もあることから、住居を兼ねていても事業所の確保を認める 場合については、審査上のガイドラインを作成すべきである。

6)  本件事例において、不許可処分の理由を把握することが困難であったとされる点に関しては、申請者の便宜等も考慮して、より詳細な理由を通知書に記載する こととすべきである。

7)  さらに、本件事例により、平成12年3月のOTO対策本部決定を受けて作成された投資規模に関するガイドラインの趣旨が、未だ各入国管理局に徹底されて いないことが明らかとなった。また、入国管理局の指示書類にガイドラインの内容が反映されていない状況も認められたことから、再度各入国管理局に対してガ イドラインの趣旨を徹底するとともに、裁量行政を極力排除すべきである。

8)  ガイドラインの趣旨が徹底されていない背景には、施行規則においても、投資額を確認するための書類の提出が求められていないことがあると思われる。速や かに改正を行うべきである。

9)  なお、本件問題提起者は現在、再申請を行っているとのことであるが、本日の議論を踏まえた上で、適切な審査が行われることを強く期待する。

6 その他
次回の専門家会議の日程について事務局から説明。

以上

(速報のため事後修正の可能性あり)

[問い合わせ先]内閣府市場開放問題苦情処理対策室
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