平成17年度OTO専門家会議議事要旨


1 日時 平成18年2月21日(火)13:00〜15:00

2 場所 内閣府共用第4特別会議室(406号室)

3 出席者

(OTO推進会議)
大河原推進会議議長、眞木委員(議長)、片田委員、北岡委員、行天委員、黒田委員、佐々波委員、谷村委員、中村委員、松下委員、グロンディン委員、金森委員、兼重委員、高瀬委員、千野委員、本田委員、宮智委員、村上委員

 (問題提起者)
在日米国商工会議所会員、在日米国大使館員

(所管省庁)
厚生労働省医薬食品局監視指導麻薬対策課監視指導室 大西室長
厚生労働省食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室 北島室長

(OTO事務局)
齋藤OTO室長(大臣官房審議官)
日下OTO室次長(内閣府政策統括官(経済財政運営担当)付参事官)

4 議題

(1) 消費者にとって判り易いサプリメントに係る情報提供の推進
(2) その他

5 審議の概要

 (1) 事務局から問題提起の概要及びその論点について説明

1) 論点1 データベースの利用に係る公益性・中立性の確保について
・提供情報の内容等について、独立行政法人等の確認を受け、その指導のもとで個別企業ではなくて、業界団体名による情報発信の形態をとれば公益性・中立性は確保できるのではないか。

・データベースの情報を正確に消費者の手に渡り易くした方が商品に対する消費者の理解が促進され、不適切な広告による被害が減少することにもつながるので、データベースの公益性はより高まるのではないか。

・厚生労働省は、医薬食品局食品安全部長通知において、データベース等を活用することをうたっている。このことからも、適正な目的のもと、適切な活用方法によれば、データベースまたはその一部を引用すること自体は公益性・中立性を損なうものではないのではないか。

・インターネットで提供しているそのデータベースの内容を紙媒体等の形式で提供することができないか。
2) 論点2 薬事法、健康増進法の規制と「商品の販売と結びつけること」との関係について
・このデータベースにつきましては、商品の販売促進に関連づけた利用が禁止されているが、商品の販売と結びつけることというのは、商品の販売促進に関連づけた利用と同義と考えてよいか。また、商品の販売と結びつけることとは具体的にはどのようなことを指し、どのような基準をもって判断しているのか。

・健康食品に対する理解を深め、消費者が不適切な広告に惑わされないようにすることを目的に、具体の商品があるところでデータベースを利用した公正中立な情報を提供するという趣旨であれば、商品の販売と結びつけることには該当しないのではないか。

・個々の企業や商品と結びつく情報を排除して中立性を確保するように努め、さらに提供する情報が個々の商品の安全性、有効性を示すものではない等の注意事項を明示した上で、データベースの内容を消費者に提供するのであれば問題ないのではないか。
3) 論点3 消費者に対する情報提供のあり方について
・アドバイザリースタッフの育成・活用ということが言われているが、現状においてはごく一部の消費者しか直接その恩恵に預かれないのではないか。

・このデータベースの目的にかんがみれば、情報提供の方法はインターネットに限定せず、消費者が実際の商品選択の場において活用できる方法も認めるべきではないか。

 (2)厚生労働省から論点に対する回答について説明

1) 論点1 データベースの利用に係る公益性・中立性の確保について
 ご指摘のとおり、データベースの情報を正確に消費者の手に渡りやすくすることは重要であると考えており、以前にも回答したように、パンフレットの作成等を通じて、当該サイトを多くの方々にご利用いただけるよう普及啓発を図っているところである。
 厚生労働省では、摂取する上での注意事項の表示を作成する際にデータベースを活用するなど、事業者の方々を含めてデータベースの活用を勧めており、事業者や業界団体が適正な目的のもと、適切な活用方法によりデータベースを引用することや印刷して紙媒体の形式で使用することを禁止しているという事実はない。
 ただし、データベースは、健康食品の素材について、既存の文献情報等を収集し整理したものであり、個別の商品の機能や安全性について評価したものではない。したがって、個別の商品についての検証結果に基づかず、データベースのみの情報をもって個別の商品の健康保持増進効果等について言及することは禁止している。
 なお、個々の商品について、医薬品的な効能効果を標榜することは、薬事法違反となることから、利用の際にはこれらの点にもご注意いただきたい。
2) 論点2 薬事法、健康増進法の規制と「商品の販売と結びつけること」との関係について
 「商品の販売と結びつけること」とは「商品の販売促進に関連付けた利用」と同義であり、特定の商品に関する「広告その他の表示」として利用することである。「広告その他の表示」とは、(1)顧客を誘引する、(2)特定の商品名等が明らかである、(3)一般人が認知できると認められるか否かを基準として判断している。(「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)について(平成15年8月29日薬食発第0829007号厚生労働省医薬食品局長通知)」参照)。
 具体的な例には、<1>データベースを引用したチラシを配布や添付して販売する場合、<2>データベースを引用し広告として使用する場合、<3>インターネットの販売サイト上にデータベースの内容を記載やリンクを張ること等であり、このようなデータベースの利用は認めていない。

 前述のとおり、栄養研のデータベースは、安全性や有効性などに関する既存の文献情報等を収集し、整理したものであり、個別の商品の機能や安全性等について、評価したものではない。そのため、個別の商品についての検証結果に基づかず、当該データベースの内容を商品の販売の際に使用することは、あたかもその商品に有効性等があるとの誤解を与えるおそれがあり、誇大広告等に該当するため、データベースを商品の販売促進に関連付けて利用することは、認めていない。
 なお、食品として販売するものに関して広告その他の表示を行う場合、健康食品の虚偽誇大表示に該当するものについては、「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)について」を示しているのでガイドラインをご参照いただきたい。
3) 論点3 消費者に対する情報提供のあり方について
 厚生労働省では、昨年2月の健康食品に係る制度の見直し後より、「健康食品」の利用について正しく情報提供できるアドバイザリースタッフの育成・活用について、一層の普及啓発に努めているところである。アドバイザリースタッフの養成は、保健機能食品等に関する新たな知識に対応し、受講者の必要とする養成内容にきめ細かく対応するために、十分な知見を持ち、組織・運営等が適正である民間団体が養成の実施主体となることが適切であるとしていることから、今後とも、業界団体とも連携して育成・活用についてご協力いただきたい。 
 また、前述のとおり、厚生労働省では、適切な活用方法によりデータベースを引用することや印刷して紙媒体の形式で使用することを禁止しているという事実はない。
 ただし、データベースは、健康食品の素材について、既存の文献情報等を収集し整理したものであり、個別の商品の機能や安全性について評価したものではない。従って個別の商品についての検証結果に基づかず、データベースのみの情報をもって個別の商品の健康保持増進効果等について言及する場合は、健康増進法において禁止されている「事実に相違する」又は「人を誤認させる」表示に該当しないよう注意する必要がある。また、個々の商品について、医薬品的な効能効果を標榜した場合は、薬事法に違反することから、利用の際にはこれらの点にご注意いただきたい。

 (3) 問題提起者意見

 国民生活センターの調査によれば、現在国民の約6割がサプリメントを何らかの形で使用しており、健康食品の購入に際し参考にするのは主にパッケージの説明と商品の原材料表示であるとされている。
 いわゆる健康食品と呼ばれる市場は1兆2,850円で、その半分が特定保健用食品であるが、残りの半分は一般的な食品扱いになっている。現在の日本ではいわゆるサプリメントについても一般的な食品扱いになっているが、アメリカ、ヨーロッパではサプリメントとして位置付けられている。
 日本においてサプリメントに実際に用いられている表示についてであるが、一般になじみのない物質に関しては、消費者にとって判断が難しい。例えばノコギリヤシという物質がどういうものであるのかは、一般の方には理解できないのではないか。
 国立健康・栄養研究所のデータベースは、それぞれの物質の有効性だけではなくて安全性についても書かれており、消費者等にとってもこうした情報というのはありがたい情報なのではないかと考えており、我々としては消費者保護の観点あるいは販売企業の社会的責任という部分からもこうした情報を提供するのは有効ではないかと考え、今回の提言をしている。

 (4) 委員からの主な発言等

1) サプリメントの素材に関する情報を消費者に判りやすく提供するという提案について、それが特定商品の効果を訴えようとするものというのは考えすぎではないか。これを使って商品広告できると考える事業者はまずいないと思う。効果があると言われているけれどもよくわからない、危ないかもしれないからよく気をつけなさいということがどの項目についても出ているわけで、これをもって商品広告に使う人はいない。行政側の一方的な見解ではないか。
 業界団体が希望しているのは商品の広告とははるかに縁遠いところであり、むしろ業界団体と協力してデータベースを活用してもらえるよう活動すべきではないか。
(厚生労働省)
 事業者や業界団体に適正な目的のもとデータベースを活用していただくのは大変ありがたいと考えている。ただし、論点2の回答にあるとおり、<1>データベースを引用したチラシを配布や添付して販売する場合、<2>データベースを引用し広告として使用する場合、<3>インターネットの販売サイト上にデータベースの内容を記載やリンクを張ること等の利用方法はお控えいただきたいと考えている。

2) 国立健康・栄養研究所のデータベースを業界団体名によって情報の発信源にすることに賛成である。
 また、OTOにはサプリメントについての苦情が再生産されていくつも出てくる。こうした状況を改めるような風穴をつくる時期に来ているのではないか。

3) 基本的に栄養表示制度について先進国の状況と日本の状況が違っている。基本的なところを是正しないでこういう問題だけを何とか整合化しようという、その仕組みづくりが非常に無理がある。先進国並みに基本的な一般食品の栄養表示制度ができていない、環境整備ができていない状況の中で、こういう問題が起きている。
 個々の商品についてデータベースの資料をうまく利用する方策があるならばそれに越したことはない。ただし、業界団体として取り組む場合に、中立性や信頼性をどう構築するかが鍵である。せっかくのデータベースの活用なのであるから、そのやり方の工夫がひとつ問題点としてあるのではないか。

4) データベースを使って、自社製品が、例えばノコギリヤシが前立腺に効果があるということを書いたら違反になるのか。また、サプリメントについては問題があったときだけそれを処理するという体制でやらないとこなせないのではないか。
(厚生労働省)
 食品について医薬品的効能効果を標榜することは薬事法違反となる。食品の特定の保健の用途をうたう場合には特定保健用食品の制度を用いていただければ表示することが可能となる。また、問題があった時に対応という点については、我々は健康被害を防止する立場であり、問題が起こらないような形での対応をしていきたいと考えている。

5) 仮にサプリメントを売る場合に、国立健康・栄養研究所データベースによりますとおおむねこういう形の内容の情報になっておりますという、そういう引用をつけてやった場合、それが健康増進法において禁止されている事実に相違する、または人を誤認させる表示に該当するか。
(厚生労働省)
 個別の商品に添付をした場合については、その内容にもよるが、健康増進法上の違反になる可能性がある。基本的に、個別の商品に関する有効性、安全性を表示するためには、当該商品に関するきちんとした有効性と安全性のデータをもって、特定保健用食品のシステムに従って表示をしていただければという考えである。

6) データベースを利用する場合、誇大とか虚偽というには決して思えない。データベースの情報を意図的に狭くしたり、意図的に誤解を生むようなことにするというときには的確に行政として処置をとってもらえればよいが、あくまで既に売られている品物について、こういうきちんとした情報内容を整理してつけて情報提供するものが勧告とか命令の対象になった事例というのはあるのか。
(厚生労働省)
 アガリクスの関係で行われたバイブル本商法といわれるものでは、一番後ろのページに商品の購入の際の連絡先が記載されており、特定の商品と結びつく情報が実はその本にあったということで、警察当局、さらに検察当局が摘発をし、実際に事件化している事例がある。
 データベース自体は客観的なものであったとしても、それを引用してくるときに、あたかもその商品に有効性があるとの誤解を与えるような恐れがあるものについては、薬事法に広告制限の規定があり、消費者が正しい医療を受ける機会を失わせる恐れがあるというようなことも含め、保健衛生上の観点から難しい。

7) データベースの素材情報は、「俗に何々有効性が示唆されている、しかし副作用もありそうだ」といったものである。これを切り抜いて紙に張って出したらそれは薬事法違反か、あるいは特定保健法違反か。
(厚生労働省)
 特定の商品と結びつけるような形であれば、それは薬事法違反である。

8) 紙媒体の形で使用することは禁止していないというが、禁止していないのはどういう事項なのか。また、データベースの情報を離して置けというのはどういう趣旨なのか。データベースを紙に印刷して使用するということが具体的にどういう条件が満たされれば使っていいのか現場では判らないと思われる。どういうルールをすればそういうことが可能になるのか、そういう具体的にお聞きしたい。
(厚生労働省)
 事業者の方が注意事項の表示を作成する場合などの参考にすることや、業界団体が一般の住民に対して研修会を行ったり、シンポジウムを開いたりする際にいわゆる健康食品に関する知識の普及を図る際に紙媒体で配ることは可能。アドバイザリースタッフを育てるための研修を行うときなどもご活用いただけるものと考えている。ただ、個別商品とあわせた配布は、商品の中身を担保するというような誤解を与える可能性があり、商品とリンクした形で配布をしないでいただきたいということをお願いしている。
 個別の商品に関しては個別の商品に関する説明書きなりをつけていただくのが原則であると考えており、紙媒体でとったデータベースの内容を個別商品につけていただくのは望ましくない。データベース自体は素材そのものを扱っているが、売っているものは素材そのものではない。

9) 厚生労働省の回答では、紙媒体でデータベースを配布することは禁止していないとある。禁止してはいないが、商品の近くに置いてはならないというのはこれはどう考えてもよくわからない。

10) いわゆる健康食品はどういうものなのか、ちょっと名前を変えて栄養補助食品の方がわかりやすいのではないかということも一つの問題点を提起しておきたい。
 また、団体すべてがいいとは限らず、その辺のところを厚生労働省とのどういう関連で権威づけていくのか、これはぜひやっていただきたい。
 さらに、このデータベースで見た限りでは、大変わかりにくい。もっと第三者、一般の消費者が見たときに、わかりやすくすべき

11) 未然に問題を阻止するということで、細かく規制した結果、いい業者が育たず、悪いものばかりが普及している。罰金が200万円では何百億という利益に対応した厳しい罰則になっていない。どうやってそういう現実に対応できるのかというのを研究しなくてはいけない。

12) 個々の商品を判断するときに、このデータベースの素材情報というのをどう活用したらいいのかという方法を教えていただきたい。

(5) 議長による総括

1) 本件は、サプリメントの成分に係る情報を消費者に判り易く提供するため、業界団体が(独)国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報のデータベースの情報を、商品を購入する場において、紙媒体等の形で提供することを認めるべき、との問題提起がなされたものである。

2) 保健用途や栄養成分の機能を表示できないサプリメントが商品として市場に数多く存在し、不適切な広告が多く氾濫している中で、消費者は何を指針として商品を選択してよいのか判断できないまま、自らの健康維持のためにそれらを摂取しているのが現状である。従って、消費者が、商品を購入する場において、サプリメントを適切に選択するための参考となる客観的・中立的な情報を、いかに提供するかは重要な課題である。

3) サプリメントの有効性や安全性について消費者の誤解を招くことのないよう、データベースの情報を故意に加工することなく客観性・中立性を確保し、かつ個々の商品に添付せず特定の商品に関する広告その他の表示として利用しないことを担保した上で、業界団体が国立健康・栄養研究所のデータベースの情報を活用し、紙媒体等の形で消費者に対し情報提供することは認め得ると考えられる。

4) このため、厚生労働省は、業界団体が国立健康・栄養研究所のデータベースの情報を、個別商品の宣伝に利用しないことを担保した上で、消費者の求めに応じて紙媒体等の形で提供することを認めることとし、法令等が遵守された適切な情報提供を確保するため、その具体的実施方法については業界団体と調整を行い、必要に応じルール等を整備すべきである。

5) また、過去のOTOにおける審議の経過等を踏まえ、サプリメントに係る制度、情報提供のあり方について、より消費者にわかりやすいものにするよう努めるべきである。

(6) 議長による総括に対する委員のコメント

・期限付きで何か答えを出していただきたい。
(議長)
最終的に報告案をまとめる段階で事務局と調整させていただきたい。

6 その他

第39回OTO推進会議の日程について事務局から説明。
 
以上

(速報のため事後修正の可能性あり)

[問い合わせ先]内閣府市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-0384(直通)