平成14年度第6回OTO推進会議専門家会議議事要旨


1 日時:平成15年2月26日(水)10:00〜11:00

2 場所:内閣府共用第4特別会議室 406号室

3 出席者:

(OTO推進会議)
大河原推進会議議長、谷村委員(議長)、北岡委員、黒田委員、佐々波委員、島野委員、眞木委員、松下委員、權委員、金森委員、兼重委員、高瀬委員

(所管省庁)
財務省関税局税関調査室 河野室長
財務省関税局業務課    居戸課長

(OTO事務局)
加藤官房審議官、塩澤参事官、渡辺企画官、岡参事官補佐

4 議題
(1)輸入手続の簡素化・迅速化
   ・ 簡易申告制度の改善
   ・ ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進
(2)その他
5 審議の概要

議題 輸入手続の簡素化・迅速化

(1)事務局から、提起された課題、所管省庁による措置の概要(案件を巡る背景)及び課題・論点について説明

(課題・論点)
〇 簡易申告制度の改善
1)  簡易申告制度について、利用価値が大きい制度である割には、必ずしも十分に利用されていないとの声は多い。所管省は、その実施状況等を踏まえ、現行制度についての種々の検討も行っているところであるとしているが、多くの輸入業者が利用できるようにするために、具体的にはどのような見直しを進めているのか。適用対象貨物に係る要件、特に「直近1年間に24回以上の輸入許可の実績」に係る要件は厳しすぎるのではないか

〇ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進
2) 平成15年度のできるだけ早い時期に供用開始を行う予定になっているがそれに向けた現時点の取組状況如何。少しでも繰り上げて早期に実現するべきではないか。
3) 既存システムの相互接続にとどまらず、利用者の利便性の観点から、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続を徹底的に見直した上で、ワンストップサービスを進めるべきではないか。


(2)所管省庁からの説明

1)に対し
1.簡易申告制度は、いずれかの税関長の承認を受けている輸入者が、指定を受けた種類の貨物について、輸入申告(引取申告)と納税申告を分離し、納税申告の前に貨物を引き取ることを特例的に可能とする制度である。
2.この貨物指定を受けるためには、継続的な輸入が行われていることが必要であるが、これは、納税が輸入許可後となる簡易申告制度おいて、適正な納税申告を確保するためには、輸入者が輸入する貨物について関税関係法上の取扱いについて習熟していることが必要であるとの観点から、設けられているものである。具体的には、現在は御指摘のとおり「直近1年間に24回以上の輸入許可」としているところである。
3.適正な納税申告を確保するため、この継続的輸入の要件を廃止することはできないが、「直近1年間に24回以上」という輸入許可回数については、特例輸入者等からの要望やこれまでの執行経験を踏まえ、平成15年度関税改正において、「直近1年間に6回以上の輸入許可」と緩和することとしている。
4.また、平成15年度改正では、併せて簡易申告制度を利用するに当たり必要な担保額の見直しを行い、輸入者の負担の軽減を図ることとしており、これらの見直しによってより多くの輸入者・輸入貨物で簡易申告制度が利用されることを期待しているところである。

2)に対し
1.輸出入・港湾関連手続のシングルウィンドウ化については、昨年1月の関係府省による連絡会議で基本方針を合意し、現在、財務省をはじめ各省において、その早期実現に向けて必要なシステムの開発を進めているところである。
 例えば船舶関係業務の現状をみると、税関への手続は専用回線でSea-NACCSを通じて、また、港長、港湾管理者への手続はインターネットで港湾EDIシステムを通じて、それから、検疫所及び入管については紙を提出して行う。これらの業務の中には、非常に似かよった業務があり、例えば入港届をこれらの官庁に送ることになる。今ではシステム上もばらばらで、場合によっては紙で提出しなければならない。シングルウィンドウ化が実現すると、データをインターネット又は専用回線、どちらでも選択的に使うことができ、Sea-NACCS又は港湾EDIのどちらか一方に送ると、他の官庁にも流れる。これがシングルウィンドウの基本的な考え方である。
2.これまでのところ、関係府省との連携、協力により概ね順調に開発が進んでいるが、今後、残されたプログラムの開発及びその試験、さらに各省システムや利用者システムとの接続試験を順次行うこととしている。
3.平成15年度のできるだけ早い時期に供用を開始するため、今後とも鋭意作業を進める所存であり、目下のところ、本年7月中を目標にシングルウィンドウ化の実現を目指しているところである。
4.なお、シングルウィンドウ化の実現に当たっては、その利用を広げて行く上でシステムの円滑な導入が重要であり、各省システムの試験及びその接続試験を入念に行う必要があると考えており、万全を期してまいりたい。

3)に対し
1.税関においては、これまでも、通関情報処理システムの開発等、税関手続の電子化などに当たっては、手続の見直しを行ってきたところである。
2.輸出入・港湾関連手続のシングルウィンドウ化に当たっても、利用者にとって使いやすく、運用に当たってコストが低く、国際標準にも配慮し、手続面で簡素なシステムを構築するよう取り組んでいるところであり、入港届など複数の行政機関に跨る手続については、その提出時期、入力項目の調整、統一などを行い、関係行政機関に跨る手続を1回の入力・送信でできるようにしている。また、1回入力したデータについては、事後の関連する手続を行うに当たって、当該データを再入力することなく、既に入力したデータを再び利用できることとしている。
3.こうしたシングルウィンドウ化については、既にシステムの開発に着手し、鋭意開発作業を進めているところであり、目下のところ、できるだけ早い時期の円滑な供用開始の実現に全力を尽くしているところである(本年7月中の実現を目標)。
4.個別手続の見直しについては、今後とも、物流実態の変化等に応じてその必要性を逐次検討し、昨今の進捗著しい情報技術革新やシングルウィンドウ化の成果等をも踏まえつつ、その見直しが必要なものについては、適宜、措置してまいりたい。


(3)委員からの主な発言と所管省庁の応答

(簡易申告制度の改善)

ア(委員) 簡易申告制度について、輸入許可実績が24回から6回に変更されることで、実態としてはどのぐらい恩恵を受けられる方が増えるのか。

(財務省) 現在、簡易申告を使うことができる特例申告輸入者の輸入申告のうちの大体6%ぐらいしか使っていない。今回かなり改善したので、かなり使っていただけるのではないかと期待はしている。
(委員) 6回以上輸入しているというのは、どのくらいか。
(財務省) なかなか統計がとれないが、24回以上の方が全部使うとすると輸入申告の60%ぐらいになる。6回以上にすると、理論的には8割ぐらいまで上がる。ただ、企業のマネジメントの関係で、これを使う方が得なのか損なのか、企業で判断されて使っていただけるのかと考えている。
(委員)  対象貨物の輸入の習熟について、6回使用しないと習熟しないというのはかなり難しい制度で、制度上の欠陥があるのではないか。もっと簡単なものに直すべき余地が全くないのか。
(財務省)  簡易申告制度は2つ条件をつけていて、一つが税金を後で取り漏れがないように担保を積んでいただくというのと、事実上非常に簡易な検査・審査になるが、関税の分類や税の計算とか専門的な難しさがあるので、その品物に習熟しているという条件を課しているわけである。制度を始めるときは1年間に24回ぐらいということであったけれども、その後、実際運用してみて問題点を把握し、関係者の意見を聞いて6回ぐらいが適当ではないかと考えている。6回に絶対的な水準の理屈づけというのがあるわけではない。12回にしないで6回と結構思い切ってやったつもりである。
イ(委員) これまで2年足らずの短い期間だが、どういう輸入品目について適用が見られるのか、つまり工業部品だけであるのか。
  また、過去にコンプライアンスからだめだという事例があったか。
(財務省) 第1点目は、今50社で使っており、大体日本を代表するようなメーカーないしメーカーの子会社が多くて、多分、部品等の輸入が多い。
  次に、簡易申告で、コンプライアンス違反というか、簡易申告を利用しながらそれを何か悪用したようなことは今のところない。
ウ(委員)  24回以上という現状では、本来6割ぐらいが使用できるが、実際は特例輸入者の輸入申告のうち6%程度しか活用してないが、この理由は何か。今後6回以上に伴い使用できるのが8割に拡大することによって、利用度は相当向上すると見込んでいるのか。
(財務省)  なぜ利用度が低いかというのは、我々もいろいろ議論をしているが、ひとつは24回というのが多過ぎるということである。もう一つは担保額として、例えば自動車部品を輸入するなら、簡易申告制度を使おうが使うまいがその部品全体にかかる前年の納税額を基準にして、その12分の1を担保に積んでもらっている。要するに、前年の輸入をそのまま全部簡易申告を使って輸入しても、税金の取り漏れがないように積んでくださいということであるが、企業によっては簡易申告を使う方が便利な時だけ使いたいというようなニーズがあって、前年の簡易申告制度を使った輸入にかかる納税額を基に、その12分の1だけ積むように今回改正した。この2つの改正で利用者のニーズはかなり満たしていると思うので、あとは利用者でどちらがいいかを選んでいただければと考えている。どこが違うかというと、普通の申告では輸入のときに税金を払うわけです。簡易申告ですと、税金は翌月でいい代わりに担保を積まなければならない。その会社の資金繰り等によって、どっちが得かということもある。例えば簡易申告を使うと、1カ月に何回も同じものを輸入される方は翌月末に何回分をまとめて納税すればいいので便利だということや、あるいは実際の実務においては、簡易申告の対象となるものと他のものをまとめて輸入する方の場合は分けて申告するのはかえって面倒くさいので、普通の申告でやればいい。
エ(委員)  輸入業者というのは、日本の会社ですか、それとも外国系の企業も含まれるか。
(財務省)  両方あります。
(委員)  利用の割合はどうか。
(財務省) 外資系かどうか必ずしも明確ではないが、外資が入っている、あるいは親会社が外国にある会社がかなりの率であります。こういう便利な制度について敏感に使っているのではないかと推測される。
(委員)  日本の企業というのはどっちかというと周りのことを気にするが、外国系の企業は積極的に日本の需要者のために輸入した方がもうかる可能性があるとすると嫌がられようが輸入するから、この制度が外国系の企業に大いに利用されるということは、将来に向かって意味がある。外国企業向けのホームページ等の掲載内容について工夫していただけないか。
(ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進)

オ(委員)  ワンストップサービスは平成13年度から始まっているから、システムの構想が大体固まったのは平成12年の夏以前になると思う。そうすると、平成15年7月に供用開始までまるまる3年以上かかっている。
  IT分野は非常に進歩が速いから、3年先の状況を確実に見通すというのは非常に難しい。民間企業は、将来を見通すことが難しいから、できるだけ近い将来実現するものを早くつくらないと、3年先は、どういう事態になっているかわからないから、3年かかると思ったのをどうやって2年に詰めるかというのを一生懸命やる。
  3年間の開発の実績のうちで、実際は各省庁の連絡、打ち合わせ、それから合意形成に時間がかかって、本当のシステム開発の仕事はあっという間にできたのではないのか。少なくともシステム開発の目的が国際競争力を高めることであるなら、時間を短くするために、過去の実績を点検してどこで時間がかかっていたのかを考えるべきだ。

(財務省)  ワンストップサービスについては、e-Japan 重点計画に基づいて、それぞれの官庁が電子化を進めていこうということで、各省が所管の事項の電子化について、アクションプランを立ててやってきている。
  シングルウインドウについては、平成13年の夏、大臣がイニシアティブという形で提示されたのを受けて、急遽私どもが各省の方々と議論を始めた。
  関係府省連絡会議の場で議論されたのは、方向性、コンセプトで、一つの窓口から複数の行政官庁に対して電文を1回で送れるというコンセプトをどうするべきかという話を関係府省連絡会議で決められたわけで、時間がかかっていたということではない。
  関係府省会議の下に作業部会があり、実際にどういう形でシステムをつくるかという議論をやっていて、極端な話、毎日のように会ってはプログラムの作成のために打合せをして、ここのデータをこうすべきだ、ああすべきだということで、非常に大車輪でやっており、昨年の1月に関係府省連絡会議で方針を固めて、1年ちょっとでプログラムが現在できかかっている。一般の各省のワンストップサービスの業務とシングルウインドウとはちょっと別物である。ワンストップサービスの中において同時に1回でできる業務、例えば、入港届は、税関、港長、港湾管理者、入港管理局及び検疫所にもそれぞれ届けなければならない同じようなデータがあることから、これを各省庁ばらばらであるよりも、一つにまとめられるものはシングルウインドウにしようというのがこのアイデアである。
カ(委員) 韓国貿易協会の子会社で、KT-Netというインターネットによる貿易手続の会社があります。KT-Netを通じて輸出入申告すべてをやることになっている。現在、外国のいろいろなシステムとの接続を考えている最中です。日本のパートナーはTEDIですが、シングルウィンドウにおいて、TEDIとどういう関係にあるのか。
  最近、韓日関係はFTAを前提としていろいろ考えなければならない。そういう観点からも、韓国貿易協会はこのシステムについて、国際的な協力がどういう方向で進んでいるか聞きたい。
(財務省)  まず、TEDIと財務省のシステムとの関係であるが、このワンストップサービス及びシングルウインドウのそもそもの考え方は、行政官庁に対する手続について、ワンストップサービスにしたり、また、同じタイミングで同じような業務を行う場合には、シングルウインドウにしようということである。
  一方、TEDIというのは民間同士の基本的には貿易金融システムで、業者間でTEDIという一種の国際標準を使ったものであると聞いている。また、TEDI以外にもBoleroというヨーロッパ発のものもあり、これは競争しているわけです。民間同士の手続の標準化、電子化という動きである。今私どもがやっていますのは、行政官庁に対する手続について、どのように合理化して電子化を進めていくかというものであるから、概念としては2つに分けられると思う。このシングルウインドウ、ワンストップサービスと民間とは現在のところは直接つながっていない。将来はわからないが、いろいろなニーズがあればそれについていろいろ接続とか、そういうことは考えられていくと思われる。
(委員)  将来、日本、韓国、中国、ASEANの中でFTAを結ぼうということが出てきている。その関係で、官庁の協力だけでなく、民間の協力も必要であるという指摘は大事である。まず官庁間の連携をやり、それから民間との連携もやるということも考えていく必要が将来は出てくるのではないか。
(財務省)  一昨年の8月に塩川大臣が塩川イニシアティブという形で貿易の推進を提言されたわけであるが、その中の電子化は実は3つある。まず、行政手続について電子化されてないものは電子化しよう。その次はそれぞれの間で業務の連携があるものはつないでいきましょう。3番目は、民間においても民間の電子手続の標準化を進めていきましょうということで提言されています。私どもも十分肝に銘じていますので、これからもその方向性で頑張っていきたい。


 (4)議長による総括

 日本の物流面の効率化を促して、時間的、経済的コストを削減するために、輸入手続の簡素化、迅速化を図ることが重要である。
 それに立って、平成13年度に導入された簡易申告制度につきましては、利用価値が本来大きい制度である割には必ずしも十分に利用されていない。その導入効果が十分に発揮されているとは言えない状況になっていない。より多くの輸入業者が簡易申告制度を利用できるようにするために、貨物の指定等にかかる要件を見直すべきであり、財務省の提案にあります輸入許可の要件に関しては、「直近1年間に24回以上輸入許可を受けた貨物」との指定を「直近1年間に6回以上」に見直すのが適当である。
 また、輸入手続の簡素化・迅速化を図るためには、行政手続の電子化の観点から、輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウインドウ化)を進めていくことが極めて重要です。平成15年度のできるだけ早い時期におけるワンストップサービス(シングルウインドウ化)の供用開始に向けて、少しでも繰り上げて早期に実施すべきである。遅くとも財務省が言っている本年7月中までには供用を開始すべきである。さらに、既存システムの相互接続にとどまらず、利用者の利便性の観点から、重複業務の見直し、手続の簡素化等、すべての手続の徹底した見直しを行うべきである。
 (速報のため事後修正の可能性あり)
 
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