第17回OTO推進会議苦情処理部会議事要旨


1 日時 平成13年3月26日(月) 14:00〜17:00

2 場所 内閣府会議室(545号室)

3 出席者

(OTO推進会議)

谷村委員(部会長)、金森委員、兼重委員、本田委員、宮智委員、村上委員 (苦情申立者) 議題1 欧州ビジネス協会協議会 マリー事務局長、セージマン事務局プロジェクトマネージャー他 欧州ビジネス協会協議会診断薬委員会技術小委員会 古布委員長、加藤委員 議題2 NNFAジャパン 大浜科学担当ディレクター、CRN JAPAN 多田理事長 他 (所管省庁) 議題1 厚生労働省医薬局 池谷審査管理課長、光岡課長補佐 他 議題2 厚生労働省医薬局食品保健部 中垣新開発食品保健対策室長 他 (OTO事務局)   内閣府 梅村大臣官房審議官、塩澤参事官、坪内企画官 他


4 議題

(1)OTO番号616「体外診断薬に係る規制緩和」について
(2)OTO番号631「保健機能食品制度案の白紙撤回」について
(3)委員からの質問・意見の対する回答を提出することとされた案件について
(4)その他


5 審議の概要

議題1  OTO番号616「体外診断薬に係る規制緩和」について

○苦情申立者からの説明

(1)疾病の診断に使用される体外診断薬は血液や尿などの試料からデータを得る為に用いられるが、患者の体内に入ることはないにもかかわらず、日本では医薬品の扱いを受けている。昭和60年6月29日の「体外診断用医薬品の取扱いについて」により通常の医薬品とは区分した申請手続きの簡素化が図られており、また、多くの通知によって申請の簡素化が図られているのも事実であるが、人体に直接用いるものではないのに、厚生労働省から医薬品としての認可を受けなければならない。 (2)一方、厚生労働省は体外診断薬の審査における標準事務処理時間は6ヶ月と設定(昭和60年10月通知)している。また、平成7年にフロッピィーディスク申請システムを取り入れ、都道府県庁とのオンライン化により承認審査体制の強化を図っているが、申請者は依然として、FDとともに書類での申請書の提出を求められており、FD作成の手間が増えたに過ぎない。また、平成11年の協会の調査では申請後6ヶ月で審査が終了したものは全体の12%に過ぎず、残り88%は7ヶ月から1年以上、2年近くかかっているものもある。 (3)輸入元で開発製造され、すでに審査を受けた製品をより早く日本に導入し、医薬に貢献したい。特に、体外診断薬の技術進歩は早く、これらの製品の速やかな導入を望む。審査に時間がかかることは、製造コストを引き上げ、医療費の削減、経済の活性化に逆行することにもなる。 (4)平成7年にOTO対策本部決定として「体外診断薬のうち承認不要の範囲を設けること等を検討し、可能な限り早期に実施する。」こととされたが、すでに5年が経過しているが何の結論も出ていない。平成10年12月のOTO対策本部決定では、「薬事法において体外診断薬を新たなカテゴリーとする対応をとることを検討するため、外部の専門家等が参加した検討会を平成11年度上半期中に設置するとともに、検討期限を明確化する。」とされた。 (5)当時厚生省は、河合自治医科大学名誉教授を班長とした学識経験者で構成され、業界として日本臨床検査薬協会、在日米国商工会議所、及び当協会から代表者が検討に参加した検討会を設置した。結果は平成12年3月に取りまとめられ、報告された。 (6)厚生労働省は、同報告を踏まえて、体外診断薬を新たなカテゴリーとする対応を早急に取るべきであるが、調査班の答申が厚生労働省の意に添わないものであったのか、厚生労働省は、報告書提出から数ヶ月経過後、第二次の調査班が組織され、非常な短期間での報告を求められている。 (7)当協会は昨年10月に再度OTOに苦情申し立てを行った。内容は、現在大きな問題となっている1)審査期間の遵守2)承認不要化の検討の2つである。厚生労働省の2回の回答は現実を正確に捉えたものと言えず、審査の遅れが業界側の申請書の不備にあると言っている。業界にも多少の改善すべき点はあるが、全てが業界側の問題とは思わない。1)審査段階での質問内容は低レベルのものが多々見られること、2)審査官が異動後には質問が増加することあるいは同様の質問等が繰り返されること、3)充分な人員配置がなされないための承認書提出から4、5ヶ月放置されること等が遅れの原因の1つと思われる。 (8)体外診断薬をリスクにより分類し、リスクの比較的低いものは承認不要とし、その分HIV等のリスクの高い診断薬の審査に時間を割いて中身の濃い審査を行い、人員の再配分を行って6ヶ月の審査期間を遵守するよう要望する。 (9)承認不要化に伴い、製品の品質確保が問題となってくるが、従来より業界は自主的に体外診断薬のGMP基準(医薬品の製造基準)あるいはGMPI基準(医薬品の輸入販売基準)を定め、企業の責任において、品質の高い製品を供給できるように努めてきた。また、時代の要請にも従い、厚生労働省に対しても第5次修正案まで提出し、意見を伺ってきた経緯がある。しかし、厚生労働省は、何ら結論を出していない。審査期間6ヶ月の遵守、リスク分類による体外診断薬の承認不要化を重ねて要望するとともに、厚生労働省は何をどのように、いつまでに行うのか明言してほしい。


○所管省庁からの説明

(1)新医薬品の承認審査体制は、本来1箇所でまとめて業務を行うのが望ましい姿であるが、人員の増加は非常に困難であるため、次善の策として国立衛生研究所にある医薬品医療機器審査センターで科学的審査を行い、特別認可法人である医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(医薬品機構)において信頼性、同一性の調査及び査察を行うシステムになっている。申請が出されたら、医薬品医療機器審査センターでよりわける。信頼性のデータ、GCP調査、の査察を行い、出されたデータが信頼性にたるかどうかをチェックした後、センターにおいて審議会の専門委員が審査チームに参画し審査報告書を作成し、それを基に社会性を加味した形で審議会の特別部会、薬事分科会に諮問・答申が行われ承認される。一方、後発医薬品の承認審査体制では、審議会と関係なく事務的に作業を進めており、医薬品機構において同一性、信頼性、査察、審査センターにおいて科学的なチェックをして本省において総合的判断を行い、承認される。 (2)各国の医薬品・医療用具承認審査体制は、日本は3機関で約231人、予算約43億円、年間26成分の審査を行っている。米国のFDAでは審査を直接担当している人員は2600人(全体で9000人、そのうち4000人が医薬品のセクション、情報の公開を行う直接の部局130人、他に2000名)おり、予算は約13億ドル、新薬の承認件数は35成分である。EUは欧州全体の応援を得ながら新薬のみ審査を行っている。また、英国、フランス、ドイツは日本のほぼ倍の人員体制で審査を行っている。 (3)事務処理については、医薬品機構では4から5ヶ月かかり、審査センターでは数ヶ月かかり6ヶ月を超えてしまっている。また、医薬品機構では5ヶ月で標準的に審査が行われている。その後の審査センターの取扱いに関し申請者と審査官の考え方の齟齬があった。 (4)2月26日「体外診断用医薬品の承認に係る調査・審査の事務処理について」においてエイズの診断薬、HCVなどの肝炎等感染性のもの、病原体及びヒトの遺伝子を対象とするものについては、一所懸命やらなければならない。感染症や腫瘍マーカーなど以外のものについても、審査をもっと迅速に行うこととした。機構では4ヶ月以内で処理して6ヶ月以内承認できるように処理するようにする。同一性が疑われてかなり審査をやらなければならないものについては、医薬品機構で直ちに審査を行いセンターに送りセンターにおいて充分な審査を行う措置を取る通知を出したところである。 (5)審査側と申請者側のタイムクロックの明確化を行った。トラブルの原因は審査センターからの質問と回答である。回答について審査官がだめだと言ったときのタイムクロックをどちらが持っているかが問題であった。医薬品機構、審査センターにおいて、のべで3人程度しか審査に携わっていない。230人のうち実際に審査を行っているのは100人前後であり、3箇所に分かれている。現状ではこの体制で行っており、体制強化は内部検討しているが、厚生労働省だけではなかなか進まない。 (6)薬事法における疾病の診断治療に処するものは医療用具以外は医薬品とされており、法改正がなければできない。診断薬が医薬品の流通経路にのっているので、全体の合意を得ることが難しい。GMP等前に進んでいることは承知しているが、診断薬の不良品等での回収数は12年年4月から13年2月1日まで26件ある。うち19件は輸入しているものである。擬陽性、あるいは検査した結果数値が過少であった等診断の際に混乱を招く事例が回収されている。 (7)本年の1月から実務上の改革を進めている。 


○この後、審議

(委員の主な質問及び発言、所管省の応答、苦情申立者の発言)

(1)標準処理期間の6ヶ月について質問。厚生省の資料には「資料作成のルールに従った適切な申請が少ない」とあるが、本ルールとは法律あるいは政令に基づいたものであるか。根拠はなにか。本ルールの周知徹底はどのように行ったか。 (厚生労働省)施行規則に添付すべき資料が定められており、それに基づき局長通知で細部を規定している。 (委員)「88%が、7ヶ月以上の事務処理期間である」とのことだが、80%の人が間違えるような書類の書き方をさせるのは、問題があるのではないか。 (2)厚生労働省の回答においては、「技術の進歩が著しいことから性能基準の設定が困難」とあるが、いわゆる河合レポートには「性能基準は、本来、測定項目ごとに設定されることが前提と考えられるが、対象項目が多いこと、新規作成には膨大な時間と労力が必要であり、しかも日進月報の技術に対応しなければならないこと、などの理由で現実的ではない」ことから、「既に市場の評価を受けている低リスクの既承認項目については、承認不要とする案が討議され、以下の3種類に区分する案が討議された」とある。同レポートはEBCの要望にあったことが書かれているにもかかわらず、厚生労働省の回答においてその一部分しか引用しなかった理由如何。故意にレポートを書き換えているのではないか、 (厚生労働省)性能基準を作るのには1〜2年はかかってしまう。性能基準ができる頃には、製品には市場価値がなくなってしまうものが多い。薬事法上は性能基準を作って、承認不要化すべきであろうが、性能基準をすべての製品について作るのは時間がかかる。したがって、別の方法を検討していきたい。 (3)厚生労働省の回答においては、「総合的な品質性能管理の考え方が十分に普及していない」としているが、河合レポートにおいては、企業内の品質管理について言及しており、ISO9000s認証が求められる場合が多くなるが、業界内では認証取得企業は20社以上に達している、との記述がある。民間企業の方がきちんと対応していると読める。一方、「日本では法的位置付けの違いもあり、直ちに国際的整合性論議に参入しがたい」とあり、これは行政に問題があるからである。なぜ、回答において、「総合的な品質性能管理の考え方が普及していない」という記述となったのか。 (4)河合レポートには「体外診断用医薬品の規制方法を考える時、たとえ、医薬品のカテゴリーに属するとはいえ、これを理由として、国際的流れに逆らう事があってはならない。将来の相互認証を視野に入れた欧米の動きにも、現在、我が国は対等な立場で論議に参加していない。少なくとも、低リスクと判断される体外診断用の分析試薬が承認不要とされている諸外国の現状に是非とも近づけるべき時期にきている。また、医療現場ではソフトとハードの関係で同時に使用されることも多い。従って両者は限りなく同じ思想で規制されるべきものである」との記述がある。河合レポートを読むとOTO対策本部が決定したこと、EBCが希望していることをまとめている。厚生労働省の回答が河合レポートの記述からかけ離れている理由如何。 (厚生労働省)低リスクのものをより分けることを今のうちに行うべき。またGMPの仕組みを制度化し導入していかなければ、諸外国との比較ができない。品質管理は大事である。それがベースになって初めて承認不要化の議論ができる。 (5)低リスク、ハイリスクという概念にどう取り組んだか。包括的に分類しないで扱っているのではないか。 (厚生労働省)低リスク、ハイリスクに分けることは基本的に難しいが、実際の申請時はそれが明確でないと混乱する。そこで、厚生労働省としては、ハイリスクのものについて定義した上で、それ以外の低リスクの範囲を拡大し、申請資料の見直しの中で、申請書類の簡素化を図る。ほんの一部のものがハイリスクとなるように、現在EBCにも加わってもらって申請資料の区分の見直しについて検討しているところ。3月中に通知を発出したい。 (6)平成12年3月に調査班の報告書が発表された後、調査班が新たに設置された理由如何。 (厚生労働省)平成10年、11年と河合研究班の内容は、現実的に実施するには具体性に乏しいものであった。報告書に盛り込まれている案が総花的であったということもあり、体外診断薬の特質を考慮して、今後どの道に進むかを検討するために、新たに研究班を設置し、実施に向けた具体的な検討を行うこととした。 (7)忙しいのなら、アウトソーシングを考えればよい。できないのならなぜできないのか。標準処理期間について、当初の回答では、厚生労働省での審査は6ヶ月の標準的事務処理期間内で概ね行われているとのことであった。その後、また本日の説明では、事務処理期間をなるべく短縮しようとしている。当初の回答時から本日の短い期間内で、厚生労働省での対応に変化があったのか。EBCの要望は、何を、どのように、いつまでに、具体的対応策を示してほしい、というものであるが、同感である。 (厚生労働省)本年1月以降、6ヶ月以内で対応するための方策を検討した。昨年10月以降は、狂牛病対策に追われていた。昭和60年に標準的事務処理期間が6ヶ月と約束しているのであるから、厚生労働省としても可能な限り努力したい。審査センターからの質問が稚拙である等問題があれば、審査管理課に連絡してもらえれば対応する。 (8)1月以降の努力を評価したいが、人事異動によってはまた時計の針が逆になる可能性はある。日本の行政組織に求められているのは、裁量性を排除されるようなシステムである。この種のものは裁量的であることはないはずである。 (部会長)総理が入った機関であるOTO対策本部決定に対するEBCの評価が、「何ら実施されていない」というものである。厚生労働省は、これに対する反論をしなければならない。日本政府として決定したことが実施されていないという評価を受けていることは、日本政府の面目に関わるものである。反論があれば是非この機会に言ってほしい。 (厚生労働省)承認不要とすることは法改正を伴うものである。法改正の機運、タイミングによる。その節には、真摯に対応させていただきたい。 (部会長)法改正をして実施する、というのが世間の常識。法改正が必要だから実施できない、という理由では、世間を納得させることは難しい。一度OTO対策本部において決定したものについては、真剣に取り組んで是非前向きに検討してもらいたい。 (9)今年度中にはリスクの高さによって、申請資料の整理合理化をするとのことだが、どのくらいの段階に分けるつもりか。一番リスクが低いものについては承認不要ということまでの扱いにするのか。 (厚生労働省)申請区分に関し、新規性の高いもの以外は、リスクの高いもの、リスクの低いものに分け、リスクの低いものに関してはなるべくたくさんの品目が入るようにする。リスクの低いものについてはほとんど添付資料をつけないこととする。薬事法を改正しないと承認不要にはできないので、ぎりぎりのところで、ほとんど時間がかからないように、承認申請書を事実上見なくてよい範囲を拡大する。 (苦情申立者)3月末に発出予定の通知で添付資料の簡素化が図られるとのことである。その案をEBCは持っているが、これまで100必要であった申請書類が80に減る程度の改正に過ぎず、日本でしか有効でない治験の方法やデータを要求されているものが多い。外国企業としては、本国でのデータのほかに日本でも同じことを行わないといけない。外国のデータを日本の規格にあてはめて使ってもいいということになぜならないのか、昔からの問題である。今回の通知においても盛り込まれていない。 (10)アウトソーシングには、外国で行われた検査結果で、外国で通用するようなレベルのものを日本で採用するということを含むものである。 (厚生労働省)ICHで日本と米国とヨーロッパの規制当局、関係団体で集まって、国際的ハーモナイゼーションを検討中。そこでは申請書の様式を統一するということも議論しているが、日本のデータが外国においては認められていない場合もある。 アウトソーシングの一つとして、医薬品機構で審査することとしたが、数が多くて効果があがっていないということがある。 (11)3月に出される通知は専門委員にも送ってほしい。 (厚生労働省)EBCに不満があれば時間をとって話をお聞かせいただきたい。 (12)本件については数年来議論しているはず。なぜ、改めて話をするのか。 (厚生労働省)ユーザー側の話等、いろいろなところの意見を聞かなければならない。 (13)体外診断薬については、診断は医師が行うものであり、以前、「診断」という言葉を使えなかったのを記憶している。事務局としては調整に苦労があると思う。いまや時代は変わっているのだから、OTOを利用していくよう戦略を考えたらどうか。OTOをきっかけとして促進を図っていただきたい。


○議長による総括

厚生労働省の前向きな意欲は評価したい。しかし、何をいつまでにやるかということは明確でないので、本日の委員の意見を踏まえ、厚生労働省において検討していただきたい。1ヶ月程度後に苦情処理部会を開催することになっているので、検討結果を是非お聞きしたい。3月中に通知を発出とのことであるので、決定された内容についてもご説明いただきたい。通知は専門委員にも送っていただきたい。リスク分類については、厚生労働省が忙しいというのはわかるので、承認を不要とするのは、事務の合理化でもある。標準的処理期間である6ヶ月以内での処理をどう実現するのか。法改正についてどう考えるかについても聞かせてほしい。


議題2 OTO番号631「保健機能食品制度案の白紙撤回」について

○苦情申立者からの説明

(NNFAジャパン) (1)新保健機能食品制度によって実際に海外で食品として流通していたものが、日本において医薬品としてでなく食品として流通できるようになったのかの視点で説明する。現在8000億円といわれる健康食品、栄養補助食品が流通しており、また海外から日本に入ってこようとしているが、国民はこれらを健康の維持、増進を目的に摂取している。自分たちはこれらの全ての商品に、規制緩和が及ぶよう求めてきた。要望の目的は国民が混乱を生じないよう摂取目的に応じた摂取を可能にすること、海外からの貿易の障壁を取り除くことである。商品は流通しているが情報の提供はこれまで禁止されていた。そのため消費者は正しい判断で適切な商品を適切な価格で購入することができなかった。 (2)健康食品、栄養補助食品に含まれる成分には健康の維持・増進に直接影響する機能、作用、効果などが確認されているものが多数ある。特にハーブは顕著であるが、実際にはその効果は隠されたままで購入されてきた。消費者の信頼できる判断手段は表示であるが、判断できないような状況であった。今回の制度ではある一定のカテゴリーでは大幅に緩和され、かなりの部分も混乱を解消されたと考えられる。しかし、ハーブなど重要なものを含んではいる他の大部分は規制の緩和が及ばない一般食品として流通することになり状況は変わらない。 (3)今回の新制度の承認を得るためには高いハードルをクリアしなければ許可は得られず、許可の方法は極めて医薬品的である。従来の特定保健用食品の承認を得られるものは大手企業に限られていた。中小企業、海外から日本に輸出する海外企業は、薬事法や食品衛生法の基準にかなえば日本で流通が可能であった商品を扱っており、新しい制度の中で特定保健用食品として資料提出を求められる商品ということになると明らかに著しい規制強化を感じざるを得ず、医薬品的な規制強化である。 (4)栄養機能食品の上限、下限の設定の根拠が充分に納得できない。安全性を前提に設定されたのであれば一般食品についてはまったく考慮されずに放置されることになり大きな矛盾があり、海外からも批判的な見方がなされている。海外からは処方変更しない限り日本へ輸出することはできず、従来と状況はほとんど変わっていないと判断している。新制度は納得できず白紙撤回を申し出た理由である。 (CRN JAPAN) (1)今回の制度における栄養機能食品の上限値を超えるものは既に市場に出ており、この制度でカバーされない商品がある。保健機能食品、医薬部外品の成分規格であるが、保健機能食品の上限、下限はほぼ医薬部外品と同じ。ビタミンCでは含有量が35から1000ミリグラムでも保健機能食品という同じ表示になり、非常に幅が広すぎる。ULを上限値とすべきである。 (2)栄養機能表示に許される内容では、消費者が理解できるのか疑問である。例えば、機能表示の主語は栄養素であり、注意喚起表示の主語は本品となっている。また、医薬品と保健機能食品と中身が同じ含有量であっても表示が全く違う物が出回ることで消費者に混乱を与えるものである。新しい制度では、ビタミンCでは医薬品、医薬部外品、保健機能食品の栄養機能食品、規格基準の量に合わない一般健康食品の4つの違う商品が市場に出回る制度は消費者が混乱する。菓子メーカー、ドリンクメーカーは少しの含有で保健機能食品として表示し販売ができる。 (3)食品と医薬品については、欧米では食品の側面から取り組んでいる。日本においては医薬品の側面から取り組んできた。食薬区分の改正が最大の問題解決である。保健大衆薬の制度では科学的根拠なく表示を許している。 ○所管省庁からの説明 (1)今回問題となっているのは、保健機能食品制度についてであるが、これは、OTO対策本部決定により12年度末までに結論を出すとされ、政府の規制緩和でも同様であり今日まで作業を続けてきた。今年2月26日に最終的に薬事・食品衛生審議会で答申を経て4月1日から実施したいと考えている。 (2)保健機能食品制度は、厚生労働省で審査して一定の保健用途の表示の許可を個別に与える特定保健用食品と、ビタミンやミネラル等の規格を定め、規格に合致していれば自由に製造販売でき、栄養機能表示ができる栄養機能食品に分かれるという新しい制度である。 (3)苦情申立者が述べていたように、健康食品の持つ情報を消費者に十分提供したいという点は、厚生労働省においても重要であると認識しているが、薬事・食品衛生審議会でもいろいろ意見が出た。その意見によると、業者が伝えたい情報と消費者が必要としている情報は違うのではないかということ。健康食品に対しては、国民生活センターにおいて、化粧品と並んで苦情が多いのも事実。例えば、末期がんが治るというような誇大表示があり、国民のイメージが良くないところもある。 (4)今回の栄養機能食品は新しいカテゴリーであり、自由に製造販売できるもの。事前チェックではなく、市場に流通しているものを事後チェックすることで充分であることから作った制度。したがって、この規格に入っていない商品が売れなくなるものではなく、規格に入っている商品であれば、表示して販売できるもの。 (5)栄養機能食品の上限値については、日本人の栄養所容量等を勘案し、通常の食品からの摂取も考慮して審議会の了解を得たもの。これによって外国の製品の大部分が日本に輸入できなくなるのではないかという指摘があるが、厚生労働省としては、そのような事態には恐らくならないであろうと思っている。 (6)ハーブについては、非常に範囲が広く、バジルやミントのように普通に食しているものから薬草として使われているもの、副作用の強いものまであることから、規格基準に馴染まず、当面、個別に対応することが適当であろうというのが審議会での一致したところであった。厚生労働省としても、ハーブをビタミンやミネラルと同じに扱うのは現時点では、健康を守る立場からは躊躇せざるを得ない。 (7)苦情申立書では、厚生労働省はパブリックコメントでの意見を採用しないのではないかとあるが、そのようなことはない。例えば、ビタミンAと同じ働きをするβ-カロテンをビタミンA源の栄養素として認めた。 (8)本制度に対しては指摘もあるが、厚生労働省としては、やるべきことはやったと認識している。まず、今年4月から制度を実施させ、状況を見て議論することが適当であると考える。


○この後、審議

(委員の主な質問及び発言、所管省の応答、苦情申立者の発言)

(1)本件では、パブリックコメントについて苦情申立者と所管省庁で見解が分かれているので、この制度は何のために行われるのか、どの程度遵守しなければならないのか等について教えて欲しい。 (部会長)事務局で対応するように。 (厚生労働省)パブリックコメントを求めつつ、WTO通報した。本来ならパブリックコメント終了後にWTO通報するのが望ましいとは思う。しかし、本件制度は平成13年4月から実施することが決まっており、WTO通報の手続には時間がかかる。仮にWTO通報に対して諸外国から意見が出されたことにより、平成13年4月から実施できないことになったとしても、正当な遅延の理由にはなる。また、パブリックコメントの結果、WTO通報していた内容よりもより規制を強化することになれば、厚生労働省としてはWTO通報をやり直すつもりであった。したがって、手続に問題はなかったと認識している。 (委員)厚生労働省の苦情申立者に対する回答によると、パブリックコメントを求めつつ、WTO通報したことに問題はない、なぜなら、これまでそのように行ってきており、前例を踏襲しただけというもの。この考え方がおかしいので問題にしている。 (厚生労働省)パブリックコメントはここ数年の制度であり、どのように扱うかはつまびらかではない。 (委員)パブリックコメントとWTO通報の順序関係をよく知らなかったということになる。


(2)消費者への効能表示は多様であるため、厚生労働省において商品表示のスタンダードを作ることは困難ではないか。

(厚生労働省)特定保健用食品は個別に表示を許可するもの。栄養機能表示については、コーデックスにおいての検討も活用し、ビタミン、ミネラルについては、様々な学説がある中で学会等で共通・定着した表現を用い、消費者の混乱を避けるため。


(3)苦情申立者は、白紙撤回理由を審議会で主張したが、否決されたのか、あるいは、主張する場が与えられなかったのか。

(苦情申立者)審議会に対して意見を述べる機会はなかった。 (委員)聞いた話であるが、厚生労働省はWTO通報する前に各国大使館に説明したが、各国大使館からは反対意見がなかったとのことである。例えば米国大使館商務部等は本件のような問題について関心が高いと思われるが、業界団体と各国大使館との連絡状況はどうであったのか。業界団体は反対意見を表明しているのに各国大使館から反対意見がなかったというのは、各国大使館は業界団体とは別の見解を持っていたのか。 (苦情申立者)平成12年11月8日に厚生労働省から各国大使館へ説明があった後、業界団体へも説明があり、意見があるなら11月15日までに厚生労働省に提出して欲しいとのことであった。業界団体としては、米国大使館と十分に協議を行い、確か米国大使館と連名で意見書を提出したと記憶している。 (厚生労働省)団体単独であり、連名ではなかった。 (事務局注)事務局において確認した結果、連名ではなかった。


(4)保健機能食品の表示等について(報告書)の「8 おわりに」において、「いわゆる健康食品については、従来誇大広告、不当な高価格、不良品といった負の面も指摘されてきた。」とある。規制を行う理由、保健機能食品制度案を出した理由はここにあるのか。

(厚生労働省)規制をしたとは考えていない。重要ではあるが主たる理由ではない。ただし、審議会において、いわゆる健康食品についての負の面の意見が強く、食品監視の観点からこの表現が盛り込まれた。 (委員)誇大広告は公正取引委員会が扱う問題。不当価格や不良品について厚生労働省が扱う問題ではないのではないか。


(5)重要なことは、外国で普通に流通しているものが何故日本では扱えないのかということ。厚生労働省の説明では何故日本で扱えないのか分からない。これは、審議の過程が不透明であったか、あるいは、審議が不十分であったかのどちらかであろう。

(6)厚生労働省は、平成12年11月20日の食品衛生調査会合同部会において、栄養補助食品等分科会報告書に対する各団体等からの意見を説明したとしているが、事務局は意見のポイント等を整理し、十分説明したのか。また、各団体等からの意見に対して十分な審議が行われたのか。

(厚生労働省)意見の内容、意見提出者等を整理し、A4判で3〜4枚程度になった資料を配布した。意見の全てを説明してはいないが、重要な意見、あるいは見解が分かれた意見等について説明した。それに対して委員からは質問や意見が出された。 (苦情申立者) 食品衛生調査会合同部会を傍聴したが、室長の説明どおりではあるが、各団体等からの意見に対する協議は殆ど行われなかった。 (7)本制度が施行されると、業界としては、栄養機能食品の上限値に合わせるように対応していくのか。
  (苦情申立者)既に販売されている商品について、含有量を減らすか減らさないかはメーカーの判断であるが、上限値に合わせることは恐らくしないと思われる。海外の製品については、恐らく多くのものが処方を変えて含有量を減らさないと日本へは輸入できないと思われる。 (8)厚生労働省における食品と医薬品の区分の検討状況はどうなっているのか。 (厚生労働省)食薬区分については、薬事担当部局において成分の見直しを行っているところ。 (9)苦情申立者は、説明資料2-a-マル2資料1において、「9 科学的根拠に乏しい“いわゆる保健大衆薬”を医薬品、医薬部外品として取り扱い、科学的根拠に基づいている保健機能食品を、それよりも下位に食品として位置づけることは矛盾している。」、「10 “いわゆる保健大衆薬”を承認する制度を廃止し、それに代替するものとして、健康補助食品、dietary supplementあるいはfood supplementを位置づけることは妥当なことである。」としており、これは苦情の大きな要因である。これに対する厚生労働省の明確な回答がないので、反論があるなら十分に反論すべきである。 (厚生労働省)この内容は当初の苦情申立書に書いておらず、本日のOTO苦情処理部会において初めて出されたもの。指示があれば検討したい。 (10)健康食品については、国民生活センターにおける苦情の上位を占めており、被害が出ている商品であることは事実である。しかし、問題の背景には、食品と医薬品の区別がつきにくいこと、医薬部外品制度や特定保健用食品制度のように海外にない日本独自の制度があること等制度が混在していることから消費者が混乱するということがあげられる。本件は食薬区分の問題が根本にある。食薬区分の見直しについては、OTO対策本部決定もなされているが、未だ結論が出ていない。ハーブの取り扱いについても、厚生労働省は、ハーブは様々であり、問題のあるハーブもあるからと説明しているが、問題のないハーブもあるので、コーデックスが決める前に、当面の方策として種類分けするなどして国際的整合性を図ることもできたのではないか。厚生労働省としての取り組みを十分に説明していれば、本件のような白紙撤回を求めるに至るような業界の不信を招くようなことはなかったのではないか。
(11)本件制度を策定するに当たっては、医薬サイドからの意見もあったと思うが、そのような行政内部での特殊な事情に対しては、この際OTO対策本部決定を応援と考えてもらい、21世紀に向けての新しい方策を前向きに出して欲しい。業界の不信があるのは残念であるとともに、消費者にとってもこのまま健康食品に係る被害が続くことは困る。業界側も白紙撤回に固持せず、歩み寄りの提案を検討して欲しい。 (苦情申立者)苦情申立の趣旨は、制度そのものが国民のためになるように再検討して欲しいというものであり、白紙撤回を固持するものではない。


○議長による総括

・厚生労働省と業界側が徹底して議論していれば良かったと思われるが、残念ながら十分議論されたとは言えず、解決していない問題が多々残っている。既存の制度があって、その上に更に制度を作ったために分かりにくいことも事実。 ・本日は、委員から、パブリックコメントの問題、表示の問題、国際的整合性の問題等いろいろ指摘があった。 ・しかし、現段階ではOTO苦情処理部会として結論を出すことはできないと判断する。本件については、別途、委員のみで議論し、次回のOTO苦情処理部会までに結論を出すこととしたい。その結論については、次回のOTO苦情処理部会において、事務局から、苦情申立者及び厚生労働省に伝えることとしたい。 ・厚生労働省においては、後日伝える委員の意見を踏まえ、検討していただくとともに、苦情申立者においても、事態解決に向けて前向きに検討していただきたい。
 

議題3 委員からの質問・意見について回答を提出することとされた案件

(部会長)本来なら事務局から説明させるところであるが、時間の関係上、説明は省略する。資料3として配布しているので、ご覧いただき、意見があれば事務局に提出していただきたい。 (事務局)OTO番号601については、苦情申立者は了解しており、案件としては処理が終了している。


議題4 その他

(事務局)次回のOTO苦情処理部会の日程については、あらためて調整したい。
以 上
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問合せ先]内閣府市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03(3581)0384(直通)