第20回OTO推進会議苦情処理部会議事要旨

1 日時 平成15年9月25日(木) 10:00〜12:00

2 場所 内閣府共用第4特別会議室(406号室)

3 出席者

(OTO推進会議)

大河原議長、黒田委員(部会長)、兼重委員、高瀬委員、千野委員、西村委員、本田委員、村上委員
(苦情申立者)
在日米国大使館 須藤上席商務官、国内事業者
(所管省庁)
国土交通省住宅局 川本住宅生産課長、同坂本建築生産技術企画官 他
(OTO事務局)
内閣府 加藤大臣官房審議官、渡辺企画官、岩田参事官補佐 他


4 議題

OTO番号656「「住宅の品質確保の促進等に関する法律」における新技術導入の促進・円滑化」について

5 審議の概要

○事務局からこれまでの苦情の経緯等について説明

(1) 本件苦情申立は、米国企業子会社である申立事業者が取り扱っているベイトシステムというシロアリを防ぐための技術が、平成12年4 月より施行されている「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で認められていないことが、輸入障壁、普及の妨げになっているというものである。

(2) 品確法に基づく住宅性能表示制度においては、構造の安定や火災時の安全等に関する様々な評価基準が定められている。その中で劣化を軽減するための地盤の防蟻措置として、薬剤散布等が認められており、本件申立の対象であるベイトシステムは認められていない。評価基準には、薬剤散布と同等の防蟻性能があるものとの規程もあるが、国土交通省によれば、ベイトシステムはその性格上、ここでいう同等には当たらないとのことである。

(3) ベイトシステムとは、家屋周辺の地中にシロアリの活動を確認するための容器を埋設し、シロアリの活動が検知された時にベイト剤を投入し、コロニー(巣)を根絶させ、家屋を守る防蟻法である。このようなやり方により、従来の薬剤散布に比べて、薬剤の使用量をごく微量に抑えることができるとのことである。

(4) 国土交通省からは、ベイトシステムを住宅性能表示制度で認められない理由として、これまでに大きく3点の指摘があった。第1に、住宅そのものの性能ではないという点、第2に、ベイトシステムは特別の維持管理を必要とし、住宅の請負・売買契約の内容として不適当という点である。3つめが、国土交通省が現在最も主張している点であるが、ベイトシステムの根幹が継続的に提供されるサービスにより成り立っているため、設計・建設段階において客観的に確認できないという点である。

 ○苦情申立者からの説明
(在日米国大使館)

ベイトシステムが日本国内で販売を制限されている訳ではないが、品確法は既存の技術を中心にまとめられており、新技術、改良技術を取り入れる余裕が非常に少ない。消費者、工務店、ローンを提供する機関も、品確法の内容のみを信じ込んでいて、他の新技術、他の選択肢に対して全く目を向けられていない。特に新築住宅のローン審査の際に、品確法に基づく仕様ではないということで、消費者の比較判断の土俵にも乗らないため、新築住宅に対する販売が既存住宅に比べて非常に小さくなっている。何らかの救済措置を願いたい。

(国内事業者)

(1) ベイトシステムは一般的な呼び名であるが、当社については、アメリカで累積100万件以上の実績がある。一方、日本では1年位遅れてビジネスを初めているが、殆どが既築の建物で約3万件実績がある。

(2) 2002年暮れに、消費者のシロアリ防除に関するニーズを調査したところ、シックハウスに対する関心、薬剤に対する感受性が強くなっており、当社としてはより環境に優しい手法を消費者に提供したいと考えている。

(3) アメリカでは、ベイトシステムのシロアリ防除市場全体に占める割合が、当初の1%から2001年には36%まで拡大している。一方、新築住宅市場に関して日米比較をすると、2001年時点で、アメリカの導入比率は13%であるが、日本はほぼゼロである。これは、制度が認めた商品と、性能はあるがお墨付きがないものが並べられた時に、後者が選ばれないため。日本では事実上ベイトシステムが新築市場における選択肢となっていない。

(4) アメリカでは、建築基準であるスタンダード・ビルディング・コードの中で、ベイトシステムが商品単位で認定されている。ベイトシステムはほぼ殆どの州で薬剤散布に代わり得るシロアリ防除方法として認められるようになっている。

(5) 当社システムは米国環境保護局の登録の中でも、新築住宅で使い得る商品であることが明記されている。さらに、住宅都市開発省では、借り入れの際のシロアリ防除方法の明記にあたり、ベイトシステムの選択肢を設けている。

○事務局から配付資料に基づき、論点について説明
(1) 申立者と所管省のこれまでのやりとりを踏まえると、論点は以下のようにまとめられる。第1に、アメリカで認められた技術で信頼に足る措置と考えられる点である。

(2) 第2に、単に信頼性が高いだけではなく、人や周辺環境に優しい、優れた性質を備えた技術である点である。

(3) 第3に、住宅の性能であるかとの点である。当初国土交通省からベイトシステムは住宅そのものの性能ではないため、住宅性能表示制度の対象外であるとの指摘があった。しかし、国土交通省の説明からは、同制度で防蟻薬剤による土壌処理を施した地盤には防蟻性能を認め、ベイトシステムを備えた地盤に防蟻性能を認めないのはなぜか、必ずしも判明ではない。

(4) 第4に、住宅性能表示制度で認めたものは請負・売買契約の対象となるが、ベイトシステムは契約対象として適当でないとの所管省指摘の点である。しかし、これは契約面で工夫することが可能である。

(5) 第5に、国土交通省が現在最も強調している点であるが、ベイトシステムは、設計・建設段階において確認できないので制度になじまないとの点である。しかし、アメリカではベイトシステムについては、保守管理条件、その後どのようにサービスを提供していくかの点も含めて認めているので、このようなやり方を参考とできないかということである。

(6) 最後に、住宅性能表示制度は任意であっても、国の制度として大きな影響力を持っている点である。申立者の側からすると、ベイトシステムは本来基準を満たす性能を持っているのに、住宅性能表示制度の考え方になじまないとの理由だけで認められないことが、差別的に取り扱われていることになるので、普及が妨げられている実態に対して何らかの対応が必要ではないかとの点である。

○所管省からの説明
(住宅性能表示制度の趣旨について)

(1) 本表示制度は、80年代の終わりから90年代にかけて、住宅の欠陥問題、あるいは手抜き工事問題が社会問題化し、これに対応するための制度措置として用意されたものである。住宅の性能を表示する統一的基準がない、あるいは整理されていないために、知識の少ない消費者が住宅の性能や技術的問題について住宅の購入あるいは発注前に把握できない、あるいは引き渡しを受ける時にチェックできない、との問題に鑑み、適切な情報提供を公平な第三者を通じて提供することとしたもの。

(2) 品確法における住宅の性能とは、第三者が設計図書及び現場のチェックにより、工事として一定の内容が適切に行われたと確認できるものを住宅性能と考えている。この点について、主要な認識の相違あるいは誤解があるのではないかと考えている。

(3) なお、本制度は、性能表示を受けたいという申し出を受けて評価書を作成する任意の制度であり、建築規制コードであるビルディング・コードとは、同列で論じられないと考えている。また、制度が直接技術の優劣を示すものでもない。

(4) ベイトシステムは、住宅の設計段階、さらには住宅の工事段階では、何らかの契約が存在する可能性はあるが、現場では何も発生していないことが特徴である。通常は工事の段階で薬剤散布を床下に撒くということが行われているわけだが、このような事実が発生していない点が大きく異なる。ただ、だから悪いものだとか性能が至らないということを申し上げているわけでは全くない。

(5) 住宅の引き渡し後、将来にわたって一定のサービスが予定されているベイトシステムについては、住宅性能表示制度の趣旨、手続、性能交付書の仕組みに照らし、性能表示制度にはなじまないものと考える。当事者間で、ベイトシステムを採用しようという契約をすること自体を差別的に扱うものではないが、消費者が工事に対して抱く不安の解消を目的とした情報提供の制度にはなじまないということである。

(論点に対する回答) 

(6) アメリカで認められた優秀な技術で、日本でも認めるべきではないかという論点に関しては、住宅性能表示制度になじまないということを申し上げているので、その性能が悪いと言っているつもりは全くない。なお、新技術に関しては、特別評価方法認定という仕組みを設けており、例えば免震工法など高度で新しい技術等をこれまでに378件認定している。したがって、新技術に対して制度自体が閉鎖的であるということではない。ベイトシステムについては、そもそも性格が違うということを申し上げている。

(7) 2点目の環境に優しい技術であるという点については、例えば省エネルギー性能などは既に性能表示に入れるなど、一般的に環境に優しい技術は望ましいものと考えている。しかし、ベイトシステムについては、先ほど来申し上げているとおりである。

(8) 3点目の住宅性能であるかどうかについても、先ほど来のとおりである。

(9) 4点目の住宅の請負・売買契約の内容となるかについては、性能評価段階で現場に存在しないものをどのように責任が持てるのかという趣旨であるので、契約として存在すること自体を否定しているものではない。

(10)5点目のサービス内容の客観的確認の可否については、先ほど来申し上げているとおりである。アメリカのビルディング・コード等で具体的にどう扱われているかは、現時点で把握していないが、いずれにしても制度の目的が禁止されているものを許可するか表示するかの違いがある。

(11)差別的取り扱いが普及を妨げているのではないかとの点については、制度の趣旨からの取り扱いであるので、差別的取り扱いをしているものではない。

○この後、審議

(委員の主な質問及び発言、所管省及び苦情申立国内業者の応答)
(1)ア.申立企業が日本の大手建設会社と何らかの業務提携し、シロアリ駆除に関してはベイトシステムを使うことで売ることはできると思うが、その先の段階で、例えば建築確認や建築許可が下りにくいという問題があるのか。あるいは純粋に消費者がこの制度のために振り向いてくれないのか。
(申立事業者)大手建設会社と提携して組み入れること自体は可能である。しかしながら、実際問題として大手建設会社も、国の制度で認められていないものは、事実上消費者に対して提供しないことにつながっており、消費者の選択肢が奪われているのが現状である。企業として大手建設会社と相談もしているが、その際には「認定はありますか」という言葉が第1に返ってくる。
イ.数年前にあった和歌山の毒入りカレー事件は、シロアリ駆除業者が使っていたヒ素が使われたわけだが、現在はヒ素は使われないようになっているのか。
(国土交通省)現時点でヒ素が入っているかどうかは承知していない。ただ、日本しろあり対策協会等による認定制度があるので、通常流布、販売されているシロアリ防蟻剤は一定の安心のある性能のものと考えている。
ウ.国土交通省から、新技術に対しては閉鎖的ではなく、免震工法などを取り入れている、との説明があったが、平成11年の規制改革委員会報告においても、免震構造物は新技術の事例として挙げられている。新技術というのは、このように既に天下公知の事実となっているものではなく、発生、発売した時点では世の中が多少首をひねっているようなものをいう。特別評価方法認定でそういう判断のリスクを冒して認めたものにはどんなものがあるか。また、一般的にどの官庁も、新技術の認定については非常にコンサバティブであるが、所管官庁としての新技術に対する哲学を伺いたい。
(国土交通省)免震工法でも、色々な会社によって色々な工法が新たに作られており、そういうものを認めることがあると思う。リスクを冒したと言えるようなものについては、直ちに申し上げることはできない。また、リスクがどの程度か立証することも難しいが、必要であればどういうものがあるかについてリスト等を用意させて頂きたい。新技術に対してコンサバティブとの指摘は、以前から一般的に言われているので、新技術に対しては阻害することのないように心がけている。これまでも技術の普及に努め、また普及のために一定の評価に乗せて市場に出す努力をしている。ただし、住宅性能表示制度は、消費者に的確な情報を伝えるためのものであるため、行政がとれるリスクは自ずと限度があると考えている。
エ.平成9年にOTO推進会議が取りまとめた建議に、「建築基準の性能規定を導入することにより、新製品・新技術の開発の促進や、海外製品・資材の日本市場への参入の円滑化を図る」との記述がある。この文章がまとめられる契機となった建築基準法の問題は、本件に近いものであったが、当時の建議の経緯を承知しているか。
(国土交通省)建築基準法を担当していないので、建議については承知していない。ただし、建築基準法の性能規定化の改正は既に行われており、対応されたものと理解している。
オ.消費者を守るという精神がどこまで広がっているのかが問題である。消費者保護とは、ヒ素のような物騒なものが用いられている業界において、新しい材料、新しい候補が出てきたら、喜び勇んでこれが適用されるように法改正することではないか。現在の法律の条文のままでも十分認定されそうな気がするが、消費者のためになる新技術を認めるにあたり、将来、例えばヒ素が土壌に残留していることが問題になった時に誰が責任を持つのか、ということまで考えれば、承知していない、というのは無責任である。新しい候補が出た時に、本当に望ましいのはどちらかを検討すべき、現に他の国で伸びていることを無視してはいけない、というのが、平成9年のOTOの建議の時に、背景にあった空気である。

カ.海外で大幅に伸びている消費者にメリットがある工法に対し、単に法律上の形式的なことで拒否していることは、OTOの過去の本部決定や建議の経緯からみて好ましいことではない。OTOで審議していることなのだから、所管していないということではなくて、過去の事情ぐらいは少し調べて来たらどうか。OTOとしても、こういうことに対する歯止めを議論して、意見書に付け加えて頂きたい。
(2)ア.シロアリ対策の国内マーケットは現在、殆どが外国からの参入がなく、国内業者の独占状態になっているのか、あるいはそうではないのか教えて頂きたい。
(国土交通省)住宅生産課の所管ではないが、当省の中の一部署なので、必要があれば、そういったデータを取り寄せる等により、再度説明なり資料を用意させて頂きたい。
イ.国土交通省はベイトシステムが悪いものではないけれどもなじまないとしているが、悪いものであれば直しようがあるが、なじまないと言われてしまえばどうしようもないではないか。結果として、日本の市場はフェアではないという印象になる。

ウ.住宅性能表示制度は大変いいものであるが、消費者のために考えていることが消費者にとっていいかもしれないものをみすみす逃す結果になっている。本来制度が何のためにあるかという原点に返り、消費者の立場に立って、制度の工夫や改良を検討すべきではないか。

(3)ア.住宅の性能に関して国土交通省は、設計図等に表現され、またそのとおりに建設工事がなされたことを現場検証によって客観的に確認できるもの、との定義を説明したが、この定義は法律に書かれているのか。
(国土交通省)法律にそのような記述があるわけではない。ただ、制度のできた背景とシステムを進める上でこのようなものを扱うという形が要請されていると解釈している。
イ.運用上なされているということは、逆に言えば法律で決められたものではないということ。つまり変えることは可能であるということではないか。
(国土交通省)他の形を取り入れることを否定する立場ではない。ただ、欠陥住宅問題等を背景にして、建設工事がきちんとなされたかどうかを第三者が確認すべしとの消費者からの要請に対応するシステムとしては、こういった形ではないかと考えている。
ウ.つまり、住宅の性能の定義は何も決まったものではなく、時代の要請によって変わるものである。住宅の性能を評価する上では、サービスについても考えるべきである。自分の解釈を前提として、それを押しつけるのは本末転倒である。正当な理由があれば解釈によって変えられるものは変えるべき。

エ.(苦情申立者に対し)ベイトシステムに使う薬剤は申立事業者の独占であるか。また、ベイトシステムが米国新築住宅の防蟻措置に占める割合13%のうち、申立事業者の占める割合はどのくらいか。
(申立事業者)私どもが使っている薬剤に関しては当社の独占であるが、他社のベイトシステムでは性格のよく似た別の薬剤を用いている。当社の米国におけるシェアは90%である。他に4剤くらいベイトシステムの薬剤があるが、当社が最初にこの薬剤を紹介して普及させてきたので、一番大きなシェアを持っている。
オ.ベイトシステムそのものの価格については、日米間でどれくらいの価格差があるか。また、その価格差を合理的に説明できるか。
(申立事業者)様々なケースがあるので一概には言えないが、現場サイドでは1.5倍から多いところで2倍ぐらいの価格差になっていると思う。ベイトシステムの価格はサービスにかかわる労務費が大部分を占めるが、明確な数字は後日準備する。
カ.ベイトシステムを住宅性能表示制度で認めることは、政府がある種のお墨つきを与えるとことになるから、社会厚生上の問題も考える必要がある。独占力を有する会社の特定の工法に対して、政府が何らかの形で利益を供与するべきではない。申立企業が設定している価格に内外の差がないことが前提になる。
キ.申立者も努力が足らないという気がする。政府の表示制度は政府による一種の独占力の付与という形になるので、我々は極めて慎重にならなければいけない。もちろん国土交通省も、それに対応する我々OTOも考えなければいけない。単純に機会が失われているというだけでは、我々はもっと儲けたいのに儲けさせてくれないと言っているだけであるから、これは社会厚生上望ましいことを示す必要がある。

(4)ア.モーゲージ(住宅ローン)の審査にあたり、ターマイト・サティフィケイト(防蟻保証)という書類が必要だったと思うが、この技術はターマイト・サティフィケイトとして認められているのか。

イ.例えば36坪の木造モルタル2階建ての家を建てた時に幾らぐらいかかるのか、実額を教えて欲しい。

ウ.昨今色々なテクノロジーの革新に伴い、新しい技術に限らず、サービスが含まれるものも建築の中に入ってきている。これらは非常に専門的なものなので、何らかのお墨つきが欲しいという気持ちがある。今後、新しいものに対して解釈面で弾力的な運用ができるものならば、そういったスタンスをとることが望ましいのではないか。
(申立事業者)ターマイト・サティフィケイトに関しては、各州がコードにのっとって採用するか否かを決めている。アメリカの場合、ほぼ全ての州で承認を得ている。
 当社システムでは、仮に2階建てで下の方の面積が30坪の家であれば、5年間で40数万円である。薬剤散布の場合、その後に被害があるかないかでコストが大きく変わるが、単純な施工の場合、恐らく20数万ぐらいと考えている。
エ.5年後はどうなるのか。
(申立事業者)5年後、薬剤散布の場合は再度施工ということになり、またそこで20数万かかる。当社システムの場合は最初にかかる工事費が節約できるため、次の5年間は15万から20数万円の価格でできる。ベイトシステムは、長くやることによって薬剤散布に近い価格に抑えられる。

(国土交通省)今後、防蟻剤の材料や市場も含めて、色々勉強して結果をお知らせしたい。住宅性能表示制度に関しては、制度の根幹が専門の評価員が設計図書を見て現場の工事を検査し、結果を成績書として伝えるところに依存しているので、単に解釈ということだけではない。現段階では性能の解釈だけで解決するという予測はできない。
(5)以前はシロアリを防ぐために土壌への薬剤散布が常に行われていたので、それを基本的な品質確保の基準にすることは当たり前のことだと思う。ただ、その後国内外で、新しいいい技術が開発されて出てきた時にどうするかは別の問題である。同じ効果を持つ競合技術に対して、どちらが勝つかは市場が決めればいいのであって、国が一方を有利にするような取扱いをすることは、絶対に避けるべきである。そういう意味で、公平に取り扱うにはベイトシステムを入れるか、もしくは薬剤散布を有利にする今の制度を改めて、シロアリ駆除については規定しないことにするかのどちらかにしないと競争上は正しくないことになる。恐らく削ってしまうよりは新しい方法を付け加えるのが一番やり易い解決法ではないか。ベイトシステムを入れるよう工夫や制度改正を行うようにすべき。

(6)ア.せっかくいい法律を作っているのに、解釈上同等性を認めてないところに問題がある。ベイトシステムが十分な同等性があるという証拠があれば認めるべきである。
(国土交通省)一番悩んでいるのは、ベイトシステムを排除したいという意思を持っているわけではなく、取り入れるとした場合に消費者に対して、この工事は完全になされたということをどのように安心を持って受け取ってもらえる情報として出せるかというところにある。消費者も納得するような形、解決策等があれば、色々議論、検討があろうかと思うが、そのような方法が見つからなくて困っているというのが正直なところである。
イ.制度上なじまないとの回答は理解できない。契約書に書いてあるものはそれを評価して認めるべき。また、広い問題を解決する新しい技術ができた場合にも、なじまないとして全部リジェクトしてしまうのであれば、そういう国土交通省はいらないと思う。最近、消費者が判断できるようにしたところで、所管省が責任を逃れることが増えているが、制度を作った以上、それがどういう効果を持つかというところまで考えるべき。

(黒田部会長)指摘のあった話でまだ答えられてないのは、住宅ローン提供者が防蟻技術に関し、品確法の基準で見ているのではないか、その分だけベイトシステムは不利になっているのではないかという疑いを申立者の方が持っている点。作られた制度がもしかするとそういう効果を持っている可能性があることについても、検討して下さいということが、苦情申立者の趣旨だと思う。 (7)アメリカと同じようにきちんとした契約書が結ばれていれば、確認されたとの考え方はとれないのか。履行ができるかできないかは法律の議論であるが、履行しなかった場合にはペナルティーを課すとか、もしくはその事業者の資格を失わせるとか、色々なやり方で履行を担保する手段はあるのではないか。
(国土交通省)仮にアメリカで一定の防蟻対策をしてないと建築してはならないという規制があるのであれば、同じ規制法同士で比較してアメリカと同様にすべきとの議論があるかもしれない。
 契約で担保できるとの指摘があったが、担保契約は消費者が行うものである。住宅性能表示制度は、消費者に一定の情報を与えて安心を与える仕組みを用意しているわけであるが、その際に、消費者自ら結んだ契約を担保に、あなたが結んだ契約だから安心ですというのは、少し違うと思う。
 また、防蟻性能として優れたもの、あるいは薬剤処理と同等なものであることを推奨するなどオーソライズする方法は考えられないのかとの指摘があったが、防蟻性能の認定については、少し違う土俵ではあり得るかもしれない。直接の責任者ではないが、情報収集をして検証はできるのではないかと思う。一例としては、日本しろあり対策協会での認定技術や認定工法が市場で用いられていると聞いたことがある。
(8)ア.指定住宅性能評価機関については、建設性能評価のラベルを張った住宅で手抜き工事が明らかになり問題になっている。これがPL法に基づく裁判になった場合に、この評価機関が被告になるという前提でこの制度は運営されているのか、あるいはそうでないのか。
(国土交通省)住宅性能評価を受けた住宅については、指定紛争処理機関が設けられており、そこで斡旋、仲裁、調停を受けられることになっている。
イ.処理機関の判定に不服で裁判になった時に、この評価機関は被告になるという前提で考えているのか、それとも、あくまでもこの処理機関で丸め込んでしまおうという決意でいるのかを聞きたい。裁判の時に被告になる決意を持っているなら、現場で確認できないものは認められないとの意見は少し重みがあるが、そうでなければかなりいい加減だと思う。
(国土交通省)何が争点であるかに依存する。例えば、評価委員自体の検査に著しいミスがあったと訴えられれば当然被告になる。性能評価機関の性能評価委員は法律的にもモラルを求めた資格制度となっている。常に当然に被告になるということではないが、なり得る可能性を持っている。

○部会長による総括

(1) 本件申立の対象となっているベイトシステムは、アメリカでは近年急速に普及が進んでおり、また建築基準でも認められるようになっているとのことであり、信頼にたる有効な防蟻措置であると思われる。

(2) 加えてベイトシステムは、防蟻の確実性を確保しつつ、従来の薬剤散布に比べて薬剤の使用量を極微量に抑えることができ、人や周辺環境にやさしい防蟻措置でもあるとのことである。

(3) このような特徴を有しているにもかかわらず、国土交通省からは、ベイトシステムが継続的なサービスの提供によって成り立っていることを理由に、住宅の設計・建設段階において客観的に確認できないものであるから住宅性能表示制度で認めることはできないとの説明があった。

(4) しかしながら、住宅性能表示制度で評価されるか否かは、実際の住宅取引の場では非常に重要な意味を持ってきている。現状を防蟻措置のマーケットという観点でみると、薬剤散布が有利に取り扱われているとの見方があり得る。また、消費者の立場にたてば、特に新築住宅の購入に際して事実上選択の機会を奪われているとの苦情も当然生じ得る。

(5) 本来の立法趣旨にかかわらず、結果的に、国が設けた制度により、事実上不公平な取り扱いを受けている製品や企業があり、また消費者も潜在的に不利益を被っているということであれば、法律・制度が想定していない、あるいはなじまないからといって、対応しなくてよいということにはならない。

(6) 例えば、アメリカでは保守管理条件等を定めることにより、ベイトシステムを建築基準で認めているとのことであるから、このような認定方法も参考としつつ、国土交通省は、現行制度の解釈で対応するか、あるいは新しい制度づくりを検討するか、いずれにせよ不公平感のある現状を解消する何らかの対応を検討すべきである。

(7) 国土交通省には、本日の議論を踏まえた上で、本件苦情への対応を再度検討していただき、3ヶ月後を目途に、検討の結果を苦情処理部会でご報告いただきたい。
以 上
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問合せ先]
内閣府市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-0384(直通)