平成15年度第1回OTO専門家会議議事要旨

1 日時 平成15年11月12日(水)14:00〜16:00

2 場所 内閣府共用第2特別会議室(404号室)

3 出席者

(OTO推進会議)
大河原推進会議議長、黒田委員(議長(議題1))、行天委員(議長(議題2))、北岡委員、島野委員、谷村委員、眞木委員、松下委員、金森委員、兼重委員、宮智委員

(問題提起者)
議題1:東京商工会議所 山田国際部長 他

(所管省庁)
議題1:農林水産省消費・安全局 福田植物防疫課長 他
議題2:経済産業省商務情報政策局情報通信機器課 三木環境リサイクル室長
     公正取引委員会事務総局経済取引局取引部 神野相談指導室長

(OTO事務局)
加藤大臣官房審議官、渡辺企画官、岩田参事官補佐

4 議題

(1) 「植物検疫の透明化・合理化(平成13年度問題提起プロセス)」(対策本部決定の検証)
(2) 「家電リサイクル法に基づくリサイクル料金設定(平成13年度問題提起プロセス)」(対策本部決定の検証)
(3) その他

5 審議の概要

 議題1 「植物検疫の透明化・合理化(平成13年度問題提起プロセス)」(対策本部決定の検証)

(1) 事務局から対策本部決定に至る経緯等について説明

当時の問題提起内容は、以下のとおり。

1) ア 消毒命令等の理由の明示の徹底:消毒命令等の具体的理由が輸入業者に伝わらないまま、消毒等が求められているので、農林水産省は、消毒命令等の理由を必ず明示し、不要な消毒等が行われないようにすべき。

2) イ 「消毒(廃棄)命令書」の交付:「消毒(廃棄)命令書」の交付を受けるためには、毎回、交付の要求をしなければならず、輸出国事業者に対する請求等に障害となっているので、「消毒(廃棄)命令書」は、全件について交付すべき。

3) ウ 消毒方法の改善:病害虫に対する植物検疫における消毒方法は、個々の病害虫に応じ、現行よりも人体、物資、地球環境に与える影響の少ない消毒方法を検討し、導入すべき。

4) エ 輸入検査及び消毒の実施方法の改善(輸入検査開始時刻(目安)の通知):現在、個々の事業者毎の検査開始時刻(目安)は示されていないが、事業者の利便性向上を図るため、予め検査開始時刻の目安を示すべき。

5) オ 植物検疫協会による関与の排除:植物検疫協会が存する港においては、ほとんどの輸入業者は、同協会に消毒等に係る事務を委任している。中小企業にとっては、同協会に係る経費が負担となっており、また、支払った経費に見合う事務代行もないことから、同協会による関与を廃止し、防疫所、くん蒸実施業者、処置希望者の3者のみで完結するような環境を整備すべき。

6) カ 植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施:生鮮野菜類を中心とした輸入が急増している海港及び空港については、当日検査が行われず翌日以降の検査となる場合があり、その場合の経済的損失が大きいため、全件について即日検査をすべき。

以上の問題提起に対して、OTO推進会議専門家会議で審議をし、この検討結果を受けて平成14年3月に対策本部決定がなされた。
(2) 所管省から対策本部決定への対応状況の説明
[農林水産省]

1) 対策本部決定に対する具体的対応は、生産局長ならびに生産局植物防疫課長通知(「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応について」(平成14年7月10日付))により、対処方針を示している。

2) アについては、電算化を図ることにより検疫有害動植物等を明記した文書の全件交付を実施できる体制を整備するよう、「輸入植物検査電算処理システム運用事業」等電子政府を実現させる各種手続の電算化の中でも最優先で取り組む手続に位置づけ、システム設定等について各植物防疫所において検討することとしている。また、命令書に消毒すべき理由の欄を設け、記入例として具体的な病害虫名等を書くようにしている。

3) イについては、植物防疫所毎に「消毒(廃棄)命令書交付希望登録簿」を備え付け、全件交付希望者には、あらかじめ登録しておけば個別の交付要求がなくとも自動的に交付される仕組みとした。

4) ウについては、今後さらに新技術の開発に積極的に取り組み、臭化メチルを用いないあるいは使用量の少ない消毒方法を確立して採用するように努力している。具体的には配布資料のとおり。

5) エについては、輸入業者等が閲覧できるよう当日予定される検査の一覧を掲示している。当該掲示に当たっては、検査を実施する植物防疫官の事務所出発予定時刻及び検査順路を記載する。また、輸入者が直接検査に立ち会う場合には、可能な限り詳細な検査開始時刻を輸入者に対し通知している。

6) オについては、植物防疫課長名で通知(「植物検疫協会を介さないくん蒸の実施に関する周知について」(平成14年6月10日付))を行い、周知を図っている。その後も機会あるごとに関係団体等に説明、文書通知を行っている。また、各植物防疫所において実態調査を改めて実施したが、そのような苦情、要望等はなかった旨、報告を受けている。

7) カについては、季節的な輸入量の変動への対応として、繁忙期には、植物防疫官の補助的業務について非常勤職員の雇用等により業務の円滑化を図っている。また、コンピュータシステムの運用やデータベースの作成など民間の技術力を活用できる業務に関しては、外部委託等による効率的実施を図っている。また、事前に要請があれば、勤務時間外も対応している。民間への委託が進まないという話もあるが、既に技術を持っている防疫官OBを再任用制度で活用を図るなど、改善に努めているところ。

(3) 所管省対応に対する問題提起者意見

[東京商工会議所]

1) 農林水産省の全般的に前向きな対応に感謝するが、一部不十分なところがある。本部決定への農林水産省の対応を○、×、△で評価すると、ア 消毒命令等の理由の明示の徹底、イ 「消毒(廃棄)命令書」の交付、エ 輸入検査及び消毒の実施方法の改善は○、ウ 消毒方法の改善、オ 植物検疫協会による関与の排除とカ  植物防疫官の業務の見直しによる全件即日検査の実施は△である。ウは×に近い△、オは○に近い△である。

2) ア、イについては、事前登録による消毒(廃棄)命令書の自動的な全件交付が実施され、また、商社名を登録することで自動的に不合格理由の通知が交付されるようになったことから、状況の改善は評価できる。エについても、輸入検査当日の予定が植物検疫事務所に一覧表示されるとともに、輸入者と業務委託関係にある管理者に確実に通知される事となったため、改善として評価できる。

3) ウについては、植物や人体、環境への影響に配慮した消毒方法が開発されることを期待している。開発中の代替くん蒸剤については、研究内容や成果の実現の時期を情報公開していただきたい。

4) オについては、通関業者や輸入業者への周知が不完全な状態となっている。まだ完全に通知されているとは感じられず、民間くん蒸業者が参入し難い雰囲気がある。所管省は各植物防疫所やその関係団体、全国植物検疫協会等へ通知するだけではなく、通関業者や輸入業者に直接、普及・広報を行うことにより、通知がより徹底できると思われるので、ひき続き努力願いたい。

5) カについては、目下大きな混乱はないものの、夜間や土日の通関が実施された場合、人員の不足による検疫の遅れが懸念される。将来を見据えて、今から民間委託について検討する必要があるのではないか。植物検疫業務の透明性、競争原理の導入の面からも、植物防疫官の補助的業務(病害虫等の存在確認検査等)に民間技術者を活用するなど民間委託について検討していただきたい。
事前要請に応じた執務時間外の業務の実施や植物検疫官の増員の検討がなされていることは、大いに評価するが、民間委託により競争原理が働き、能率の向上とコストダウンの一層の実現が予想され、民間委託を進める意義は大きいと思料。

(4) 委員からの主な発言等

(オ 植物検疫協会による関与の排除について)
1) 植物検疫協会は何をしているのか。また、年会費や設立の経緯について伺いたい。
(問題提起者)協会は任意の団体であり、検疫官を現場にお連れしたり、検疫の順番を決めるという補助的な業務を行っている。年会費は2〜3万円で、さらにコンテナ1包につき2,000〜2,500円ほど支払っている。設立の経緯は分からないが、専務理事は農林水産省のOBである。

(農林水産省)植物検疫協会は検疫業務の質の向上を目的として設立されており、検査申請の代行などを行っている。検査の申請は通関代理店を介すこともあるが、協会が代行するときは一括して提出するので、検査の効率がよくなっている。
2) どうしてこのような協会があるのかが最大の疑問である。協会を通すと窓口が一括されているので、人の割振り等がうまくいき、個々に手配すると事務効率が悪くなるというのは、事務処理の効率がよほどうまくいっていないことを示すものである。

3) 本部決定のウに対する所管省の措置により、植物検疫協会を通さないくん蒸処理が増えているかどうかを調べるため、東京植物検疫協会の平成14年度の予算および決算、平成15年度予算の比較を行った。協会を通さないケースが増えていれば、協会の収入が減少しているだろうから、平成14年6月の通知以前に組まれた予算よりも、実績である決算は減少し、周知徹底が進んだ平成15年度予算はさらに減少したであろうと考えた。
 しかし、予算よりも決算の方が検疫賦課金も立ち会い料も増えている。また、15年度予算は、20%の値下げをしているので金額は減っているが、値下げ分を修正すると件数が増大している。要するにこの通知によって、くん蒸処理を直接行った方はほとんどいないということになる。
 東京植物検疫協会の決算内容は、年間2億5、6千万円の収入と支出が大体バランスしており、全収入の約75%は検疫賦課金と立会料収入、18%が会費収入となっている。つまり、収入全体の93%が通関業者、輸入業者からの検疫受検に関する費用の徴収によって賄われている。一方、全収入の70%は、この協会の人件費として使われている。
 要するにこの協会を通さず直接やる方が増えたら、この協会で仕事をしている1,000人以上の方の死活問題になる。普通だったら相当深刻な問題で、隠然たる妨害をしなければならないはずである。
 農林水産省の通知を行った先である、全国植物検疫協会の会長の菅原敏夫氏は、農水省の官房総括技術審議官であった方である。また、日本植物検疫防除業会会長の清水洋志氏は平成13年8月に公正取引委員会から「公共の利益に反して、成田空港における輸入植物のくん蒸処理業務の取引分野における競争を実質的に制限している事実が認められた」との勧告を受けている。通知には「万が一にも誤解を招くことのないよう」と書いてあるが、素直に読むと、「うまくやれ」と書いてあるようにも読める。このようなあて先に通知が行われている間は、輸入業者や通関業者の方が直接出ていくはずはない。だから、実績は少しも出ていないということだと思う。
 これは日本のあらゆる分野で作られている構造である。恐らく、日本が成長していった段階では非常に効果のあるシステムだったかもしれない。しかし今は、既得権益を守るシステムになってしまっている。
 通知を出したのは結構だと思うが、将来日本の競争力を確保するために改善しようと思うのだったら、全国植物検疫協会の寄附行為を変更し、少なくとも複数の第三者の理事を入れるという規定を設けるべきである。できれば内規に、その第三者の理事は東京商工会議所からの推薦を受けるぐらいまで書けばいいと思う。また、理事会の議事録を完全にインターネットで公開する等、徹底的な情報公開を行うことである。

4) 農林水産省によれば、植物検疫協会が調整をすることにより、能率的な検査、検疫官の配置が可能になっているとのことである。こうした一定の評価があるから、ここを通じて仕事をしているんだろう思う。何もいいところがなければ、長続きするはずはない。問題提起者は協会の関与がなく直接個別にやった方がいいとお考えなのか、農林水産省は協会の検査補助により助かっていると考えているのか、確認させていただきたい。
(問題提起者)現在は通関業者に通関業務を委託すると、通関業者は必ず植物検疫協会に委託している。協会に委託しないと、検疫官に来てもらえなくなるのではないかといった感じの雰囲気がある。個々に申請した場合に混乱が起こるとすれば、それは行政の問題である。うまくいかないから植物検疫協会に行わせるといった屋上屋を重ねるようなことをして我々に余計な負担をさせているだけのことである。植物検疫協会の方は検疫官を車に乗せて連れて行って現場に案内する、タクシーの運転手並である。そのために我々が金を払っている実態を理解いただきたい。
5) 協会に委任契約をするかしないかというわけではなく、既に100%、システムができてしまっていて、協会を通らないとできない仕組みになっているのか。
(問題提起者)今の輸入システムはそのような仕組みになっている。任意団体だから加入は自由と言いながら、実際にはなかなか自由な行動がとれない。
6) そのような商取引の制限は、独占禁止法に違反しないのか。
(農林水産省)書類を持ち込んで植物検疫を受けたいという方は誰でも受け付けるシステムになっている。通関業者に植物検疫協会を通さないでやってくれと言えば当然やるのではないかと思う。独占はしておらず、制度上は何ら制限はない。単に円滑化させたいために、委託をしていると考えていただいたらいいと思う。
7) 日本では、個々の構成員を拘束しそれに反すると、生きていけなくなるような社会的な圧迫要因が働いている場が実に多い。公取から勧告を受けた人や農水省OBあての通知の文書は、今のままでは私にも「うまくやれ」と書いてあるように読める。問題提起者側が何に対して不満があるかということが、十分に分かっていないのではないかと思う。
(農林水産省)官の言葉づかいが良くないのかもしれない。意味が正確に伝わらないことがあるのかもしれないので、十分反省はしたい。農水省OBや公取の勧告を受けた方が団体の長であることもイメージを悪くしている気もするが、これはたまたまであって、私どもは決してそういう意味でシステムを守ろうと考えているわけではない。改善が足りない点については、引き続き努力をしていきたい。
 全国植物検疫協会あるいは日本植物検疫防除協会とか、こういった団体を守っていこうという気もないし、先程委員ご指摘のように、ニーズがなくなれば協会の必要性もなくなってくる。実際、この10月で、任意団体の日本植物検疫防除協会は解散している。維持していかなければこの業務はうまくいかないということは全くないので、団体分野でもこれから合理化は図られていくと思っている。私どもでももちろん成り立ち得ないような団体を維持しようとは思っていない。
8) 現段階では、こういう団体には補助金は出ているのか。
(農林水産省)補助金は出ていない。
(カ 植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施について)
9) 平成14年5月に開催された第4回交通政策審議会航空分科会の空港整備部会の議事録が公開されているが、その中である県知事が、「どうしても国の方で植物検疫、動物防疫の要員を配置できないのであれば、我々県の方にそういうことに長けた職員もいるので、県の方で人員のやりくりをしてやりたい」ということを述べている。それに対し、「これは国の仕事だから、県の方に配置させるわけにはいかない」との回答があり、県知事が「それでは国の方で配置をしてもらえませんか」と言うと、「行革をやっているから、そんなことは難しい」とおっしゃる。「最後は三拝九拝しまして、植物防疫、動物防疫の要員配置も最終的にはしていただきました」、と書いてあるが、つまり、県知事が三拝九拝してようやくやるんだから、問題提起者がOTOで言ったぐらいで何かするというのは問題外だと考えているのではないか。
 「民間にやれることは民間に」というのが政府の政策なのだから、これを各官庁の課長が無視して、民間人は起用しないという方向で考えているのは、不思議な話である。民間人の活用について、もう少し政府の方針に沿って柔軟に対応していただきたい。
(農林水産省)今のお話は、地方との関係も含めて、国と地方の業務というようなことも恐らく念頭にあるのだと思うが、民間も含めて委託できるところは委託していきたいと考えている。ただ、植物検疫業務は、水際で不合格にすれば消毒をする手間が増える、あるいは廃棄をするなど、国民個人の財産に対する権利を制限するという非常に強い権限を持っている部分もあるので、どうしても国の業務としてやらなければいけない部分は残ると思っている。
 民間委託については、どういうところがあるか引き続き検討していきたい。国と地方との関係もあるので、これからも議論していきたい。

(5) 議長による総括等

1) 平成13年度に問題提起がなされた本件は、我が国植物検疫の透明化・合理化を進めるよう、いくつかの対応を求めたものであった。今回検証により、13年度に対策本部決定された事項のうち、消毒命令等の理由の明示、消毒(廃棄)命令書の全件交付、輸入検査開始時刻の通知については、農林水産省の取り組みにより、大幅な改善がみられたことが確認できた。その一方で、いくつかの事項については、問題提起者が、農林水産省に、より積極的な対応を求めていることも明らかとなった。

2) 消毒方法の改善に関しては、問題提起者は、農林水産省の新技術開発への取り組み、あるいは新たな消毒方法を採用するための努力が不十分と認識しているようである。農林水産省におかれては、引き続き対策本部決定に従って、積極的な取り組み、更なる努力を続けることが求められる。

3) 植物検疫協会による関与の排除に関しては、通知等による農林水産省の取り組みはある程度評価できる。しかしながら、審議の結果、周知は不十分であること、また実効性が十分に担保されていないことが明らかとなった。農林水産省は、審議の際に提示された問題提起者や委員の意見を参考としつつ、引き続き「周知徹底を図る」との対策本部決定に従い、周知徹底が実効を伴うものとなるよう、改善に努めることが求められる。

4) 植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施に関しては、農林水産省から、非常勤職員の雇用や外部委託の実施等を行っている旨説明があったが、問題提起者からは、夜間や土日の通関の際に検疫が遅れる可能性への懸念とともに、より本格的な民間委託が必要との意見も表明された。
 なお、検疫業務の体制に関しては、平成14年度の総点検の際に、通関・検疫業務の24時間、365日体制の実現に向けて、所管各省が密接に連携を図ることや、業務の更なる効率化・省力化を推進すること等が、別途対策本部決定されており、農林水産省は同決定への対応も求められているところ。
 このことも踏まえ、農林水産省は、問題提起者の意見を参考としつつ、対策本部決定の方針に基づいて、引き続き植物防疫官の業務の効率化を図るとともに、全件即日検査を実施できるよう対処方策を検討することが求められる。


議題2 「家電リサイクル法に基づくリサイクル料金設定(平成13年度問題提起プロセス)」(対策本部決定の検証)

(1) 事務局から対策本部決定に至る経緯等について説明

1) 当時の問題提起内容は、リサイクル料金が品目ごとに製品の大小に関わらず一律に決められているため、小型の家電製品を製造・販売している韓国家電メーカーの価格競争力を弱めており、政府は、リサイクル原価に応じてリサイクル対象品目ごとに大小区分してリサイクル料金を設定するよう、指導・是正すべき、というもの。

2) 当時は家電リサイクル制度が立ち上げの時期にあり、リサイクル・コストについても実績を踏まえたデータの蓄積が不十分との認識から、推進会議は適正原価について情報の公開に努めることなどを求めた意見をまとめ、これを受けて対策本部決定がなされた。

(2) 所管省庁から対策本部決定への対応状況の説明

[経済産業省]
 
1) 家電4品目の引取状況については、14年度に 1,016万台という引取台数を記録するなど、関係者の予想を上回っており、順調な滑り出しであったと言える。

2) 再商品化の実績については、引き取った家電製品を適切にリサイクルしており、法定の再商品化率を上回る実績を残している。

3) 不法投棄については、家電リサイクル法をスタートする際、排出時に費用を負担する制度で本当に上手くいくのか、不法投棄が増えるのではないかということで非常に懸念されたが、平成14年度の引取台数に対する不法投棄台数の比率は 1.6%で平成13年度比でほぼ横ばいである。そういう意味では、不法投棄台数はそれほど増えていないと考えている。市区町村の評価については、約7割の自治体が概ね順調に推移しているとしている。法施行前は市区町村が粗大ごみ等で引き取っていたものが、法施行後は98%以上減ったということで、その分メーカーのところに戻るようになっている。

4) 対策本部決定への対応状況については、まずリサイクル料金の適正原価について情報の公開に努め透明性を確保するということに関しては、家電リサイクルでの処理費と自治体(東京都と横浜市の例)における法施行前のコストとの比較を産構審のワーキンググループで紹介し、さらに経済産業省のホームページ及び家電リサイクル法のパンフレットに掲載し、広く国民にコストを知っていただけるよう情報公開に努めているところ。

5) リサイクル料金が今後の製品の多様化や企業努力等の状況により生ずるリサイクル・コストの変化に見合うものとなるよう十分監視するということについては、家電リサイクル制度が順調に推移できるように監視を行うのは当然であり、さらに技術開発、リサイクル技術の研究開発や再生プラスチックの利用技術をバックアップすることで、リサイクル・コストの抑制に努めている。

6) なお、リサイクル・コストの実状を調べよということについては、これは民間で設定されている料金であり、各社コスト構造は非常にセンシティブな問題。各社とも廃棄物処理業者に委託をしている状況で、厳密なコストの積み上げを調べることは継続課題である。一方、民間シンクタンクの自主的な調査のレポートによれば、リサイクル・コスト収支試算は、初年度については約75億円の赤字で、各品目すべて赤字とのこと。そういう意味では、今現在各社で設定しているリサイクル料金が不当に高いという水準にはないと考えている。

7) 法施行から2年半が経ち、消費者の方にある程度家電リサイクル法の支持はいただけたと思っているが、引き続き普及啓発活動に努力をするとともに円滑に制度が進むよう、また、コストを十分監視するということに注意して、引き続き見守ってまいりたいと思っている。

[公正取引委員会]

公正取引委員会では、事業者が共同して具体的なリサイクル料金の額を決定するといったことにより、リサイクル市場において競争が制限することのないように注視するということになっている。独占禁止法に関する情報については、常日ごろから収集しているところであり、違反するような疑いのある情報があれば厳正に対処していくということで対応している。現在まで家電リサイクル料金について独禁法違反ということで処置をとった事例はない。

(3) 所管省対応に対する問題提起者意見(問題提起者欠席のため、事務局から説明)
[事務局]

問題提起者の方からは、経済産業省並びに公正取引委員会の対応に対し特段の意見なしとの回答であった。なお、平成13年度問題提起プロセスにおける審議の結果、問題提起者は公正取引委員会に相談・指摘するよう意見を頂いているが、相談等はしていないということであった。理由等について事務局から何度か確認を取ったが、平成13年度に問題提起した際の意見や立場は大きく変えたものではないが、立証が難しいため、との回答しか得られなかった。同様の理由で、本日の審議についても欠席とのことである。
(4) 委員からの主な発言等
1) リサイクル・コストについては、なかなかセンシティブとのことだが、そもそも韓国大使館からの問題提起は、例えばテレビなどについても大きさによってコストが違うはずなのに一律の数字になっているのは納得しがたいという趣旨だったと記憶している。ここに発表されたデータのもとの数字は大きさ別にとられているのか伺いたい。とられているのだとすれば、日本の国民にも透明性という観点から数字を発表した方が理解しやすいのではないか。また、民間シンクタンクの試算ではもとの数字がどうなっているのか伺いたい。
(経済産業省)コストのデータを入手するのが難しく、自治体との比較しかできていない。分析が難しいため、検討課題である。民間シンクタンクの試算についても品目ごとであり、品目の中での重量、大型、中型、小型の区別はなく積算されている。
2) これからも大きさ別に調査する計画はないのか。
(経済産業省)あるシンクタンクに調査を相談し、この分析をしたいという依頼をしたが、各社非常にセンシティブでデータをもらえないからギブアップしたいということで断られた。そういう意味では難しいのだが、引き続き何らかの形で推計できないものか検討していきたい。
3) この10月からのパソコンリサイクルについては、10月以降に発売のものは製品価格に上乗せとなった。前回の専門家会議での回答では、ヨーロッパで既にそういう製品価格に上乗せをする拡大生産者責任制の方向をとっているところがあるので、日本はそれをなぜとらないのかということを質問したのだが、日本の現状に合わないからという回答だった。それが今回のパソコンについては、自動車リサイクルと同じように上乗せをするような方向がとられた。今後、家電4品目以外もリサイクル対象になっていくと思うが、拡大生産者責任制の方向に検討する可能性もあるのか。
(経済産業省)家庭用パソコンについて、この10月からリサイクル制度がスタートした。既販品については後払いだが、新しい10月以降の製品については価格内在化という方式でスタートした。家電4品目は特に小売店が消費者の家に届けて古い製品を引き取って帰ってくるという販売形態が多いのに対し、パソコンの場合は持ち帰りが多い。販売店が料金と引きかえに回収するという家電リサイクル法のようなスキームは難しいということで、やはり前払いの制度、価格内在化の制度が望ましいと審議会で議論され、パソコンについては価格内在化となった。ただ、価格内在化の方式も後払いの方式もユーザーが最終的に負担するのは一緒であり、不法投棄を防止するという観点では前払いの方がいいかもしれないが、例えば、前払いで徴収した料金を基金なりでどのように管理していくかという問題もあって一長一短である。それから、拡大生産者責任に関しては、自治体が処理をしていたのをメーカーがリサイクルするという意味において、家電リサイクル法もパソコンリサイクルも拡大生産者責任の考え方にのっとった制度だと理解している。
4) テレビでも小型であればそれは消費者が買って帰るということもあり得る。持ち運びできるかどうかが境界線と理解してよいか。
(経済産業省)家電リサイクル法については、法律施行後5年、平成18年に法定見直しがなされるので、その時には引き続き後払いがいいのか、それとも前払いにした方がいいのか、また、品目を追加するかどうかについても議論を頂くことと思っている。
5) リサイクル料金は品目ごとに一律に決められているということだが、事業者が決めるはずにもかかわらず、なぜ一律なのか。一律に決まってしまうと、それより価格を下げることができないので、小型製品を主力とする韓国家電メーカーの価格競争力が減退するということかという気もするが、韓国の家電メーカーは、どこかで価格が決まっているとすると、なぜそれに拘束されるのか。また、法律には料金に対する勧告とあり、一定の場合に勧告ができる。原価を著しく超えている場合ということだが、原価というのはどうやって分かるのか。
(経済産業省)まず、各社のリサイクル料金については、統一でなければいけないということは全くなく、自由に決められる料金である。そういう意味では、どのメーカーが高く設定しても構わない。実際に、一部のメーカーで料金が違っているところも確かにある。これは全く自由であり、統一価格ではない。競争上、結果的に各社の料金が同じになっているということで、統一料金でなければならないということではない。また法第21条に料金に対する勧告等ということで、適正原価を著しく超えているときに勧告をすることができるということについては、まさに高いのであれば勧告するということだが、原価をどういうふうに推計するかが難しいところであり、一つのよりどころが先ほど紹介した自治体との比較であり、自治体がそれまでごみ処理をしていた時にかけていたコストに比べて家電メーカーのリサイクル費用が不当に高ければ著しく高いと言えるのではないかと思うが、現行では、この東京都や横浜市の料金とほぼ同等か安いという形になるので、この第21条の著しく超えているという要件にはまだ達していないと考えている。
6) 競争があるから料金が一律になるとのことだが、もし競争があるとすれば、各事業者が個別に料金を設定して、料金の格差というのが出てきてもおかしくないような気がする。これが長期的には修正されるのかもしれないが、何かここで価格設定に不自然な面はないのか。公正取引委員会の関係の問題もあるが、カルテルがあるとまで言わないにせよ、プライスリーダーシップがあるのか、何かそういう問題はないのか。
(経済産業省)特にこれについて企業同士相談して決めたということはないと伺っている。
7) しかし、表を見ると見事なくらい同一料金になっていることは事実。これが価格競争の結果なったのか、それとも若干カルテル的な要素があるのかというご質問だと思うが。
(公正取引委員会)公正取引委員会では、もしカルテルに該当する行為があるとすれば違反事件として調査することになると思うが、業者が集まって、ないしは団体で料金を決めているといったところがうかがえるような情報がないと調査を開始できない。したがって、そのような情報を集めてその疑いが濃くなれば調査に入るということになる。本件についても当然これからも注視して情報を集めていく。カルテルの疑いがあるような情報に接すれば、厳正に対処するということになる。
8) そうすると、韓国メーカーは一体どういうことについて苦情を言っているのか。何がおかしいということか。
(事務局)例えば、1万円のテレビでも 2,700円で10万円のテレビでも 2,700円でリサイクル・コストは同じ価格であり、相対的に高くなる。要するに、リサイクル料金が価格比例的であれば同じようなコストだが、小型のテレビに対して定額でかかることによって不利になっているということ。
9) 経済産省からの回答は、リサイクルの実績が上がっているとか上がっていないとか、リサイクルの費用はどうなっているかという話であり、これはリサイクルの実情を知るには大変便利だが、もともと韓国大使館からの問題提起は小型、つまり同じ種類、電気冷蔵庫でも自動車でもコンピュータでも、だんだん軽量化してきたときに発生するであろうコストが、このリサイクル・コストによってより大幅にひずむという内容である。より大幅にひずむということは、比較優位の原則から考えれば、それを侵害するのだから注意をして適正なリサイクルの費用を設定して、競争、いわゆる比較優位がひずまないようにしてほしい、こういう要望じゃないかと思うが、もしそうだとしたら、非常に残念だが今日出された経済産業省からの資料はほとんど役に立たない。民間シンクタンクの資料も全く役に立たない。むしろ大切なのは同一品目、例えば電気冷蔵庫にしてもコンピュータにしても、小型化していった過程でリサイクル・コストがどうなるかという点である。小型化していっている過程で、そもそもリサイクル・コストがどう変わっていくのかということについて、しっかりした考え方を持っていなければならない。
(経済産業省)去年の春に議論がなされて、そこの議論を踏まえてのフォローということで、全体の部分を詳しくご説明しなかった。基本的にこのリサイクル料金は各社自由に設定するということであり、高く設定しても低く設定しても、大型、中型、小型を各社自由に設定しても全く構わないわけである。問題提起者の要望は、政府が介入をして、例えば小型か大型かに分けるようにしてくれという要望であるが、これは民間同士で自由に設定されているものであり、なかなか政府として介入できるような状況ではないという前提に立った上で、本日は、少し周辺の情報を説明させていただいた。
10) 今日の話は対策本部決定の文書に対しては対応している。だから、もともとの問題に合わなかったのは対策本部の決定そのものが悪かったのではないかと思っていたのだが、今の経済産業省の回答を聞くと、メーカーは自由にできるのであるというのが回答である。だとしたら、前回の議論は全く意味のない議論をしていたことになる。前回は韓国メーカーの方がもっと安く設定したいのに、できないから何とかしてくださいという話だったと理解しているが。
(事務局)平成14年3月においての議事録の中では、例えば韓国企業が日本製品よりも安い料金設定をしようとしても、一方で日本の大手家電メーカーが共同で運営するリサイクル工場の処理表示の料金が、日本の大手家電メーカーが設定した料金をもとに設定されていると。それを下回るリサイクル料金を設定することは事実上できないとなっており、また、本来リサイクルに要する経費は小型の方が安いはずにもかかわらず、大小一律の基本料金の設定になっているのは不効率とある。料金の設定に関しては、民間レベルの問題とせず、むしろ国が製品の大小を勘案した料金の基準を作成し、かかる不合理を是正すべきとある。
11) 本当に小型の方がリサイクル・コストが安いのか高いのか実は分からないので実態を調べなければいけないというのが本部決定の基礎だったと思う。大きいものが高くて小さいものが安いのか、小さいものも高いのかという実態の報告ができないのであれば、我々はこの審議に関しては全く無力ということになる。一体、この先どのように進めていくのか。
(議長)確かにこの問題、問題提起者の方が言っている話と、それから所管官庁の方が問題にしている問題の視点というのが、最初から確かにずれていた。その点についてOTOとすると、そもそも問題提起者はそういう食い違いについて、どう考えられるのかということをまず明らかにしないといけないと思う。
12) 立ち上がってすぐだから、その実態についての実情をつかんでいないから、それについて数字を多少つかんでから検討するというような前提があったわけだから、業界団体なりがこれくらいのサイズだったらば幾らから幾らぐらいとか、タイプごととか大きさごととか、あるいは古い型と最近の型とではリサイクルしやすくできているものであればコストは違うから、そこは種類分けして基本的データは出す、といったことが誠実な対応として必要だったと思う。その上で、政府介入するかどうかはまた次の問題であって、その実態が出た上で、多少なりそういう情報提供は日本の国民に対してもコストの情報の透明性を出すということからも必要ではないか。要するにコストはどんどん上がっているのだから、これからはリサイクル費用がもっと高くなると一方的に決められても、日本の国民だって納得しないと思う。そういう意味で、実情の調査をするという部分は大きなポイントではないかと思うがいかがか。
(経済産業省)先ほどの参考資料の中にリサイクル料金一覧というのがあって、これは家電製品協会のホームページに載せられていた資料だが、そこにあるAグループ、Bグループというのは、グループ内でリサイクルを共通化して費用を抑えてリサイクル制度を動かしていこうというもの。韓国企業についてもAグループ、Bグループに入っており、そういう意味ではリサイクル制度に乗って順調に事業はされていると伺っている。それから我々として別にコストの推計をしないということでは全くなくて、これは引き続き継続課題ということで十分認識しており、もちろん余り言い訳を言うつもりはない。販売店での廃家電の引取り段階では細かく分けたら非常に料金が徴収しにくいという声もあるが、そういうところも含めてコスト構造だと思うので、それをきちんとフォローしていくように私ども引き続き注視していきたいと思っている。
13) コスト構造がなかなか分かりにくいというのは分かるが、経産省の方ではその解明に一層の努力をするというが、努力の結果、今分からないようなことが今後かなり分かるようになるとの見通しはあるのか。
(経済産業省)実際に推計をされたシンクタンクもあるから、こういうところと相談しながら、どういうやり方がいいのか検討して行きたいと思っている。
14) OTOとしては、今日の議論の結果に対する問題提起者の公式見解をいただく必要があると思う。その上で、問題提起者がOTOで議論することをあきらめるのであれば、残念だが審議は続けられない。

15) 外国企業である問題提起者にとって、立証が難しいことは想像に難くない。経済産業省の苦しい立場も分かるが、そうした問題提起者の事情も勘案して、審議を終えることには慎重であるべき。
(議長)事務局は、今の委員の方々のご意見、ならびに経済産業省、公正取引委員会の説明を踏まえ、問題提起者の方に、本日の議論についてできるだけ正確に状況を伝えた上で、本件への今後の対応についての公式見解をできるだけ早く明らかにしてもらうこと。仮に将来に続くような課題が残る場合には、経済産業省には、リサイクル費用の構造分析と、また現状の料金がどのように決まっているのか、それが実際のコストとの関係はどうなっているのかというようなことについて、報告をお願いすることになると思う。

(事務局)12月5日に予定されている次回専門家会議までに問題提起者と連絡を取り、確認をすることとしたい。なお、問題提起者が取り下げるとした場合であっても、平成14年の対策本部決定そのものは依然として生きているので、経済産業省には適正原価について引き続きご検討いただくことになる。

議題3 その他
(事務局から専門家会議等推進会議会合の開催予定について説明)
 
以上

(速報のため事後修正の可能性あり)

[問い合わせ先]内閣府市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-0384(直通)