OTO推進会議平成8年度第1回専門家会議議事要旨
(平成9年1月17日)
日時 平成9年1月10日(金)10:00~12:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(推進会議)
議長 増田議長
議長代理 大河原推進会議議長、行天委員、佐々波委員、島野委員、谷村委員、
中内委員、眞木委員、八城委員、山本委員
委員 片岡委員、金森委員、兼重委員、児玉委員、細川委員、本田委員、
宮智委員、村上委員
オブザーバー デュボア特別委員
(問題提起者)
東京商工会議所 下島国際部長、新田国際経済担当課長 他
(所管省庁)
(議題1)厚生省薬務局 滝沢医療機器開発課長 他
(議題2)大蔵省関税局 磯村事務管理室長 他
(議題3)大蔵省関税局 花角業務課長 他
(OTO本部・事務局)
小林審議官、滑川貿易投資調整官、川口OTO対策官 他
議題
(1)医療用具の未承認品目の輸入手続きの緩和
(2)輸入貨物に係る「関税・消費税」納期限延長に関する手続きの簡素化
(3)通関業者の保管する輸出入申告書等の保存の省略
審議の概要
議題1 医療用具の未承認品目の輸入手続きの緩和
- 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在: 承認を要しない医療用具の範囲について
- 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
- 家庭で個人のヘルスケア用に使用する簡単なマッサージ機、磁気健康器具等で、生命
や健康に悪影響を与える可能性の少ないものは、本格的な医家向け医療用具とは切り
離し、医療用具の規制(薬事法により製造または輸入販売に当たり、品目ごとに厚生
大臣の承認が必要)から外すべき。
- 同じマッサージ器でも美容目的をうたえば対象外で、マッサージ効果をうたえば医療
用具となる。対象になるか、ならないか境目が大変微妙である。
- 気泡浴装置やサポーター類も効能効果をうたえば、医療用具になりうる。
- 磁石を埋め込んだ磁気枕、シーツ、ベルト等が医療用具として販売されているが、効
果も不明確であり医療用具の対象から外すべき。
- 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
- 医療用具の承認とは、安全性のみならず、品質及び有効性についても審査し、医療用具
としての有用性を総合的に評価する制度。
- 医療用具はクラス�は承認不要品目で人体に接しないもの、人体に接する用具のうち、
故障等の場合にあっても身体に重大な影響を与えるおそれのないもの、JIS規格が設定
されているものが該当する。平成6年の法律改正で、品目の%シェアが従来5%程度であ
ったものを30% 程度に増やしており、承認不要品目の拡大をしている。
- クラス�は生体に植え込んで使用されるもので、生命の維持に直接関連するもので、心
臓ペースメーカー等が該当する。個別なリスク管理がなされている。
- クラス�はクラス�、クラス�以外のもので品目ごとの承認が必要であり、今回対象と
なっているマッサージ器、磁気治療器はクラス�に分類されている。
- 米国では医療機器安全法により承認が必要な医療機器として治療用マッサージ器は分類
されているが、一部イス型マッサージ器等は除外されている。
- EUでは、日本の分類と異なり磁気治療器、マッサージ器等は自己認証で済むもの、民
間認証機関によりチェックを受ければ良いものに分類されている。
- 改正薬事法は平成7年より実施しているが、既承認医療用具との同一性について、関係
法人で書類上のチェックを行っている。同一性が確認されれば手続的にはかなり簡素化さ
れる。
- 家庭向けマッサージ器、磁気治療器をどのような形で承認不要のグループに区分できる
かについては、販売する際にどれだけのことが言及できるかが消費者が適切な情報を得る
ために重要であることから、表示の基準や範囲を設定することができれば具体的な検討が
できる。
- この後、審議
(委員の主な発言)
- 医療用具の審査は誰がどのように行っているのか。もし、実体のない審査なら、必要な
いのではないか。
- 既承認品目との同一性のチェックは、どういう内容について明確であれば同一と見なさ
れるのか。また、同一でない場合はどのような審査がなされるのか。審査の内容等はどこ
に明示されているのか。
- すでに広く用いられ、有効であることが分かっているという理由でJISに適合する医
療用具は、承認不要としているとのことだが、諸外国のJISに相当するものも承認不要
と認めるのか。
- PL法では、厚生省が審査して承認したものでも問題が起きた場合はメーカーが責任を
負うようなので、審査は不要ではないか。PL法が施行された以上、薬事法を改正してE
Uと同等のやり方に変える必要がある。
- 審査がブラックボックスである。どういう審査がなされるのか、審議会でどのような議
論がなされるのか申請者は分からない。どのような理由で不合格になったかも分からない
。米国は明確な基準を示した上で審査しており、再審査請求も可能。
- 安全性について国が責任をもち、オープンな体制、明確な手続のもと審査され厳密な運
営がなされることは結構であるが、効能、効果まで国が手伝うことはない。欧米並みに早
く変えるべき。有効性については市場の判断に任せて良いのではないか。
- 個別承認が不要な品目を列挙した薬事法施行規則の改正は11年でたった4回である。技
術の進歩から考えるとこの改正の期間は長いのではないか。所管省庁が検討を進めるとい
っても実際は大変長い時間がかかるのではないか。検討はいつごろまでに結論を出せるの
か。
- 今回対象となっているような手軽なものは承認から外して良いのではないか。また、個
別品目について詳細なルールを公表してそれに基づいて判断する方法が良いのではないか
。大括りの品目で、承認する、しないという判断をすることにすると、行政に大きな裁量
を与えてしまい、かえってよくないのではないか。
- 今回の問題になっているようなものは、単純な商品であり、個別承認は不要。また、そ
の検討のために時間をかけることも時間の無駄。当然不要とすべき。
- 医療用具の承認の要不要を表示との関係で判断するのはおかしいのではないか。
- 医療用具の有効性について消費生活センターへの苦情も多いので、消費者サイドからは
有効性についての審査をすべて外すべしという意見は少ないと思う。しかし、PL制度が
できたのだから、それに合わせた形で医療用具の審査・承認の仕組みを改善することは必
要。
(所管省の応答)
- 有効性、安全性、効能効果に関する基礎資料に基づき、関係法人のチェックを受け、同
一性の確認ができないものは中央薬事審議会で審議される。
- ハーモナイゼーションのための国際会議の場で各国の状況にどのように歩み寄れるか調
整している。
- 健康、医療等に関して安全性のチェックをして承認を与える原則規制の薬事法の論理と
、原則自由で問題が生じたときにPL法的に個別に処理するのでは論理が異なる。承認不
要の範囲をどのように広げていくことが適当か、いろいろ意見を聞いて対応の方針を決め
て行きたい。
- 有効性について、どのように使用すれば何が直るのか科学的にチェックすることは重要
で、安全なだけで医療用具として販売できるということにはならない。
- 検討に時間がかかるのではないかとの質問に対しては、専門的、科学的基準を設定でき
れば検討はすぐにも可能。担当課長としての個人の見解では1年以内にできるのではない
かと思う。
- 今までの手法に非効率的な部分があるのは認めざるをえない。基準ができれば承認の
要不要について線引きも明確になると思う。
- 家庭で素人が使うからこそ安全性や有効性が要求される。医療用は専門家が使うから任
せられる。
- 議長による総括
- 問題提起された具体的品目を承認不要とすべしということについては委員の中で異論は
なかったが、安全性だけでなく、品質や有効性まで国が審査する必要があるか否かといっ
た基本的、一般的な議論については、別途建議プロセスのテーマとして検討することとし
たい。
- 医療用具の承認の要不要の範囲は欧米と異なっているので、できるだけ合わせていくべ
きである。また、医療用具の承認不要化を決定する明確な基準を公表すべきである。
- マッサージ器や磁気健康器具等の家庭用医療用具が医家向けの医療用具と同様の承認が
必要であるのは不自然であるので、承認の不要化を検討し、早急に結論を出すべきである
。
- 承認不要化するための手続について、承認不要を希望する者に負担がかからないよう整
備して行くべきである。
- 以上の意見を踏まえて、今後、事務局の方で、問題提起者、所管省とも調整の上で、で
きるだけ具体的な改善内容と実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告し
てもらいたい。その報告を受けて必要に応じ更なる検討を行いたい。
議題2 輸入貨物に係る「関税・消費税」納期限延長に関する手続きの簡素化
議題3 通関業者の保管する輸出入申告書等の保存の省略
- 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:通関業務の適正な実施の確保及び通関業者の利用者の保護を図りつつ、
通関業務に関する書類保存等による通関業者の負担軽減の方法。
- 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
- 通関業者が税関へ申告した申告書等は通関業法施行令に基づき3年間保存することが義
務付けられている。現在、輸出入申告書は関税法第14条、国税通則法第70条により税関が
7年間同じものを保管している。さらに、NACCSセンターにおいても磁気テープによ
り同一情報を7年間保存している。
- 通関業者にとって3年間申告書類を保存することは書類関係が非常に多いために保管す
る場所が必要であり、各営業所毎に保存しなければならずそのためのスペースが大きくな
る。書類の保存が簡便化されれば、コストの面でも軽減されるので、3年間保存の義務を
軽減又は免除して欲しい。
- 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
- 貿易取引における通関業者の重要な役割に鑑み、その利用者(輸出入者)を保護し適正
な通関手続きを確保する観点から、通関業法に基づき通関業者を税関長の許可にかからし
めている。
- 税関は通関業者に対する適切な指導・監督を可能とするため、通関業法第22条に基づき
通関業務に関する記帳義務、輸出入申告書等の関係書類の保存義務を課している。他方、
通関業法第38条により税関長は通関業者の業務に関する帳簿書類を検査でき、こととなっ
ており、税関は随時立入り検査を実施し、毎年500 件近くの営業所を立入り検査している
。
- 通関業者に関係書類の保存義務を課している理由は、通関業務の適正な運営を図り、利
用者の利便に資するためである。さらに、通関業者による通関業務の適正な運営を図るた
めに通関業者が保存する帳簿とその原資料、証ひょう書類等を備えさせ通関手続きの代理
を行った者として、その責任の帰属関係を明確にさせている。
- 立入り検査ではこれらの資料を利用し、手続き完結後発見される誤りの原因の探究、料
金の収受状況の調査等を行い、利用者の保護に資している。諸外国においても帳簿或いは
関係書類の保存義務を課しており、例えば、アメリカでは5年、フランスでは3年の保存
期間になっている。
- なお、税関やNACCSセンターにおいても輸出入申告書を保存しているが、これは輸
出入者の関税の更正、決定等のための資料として保存しており、その保存目的が異なる。
また、通関業者が保存する輸出入申告書は帳簿とリンクしているが、税関、NACCSセ
ンターが保存している申告書は通関業者の帳簿とは何らリンクしていないので、立入り検
査の際に必要な申告書をデータベースから探し出すのは非効率的であると考える
- この後、審議
(委員の主な発言)
- 通関業者に適正な業務を遂行させるために書類を保存させるとのことだが、神戸の大震
災の時は、大抵の業者の書類は焼失したと思うが、その後それらの業者は適正な業務がな
されなかったのか。
- 本当に必要な書類なら業者の方が一生懸命保存するのではないか。借地料が大変という
位だから、一件あたり膨大かつ無用な書類を保管させているのではないか。
- 元々の書類ではなく、磁気テープ又はフロッピーディスクで保存することは、スペース
を節約するために有効だが、可能とすべきである。
- フロッピーディスク、マイクロフィルム、磁気テープによる保存を認めることが費用節
減となる。そのための前提として所管省があげた条件のうち証拠力の確保、可視性につい
ては問題ないと思う。立入り検査(行政調査)の際に打ち出し義務があると考えられる。
問題は、真実性、すなわち元の原票から磁気に入れる際に一致しているかどうかであろう
。それについては、税関で7年間保存しており、怪しい事例だけは税関の資料でチェック
することは可能ではないか。
- 電子データの場合、証明性が強いかどうかの議論はあっても、少なくとも証拠とし
て使えないということはないのではないか。
- 通関業者は手続きを代行しているに過ぎないのであり、大切な書類は輸出入業者と税関
が保管すべきではないか。不正は刑法上の問題であってどんなに制度をしっかりしようが
起こる。その問題と合理化の問題を一緒にするのは納得できない。
通関業者のミスについては輸出入者がチェックアウトすればいいことであって、役所が
指導・監督する必要はないのではないか。
- 輸出入業者の費用が論点のようだが、費用が節減された場合に輸入品の価格が下がると
考えていいのか。それとも国の費用が節減されて財政負担が減るということか。国民全体
でどのようなメリットがあるのか。輸入品の価格が下がるということなら消費者全体の利
益になる。
- 照合を必要と認めた輸出入申告書を税関の側で探すのが大変なので民間が用意すべきと
いう趣旨のようだが、検査の非効率をなくすために、民間が負担を負うという図式だと思
う。民間の負担と役所の効率を上げるというのを秤に掛けて議論すべきかどうか疑問であ
る。
- 情報システムに対する不信と認識不足があるように思う。業者が申告書類を作り原始伝
票がNACCSで作られ、それと全く同じものがファイルになる。データ検索その他時代
は遙かに進んでおり、コストも下がっているので概念を改めて電子媒体による保存に前向
きに取り組んでもらいたい。かなりの問題が解決すると思う。
- 銀行検査において、銀行の書類は全部磁気テープである。磁気テープならこの会議室位
の書類は一つの冷蔵庫に納まる程スペース節約に有効である。
(所管省の応答)
- 震災の際の事情は承知していないが、これは異例の事態である。通関業者が必ずしも常
に適正な申告を行っているわけではなく指導、監督する立場から3年に1回ぐらいは指導
に伺いアトランダムに申告書と帳簿を照合している。
- フロッピーディスク又はマイクロフィルムで保存する方向にあることは承知している。
ただし、立入り検査の際に支障が出ないように以下の条件を満たす必要がある。
1)真実性の確保(改ざんがされていないかどうか)
2)可視性の確保(調査の際にすぐにアウトプットできるか)
3)証拠力の確保(訴訟上有効な証拠能力を有するか)
原資料である証ひょう書類の電子データ化は無理かもしれないが、帳簿は可能ではないか
と思われる。
- 真実性の確保及び可視性の確保については検査を受ける側にある程度の義務付けを
課して確保できるが、証拠力の確保については、未だ法務省からは例えば領収書等
を電子データで置いた場合、裁判で使えるか否かについてイエスという答えを得て
いない。
- 輸出入の許可件数が急速に伸びている中、通関業者は適正・迅速な通関に努力している
が、ともすれば迅速処理に力点がおかれがちであり、その結果ミスが起きて輸出入者に迷
惑をかけることもある。悪意の脱税等ではなく、善意のミスもある。
- 輸出入業者も個人まで含めて裾野が広がっており、どれがしっかりした通関業者である
か判断できない場合もあることから、所管省として指導、監督していく必要がある。
- 通関業者の収入は輸送関係が主で、通関業がその売り上げに占める割合は微々たるもの
で0.8%くらいであり、それほどのコストではない。
- 税関は輸出入者に非違があるかないかといった観点から輸出入者の申告書を保存してい
る。通関業者への書類保存の義務づけは、適正な運営を行っているかどうかを調べるため
であって、目的が違うため税関のデータを持って立入り検査をすることは効率的かどうか
疑問である。毎年 480カ所近い営業所の申告書を探し出す手間ひまを考えると現在の税関
の人数では対応できない。
- NACCSセンターのコンピュターは24時間稼働しており申告を受け付け許可を与え、
あるいは検査を行っている。また、データを構築しているため、申告書等を出して欲しい
という依頼があると、一件当たり400 円の料金を徴収しており、コストも考える必要があ
る。
- 議長による総括
- 同じ書類を税関、NACCSセンター及び通関業者で保存する必要があるか再検討
する必要があるのではないか。
- 役所の検査の効率化を図るために、過大な書類保存義務を課すのは見直すべきであ
り、電子媒体による保存も認めるべき。
- 以上の点について、さらに事務局の方で、問題提起者、所管省庁と調整の上、改善
内容、実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい、
その上でさらなる検討をしたい。
────以上────
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
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