OTO推進会議平成8年度第3回専門家会議議事要旨
(平成9年2月5日)
日時 平成9年1月31日(金)15:30〜16:30
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(推進会議)
議長 大河原議長 議長代理 久米委員、島野委員、谷村委員、中内委員、眞木委員、増田委員、八城委員 委員 片岡委員、金森委員、兼重委員、児玉委員、細川委員、本田委員、宮智委員 オブザーバー ビーグルス特別委員
(問題提起者)
東京商工会議所 下島国際部長、新田国際経済担当課長 他
(所管省庁)
通商産業省機械情報産業局 馬場計量行政室長、通商産業省貿易局 高橋輸入課長 他
(OTO対策本部・事務局)
小林審議官、滑川貿易投資調整官、川口OTO対策官 他
議題
・非法定計量単位に係る販売規制の緩和
審議の概要
事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在: SI単位への統一という国際的要請と円滑な輸入の促進という要請に鑑み 法定計量単位と非法定計量単位とを併記した計量器まで販売禁止にする必要があるか。
問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
輸入品の地球儀の架台に温度計を有するモデルがあるが、温度計の文字盤に摂氏に 加えて華氏の数字が書かれているため日本で販売も陳列もできない旨の指摘を計量検定所 から受け、当該商品を全て回収した。計量法第9条の規定により、温度の華氏、長さのイ ンチ・フィート、重さのポンド、体積の立法フィート、面積の平方フィート等の記載があ るものは一切販売できない。華氏のみの表示では問題もあろうが、摂氏と併記してあるも のまで禁止する必要があるとは思えない。
計量法第9条は、貿易統制を目的としたものではなく、国際単位系への統一を目的 としたものであること、また華氏が日本の非法定計量単位であることは理解するが、海外 が身近になった現在、米国では華氏表示が一般的であるというように異なる習慣を持つ国 もあることが理解できないほど日本人は幼稚ではない。
所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
計量単位の統一は、各種の取引や証明の際に必要となる計量制度の根幹をなすもの であり、経済・社会の運営安定に必要不可欠である。
計量器については、昨年11月のOTO推進会議でも議論されたこともあり、本件地 球儀について詳細な検討を行った結果、法規制の対象外になると認識した。計量法で規制 の対象となる計量器は取引・証明、あるいは正確な計量に使用するもの。本件商品は地球 儀として学習ないし室内装飾に使用するものであり、温度計は装飾の一部であると考えら れるので、計量法の適用対象外である。
しかしながら、国際的な単位統一の観点から、今世紀中にSI単位への統一を目標 としており、平成4年にも計量法の改正をしたところ。計量の原点である計量器それ自体 として輸入されるものは併記を認めるわけにはいかない。
本規制が単位統一への最善の策かどうかについては議論があることは承知している。 フランスでは日本と同様の規制が存在するも、ドイツでは併記を認めているというような 例がある。SI単位への移行が完了した段階で、海外各国の統一動向を踏まえて、計量器の 規制の在り方について見直すべきではないかと考えているところ。
この後、審議
(委員の主な発言)
通産省の前向きな対応は評価できる。
国際的な単位統一への努力が続いている中、アメリカだけは流れに反する行動をと っているのか、それとも統一への努力を行っているのか。国際的に一つの方向に向かって いる以上、アメリカにもその旨言うべきでは。
イギリスはSI単位への転換をしたというが、完全に転換したとは思えない。世界 中が一つの単位で統一されていれば便利だが、完全主義が必要かどうかは疑問。肝心な部 分さえ統一できていればいいのでは。ある単位に統一するというのはコストがかかり、費 用対効果も考える必要がある。
衛星放送でアメリカの天気予報などを見ると華氏表示が多く、本件のような温度計 が便利な面もある。アメリカがSI単位に統一するまでは使えるようにできないか。また 、ゴルフもヤード表示が一般的である等、消費者の間でも慣行となっているものには便宜 を図ることが必要ではないか。
本件への対応ぶりは、実態に即した運用をするということであるが、SI単位への 統一完成まで同様の問題が発生すると思われる以上、何が計量器で何がそうでないかにつ いて明確な基準が必要ではないか。それとも、今後も事例に即した解決を図るつもりか。
本件は解決したものの、OTOの場でないと本件商品が計量器ではないという回答 を聞けないのはよくない。本件でも地球儀か温度計かはグレーゾーンであったが、グレー ゾーンが大きいのは日本の市場を閉鎖的にするだけである。
計量器かそうでないかが曖昧なままではよくない。計量器であることをシールなど で表示し、消費者が識別しやすくすれば、輸入業者や販売業者に混乱がなくなるのではな いか。
この場で出された前向きな回答の趣旨を、都道府県の窓口などに周知徹底し、本件 のようなものの取扱い基準が作れれば、情報公開すべき。
(所管省の応答)
アメリカでは1975年にメートル転換法を規定し、その中でSI単位への統一を宣言 している。現状は、行政府の物資調達や証明行為、通商分野等では一定の成果をあげてい るようだが、中小企業や一般市民生活においてはヤードポンド法が浸透しており転換が容 易ではない。政府広報資料で啓蒙活動も行っているようではある。
国家の統一と度量衡の統一は必ず一緒に行われる。共通の単位でないと話が通じな いからである。また、SI単位という国際的に統一された単位を用いることは計量に携わ る人々の夢であり、その時期が近づいているといえる。
法律によって無理に一つの単位を押しつけて消費者の利便を奪うのはやりすぎだと 思う。
本件のような事例はごくまれにしか発生していないため、現段階で何が計量器で何 がそうでないかといった整理はできない。当面は事例が発生するたびに相談した上で解決 するという方法をとりたい。
都道府県の計量行政の担当者を集めた会議を2月末に開催するため、本件事例も紹 介して窓口への周知徹底を図りたい。
議長による総括
国際単位系であるSI単位への統一は、国際基準への整合化による貿易の一層の促 進という観点から支持できる。今後も引き続き努力してもらいたい。
ただし、日本の最大の貿易相手国であるアメリカがヤード・ポンド法を現実に採用 していることから、所管省はSI単位系への統一という方針の中で、その都度弾力的な運 用を進めてもらいたい。
本件については地球儀として販売することを認めるという所管省の対応は評価でき るが、今後も同様の問題が生じる可能性があるので、何が計量器で何がそうでないのか、 基準について検討してもらいたい。また、摂氏と華氏とが併記されているものについては 目盛が見えないようにする等、輸入を阻害しないような基準の設定が可能か否かを検討し てもらいたい。これらの基準については設定できるのであれば公表し、消費者の需要に応 えてもらいたい。
地方の計量行政の担当者が、本省と同様に対応するように、地方にも本省の考えを 徹底してもらいたい。
以上の点について、さらに事務局の方で、問題提起者、所管省庁と調整の上、改善 内容、実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その上 でさらなる検討をしたい。
────以上────
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
直通 3581−5469