OTO推進会議平成8年度第5回専門家会議議事要旨
(平成9年2月24日)
日時 平成9年2月13日(木)10:00〜11:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
- (推進会議)
- 議長 大河原議長
議長代理 行天委員、眞木委員、増田委員
委員 金森委員、兼重委員、児玉委員、細川委員、本田委員、村上委員
- (問題提起者)
- 在日米国商工会議所 ダフィ専務理事 他
- (所管省庁)
- 国税庁長官官房 上野企画課長 他
- (OTO対策本部・事務局)
- 小林審議官、滑川貿易投資調整官、川口OTO対策官 他
議題
・マイクロフィルムによる文書保存の規制緩和
審議の概要
- 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在: 税務調査等における書類の必要性を考慮しつつ、税法上の帳簿保存に係る企業の負担を軽減する方策。
- 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
- マイクロフィルムの利点は、一度作成されたら変造しにくいこと、紙に比べて保存スペースが大幅に小さいこと、検索等のコストが小さいこと、データの劣化等を防ぐことができること、機械化・自動化が図られること等である。
- アメリカでは、連邦政府及び各州政府において、マイクロフィルムによる文書の保存を認めている。1949年に定めれられた連邦法では、マイクロフィルムによるコピー は、十分に原本と同一であることが確認されれば、いかなる裁判・行政手続においても証拠物件に用いることを認めている。1971年の段階で、連邦政府のほか42の州政府が、同法又は同様の内容を持つ法を規定している。
このような法の下では、マイクロフィルムが証拠物件となるための基準として、原本が普通の方法で作成されたこと、コピーが通常の方法で作成されたこと、コピーが正確に再現されること、コピーが十分に原本と同一であると認められること、が定められている。
- 日本の多くの省庁が、全保存期間マイクロフィルムによる文書保存を認めている。国税庁が紙の形で文書保存をさせるということについて正当な理由は存在せず、他省庁はマイクロフィルムの安全性、信頼性、効率を認めている。国税庁は直ちに規制を撤廃するべきである。
- 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
- 昭和56年の税制改正以降、法人税法等では、7年間の保存義務がある文書については最後の2年間に限りマイクロフィルムによる文書保存を認めている。これは、脱税の場合の更正・決定期間が7年に伸びたため、事務負担の軽減等の観点から、一定の要件の下で措置したものである。
- 国税庁としては、近年の情報化の進展に伴い、できるだけ実態に合わせる形での検討を進めている。企業のペーパーレス化・電子取引の拡大等による電子データによる文書保存要望も多いが、帳簿書類の作成等は申告納税制度の基本であり、税務執行の観点が必要。このような見地から昨年7月以来研究会を開催し、専門的・技術的観点から幅広く検討を進めている。マイクロフィルムについてもこの検討を勘案しつつ今後検討を進めていく。
- 研究会においては、真実性、可視性、証拠力の観点から検討を進めており、今年の3月末をめどに何らかの報告を出したいと思っている。そして、高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会報告書の中で、「平成9年度末までに検討を了し速やかに措置する」とあることを踏まえて、検討を進めて行きたい。
- この後、審議
(委員の主な発言)
- 経済全体のコストと、行政コストとの比較衡量の観点が重要だと思う。その上で問題になるのは、当事者や対象物件の問題、データの信憑性、媒体の信憑性の3つだと思うが、このうち前二者はマイクロフィルムでも何とかなると思う。媒体の信憑性について、紙質等の再現はマイクロフィルムでは難しいかもしれないが、紙質等の調査にどれほどのコストをかけているのか。
- ペーパーレス化という現実は実際問題として存在し、マイクロフィルムですらすでに古い媒体かもしれない。媒体の信憑性は、技術の進歩とともにかなり改善されていると思う。技術の進歩を前提とした施行規則の改正等は考えているのか。
- 改ざんが問題だとすれば、納税時に原始帳票を2通作って、そのうち1通を国税庁が保存すればいいのではないか。製造業の技術者としては、設計図面等全ての書類がマイクロフィルムか電子データで記録されており、それ以外考えられないわけであって、どうしてもマイクロフィルムの全期間保存が採用できないという理由が不明である。また、税務調査が終わった会社の文書保存はマイクロフィルムに切り替えさせてもいいのではないか。
- マイクロフィルムの証拠力を問題にしているようだが、マイクロフィルムであっても筆跡や印影は判別できる。マイクロフィルムで分からないのは筆圧や紙質である。それは税務調査においては、それほど重要なものではないと思う。
- 職人芸的な調査方法はコストも低いが、最近の若者を見ると能力が落ちている。誰でも同じ結果が出せる近代技術への移行が必要。移行が遅れると、来るべき時代に対応しきれなくなる。
- 今のマイクロフィルムでは印影や筆跡等原本とほとんど同じものができる。十分に検討するに値するのではないか。また脱税というものは収入を隠したとかいった事件が多く、証拠書類にばかり頼っているわけにはいかないと思う。
- 要はコストベネフィットの問題。確かに原始帳簿のみが持っている特徴が端緒となって脱税が見つかることもあろうが、そういう手段で回復される税収というベネフィットと、そのための国税庁サイドのコストとの比較衡量が重要。手段のために電子データ等が疎外されているのでは、企業サイドにとっては、コストは膨大である。国民経済的なコストの観点が国税庁にも必要であるという気がする。
- 昭和56年以降マイクロフィルムによる保存が一部認められて以来10年以上の経験があるはずだが、従来の紙のみの時に比べて査察の成績が落ちたのか。また、アメリカでマイクロフィルムによる全期間保存が認められていることは、アメリカはほとんどがタイプライターによる文書で日本は手書きが多いからということか。日本もワープロ化が進んで手書きの文書が減ってくると制度を変えることになるのか。
- 3月までに報告書を出すというが、それをもとにいつごろ実現のためのアクションがとられるのか。
(所管省の応答)
- 脱税摘発のコストを定量的に計ることは難しいが、大型・悪質事案を取り扱う査察部門は年々職員を増やしている。現在でも相変わらず脱税事件が横行しており、まじめな納税者の意欲を削いでいる。多くの人材を投入して適正な課税を行う。
- 領収書、契約書等の書類については、どのような紙に書かれたか、消して書き直したあとがないか、ホチキスのやり直しがないか等細かいところから悪質な事案の発掘に努めている。こうした原始的な帳票についてまで保存を認めるには抵抗がある。
- 情報化に対して前向きに対応する用意はあり、電子データやマイクロフィルムについても改ざんが難しいような技術も開発されているようだ。情報化に合わせて規制は変え、無用な規制は止めるべき。しかし、適正公平な課税の実現という観点からの必要最小限の規制は必要であり、情報化の実態を見極め、研究会等を活用して一般の意見も聞きながら検討を進めていきたい。
- 脱税事件の立証においてマイクロフィルム等の証拠能力が認められないわけではないが、やはりオリジナルのものに比べれば落ちる部分がある。刑事事件では厳密な証明が必要なので、オリジナルがあればやりやすい。
- 刑事事件にどれほどマイクロフィルムが有効かはデータがない。また、アメリカでマイクロフィルムによる保存が認められているが、それは原始記録の追跡方法を確立し、すぐに記録の所在が判別できる等、真実性や可視性の担保の条件が付されているようだ。従って日本で電子データやマイクロフィルムによる保存を考えるに当たっては、これを認める認めないというのではなく、どういうものについてどのような条件で認めていくのか、という観点で検討することが必要であり、研究会でもその考えをもとに意見をうかがっている。
- 研究会は3月に終わるつもりだが、高度情報通信社会の部会の報告書に9年度末に検討を了して云々とあることもあり、研究会の報告書を実際にどう活用するかは、法改正が必要になるかもしれないので、9年度末までに検討を終わらせて速やかに措置したい。
(問題提起者のコメント)
- 大変有意義な議論を頂いた。委員のコメントは説得力があったが、国税庁の回答は直接我々の問題提起に答えていなかったように思う。現在はさまざまな媒体があり、それぞれがまた融合されているものもある。さまざまな媒体にはさまざまな効力があることを強調しておきたい。
- 議長による総括
- 国税庁の研究会が3月末には報告書を出すということだが、結論はなるべく早く出してもらいたい。また、情報化の流れに沿ってペーパーレス化が進むが、真実性や可視性といった点にさらに検討を加え、十分納得がいく措置が講じられるのであれば、電子データ化・マイクロフィルム化を認めることが望ましい。
- 情報化の流れ、外国企業が日本に投資しやすい環境整備、経済全体のコストベネフィットといった諸点を総体的に考えた場合、マイクロフィルムで全期間の保存を認めるという方向で措置することが望ましいのではないか。その措置を行うに当たってもある程度の条件を整備する必要があるだろうけれども、その整備を図りながら、なるべく早く実現を図ってほしい。
- 制度改革のためにさまざまな手続が必要かもしれないが、法律改正が必要であるとしても、平成9年度中ないし平成10年度のなるべく早い時期に全ての手続が終わるよう努めてもらいたい。
- 以上の点について、さらに事務局の方で、問題提起者、所管省庁と調整の上、改善内容、実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その上で更なる検討をしたい。
────以上────
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
直通 3581−5469