OTO推進会議平成8年度第6回専門家会議議事要旨
(平成9年2月27日)
- 日時 平成9年2月18日(火)15:00〜17:00
- 場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
- 出席者
- (推進会議)
- 議長
- 久米議長
- 議長代理
- 佐々波委員、島野委員、谷村委員、眞木委員、増田委員、八城委員
- 委員
- 金森委員、兼重委員、児玉委員、細川委員、本田委員、宮智委員
- (問題提起者)
- 在日米国商工会議所 サンプ氏 他
- (所管省庁)
- (議題1)資源エネルギー庁公益事業部発電課 山本総括班長 他
- (議題2)水産庁海洋漁業部 石田漁船課長 他
- (OTO対策本部・事務局)
- 小林審議官、滑川貿易投資調整官、川口OTO対策官 他
- 議題
- 内燃機関の承認の規制緩和
- 漁船用推進機関の出力算定方法の明確化
- 処理の状況の審議
車両の高さの制限緩和
- 審議の概要
-
議題(1) 内燃機関の承認の規制緩和
- 事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:
- 政府が定める技術基準が国際的な基準と整合的でないが、輸入促進の観点からどう改善すべきか。
- 法律に根拠のない社団法人の認定制度が、国際的な基準に整合的でなく、かつ、その認定が民間の取引において必要とされることが輸入を阻害している場合に、政府としてどう対応するべきか。
- 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
- 非常用予備発電装置を含め、自家発電装置を日本市場で販売しようとすると、(社)日本内燃力発電設備協会による認定証をよく求められた。通産省に確認したところ法的には不要であることが分かったが、消防庁や市町村等の通産省以外の規制が複雑に存在し、一つ一つの要件をクリアするには非常に煩雑な手続きが必要となっている。
- 日本と同様の規制が存在する先進国は2つあり、一つは韓国。ここは日本の規制方法をまねているということである。もう一つはカナダ。ここには地方自治体レベルの協会による規制があるが、基準としてはISO、IEC等であり、当方の製品は条件をクリアしているため、カナダでは問題なく販売できる。しかもカナダの規制方法は型式認定の形で、文書のみであり、実地試験は不要となっている。メーカー自身が試験を行い、その結果の当局への提出義務はなく、メーカー自身による保管が義務づけられているにすぎない。
- 当方は今月同協会に加入したが、まだ日本での販売実績が少なく、あまり信用されていないようである。通産省の話では、協会の規格は通産省の要求するところではなく、法的な意味はないとのことだが、顧客の多くは法的なものと認識しており、通産省には法的な意味はないことを周知徹底を図ってもらいたい。
- 納入先の企業には、協会の認定を受けると一筆入れないと契約できなかった。その認定を受ける手続の中で、協会の規格に適合させるために改造することになり、多額の費用がかかっている。
- 日本で実地検査をせず、アメリカの工場での検査を協会に依頼したところ、年に2〜3回ならば検査員を派遣できるが、工場に日本語ができるスタッフを常駐させること、それも協会の認定を受けた専門技術者を置くことを要求された。協会の検査を切り抜けるための手続はあるにはあるが、やはり複雑であるということだ。
- 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
- 技術基準については、材料等にはよらず内燃機関が必要としている保安基準を中心に機能性化を図るように改正作業を進めている。この基準はJISの他、アメリカのASMEにも合わせる方向である。この改正作業は本年3月末を目途に進めている。この基準ができれば、多様な材料等による製品を作ることができ、国際的な基準にも十分整合的なものとなるであろう。
- 協会の規格は民間の自主的な取り組みとして行われており、通産省には直接関係はない。もともとはある複数のメーカーが品質や保安性能の向上を目指して始めたものと聞いており、公的な位置づけにはないが、民間取引において重要な役割を持っているようである。
- 法の根拠がない制度であるためこれを改める立場にはないが、民間の基準であっても国際的な基準との整合性が必要ではないかと思う。
- この後、審議
(委員の主な発言)
- 対処方針の(2)に「必要に応じ届出を行えば設置できるものであり、当該法人に認定を受けなければ設置できないという事実はない」とあり、これはその通りだと思う。それにもかかわらず本件のような問題が出てくるのは、協会が政府機関の一部と理解されているからではないか。
- 通産省は、基準の国際的な基準への整合化を進め、また届出ですませる等規制緩和を進めているが、協会の認定制度について、規制緩和の立場からよくないと思っているか、それとも民間の自主的取り組みという面を高く評価しこれを奨励しようとしているのか。
- 協会には通産省のOBがおり、協会の認定を受けないと通産省から何か言われるのではないか、と考える向きもあるかもしれない。通産省としてもそう思われるのは心外だろうから、政府の基準と協会の規格は無関係であることを政府としてはっきりさせるべき。
- 協会の基準は通産省の基準の上にさらに自主基準を設けているとのことだが、通産省はなぜ追加的な基準を作らなければならないような基準を作ったのか。
- インビジブル・バリアの問題の典型のような気がする。協会の認定を受けなくとも装置の設置ができるというのであれば、そんな法人は不要である。この協会は政府からの補助金をもらっているのか。また事務局に役人出身者はいるのか。
- 安全という大切なものを扱って認定をする機関が、公的な権威も持たず民間によって自発的に作られて、それでいて公的な役割を演じているという構造がよくわからない。法治国家である日本においては、こういうものは一刻も早くなくすべき。あるいは行政手続法が使えるかどうか分からないが、その方向で争ってみるのもいい。
- 協会の常勤役員5人のうち官僚出身者が実に4人もいる。一般論として、社団法人とはいえ官僚出身者がマネジメントをしていると、疑似公的機関と思われてもしかたがない。行政が真正面から取り組むべきことはきちんと取り組むべきで、そのためにスタッフの増員が必要であれば増員すればいい。またこの問題は一般的な問題であるから、事例が発生するたびにモグラたたきのように処理するのではなく、類例をリストアップして、まとめて処理してはどうか。
- 個人的な経験だが、住宅のエレベーターで、昇降機安全協会という民間の団体があって、高額の補修費を負担させられた。規制緩和とは、このようなことを止めてコストを下げることが一つの目的ではないかと思う。対処方針では通産省は関係ない、認定制度は独自事業というのであれば、根本的な問題は協会の存在そのものではないのか。日本の将来にかかる問題であり、一つ一つつぶしていくしかないが、いずれにせよもっと合理化が必要。
- パンフレットを見ると、認定証は政府の認証と見違いそうなマークであり、またどの頁にも関係省庁との位置付けが書いてある。これを見れば、認定をとっておけば安心ということにもなろう。このような外観を作るような、役所の威を借るようなやり方に対しては、注意を与えるべき。
(所管省の応答)
- 協会は民法上のいわゆる公益法人であり、メーカーが協会を政府機関と考えているとは思わない。
- 政府の規制は公共の安全のために必要最小限と考えられる規制にとどめており、それ以外の部分について民間で取り組むことは、規制緩和とは別の問題である。
- 私どもの認識としては、現行の基準は内燃機関にとって必要最小限の基準を作ったつもりであり、これ以上の基準は不要である。それ以上の協会の自主基準は、信頼性の向上、品質の向上の観点で作られたものであろう。法令上守るべき基準は現在の技術基準のみである。
- この協会や規格の歴史は、かつて日本国内で多くの内燃機関メーカーが存在し、品質がばらばらで、事故も多発していたことを踏まえ、業界で統一的な組織・基準を作ったという、自主的な取り組みによるものであるとのことである。政府からの補助金は、少なくとも通産省からは出ておらず、また通産省出身の役員は会長一人である。
- 議長による総括
- 国際的な基準の統一は市場アクセス推進のためにも必要なので、現行の技術基準の機能性化を図るというのであれば、ISO等の国際的な基準に整合的なものにすべきである。この検討を3月末までに行うということなので、ぜひやってもらいたい。
- 通産省は、この装置の需要者・供給者双方に対して、協会の認定制度は法令と関係ないということをPRするとともに、認定制度を受ける法的義務があるような外観を作り出さないよう、協会に対して強力に指導すべきである。また、この認定がない製品を認めないという民間慣行が外国製品の輸入を妨げているようであれば、これを助長しないよう努めるべきである。
- 以上の点について、さらに事務局の方で、問題提起者、所管省庁と調整の上、改善内容、実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その上で更なる検討をしたい。
- 議題(2)漁船用推進機関の出力算定方法の明確化
- 事務局から問題の背景、問題提起内容、所管省庁の対処方針について説明
問題の所在:漁船用推進機関の規制の実効性を確保しつつ国際的な基準との整合化
を図るにはどのような基準が適当か。
- 問題提起者から提起内容につき説明
(問題提起内容)
- 我が社のエンジンは農林馬力の規制により、昔あった競争力を失った。
- 日本のメーカーは、エンジンのストロークを長くしており、農林馬力の規定にはあ
てはまっても、実馬力はかなりでている。
- 我が社のエンジンは、国際的な市場を対象としていて、効率的なボア・ストローク
比を採用しており、エンジンのパラメーターがボア(シリンダーの直径)のサイズだけだと、同じ農林馬力でもボアをベースにストロークを長くして作った日本のエンジンより実馬力は低くなっている。電子制御等の発達により一つのボアだけをベースにした基準は昔は価値があったかもしれないが、現在は存在意義がない。
- ボア・ストローク比は1:1 〜1:1.2 ぐらいが普通であり、これは燃費等、工学上の観点を踏まえたものである。
- 漁業資源の保護は大切なことはわかるが、測定方法を明確化してほしい。特に、実際の馬力が如実に反映されるものにしてほしい。
- エンジンの技術が発展してきたので、すべてのエンジンメーカーは内外を問わず、物理的にボアが変わらなくても実際の馬力を増すことができているのが現状である。
- 上記の理由から、総排気量をベースにした基準としてほしい。
- 所管省庁から対処方針につき説明
(対処方針)
- 推進機関の規制は資源保護の観点から行っている。これ以外にも、漁船隻数、大きさ、漁獲海域、操業時期等についての規制を漁業法において行っている。
- 同じ大きさの漁船でもエンジンの馬力が違えば漁獲量が異なる。漁獲圧力はエンジンの大きさにも影響されるので、エンジンの馬力数を漁船の大きさにしたがって一定の範囲に抑えるという規制を行っている。
- 現在の出力算定方法は、取り締まりの観点から、極めて簡単に誰が見ても客観的に納得できる数字で計らざるをえない理由から、ボア、気筒数等の簡便な方法により算定する方法を取っている。
- 算定方法については、技術の進歩により、ある定められた範囲の中でより実馬力のあるエンジンを開発することは避けられない。過去に2回ほど改定して是正を図っているが、直近の改定が1982年であり、既に15年ほど経っているので実体と現在の計算方式が合わなくなりつつあることは認識している。
- 総排気量に対応した数値が計算で出せるよう見直し作業を進めている。
- 現在の計算方式ではボアとシリンダー数だけが独立変数であるが、これにストロークを加味したものに変えたい。
- 現在、既にある機種が新しい計算方法によった場合に基準に適合するか検討している。
- 現在進めている検討は今年の夏までには具体的な結論を出して、実際に適用できるように作業を進めたい。
- 見直しに当たっては、関係の漁業者、内外のメーカーの関連団体等から意見を十分に聞いて不公平の生じないようにしていきたい。
- この後、審議
(委員の主な発言)
- 1)現在の算式では、内燃工学の立場から合理性が認められない、2)新規参入の障壁になっている、3)規制開始以降今日までのユーザーとエンジンメーカーそれぞれの変化が認識されていない、4)計量法の精神から見てこのような規制に基づく計算・管理がなされるのは好ましくないという4点の理由により現時点では不適当な規制である。
- 漁船エンジンのマーケットシェアについて、業界トップの会社が50%を超えていることは自由競争下では異常である。
- 漁業資源の保護の重要性は言うまでもないが、もっと実効のある常識的な手段で行うべき。漁船の速度を規制するのが素直な方法であるが、それが不可能でエンジンの性能を規制する必要があるなら、出力測定を行い、不法改造に対しては罰則で臨むのが一番理屈に合っている。それも現実的に難しく代用特性を使いたいというなら、排気量による規制に直ちに変更すべき。
- いずれにせよ、審議経過を公開して規制の透明度を高めるべき。
- 漁船の馬力による規制はきちんと管理することができないなら、他の方法を取るべきであり、その規制は誰にも通用するような仕方にすべき。エンジンの技術者が集まって、排気量によるなど合理的な方法に変えるべきである。
- 現時点での優れた技術を生かしていい方法を作ってほしいが、その際には、20万隻もある漁船を従来どおりか、それ以上に簡単に取り締まりができるという見地も考慮すべき。
- 昔ならまだしも、最近でも、ユーザーによる不法改造の例があるのか。
- 他にも手段がある中、馬力数による規制は資源保護のためどの程度有効なのか。
- 日本だけ特殊な方法による規制をし、市場参入が容易でないことは、魚の価格を高くし消費者にとって不利益になるのではないか。
- 資源保護のために、出力規制以外に他の手段は考えていないのか。
(所管省の応答)
- エンジンの出力は、回転数及び燃料噴射量が影響し、これは使用者が任意に調整できるものである。過去には多くの改造事例があったようだが、洋上で違反を確認する方法は難しいので、シリンダーの数とボアで即物的にわかる手法を使っている。現行の漁船法の算定方式のもとでは、エンジンの不法改造は最近ではごくわずかと思う。
- 漁業法で漁業許可制度を取っており、漁船隻数、漁船の大きさ、操業海域及び操業時期等を規制している。漁船法では、同じ大きさの漁船の能力が著しくバラつかないよう、トン数ランク毎の規制をしている。
- 出力規制は、特定メーカーに利する規制ではない。マーケットシェアについては、企業の努力の結果であろうと考えている。
- 議長による総括
- 資源保護のため規制は必要だとしても、規制の方法はいろいろある。出力により規制するにしても出力算定方法は古いのではないか。
- 所管省庁では現在、漁船用推進機関の出力算定方法の見直しを進めているとのことなので、その際には、国際的整合性のある基準であること、可能な限り客観的、科学的データに基づいて策定されていること、といった点を考慮すべき。
- 漁船の推進機関の出力算定方法については、出力を規制することの必要性を含め見直すべき。
- 実馬力による規制は法定検査後の変更が容易であるため採用していないと述べているが、諸外国においても同様の問題はあるはずであり、諸外国の制度を十分に研究し、国際的整合性のとれた規制を取るべき。特に、総排気量は客観的な基準として活用できるはずであるので、採用を前向きに検討すべき。
- 基準の策定時には、漁業団体、漁船関係団体から意見を聴取するだけでなく、工学的な問題も含まれているので、出来る限り幅広い関係者から意見を聴取する機会を設け、それらを踏まえた基準を策定するべき。
- 以上の意見を踏まえて、今後、事務局の方で、問題提起者、所管省庁とも調整の上、できるだけ具体的な改善内容とその実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、議長に報告してもらいたい。その報告を受けて必要に応じ更なる検討を加えることとしたい。
- 議題(3) 処理状況の審議
- 車両の高さ制限(問題提起者:東京商工会議所、所管省庁:建設省、警察庁)
- 事務局から問題の背景、問題提起内容、所管省庁の対処方針及び処理状況について説明
- 問題提起者は、車両の高さ制限するためには、既存の道路構造物の改良等のコストがかかること、交通安全の確保の必要性等から、単なる経済的規制の緩和とは論じられないことは理解し、政府においては、道路の高さに関する設計基準を見直すことも視野に入れた物流コスト削減のための検討が行われることになったことに期待している。
- ただし、背高コンテナ(9フィート6インチ、地上高約4.1m)の指定経路について平床式シャーシに積載した通常の海上コンテナの通行(地上高約3.9m)を認めるなど高さ制限の緩和を要望している。
- この後審議
(委員の主な発言)
- 物流コストの削減をしないと、高コストから対日投資の障害となるために、この解決は重要な課題である。諸外国で走っている車両が走行できないと、日本は特殊だと言われてしまう。これまで所管省において特殊車両の許可などで柔軟な対応をされてこられたようであるが、平成9年度以降、道路の設計基準を見直すと所管省の対処方針にあるので、この機会にあと一層のご努力をお願いしたい。
- 事務局からの説明によれば、高さ4.1mの背高コンテナは、指定された経路の通行が認められているが、同じ経路を高さ3.9mの通常のコンテナは通行できないという話であり、これはおかしくないか。所管省は、指定経路については高さ3.9mのコンテナの通行を認めるべきではないか。
- また、道路の設計基準を見直す際には、ぜひ、諸外国の高さ制限の状況や、背高海上コンテナが我が国の道路を自由に走れるようになるといった点を十分考慮していただきたい。
- この問題は、過去に何度もOTOに提出された問題で、日本の障壁の典型的な例であるので、ぜひ、納得できる改善を行って頂きたい。
- 議長による総括
- 本案件は、問題提起者が所管省の今後の対応に期待しているとのことであり、また、所管省の対処方針に盛り込まれている道路の高さ制限に関する検討は、物流コストの削減という観点からも望ましい方向にある。
- ただし、以下の二点について提起者から要望があり、委員からも指摘があったので、こうした指摘に基づき、どのような対応が可能か、事務局及び所管省庁の方で早急に御検討頂きたい。
- 高さ4.1mの背高コンテナは、指定された経路の通行が認められているが、同じ経路を高さ3.9mの通常のコンテナは通行できないという点については、物理的には可能な話なので、所管省はその指定経路については高さ3.9mのコンテナの通行を認めるべきではないか。
- 道路の設計基準を見直す際には、ぜひ、諸外国の高さ制限の状況や、背高海上コンテナが我が国の道路を自由に走れるようになるといった点を十分考慮していただきたい。なお、その検討結果については議長に報告してもらいたい。その報告を受けて、必要に応じ更なる検討を行いたい。
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(速報のため事後修正の可能性あり)
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経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
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