第11回市場開放問題苦情処理推進会議議事要旨
(平成9年3月6日)
日時 平成8年2月27日(木)15:00〜17:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(OTO推進会議)
- 議長
- 大河原議長
- 委員
- 久米委員、佐々波委員、島野委員、谷村委員、眞木委員、増田委員、山本委員
- 特別委員
- デュボワ特別委員、李特別委員
- 専門委員
- 片岡委員、兼重委員、細川委員、本田委員、宮智委員
(OTO対策本部・事務局)
- 糠谷経済企画事務次官、土志田調整局長、小林調整局審議官、滑川貿易投資調整官、川口市場開放問題苦情処理対策官 他
議題
- 建議の今後の検討に向けて
- 苦情処理部会における審議状況について
- その他
審議の概要
議題(1)建議の今後の検討に向けて
○議長より以下の発言
- 現在、専門家会議で今年度の種々の案件の審議を行っており、それをもとに報告書の作成を行う。
- 昨年11月の第10回OTO推進会議において、委員の方々から、OTO推進会議の建議機能を最大限活用してはどうかという意見があり、さらに、OTOの目的である市場アクセスに関する提言としてどのようなことが言えるかを検討するためには、これまで問題提起プロセスや個別苦情処理で受け付けた案件を整理することが必要ではないかという意見があった。
- 事務局には、これまで受け付けた案件を整理して推進会議に報告することを宿題としてあるので、今回の推進会議においては、まず、事務局にその作業結果について報告してもらい、その後は、委員の方々に自由に議論していただくこととする。
○OTO事務局より、第10回推進会議における指示に基づき行った問題提起プロセス及び個別苦情で受け付けた案件の整理・分類の作業結果について説明
○この後、審議
(委員の主な発言)
- 規格・基準における性能規定化は、国際化のための必要条件ではあるが、それだけでは十分ではない。国内の意見だけをまとめても国際的な他の基準と異なるようでは意味がない。日本の規格・基準が国際的なものと異なるのであれば、地震が多いとか、日本人の体質といった観念的な説明でなく、科学的なその違いを明確にすべき。
- PL法の施行により、日本も自己責任・自己認証の社会となれば、国の規格・基準は最小限にすべき。
- 検査については、公益法人が独占し、しかもその検査が実質的に強制になっている場合がある。これは、法律にも明記されていない場合が多く、今後、共通の問題意識として把えるべきだ。
- 検査・試験機関が最新鋭の設備と優秀な人材を揃えるなど、立派な試験機関であって欲しい。
- 行政手続法は、OTO案件の多くが適用できないようであるが、この法律制定の背景や法の精神を尊重すべきである。
- 規制によって、官に権限が集中していると、いつまでたってもOTO案件が減らない。行革委で議論されているような、官と民の役割分担、行政のあり方、さらには行政手続法といった見方を市場アクセス問題に当てはめて考えてはどうか。
- 自動車業界では、以前からメーカーが自主的に行うリコール制度があった。一昨年制定されたPL法は、企業のみならず消費者の自己責任を必要とし、こうしたなかでも官と民の役割分担を見直す必要がある。
- PL法の施行が自己認証制度や第三者認証制度の一層の活用の制度的基盤となるのではないか。
- 国際基準への整合化を求める苦情・問題提起案件が多いようだが、WTOのような国際機関における標準化の作業も検討する必要がある。日本で特に異なる基準を設ける場合にはこういった国際標準化作業の中で取り組むべきである。
- フォローアップは、行政官庁等が、このOTOによってどう変わったかを示すものであり重要ではないか。フォローアップの実質がなければ、建議の内容が乏しくなる。
- 事務局の用意した資料は、過去の苦情及び問題提起の問題点を整理したものであるので、現時点における制度を網羅的に整理する必要がある。
- 今後、検討を進めるにあたり、アクションプログラムなど、これまで政府が内外に明らかにしている市場アクセスに関する諸原則を現時点で再確認すべきである。
- 最近提起されている問題をみると、規格・基準の問題よりも、より実務に近い認証や検査をめぐる問題が多い。例えば、水道法に係る案件で、第三者認証や自己認証制度への道が開かれた。また、内燃機械工業会や仮設工業会など国の検査と社団法人の検査との関係が問われている案件もあり、業界団体が検査機関となることの問題点を検討する必要がある。検査に係る案件が多いので、検査や認証の在り方について審議するべきである。
- グローバル化によって、日本になかった新しい概念や技術に基づく製品が流通するようになった。最近の例では、トレーラーハウスや栄養補助食品の案件があり、こうしたものに適した規格・基準を制定する必要性について議論したが、現実には検討に時間がかかる結果となっている。既存の規制体系を大胆に見直して欲しい。
- 規制には、技術の進歩についていっていないものが多く、特に情報技術を活かしていないものが顕著である。政府は、簡単には既存の体制を変えたくないようだ。新技術を活かすということは、苦情処理に役立つだけでなく、行政サービスの効率、日本・世界経済の効率をあげることができる。こうした技術を活かすためにも、絶えず制度の見直しが必要であり、一度できた制度も数年毎に見直しをする制度的工夫ができないか。
- JISや建築基準法などの性能規定化が進んでいるようだが、市場アクセスの面からは望ましいので、他の分野においても推進すべきである。
- OTOにおいては、毎年、在日商工会議所との意見交換を行っているがその場を活用すると共に、その他に、国内外の経済団体や輸入団体から広く意見を聞いたらどうか。
- 検査・認定を公益法人が行っており、それが独占となっていることがある。検査機関を複数にして、競争させてはどうか。
- 国際機関で規格が作られているが、もっと採用することが必要ではないか。将来的には、相互承認の基礎ともなる。
- 苦情申立者による日本の制度の誤解等が多い。制度が複雑であることもあるが、もっと積極的に広報活動をする必要がある。
- 出先と本省では市場開放への取組みの違いが感じられるので、出先機関へ本省の方針を徹底すべきである。
- 日本の市場開放は、OTO案件に関する限り、不十分なのではないか。
- 障害の多くは、典型的な非関税障壁であり、しかも、一般的には極めて見えにくい形で広範に存在している。しかも、それらの多くが「官」と「民」の過去の密接な関係の中から生じる一種の社会現象とさえ言えそうな部分を多く含んでいる。課題はこの点で国内問題(特に構造改革の推進)との関わりを強めている。
- 大競争時代が進行している中で、市場開放を徹底することは、対外的にはグローバル
- スタンダードを確立することを通じて孤立化を防ぐという重要な意味を持つ。また、対内的には、日本経済の高コスト構造の是正、公正な市場ルールの形成などを通じて、日本経済、産業、企業の経営など全般にわたる構造改革、体質修正に重要な意味を持つ。この両者は多くの点で交差ないしは同一化する性質のものである。
- 特に、OTOの果たすべき責務の持つ意味は二つの点で重要さを増している。その第一は、現在政府が進めようとしている「構造改革」プランを遂行させる上で、とかく「内向き」に視野が限定されがちな傾向を抑止する効果を上げる必要がある。その第二は、「構造改革」の重要な革新部分である規制緩和という課題を実践して行く上で、視野を「波打ち際から内側に限定」することなく、「日本市場への海外からのアクセス」を早急に、かつ、徹底して改善することが欠かせない。要するに、日本の直面する課題の克服には全ての面で「グローバル化」の視点が強調される必要があることをOTOという機関とその仕事を通じて印象付け、政策の中に折り込ませることが必要である。
- 現在進行中の行政改革、規制緩和など多岐にわたる構造改革計画とOTOの活動はリンクしたものとして扱われなければならない。
- 現在政府が進めている、構造改革に関する各計画・構想に、OTOが究極的目的としている「市場アクセスの改善」という視点が欠落ないしは薄弱であるという印象を持っている。
- 「市場アクセスの改善」と「国内の構造改革」という二つのテーマが同時に登場して解決を迫るというシチュエーションは、89〜91年の日米構造協議の際に現出した。ただ、この際の「改革を求める力」は必ずしも「国内的要請」と「海外からの要請」が同時的に考えられるというよりはむしろ”外圧”として把握されがちだった。その後、バブル崩壊後の経済の中期的低迷の局面では「構造改革」の目的意識が国内経済の閉塞感打破のための”内圧”に転化する傾向を強め、その反動として、欠かすことの出来ない「楯のもう一つの面」、つまり、「市場アクセス改善」という大テーマが等閑視されないまでも、構造改革の戦略的構図の中では切り離される傾向を強めつつあるという印象を持っている。
- 建議においては、以下の論脈が強調される必要がある。
- 「市場アクセスの改善」は対内的には1)消費者利益の擁護と消費者にとっての選択肢の拡大、2)それらを通じて、国内の経済社会の構造改革への誘因を増幅・強化させる、などの意味を持つ。
- 国際経済、海外市場との接面を拡大・深化させることを通じてのみ、構造改革の諸目標はより具体性を帯びるはずであるし、実現への誘導路をより明確化できるはずである。
- 「市場アクセスの改善」という重要なポイントが各種の構造改革の中で欠落ないしは軽視される場合には、国内消費者利益擁護の立場が後退するにとどまらず、対外的には、「構造改革は経済・産業の国際競争力強化目的を実現するための方策ではないか」という順序の、好ましくない反応を引き起こす危険がある。これは「開かれた日本」を標榜するわが国にとって歓迎できる状況でないことは勿論である。事実、ACCJ(在日アメリカ商工会議所)などには、こうした反応がすでに出ていると言われている。
- 海外からの批判に応じることは「外圧に屈伏」することには通じない。反対に「内」「外」をリンクさせ、いわば、一つの画像の中で重ね合わせて両者を見ることは、むしろ、問題の所在と解決方法を浮き彫りにする積極的な意味を持つと考える。
- 市場アクセスの改善の目的は、日本の基準がグローバルスタンダードに従うことである。
- 国内の市場がフェアーであれば、OTOに寄せられる苦情も減っているはずである。従って、国内において市場機能を回復させることが重要である。国内において、多くの分野で構造改革が行われているが、市場アクセス改善のための手段が国内改革のために有力な手段となり、また、国内の構造改革を進めることがOTOの問題解決を容易にするといった相乗効果を得られるように今後の建議の作業も進めるべきである。市場アクセスの改善は、国内の構造改革にも盛り込まれるべき課題である。
- これまでの報告書の総括的所見は、その年々の案件に基づいて、問題を提起し、意見を述べたものである。今回、意見をまとめて出す際に、いろいろな問題を原則に戻って考え直すべきである。
- 国内の規格・基準制定の際には、国際標準化機関の現在の活動状況を十分把握、検討すべき。
- 本来行政がやるべき検査等が、実質的には、公益法人等に委ねられていて当事者が不明確になっている。政府の基準認証制度との関係を明確化すべきである。
- 既存の規制の中には、現在苦情として提起されていなくとも、問題を抱えているものもある。
- WTOやAPECにおいて、国際基準化の動きがあるようなので、各省がどのように国際基準化等を進めていこうとしているのか、個別の案件に限らず、広い範囲で意見を聴取してみてはどうか。その中から、さらに個別の案件に共通する問題が発見できるのではないか。
- 容易に対応できそうな案件でもなかなか解決されない。規制緩和の流れの中で、各省庁は自分の守備範囲の中でどこが規制緩和すべき分野か理解しているはずであるが、外部から指摘がないと動かないようである。
- OTOにとって、EBCのような在日商工会議所の各委員会と会合を持つことや、実際にビジネスを行っている人々と話し合いを持つことは有益ではないか。
○議長の総括
- これからの建議の作業の中心課題は、市場アクセスの改善にどういう姿勢で取り組んでいくかを示すことであろう。こうしたなかで、日本経済の大きな問題である構造改革、行政のあり方、規制緩和、行政手続法の諸原則の確認及び実施を視野に入れての作業となるであろう。さらに、市場アクセスの改善が、行政サービスの向上、国民経済の活性化、日本及び世界経済への貢献につながるという基本的視点を持ちつつ作業を進めるべきものと考える。
- 建議の手続上、やり方等についての意見には、以下のようなものがあった。
- 現在、制度等の改正に前向きに取り組んでいる省庁からのヒアリング等を実施したらどうか。
- 内外の経済団体・関係者団体等からも意見を聞いてはどうか。
- 基準・認証の問題において代表的な国際機関である、OECD、WTO、APECなどの動きを把握すべきではないか。
- さらに、フォローアップとの関係からは、本日の資料が苦情申立て時点でどのような内容の苦情があったのかという過去の苦情の問題点を洗い出したものであったら、その後制度改正が行われたものも多いはずなので、この表の形式でもって現時点の制度を網羅的にチェックしてみてはどうかという意見があった。
- 今回多くの意見が出たのは、規格・基準の問題である。具体的には以下のような意見があった。
- 時代遅れにならないように技術の進歩にあわせて見直すべきではないか。
- 性能規定化するだけでは不十分であり、その際には検査・認証制度の簡素化や国際的な整合性が必要である。
- 検査・認証に関しては、現在の日本の検査体制は、必ずしも十分でない、能率的でない、どういった根拠に基づいて検査等が任されているのか不透明である、といった問題もあるので、検査機関の能力を高めてはどうか、複数の検査機関で競争させてはどうか、検査機関に関する国際基準を活用すべきではないか、といった意見があり、さらに、PL法の施行に基づき、第三者認証や自己認証制度の導入を積極的に進めるべきではないか、ということも意見が出された。
- 日本の制度の透明性を高めるということに関しては、行政手続法や国際貿易上のルールの精神等を最大限活かすような施策が必要ではないかという意見があった。
- 政府として、さらに、諸制度についての一般の理解を深めるための広報活動を行う、地方と本省の連携を図り本省の方針を徹底させるといった施策を行うべきであるという意見があった。
- 本日出された意見を踏まえて、今後も建議に関する検討を深めて行きたいと思うが、当面は本年度のOTO推進会議報告書の取りまとめを優先したい。
- 3月の推進会議において本年度の報告書を取りまとめるが、その後、本年度扱った案件も含めて、本日の意見を踏まえて事務局で再度案件を整理して報告してもらい、それを叩き台に再度、4月以降の建議に向けての検討の進め方について議論することとしたい。
- 事務局の報告があった本日の資料は、過去の問題提起や個別苦情を整理するということについては、有意義な情報が含まれているとは思うが、次回の報告の際には、なるべく新しい案件を中心に、具体的なものを整理して報告して頂きたい。
議題(2)
第7回苦情処理部会の審議状況の報告
(久米部会長)
資料4に基づいて1 月31日の第7回苦情処理部会の報告を行った。
- OTO525番「個人で輸入する小型ボート(ジェットスキー)の検査について」事務局より報告を受け、本件については処理済とすることにつき部会として了承し、船舶検査のあり方については、審議で出た意見を所管省に伝え、検討していただくことになった。
- 最近の苦情受付・処理状況について、前回の部会(平成8年8月22日) 以降新たに4件の苦情を受け付け、処理中または検討中であった11件とあわせ、15件について、4件が処理済となり、現在11件が処理中であるという報告が事務局よりなされた。
- 新たに処理済となった案件及び処理状況に変更のあった案件8件について、事務局よりその概要の説明があった。
(各委員から特段の質問・意見なし)
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
直通 3581−5469