第17回市場開放苦情処理推進会議議事要旨
日時 平成9年5月29日(木) 15:00〜17:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号室)
出席者
(OTO推進会議)
議長 大河原議長
委員 久米委員、眞木委員、増田委員、八城委員
特別委員 デュボア特別委員
専門委員 金森専門委員、兼重専門委員、児玉専門委員、細川専門委員、本田専門委員、村上専門委員
(OTO対策本部・事務局)
土志田調整局長、小林調整局審議官、滑川貿易投資調整官、川口OTO対策官 他
(在日米国商工会議所)
(経済団体連合会)
(東京商工会議所)
(日本貿易会)
(主婦連合会)
議題
(1)内外の経済団体からのヒアリング
(2)その他
審議の概要
議題(1)内外の経済団体からのヒアリング
○在日米国商工会議所から説明
- 在日米国商工会議所(ACCJ)は、OTOが設立されて以来、その苦情処理体制を利用している主要な団体の一つであり、この利用によってかなりの程度満足のゆく成果を得ている。
- 過去数年間の共通の問題は、透明性を欠く規則及び規制、通常国際的基準として受け入れられているものに合致しない規格及び認証の要求、曖昧かつ官僚の解釈の恣意に委ねられた事実上の規制に分類できる。
- ACCJは、種々の規制を20以上に分類することができると考えている。それらの中には、許可、認可、免許、承認、指定、承諾、認定、確認、証明、認証、検査などがある。書類・印刷物で使用され、一般的にも知られている規制の他に、一般には余り知られておらず、政府の官僚によって使用されている「内規」や、法的にも規制としても何ら根拠を持たないと思われ、日頃から話題となる「行政指導」がある。
- ACCJは、ここ数年来のACCJに対するOTOによる支援に感謝したい。
- ACCJは、日本の市場開放と市場アクセス改善のためには、OTOが組織的にも権限の上でも強化され、継続されるべきであると考える。
- 現在のOTO推進会議は提言と助言を行うことしかできない。内閣総理大臣を本部長とするOTO対策本部は、苦情並びにOTO推進会議の提言に関する最終決定機関として日本政府の完全な権限を有していることは明らかである。OTO体制に欠けていると思われるのは、下された結論を完全に実施し、その実施過程を適時適切にフォローアップするための権限である。
- OTOの目的が市場アクセスにある以上、検討の対象となる苦情の範囲を具体的な規制からより幅広い分野の市場参入障壁に拡大していくことにより、その目的は達成されるものと考えている。
- たとえ、行政改革本部や規制緩和委員会が期限切れを迎えるとしても、OTOは規制緩和及び規制改革のための継続機関たりえるし、またそうあるべき。
- 提案されている構造改革と規制緩和措置を通じてどのような効果が得られるにせよ、それが必ずしも市場開放及び市場アクセス問題の解決に結びつくとは限らない。OTOは、持ち上がってくる諸問題に取り組み、その解決を促すための機関であるべき。
- 行政裁量を実行する判断基準となる法、政令、省令、告知、通達、通知、見解、お知らせ等のうち、法、政令、省令、告知に関しては、英訳がある場合が多いが、行政執行の実行をともなう通達、通知には英訳がない。規制行政の判断基準となるような行政文書が英訳されれば市場アクセスの改善に貢献すると考える。
- 医・食区分に関する厚生省薬務局長発のいわゆる「46通達」は、薬事法より厚いものとなっている。
- 「基準・認証」を公に求め「検査検定」を公に求め、それの手順をふんでいれば「自己責任」が回避できると考える傾向が、業界団体に見ることができる。業界団体は、国際的整合性を持つガイドラインをもうけるにとどめ、個々の製品デザイン製造は自己確認、自己検査、自己責任のルールによるとすることを考慮されたい。
- 規制緩和等が民間商慣行等によって事実上無意味となり、市場参入の障害となってい る。特に、バイヤーとセラーの力関係に対して公正取引委員会が不介入である場合がある。
○ 経済団体連合会から説明
(1) 経済構造改革を進める上での市場アクセス改善の必要性
- 経済構造改革を進めることが重要。そのためには具体的には官民の役割を見直すこと、経済活動に対する政府の干渉を最小限にすること、経済の運営システムの透明性を高めること、市場メカニズムを十分に機能させることを基本姿勢とすべき。
- 市場アクセスの改善は短期的には痛みを伴うが、中長期的には生産性の向上、高コスト構造の是正、空洞化の阻止等をもたらす。
(2) 規制撤廃・緩和の推進と消費者、企業の自己責任の確立
- 経済的規制については原則として撤廃することが望ましい。規制が必要な場合はその必要性に関する説明責任を規制をする側が負うべきである。
- 急速な時代の変化を考慮し、規制にあたってはサンセット方式の導入を検討すべき。
- 企業や消費者の自己責任が強化されるべきであり、そのためには情報開示を強化する必要がある。
(3)国際的整合性の確保
- 可能な限り、国際規格への整合化を図り、また、相互承認制度を拡大することが重要である。
(4)国内諸規制の実施面での改善
- 具体的には規制窓口における運用について透明性の向上、検査手続の簡素化・迅速化が重要である。
(5)OTOの一層の機能強化に向けて
- 対外的な経済政策全般について企画・立案し、責任を一元的に負う省庁が必要。OTOの機能もそうした新しい省庁に発展的に吸収されるべき。現在の縦割りの行政制度の中での活動には限界がある。
○ 東京商工会議所から説明
(1) 市場アクセスの改善に関する基本的立場
- 市場アクセスの改善は世界水準の良質・低廉な商品の提供をもたらすばかりでなく、競争力のある外国資本と国内資本とが我が国市場で世界最高水準の技術・ノウハウを駆使して切磋琢磨することにより、我が国国民に雇用機会の増加をもたらすであろう。
- 政府の役割は意欲のある企業が新しい事業を興せるような競争環境の整備を行うことである。これまでは政府が国の経営資源の最適配分を行うよう我が国経済をリードしてきたが、今後は市場の規律に従うことが最も効率的な日本経済の姿を実現するメカニズムを作ることになる。
(2)東京商工会議所からの問題提起案件の分析
- 東京商工会議所が問題提起を行った136の案件について分析すると、苦情の原因として件数が最も多かったのが直接的な法律や制度による制約で、全体の中で79件を占めている。制度の運用面に起因する制約を原因とする案件は51件、規制の周知・情報公開、PR不足を原因とする案件は6件となっている。
- 輸入業者等が受けた影響として最も多かったのが、輸入の際に税金の二重払いや、部品の交換を余儀なくされたといった、ある意味では不合理な対応を受けたという案件が71件であり、輸入ができなかったという案件が22件、その他、件数は少ないが、輸入はできたが国内販売ができなかった、輸入に際し、他の業者や並行輸入に比べて不利な扱いを受けたといった案件もあった。
- 輸入業者等からの苦情に関連する法律の分野としては食物関連、関税・税金関連、薬事・医療関連等が最も多くなっている。
- 法律や制度による制約として最も苦情の多かったのが食物関連、関税・税金関連、薬事・医療関連等の法規が最も多くなっている。制度の運用面に起因する制約についても同様の傾向を示している。
(3)問題提起案件に共通する事項と解決の方向
- 全く輸入できなかった案件は全体の16%であり、その他は輸入はできたが何らかの不都合があったということであり、商品がスムーズに市場に出にくい構造が国内に存在するといえる。商品として国内市場で売り出すまでには様々な弊害が存在するが、そうした弊害の多くは制度の柔軟な運用や改善によって取り除かれるのではないかと推察する。
- 科学技術の進歩は日進月歩であり、時代にそぐわなくなった規制は当然見直されるべきである。
- 規格・基準の相互認証を進めるなど世界の制度・ルールとの調和を図ることが重要。
- 企業責任を重視する現代の趨勢からすれば、規制は原則禁止から原則自由に、あるいは事前規制型から事後監視型へ移行すべきであり、改めて官と民の役割分担を見直し、バランスのとれた法規制のありかたを考えるべき。
- 基準や制度の不明確性とそれに伴う行政裁量が不平等をもたらしている。規制の理念を明確にして分かりやすいルールを作ることが必要。
(4)OTOへの改善要望事項について
- 本来は問題を抱える企業自らが苦情を申し立てるべきであるが、経済活動が政府の裁量の影響をかなり受ける現実の中では、商工会議所が代理申請をすることもやむを得ないが、明確なルールに基づいて経済活動が行われるようになるまでの過渡的な措置と受け止めている。
- OTOは従来個別の苦情に対応してきたが、自主的に提言活動ができる建議機能が付与された。構造改革の動きを見つつ、市場アクセスの改善のために一層積極的な活動がなされることを期待している。
- 日本は公共料金や地価が高く、投資効率が悪い国であると受け止められており、このような状況では製品・サービス・資金・技術等の自由な移動が促進されることは困難である。従って対日投資のインバランスも重要なテーマとしてOTOで取り扱うべきである。
○日本貿易会から説明
- 経済のグローバル化が進むなかで、外国企業の対日投資に関連した市場開放問題が苦情の対象となってきた。具体的事例では、CATVの問題がある。CATVは規制緩和により外国企業との合弁事業が国内で認められているが、CATV先進国である米国の技術等を導入する際に、ケーブルの形状や使用電圧に関してJIS規制や保安基準が障害となり苦情となった。
- 外資の対日進出において参入の障壁は着実になくなってきているが、日本市場に参入後に、法的・行政的手続等が苦情対象となり、それが依然として日本市場の閉鎖性のイメージを外国企業に与えている。
- 急速に進行している経済のグローバル化は、モノ、資本などの流れが双方向的であることが大きな特徴である。日本の輸入は近年急速に拡大しているが、資本の流入という面では非常に遅れている。市場参入において、水際での規制緩和に加え、今後は参入後のビジネス環境の整備・改善という観点から、国内の諸規制を積極的に見直していくことが必要である。OTOは市場アクセスの改善において、対内直接投資の促進、対内投資後のビジネスを容易にする環境整備に今後一層力を注いで欲しい。
- 個別案件で解決されたとみられる規制ないし手続が、別の類似案件で再び問題となる。これは、OTOが個別の案件処理を重視するあまり、問題の所在を一般化して処理するという機能が弱くなっているためと思われる。日本貿易会ではOTOとは別に、政府のいろいろなチャネルを通じて規制緩和の要望を行っている。その時は個別具体的な事例ではなく、それらに共通する事項を理念提示型で提案しており、その場合も規制緩和の実績は着実に上がっている。OTOにおいても、個々の問題に共通する規制は包括的に緩和ないし撤廃するということをして欲しい。
- 各省庁で規制緩和の検討が進められてきているが、このような政府の規制緩和の実態は苦情申立者には事前にはわかりにくく、各省の規制緩和の実態を把握した上で苦情申立を行うことは実際上不可能である。OTOには市場アクセスの改善という観点からこれらを整理し、それを情報開示して欲しい。例えば「市場開放白書」を作成し、出版することを検討して欲しい。
- 市場アクセス改善の観点から政府規制緩和推進計画や金融ビッグバンなど経済構造改革の進行を分析し、市場開放関連で今後予定される制度改定や各種の動き及び既に実施された制度改正等を白書として取りまとめられれば、苦情申立を行う際の手引き並びにOTOの活動のPRとして効果は大きいと思われる。
○主婦連合会から説明
- 一般消費者は規制緩和といっても、どういう規制がどこにあるのかという事実がわかっていないのではないか。なるべく一般の消費者に情報が伝わることが、消費者の規制緩和に対する考え方のレベルを上げていくことにつながると思うので、消費者に事実を伝える機会を増して欲しい。
- 製造年月日表示と期限表示の問題について、消費者には製造年月日表示に対する期待が強い。4月1日から期限表示に移るということで法律が変わったため、併記をしないという指導があるので「期限表示から7日前が製造年月日」という表示が出てきた。遺伝子組み換え食品はそういう表示がはっきりしないため「商品に遺伝子組み換え食品を使っていない」という表示になってきている。これらの表示は併記ではないが一般消費者から見るとおかしな表示である。
- 併記を認めても良いのではないか。昭和60年のアクションプログラムの基本方針には「可能な限り消費者の選択と責任に委ねる。」とある。アクションプログラムに照らして併記をすることは何等違法ではないのではないか。併記をすると売れなくなる、新たな障壁になるという意見があるが、表示について自由度があってもいいのではないか。
- 「米の卸業者が外国産の有機栽培米との表示をして売ったところ、農水省が「消費者の混乱を招くので「有機」という表示をしては困る」とクレームをつけた。国内米にも「有機」という表示があり「輸入品にそのような表示をしてはいけない」と横やりを入れるのは輸入米に対する嫌がらせではないか」という記事があった。ガイドライン、行政指導という曖昧なやり方は完全になくしていくべきであり、行政指導するのなら法律の根拠に基づくべきで、違反するものには罰則等の制裁をすべき。
- 原産国表示について、JAS法は米を除いて5つの野菜について原産国を表示することを義務付けた。公正取引委員会の不当景品類及び不当表示防止法では、農産物は除外されているが、横断的に業種の壁を超えて、輸入品については原産国表示をするようにされており、違反すると罰則がある。消費者運動の起こった最初の頃は表示についてのものが90%であった。それは、虚偽表示や誇大表示等があったためである。そのために法律で規制すべきとの要求が出て、表示の規則が現在のように発展してきたのであろう。しかし、現在は表示が多すぎる。業界の縦割りの中で、商品別、業態別に色々なことを事細かく決めずに、業態の壁を超えて横断的に表示の在り方について検討して欲しい。
- 米には、中身と表示が合っているということを認証する認証マークがあり、これは食糧庁の外郭団体である穀物検定協会でつけている。また、それとは別に確認マークがある。認証マーク、確認マークを100%信じている消費者はなく、マークが何を確認しているのかほとんどの消費者はわからないので、こうしたマークが氾濫していいのか。
- 安全環境の問題について、ミネラルウオーターの中にカビやプラスチックの破片が入っていたために、食品衛生法違反ということで現地に行ったところ、衛生的に問題のあるような所で作られていた。輸入時のチェックが十分でなかったために市場に流通した。もう少し人員を増やす等、チェック体制を科学的、技術的に開発・研究して欲しい。小型のペットボトルの解禁は一般消費者には便利であるが、このような物を輸入する時はゴミの後始末のことも考えて輸入して欲しい。環境問題、ゴミの問題についても輸入先に注文を付けて欲しい。
- ガソリンスタンドのセルフ化について、セルフ化をすれば価格が下がるということだったが、安全性を担保するためには、過密な日本では、ガソリンスタンドのセルフ化は非常に危険だと思う。長期的には安くなるかもしれないが、初期の段階ではかなりコストがかかる。業界はそのコストを消費者価格に転嫁するとしている。規制緩和が消費者の経済的利益に直接結びつくという安直な考え方は止めて欲しい。
○委員の主な意見
- 民間の商慣習については直接OTOに案件を持ち込むのではなく、苦情申立者が公正取引委員会に対して苦情を申立ててからでないとOTO案件として受け付けることはできないのか。
- 市場参入後の法的・行政的手続が苦情の対象となるとの指摘があったが、外国からの投資企業について特別に煩雑な手続等が要求されることはあるのか。
- OTOの取り上げる問題は政府の機関が解決できるものに限ることとしている点がOTOが期待されている成果をあげていない理由であると思う。外国から日本市場に参入したのちに民間団体・業界団体との問題があり国内企業と同じアクセスが得られないが、関係する省庁に話をしても民間のことということで対応してもらえず、この点に関しては現在のところ解決方法が無い。しかし、監督官庁、あるいは公正取引委員会がこの問題に対する答えを出すべきであり、OTOとしてもこの問題について考えるべきである。
- 製造物責任法が施行され、企業・消費者共に自己責任を問われるようになると思われるが、情報開示を含めてその実現のための環境整備に関して何か御意見があればお聞きしたい。
○議長の総括
- 5つの団体からの意見をまとめるとその柱となるのは透明性を確保すること、自己責任原則を徹底すること、市場機能が十分働くような措置を講じること、国際的な整合性を図ること、対日直接投資をより活発にするために市場環境を整備すること、市場開放措置についての一般的理解を深めるための情報を提供すること、などが挙げられる。これらの貴重な意見を今後の作業を進めるうえで重く受け止め、本日の議論を踏まえて建議の原案作成作業に取りかかるよう事務局に指示し、原案がまとまった段階で各委員のもとへお届けすることとしたい。
- OTO推進会議は昨年、一昨年の報告書についてもフォローアップをし、その内容を報告書にまとめているので、それがある程度ご質問に応えるものと思う。また、白書に関してはOTOの白書というよりは日本政府の市場アクセス改善についての対応を取りまとめたものと受け止めるべきかもしれないが、その扱いについては政府で検討する課題かもしれない。
議題2) その他
以上
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
直通 03−3581−5469