第15回市場開放苦情処理推進会議議事要旨 (平成9年5月20日) 日時 平成9年5月12日(月) 15:00〜16:45 場所 経済企画庁特別会議室(1230号室) 出席者 (OTO推進会議) 議長 大河原議長 委員 行天委員、谷村委員、眞木委員、増田委員、山本委員、米倉委員 特別委員 デュボア特別委員 専門委員 片岡専門委員、金森専門委員、兼重専門委員、細川専門委員、本田専門委員、 宮智専門委員、村上専門委員 (OTO対策本部・事務局) 麻生経済企画庁長官、古川内閣官房副長官、糠谷経済企画事務次官、土志田調整局長、 小林調整局審議官、滑川貿易投資調整官、川口OTO対策官 他 議題 1)苦情処理部会における審議状況について 2)第2回報告書の再フォローアップ及び第3回フォローアップ 3)その他 麻生経済企画庁長官挨拶(OTO対策本部を代表して挨拶) ・ 政府は、3月17日にOTO推進会議によって取りまとめられた報告書を受け、3月25 日に対策本部は報告書を最大限尊重した具体的な政府対応策を決定した。さらに、3月 28日に再改定された規制緩和推進計画には、対応の内容を最大限盛り込むとともに市場 アクセス改善に資する規制緩和を推進するため、OTOの機能を積極的に活用すること を改めて確認した。 ・ 本日は、一昨年及び昨年に取りまとめられたOTO推進会議第2回・第3回報告書を 受けた政府の対応の実施状況について、フォローアップをお願いする。 ・ 実施状況は様々であり、例えば、食品と薬品の間に栄養補助食品という新しいカテゴ リーを作るのは、役所としては大変なことだが、少しずつ進みつつある。ただしそのス ピードが少し遅いことが気になる。 ・ 対応状況については、更なる推進を図り、OTOのへの信頼性を確保するためにも委 員の忌憚のない御意見を政府の今後の取り組みに反映させて行きたい。 ・ 現在個別の苦情に共通する課題として推進会議から政府に対して建議を検討していた だいているが、重要な作業と認識しており、今回のフォローアップの作業についてもぜ ひ建議の検討に役立てていただきたい。 審議の概要 議題1) 苦情処理部会における審議状況について ○谷村部会長から資料1に基づき4月11日に開催された第8回苦情処理部会について説明 1重要な2案件の審議について ・ OTO番号539番「モデルロケット等に用いられる噴射推進器と点火具の郵便物と しての取扱いについて」は、 1モデルロケット等は、火薬類取締法令及び関係規則で基 準が設けられており、この基準を満たしていないと輸入(製造)できないので郵便物と して差し出す際に、法的根拠のない日本モデルロケット協会の合格証のちょう付が求め られるというのは合理的でないのではないか、 2安全性については、火薬類取締法の基 準を満たしていれば十分であるはずなので、郵便窓口における輸入の際の許可証の提示 等で足りるはずである、という意見が出た。 以上の点を踏まえ、郵政省でさらに検討し、その結果を部会長までご報告頂き、必要 に応じて改めて部会で審議することとした。 ・ OTO番号546番「ビールの輸入に係る関税分類について」は、米国でビールとし て取り扱われているもの(ミントのビール)を関税分類上、税率の高い「その他の発酵 酒」とされたという苦情である。ビールの分類基準が明確でなかったために生じた問題 だが、輸入者にとって輸入品がどう分類され、その関税額が幾らになるかは重要な問題 である。関税の分類基準は明確にしておく必要があり、その基準を最大限公表し目安と して分かるようにすべき、との意見が出た。これを踏まえ、大蔵省の方では、検討して 一カ月以内に結論を出すこととしている。 なお、苦情申立者が要望していた関税の還付については、その前提として更正決定の 取消が必要となることから、OTOの場で取り扱うのは適当ではなく、行政上の不服申 立や行政事件訴訟の制度を利用するのが適当とされた。 本件については、大蔵省で検討した結果を部会長に報告してもらい、必要に応じて改 めて部会で審議することとした。 2最近の苦情受付・処理状況について ・ 最近の苦情受付・処理状況について事務局より報告があり、前回の部会(平成9年1 月31日) 以降新たに6件の苦情を受け付け、処理中または検討中であった11件とあわせ、 17件のうち、2件が処理済となり、現在15件が処理中または検討中とのことである。ま た、新たに処理済となった案件2件等について、事務局よりその概要の説明があった。 議題2) 第2回報告書の再フォローアップ及び第3回報告書のフォローアップ ○第2回報告書(平成7年3月)で意見を述べたもののうち、昨年5月に続き今回再フォ ローアップすることになった9件及び第3回報告書(平成8年3月)で意見を述べた19件 の計28件について事務局より説明。 ・第2回報告書の再フォローアップ案件 ・ 1−1)切り花の輸入に係る植物検疫制度の改善 ・ 2−1)体外診断薬の承認手続等の簡素化 ・ 3−2)工業用X線フィルムの分類基準の設定 ・ 3−3)電気・電子製品の認証手続き改善 ・ 4−2)船舶コンテナ道路輸送の際の重量制限の緩和 ・ 5−2)壁紙の認証制度の改善 ・ 6−2)景品規制の見直し ・ 6−3)日本中央競馬会の競馬番組における外国産馬の出走枠及び海外移住者の馬主 登録に関する規制の緩和 ・ 7−1)税関及び輸入手続き関係各機関の執務時間の延長 ・第3回報告書のフォローアップ案件 ・ 1−1)輸出前の生果実の蒸熱処理のための植物防疫官の派遣 ・ 1−2)輸入果汁に係るJAS規格の一部変更 ・ 1−3)動物用飼料添加物の指定制度の見直し ・ 1−4)食肉中の薬物残留基準の国際整合化 ・ 2−1)「栄養補助食品」の位置づけの明確化と規制の緩和 ・ 2−2)化粧品等の成分規制の緩和、輸入手続の簡素化 ・ 3−1)絹製混交織物等の事前確認手続の簡素化 ・ 3−2)高圧容器の認証の国際整合化 ・ 3−3)電機機器の防爆基準の相互認証 ・ 4−1)トレーハウス、キャンピングカーの輸入の円滑化 ・ 4−2)船舶及び船舶用エンジン推進装置等の輸入検査制度の見直し ・ 5−1)輸入住宅資材等に係る規制緩和 ・ 5−2)海外建設資材の品質審査・証明事業の改善 ・ 6−1)労派遣事業の見直し ・ 6−2)職業派遣事業の見直し ・ 6−3)上陸審査基準等の見直し ・ 7−1)輸入許可前貨物取引承認申請に係る担保の対象官署の共通化 ・ 7−2)輸入事前申告制度の導入 ・ 7−3)特恵原産地証明書に係る輸入手続の簡素化 ○委員からの主な意見 1)第2回報告書の再フォローアップについて ○1−1)「切り花の輸入に係る植物検疫制度の改善」について ・ 植物検疫におけるサンプリング法について、平成2年から平成7年までサンプリング に関する苦情が3度出ている。2段階抽出検査は実施が困難とする理由として、輸入業 者側の意見は尊重しているが、輸入業者は荷口の数パーセントが無駄になるが、輸出業 者はものすべてが無駄になるのだから、もう一方の輸出側の意見についても考慮するべ きである。 ・ 植物防疫法において、病害虫が付着していない場合のみ合格としている法の建前によ り、病害虫の少ない荷口を救うことはできない。これを運用で補っていくとすれば、不 透明な行政となる。法の建前と現実の食い違いという点が問題である。 ○2−1)「体外診断薬の承認手続等の簡素化」について ・ 問題提起当初から、直接人体に触れる薬と同様に扱うのはおかしいと思われた問題で あるが、対応状況をみると2年も経て変更承認や、提出書類の簡素化等極めて部分的な 措置しかとられていないのは時間稼ぎととられても仕方ない。欧州諸国並みに体外診断 薬を医薬品とは別の分類として取り扱うという具体的な検討結果が出ているのであるか ら、時間を限って行うべきである。 ○3−3)「電気・電子製品の認証手続き改善」について ・ 電気用品の甲種から乙種への移行を進めることは評価でき、今後もその作業を進めて いただきたい。 ・ 流通機関等に対し、第三者認証が義務付けられているという印象を与えているとすれ ば、国の規制が緩和されたにもかかわらず不透明な非関税障壁となってしまう。特に流 通機構等に対して適切な情報提供をお願いしたい。 ○4−2)「船舶コンテナ道路輸送の際の重量制限の緩和」について ・ 軸重10tを維持するという今回の所管省の対応状況は建前上は問題ないが、実態と少 なからず乖離があることに注意が必要。OTOへの問題提起により、かえって問題がこ じれることがないよう、問題提起者の意見を踏まえた柔軟な対応をしてほしい。 ・ 物流コスト削減のために提起されたものであり、問題提起者の意見を十分聞いてOT O対策本部側でその趣旨を十分踏まえ対応すべきであり、状況を事務局から議長に報告 していただきたい。 ○6−2)「景品規制の見直し」について ・ 公正競争規約という言葉が使われているが、業界が「公正」と言う時は、インサイダ ーにとっては「公正」であっても、アウトサイダーにとっては「不公正」だということ が非常に多いのではないか。参加していない企業にルールを適用してはならないことを はっきりさせ、これを徹底すべき。 2)第3回報告書のフォローアップについて ○1−2)「輸入果汁に係るJAS規格の一部変更」について ・ JAS規格は任意の規格として重要な役割を従来も果たしてきた。しかし、輸入も相 当量になり、消費者のニーズも変わるなど、法が制定された当初の状況よりかなり変化 している。個別なことへの前向きな対応は評価できるが、同じ国家規格でJIS法の方 は、全面見直しをして取り組んでおり、商品の品質規格的な問題としては同じような位 置づけなので、JAS規格についても国際規格との整合性を前もって見直す時期である。 JIS規格と同じような包括的な見直しができないか検討して欲しい。 ○2−1)「『栄養補助食品』の位置づけの明確化と規制の緩和」について ・ 栄養補助食品を新しいカテゴリーとする対応を取ることについては、平成9年3月に 省内横断的な検討を始めたとあるが、検討に着手するのに一年もかかり、対応が遅すぎ るのではないか。平成9年3月にまとめた報告書の際にも、米国大使館から8年3月の OTO対策本部決定が政府の公約であることの確認までも求められた。是非個別の対応 だけでなく、横断的に形状や表示の制限の規制緩和、さらには新しいカテゴリーを作る ことについて、早急に対応してもらいたい。 ・ 食品と医薬品との狭間のカテゴリーを考えるのは難しいが、現実の市場ではかなり変 化している。従来はできなかったことだが、食品でも一定の条件の下、機能を表示がさ れているものも増えている。対応状況では、ビタミンなど個別の対応をしているが、こ れでは時間がかかるので、カテゴリーの包括的な見直しを早急に行う必要がある。 ・ 個別の規制の緩和については、6種類のビタミンの摂取量等について一定の上限があ るが、その上限の設定については透明性の確保が必要。 ・ 表示については、消費者の安全確保が目的とされているが、安全確保のためだけでは なく適正な使用のための表示は必要と考える。 ○2−2)「化粧品等の成分規制の緩和、輸入手続の簡素化」について ・ 昨年度報告書では、平成8年度中を目途に見直しを行うとしていたが、今回のフォロ ーアップでは「平成9年度中に最終取りまとめを行う」となって実質的に一年間検討が 先送りされていることになる。対応の努力は多とするが、内容的にも細かい要件の緩和 が主で、責任技術者の配置や試験検査設備の設置という要件自体の必要性といった根本 的な問題について十分検討が行われていないのではないか。化粧品の問題は、内外の関 心の高い分野であり、もっと積極的に対応してもらいたい。 ・ 成分規制については、徐々に欧米並みに認められられる種類も増えつつあり、評価で きる。しかし、そうした量的な問題ではなく、種類が限定されているところに問題があ るのではないか。例えばホルマリン系防腐剤など欧米では一定割合は認められているが、 日本では禁止している。こうした安全性についてのデータについては、諸外国と情報交 換を行って、国際間合意の上で処理すべきである。このホルマリン系防腐剤の問題の解 決により、化粧品の規制に係る問題はかなり解消するのではないか。 ・ ネガティブリスト、ポジティブリストの見直し等も含めて平成8年度中に対応が行え たら望ましかった。防腐剤についても早急な検討が必要。化粧品による被害が少なくな り、また、PL法の制定により被害救済などにおいても環境変化があるので、検査施設 や技術者の必要性などを根本的に見直すべきである。 ○3−3)「電機機器の防爆基準の相互認証」について ・ 研究委員会の設置等慎重に進めているようだが、「電機機械器具防爆構造規格」全85 条のうち15条が試験項目に関するもので、また試験内容も高度な専門知識や施設を要す るものではないので、 1の海外でIEC規格に適合していると認定されたものを我が国 の型式認定に合格したものと同等の扱いとすることについては、平成9年度中に結論を 出すことができるのではないか。また、 3の外国検査機関の認定についても、せめてO ECD加盟国については9年度中に結論を出すことができるのではないか。 ・ 国際規格と整合化していることを外国検査機関により認証された製品を再度検定して 時間もコストもかかるのではおかしい。現在の対応状況をみると、実地調査や海外との 意見交換、広報の努力が行われているが、一年経った割には十分な対応が取られていな い。この問題も時限的に対応を取るべきである。 ○4−2)「船舶及び船舶用エンジン推進装置等の輸入検査制度の見直し」について ・ 対応状況の中で3項目のうち2項目で検討すると書かれている。検討するのは当然で あるが、何をいつまでに検討するか明確にすべきである。 ・ ISO9000シリーズについては前向きに対応しているようなので結構だと思う。船級 協会については、安全上支障がないことが確認されたらと書かれているが、船級協会の 信頼性についてもISOの検査・認証機関についてのガイドラインに則って検討すれば もう少し早くできるのではないか。それについても是非検討して欲しい。 ○6−3)「上陸審査基準等の見直し」について ・ 平成9年3月の報告書の際にも同様の案件があった。広報に努める等の今回の対応自 体は問題がない。この問題を考えるにあたっては、対日投資の拡大という我が国の基本 的な方策に沿うことを前提とすべきである。確かに、制度を悪用されることは防ぐべき だが、正常なものが妨害されないように行政処分の公明性、透明性の向上に特に重点を 置いてもらいたい。これは、行政処分の運用にあたっての行政手続法の精神である。 3)総論 ・ 植物防疫法や船舶コンテナでみられたような法の建前と規定が異なるという問題は、 他の案件にも共通した問題である。 ・ 最近のOTO案件を見ると、「○○協会」といった団体がかなり登場するが、こうし た団体の権限があいまいであり、市場の中で参入と退出に独占的な権限を持っている。 役所の規制が緩和されてもこうした団体の規制が強い場合もある。こうした点から認証 を行っている民間機関について建議の中でも重いテーマとして欲しい。 ・ 本日配布されている委員の意見(※)については、建議の際に是非取り入れて欲しい。 ※ 委員の意見の概要 1 基準・認証制度やそれに伴う検査・検定制度については、PL法の精神に立つ必 要がある。事前規制は国際的整合性をもった必要最小限にとどめ、そのかわり参入 後の被害発生の責任は自ら最大限負うという、PL法の精神が不可欠である。 2 基準・認証や検査・検定制度の運用については、公正取引委員会による業界団体 のガイドライン等に基づき、談合を派生させないよう重い責任を負わねばならない 旨、明示しておくべきである。 3 検査・検定について複数の民間団体に門戸を広げる際、競争促進という趣旨の徹 底のため、検査機関の複数民営化との方向性と民間機関の定義について、各業法間 の整合性をとる必要がある。 4 法整備について建議するにあたっては、 1〜 3のような原則の明示や経済法規新 設の際のサンセットルール、あるいは一つの新法制定は従来法一つの廃止を条件に する等の原則的ルールの制度によって例外を排する姿勢が必要である。 ○議長総括 ・ 一昨年及び昨年の報告書に示された意見は、所管省において、これを尊重して総じて 積極的な対応が行われ、進展があった。しかし、いくつかの案件では、所管省庁の努力 の跡はみられるが、まだまだ対応が十分とはいえない。 ・ 委員の皆様から今後の対応の進め方についての貴重な御意見を頂いた。問題提起者は、 対策本部において当推進会議の意見に沿って対応を決定するだけでなく、それを着実に 実施に移すべき。十分な対応がされないと、OTOメカニズムへの信頼性にも影響が出 かねないので今後OTO対策本部側においては、これを十分に尊重してさらに対応を進 めていただきたい。 ・ 報告書で述べた意見について、対応が完了していない案件または対応が不十分な案件 については、実施済みとなるまで推進会議としてフォローすることが必要である。具体 的にどの案件を再度フォローアップするのかについては議長に御一任頂きたい。 ・ 建議について検討を続けているが、委員一人一人から十分御意見を頂く時間もないの で、ペーパーで御意見を頂ければと思う。御意見をいただける方は、できれば次回会合 までに事務局に提出していただきたい。 議題3)その他 ○古川内閣官房副長官挨拶 ・ 本日は、一昨年及び昨年取りまとめられたOTO推進会議報告書に基づく政府の対応 状況について数々の貴重な御意見、要望、厳しい指摘をいただいた。今回のフォローア ップは事前に各省庁のヒアリングを実施するなど例年以上に中身の濃いものとなった。 政府としては、本日十分な対応がなされていないものとして御意見あったもの、または 対応が終了していないものについては、御指摘を十分踏まえ、今後これを確実に完了す るよう努めて参りたい。 ・ 我が国の市場アクセスの改善を求める内外の声は依然として根強く、特に規制緩和を 始めとした構造改革の際に、市場アクセスの改善は大変重要との声が外国人事業者等か ら出ている。現在建議に向けて御審議いただいているが、OTO対策本部として、市場 アクセスの一層の改善のため迅速かつ的確な対応に努めて参りたい。 -----以上----- (速報のため事後修正の可能性あり) [問い合わせ先] 経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室 直通 3581−5469