1 日時 平成9年11月5日(水) 15:00〜16:37
2 場所 経済企画庁官房特別会議室729号室
3 出席者
谷村部会長、兼重専門委員、児玉専門委員、細川専門委員、本田専門委員、村上専門委員、小林調整局審議官、東貿易投資調整官、前川OTO対策官4 議題
(1)重要な個別案件についての審議 OTO番号491番「液体化学品(アルキルリチウム)の陸上輸送に際して、運搬容器に係る規制の根拠の明確化及び規制の緩和」5 議事要旨
(2)最近の苦情受付・処理状況
(3)その他
議題1 重要な個別案件についての審議
○事務局から配付資料に基づき説明
○苦情申立者から苦情内容につき説明液体危険物(アルキルリチウム)の日本国内での陸上輸送では、消防法により運搬容器の最大容量が110リットルとされているが、これをIMDGコード(国際海上危険物規定)で認められている上限の450リットルに引き上げて欲しいとの要望に対して、自治省では告示の改正を検討することとした。 自治省では検討を行うために必要な資料の収集について苦情申立者に要求するとともに、外務省を通じて同様の資料の収集を図ったものの満足いく結果が得られなかった。しかしながら、申立者はこれ以上の資料提供は不可能と判断し、問題解決のための一定の方向性を出すべく本案件を苦情処理部会で審議するよう求めた。
アルキルリチウムの陸上輸送において450リットルの運搬容器の使用を認めてもらうべく、自治省が要求してきた資料の提出のために多くの時間と費用を費やしてしてきたが、自治省側からは前向きな回答は得られなかった。 また、アルキルリチウムの極東地域における需要増加に対応するため、平成6年に日本国内での精製工場建設の検討を行ったが、消防法による陸上輸送に係る規制がネックとなって、国内での工場建設を断念した。 市場開放問題苦情処理推進会議の建議でも提示された市場アクセス改善のための課題「規格・基準の設定の必要性及び見通し」、「新しい製品に適合した規格・基 準の設定」、「国際規格への整合化」を解決し対日輸出、対日投資の阻害要因をなくすべきである。 当社が日本国内に供給するアルキルリチウムの需要の約60%は医薬メーカー向けであり、現在開発中の新規医薬品も含めその需要は急激な増加が見込まれる。医薬向け出荷の最適輸送容器は450リットルであり、日本の医薬メーカーからも当該容器の使用を強く求められている。 以上の理由から、これまで提出した資料に基づき「危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(以下告示という)」の改正を具体的に検討し、国際規格と基準の整合化を図り、日本国内においても450リットル容器でのアルキルリチウムの陸上輸送を認めて欲しい。
○所管省庁(自治省)から対処方針につき説明
平成7年5月10日に当省、OTO事務局、申立者三者で話し合った結果、先程のOTO事務局からの説明にもあった資料の提出を申立者にお願いした。しかしながら、同社が提出した資料においては、ドイツにおける450リットル容器の試験方法についての資料が欠けていた。これは、容量が110リットル以上の容器について、自治大臣の裁量により告示に特段の改正を行う検討において、最も必要な資料である。 アルキルリチウムの運搬容器については、IMDGコードは、110リットルであり、これを超えるものについては、各輸入国の主務大臣の承認があれば、使用可能とされているが、この判断をするための資料、つまり、BAM(※)における試験方法や各国の承認状況について把握できていない状況にある。 アルキルリチウムは、空気に触れると出火し、水をかけると爆発するという非常に危険な物質である。また、一旦出火すると消火も困難で、昨年7月には、これに似たアルキルアルミニウムの爆発事故で消火に大変苦労したという事例があった。 こうした危険物に関する基準を検討する際は慎重に対処すべきと考え、そのために必要な資料を要求してきた、申立者は要求された資料はすべて提出したと主張されるが、当省から昨年申立者に要求した資料については、未だ提出されていない状況にある。
※ BAM:ドイツ連邦材料研究試験局(ドイツ連邦政府の公的試験研究機関)
○この後、審議
(申立者の意見)
(委員の主な意見)アルキルリチウムは非常に危険な物質であると自治省は説明されたが、水をかけなければ燃えることはない。高湿度等、条件によっては反応することがあるが、通常の取り扱いでは事故は生じないし、当社に関する限り過去に事故はなかった。 およそ危険物については、取り扱いの方法が大切であり、適切な取り扱いであれば問題が生じることもない。当社においても、容器の運搬に際しての運搬業者等への注意は十分に行っている。 自治省が要求した資料については、当社では可能な限り提出している。ただし、各国の条例や規則などについては、米国、フランス等の全ての制度を調査することは私企業には不可能であり、当社に要求するのではなく、あくまで自治省が独自に調査するべきものである。 ドイツBAMの試験方法については、すでにドイツから資料を入手し、自治省に提出済である。 450リットルの容器に関する試験方法については、当社が提出したIMDGコード中で試験方法が記載されているものであり、同コードを参照すれば試験方法が分かるものである。
(所管省の応答)危険物の事故は陸上輸送よりむしろ保管中に起きる事故のほうが多いと思う。例えば、陸上輸送に関する基準をクリアしても保管上の安全基準が別にあって、450リットルの容器は使用できない可能性はあるのか。 また、この告示の制定時期及び最近の改定時期はいつか。 自治省が、現行規定外の容器の安全性について検討するときは、自治省ではどのような手続きで行うのか。 また、資料に基づく安全基準の判定方法については、一般に公開されているものもしくは内規で判断基準があり、これに基づく客観的な方法で行われるのか。または、担当官の個別判断で決めているのか。 自治省としてドイツで許可されている450リットルの金属容器の基準についての資料を要求するのは理解できるが、自然発火性物質全般の強制基準、製造者の判断による自主基準、あるいは米国、英国の危険物規制に関する資料などあくまで所管庁としての参考資料まで要求した根拠は何か。当該容器について検討するために、これらの資料まで要求する必要はないのではないか。 資料の収集方法の問題として、申立者に対しては、要求する資料の意味や目的について、申立者が納得できるように十分な説明を行ったのか。
また、資料収集が進んでいない理由として、要求内容についての説明が相手国あるいは在外公館に対して十分行われなかったか、もしくは英米の担当機関が非協力的といういずれの理由によるものと考えているか。今回の案件の検討に関しては、必要な資料とそれに基づく検討方法については、誰が決めたものか。 ドイツにおける当該容器の試験方法の資料が必要であるという意思表示をドイツ政府に対して明確に伝えていれば、少なくとも必要資料の入手の可否についての返事くらいはあるのではないのか。 本件には直接は適用されないが、OTO推進会議建議にも述べられているように行政手続法の精神を尊重するという観点から言えば、本件のように申請に極めて近い行為に関する提出資料等が所管省の裁量で決められるというのは好ましくない。 規定外の容器の審査基準等は、本来文書化されていることが望ましく、少なくとも何がなぜ必要かということについて関係者に共通の理解を得られることが、行政の透明性の確保という観点からも必要である。 資料収集方法については、間に素人を介さず、専門家が電話、ファックス、インターネット、海外出張等により、直接行うことが効果的である。 製品コストの低下により我が国の国際競争力を回復しようとする大きな流れの中で、コストアップを招くような規制は緩和することも自治省の役割である。 本案件の処理に5年もの年月がかかっていること自体が問題であり、他の案件についてもフォローが必要。 危険物であれば、大きな容器から小さな容器に移しかえることにより、回数も含め、むしろ危険性が増すのではないか。 こういう問題は、他国の事例よりも国内における今までの事故そのものの件数及び原因を調査して、その因果関係から判断する必要があるのではないか。 英米に関する資料がないということは、各国で450リットルの容器が認められているかどうかということさえも現時点では分かっていないということか。 英米は、情報公開が進んだ国であるので、資料の要求内容が明確であれば、入手できたのではないか。 2年5カ月前に外務省を通じて資料要求された回答はきているのか。 欧州から日本へ海上輸送するには、2〜3週間はかかる。それらに比べて日本国内での陸上輸送では、せいぜい30時間でどこでも運べるはずである。長時間かかって輸送する海上輸送では安全と認められているにもかかわらず、道路整備も進んだ現在の陸上輸送の状況からみて、陸上では危険と判断するのはおかしいのではないか。
○議長の総括保管に関しては温度コントロール等条件が付されることがあるが、容器自体については運搬容器と保管容器は同様の基準である。告示の制定は、昭和62年消防法の改正時に合わせて行い、昭和62年12月自治省告示第200号により制定した。最終改正は平成7年2月である。 容器の基準では、250リットルの金属ドラムは一般則で認められているが、アルキルリチウムなど自然発火性のものについては、110リットルのもので10kg/cm2の水圧を加えた試験に合格するものとしている。 また、基準の制定は担当官の独自判断によるものではなく、高度に専門的な判断の下に決められている。一般的には、専門家及び消防機関による委員会を省内に設置し、そこで審議して定めている。その手続きには特段のルールはなく、あくまでも自治大臣の告示として自治省の責任において行う。 安全性の検討に際して資料を幅広く求めているのは、一般的に危険なものについては慎重に対処すべきと考えるからである。 本件に関しての最大の問題は英米の資料の不足ではなく、ドイツBAMが特例を認めた試験方法についての資料がないことである。また、英米の資料に関しては、国際的な整合性を保つことが必要であるので、先進国の承認事例を集めるために資料の提出を要求している。具体的には、IMDGコードの一般則では当該物質の容器容量は110リットルであるので、各国が何を根拠に450リットルを認めているのかを知る必要がある。 資料の集め方に関しては、当時のことはこの場では分からないが、外務省と申立者を通じて資料の収集を行ったが、結果として必要な資料が集まっていない。 資料リスト及び検討方法の決定については、例えば検討委員会に説明するために必要なものであるので、消防庁が自ら判断して要求したものである。 当庁に提出されたドイツの試験方法の資料は、一般的な110リットル以下のものについてのものであり、本件の容器(450リットル)に関するものではない。 危険物については概念として、容器の容量が少なければ、漏洩した場合でも被害は少なくて済む。また、詰め替え等の作業が増えれば危険性は増すということはご指摘の通りである。そこで、詰め替えなしに最初から小さな容量の容器で輸送するのが安全と考える。 過去10年間はアルキルリチウムに係る事故はないと認識している。しかし、ドイツだけではなく他の国での450リットル容器による運搬状況等を検討した上で、安全性の評価を考えたい。 英米の現状は分かっていない、それどころか最も必要なドイツの試験方法に関する資料さえない状況である。 今まで外務省を通じて調査を行ってきたが、今後は別の方法で調査を行うことについても検討したい。
○この後、意見本件については、自治省が運搬容器の安全性について具体的に検討を行い、その可否を判断することとし、その検討にすでに着手された点は評価できるが、外務省等を通じた入手資料が自治省としては不十分である点を考慮しても、苦情申立から5年近く、資料調査開始から2年5カ月余りと検討にあまりに時間がかかり過ぎている上、資料収集方法にも若干親切さが足りないと思われる。 本年7月のOTO対策本部決定で最大限尊重することとされた「OTO推進会議建議」で提言された「新しい製品に適した規格・基準の整備」、「国際規格への整合化」を踏まえれば、市場アクセスの改善という観点からは、陸海一貫輸送の効率性を確保するため、海上輸送で使用可能な運搬容器については、安全性が確保されれば陸上輸送においても比較的簡素な手続きで使用できるように自治省は規定を整備すべきである。 我が国国内における当該容器による輸送の安全性の検討に、諸外国の規定を詳細に調査することが不可欠というのであれば、必要に応じて自治省担当官による海外出張調査を行うなど、早急に検討結果を出すよう努めていくとともに、そのスケジューリングを示し、審議過程の透明性を確保することが必要である。 以上の点を踏まえ、自治省の方でさらに御検討頂いた上で、その結果を私までご報告頂き、必要に応じて次回の部会で審議することとしたい。自治省においては、是非とも前向きな対応を取ることをお願いする。
本件のようにIMDGコードの特例的なものの告示改正を要求される場合においても、自治省が試験をしたり、全ての資料収集を行うことに疑問を感じる。通常の新製品の申請においては、申請者が必要データ等をそろえて申請し、それに基づいて行政が判断することが通例と考える。(部会長) 自治省の主張には矛盾がある。自治省がすでに外務省を通じて資料収集を行ってきたということは、この行為は基準の制定に当たって行政としての責任として行い、必要としたからこそ行ったのではないか。 照会した内容に対する回答がないからといって、その責任は全て申立者にあるということは現在の諸情勢を鑑みれば役所として好ましくない。
議題2 最近の苦情受付・処理状況
○事務局から配付資料に基づき説明
○委員の発言前回の部会(平成9年4月)以降、新たに5件受け付け、その時処理中または検討中であった15件とあわせ、計20件について、5件が新たに処理済となり、現在15件が処理中・検討中である。 受付から処理に時間がかかっている案件、前回の苦情処理部会で審議された案件、新たに処理済となった案件、処理状況に変更及び新たに受け付けた案件について、その概要を説明。
○議長総括OTO534仮説構造物の案件では、労働省の指導により、事態は現実に改善したのか。 OTO546ビールの案件では、現在は関税率が同一となり問題がなくとも、従前徴収された関税についての不満はないのか。 OTO554木製ドアー枠の案件では、OTOに苦情を申し立てたことによって税関の従前の誤判断が明らかになり、過去の関税についても更正することになれば、申立者は納得しにくいのではないか。
苦情受付・処理状況については、当部会として結構であると考えるので、関係省庁連絡調整会議において決定の上、公表していただきたい。
議題3 その他
○事務局から事務連絡
次回の会議(第20回OTO推進会議)の開催日時、議題等について前川対策官から説明。