OTO推進会議平成9年度第2回専門家会議議事要旨
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(推進会議) | |
大河原議長 | |
(委員) | |
議長 | 久米議長 |
議長代理 | 佐々波委員、島野委員、谷村委員、眞木委員、増田委員 |
委員 | 片岡委員、金森委員、兼重委員、児玉委員、細川委員、本田委員 |
村上委員 | |
オブザーバー | ビーグルス特別委員、デュポア特別委員、朴特別委員 |
(問題提起者) | |
議題1 | 駐日欧州委員会代表部 イェッセン参事官 他 |
議題2 | 駐日オーストラリア大使館 バグスター一等書記官 他 |
(所管省庁) | |
議題1 | 建設省建設経済局 森建設市場アクセス推進室長 他 |
議題2 | 郵政省電気通信局 吉良データ通信課長 他 |
(OTO本部事務局) | |
小林審議官、東貿易投資調整官、前川OTO対策官 |
議題
(1)建設業の許可等に係わる規制緩和
(2)JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善
(3)その他
審議の概要
議題1 建設業の許可等に係わる規制緩和
○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:
2 一級建築士の認定基準のあり方
1
(1) 日本への参入に関して決して差別されているとは考えてないが、特に中小企業の新規参入は厳しい。日本は参入等事前の規制又は行政のコントロールがあまりにも厳しいので、事前の規制を緩和し、必要があれば事後的に対応するような仕組みへの変更を要望する。また、日本の建設コストは高く、それが、日本経済全体に影響を及ぼしていることから、規制の緩和、簡素化により建設コストを下げることが日本にとっても必要であると考えている。
(2) 建設業の許可は、工事の種類毎に28もの種類があり複雑である。例えばこの中には、庭師も許可の対象となっているが、庭師は特に危険性の高い職種ではないので免許は必要ないのではないか。また、特別な資格を持った従業員の雇用や、地方自治体が求める地方の営業所の設置など、それを維持するコストが高額であることから、許可の種類の削減と許可取得に係わるコストの軽減及び更新における手続の簡素化を要望する。
(3) 建設省が細かく基準を設けるよりも第三者による審査・監査にした方が良い。そして、第三者によるコンサルタントビジネスを活用していくべきである。
2
(1) 建築士資格取得の条件については、以前よりも改善されてきたが、依然として条件は厳しいままである。例えば海外の同等の資格保有者であっても、建設省や地方自治体による日本語の試験に合格する必要がある。加えて、海外での業務経験に加えて3年間の日本での業務経験を求められるといったことから、欧州の建築免許のうちいくつかの技術資格は日本の一級建築士と同等であると承認することを要望する。
(2) 一級建築士のライセンスについては、建築家と構造エンジニアは全く別の専門技術であるのに同じライセンスであるのはおかしい。また、5年毎に一級建築士の試験を受ける必要があり、これについても見直しを要望する。
〇所管省庁から対処方針につき説明
1
(1) 建設業を営もうとする者は建設業の許可を受けなければならないが、客観的基準に基づき審査を行い、適合していれば許可を下ろしている。また、軽微な工事のみを請け負う場合許可は不要である。例えば問題提起者の話にあった庭師は通常許可は必要ない。
業種別許可については28業種ごとに与えられているが、建設業者は営業をしようとする種類の許可だけを取得すればよく、また、許可及び更新の申請は、複数の種類について一件として申請を行うことができる。さらに一式工事における専門工事や附帯工事としてのその他の工事については、これが許可を受けた工事以外のものであっても、許可を取得する必要がない。従って、業種の数が28であることが建設業者に過度の負担になることはないと考える。
(2) 許可取得及び更新手続の簡素化に関しては、許可の有効期間の延長、許可更新申請時の添付書類の一部省略、変更等の届出を行うべき期限の延長を行うとともに、その後も許可要件の確認書類の適正化を行うなど、手続の簡素化を進めている。
(3) 建設業は、許可の問題ではなく業の特性として、現地生産で現地の専門工事業者などを使いこなす必要があるなど、外国で事業を行うのは難しい面があると思われる。
問題提起者との事前打ち合わせで、日本におけるヨーロッパの業者が26しかないことをもって参入障壁があるという指摘を受けたが、参考までに、ヨーロッパで事業を行っている日本の業者は15業者である。
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(1) 建築士資格の同等性の承認は、二国間あるいは多国間で相互主義的に実施すべきで ある。EUにおいては、今のところ、日本の一級建築士の免許をEUの建築士資格等と同等と認める意思はないと聞いており、相互認証の枠組みが確定していない現時点においては、我が国だけがEUに対して一方的に門戸を開放するという方法は適切でない。なお、我が国の建築士法第4条第3項において、建設大臣が認める場合には、外国の建築士資格との同等性を認める道を既に開いており、現状制度以上の措置は当面必要ないと考える。
(2) 建築家と構造エンジニアの資格が分かれていない点が正に日本の建築士のユニークなところで、日本は台風、地震等災害が多く、都市の危険性が高いので、建築家であってもエンジニア的な知識も併せ持つ必要があると考えている。
〇この後、審議
(委員の主な発言)
1 建設業許可について
(1) 許可の28業種をみると、伝統的な日本の一戸建て建築に対応しているように思える。このことは、既存の技術、ビジネスを前提とするならば結構な方法であったろうが、この先、新しい技術、工法が入って来る時には妨げになるような分類である。つまり非常に保守的な方法である。これから先の技術進歩を考えると、この許可制度についても簡素化、見直しをもっと積極的にやる必要があるのではないか。
(2) 財産的基礎を有することを許可基準の一つとしているが、バランスシート、損益計算書、利益処分の書類から、企業の財務体質を判断することはできない。全く形式的な審査であり、意味がないので取り除くべきである。今後は、業者の技術力と実績を把握して、その情報開示を消費者に行うという方向に改める必要がある。
(3) 許可の業種区分については、関連した業種を大括りにすることによって、区分数の削減等相当な対応が可能である。これは、どの業種を選択するかという意思決定の時間と労力を削減することにもつながる。また、許可基準の一つに「営業所ごとに専任技術者の設置」とあるが、専任技術者として必要な資格(例えば一級建築士)は、業種によって共通しているものが多いのでこの意味からも大括りにできるのではないか。
(4) そもそも日本の建設市場は新規参入が難しいことが問題である。経済は需要と供給が出会うところで価格等が決まり循環するものなので、入るところで制限するべきでない。入るところまでは自由にするべきである。
(5) 建設業許可が28業種にも分かれているのは、日本の建設業界にはギルド的な組織が存在しているからではないか。日本の建設業者は日本国内で工事をした方が利潤も出るし、保護されているので、安心して仕事が出来る。それにもかかわらず、日本の業者はヨーロッパに15社出ていて、ヨーロッパの業者は日本に数社にすぎないというのは、日本のマーケットアクセスがいかに難しいかということを証明しているようなものである。建設省は日本の建設業の非国際性について考えてみる必要がある。
(6) 日本の建設業は、ギルド的な組織があるためにコストが上がってしまい、利潤率は欧州企業と比べ圧倒的に小さい。これは株価に反映されるから、日本の建設業の株価に反映される魅力はどんどん減っていって、究極的には競争力を失うことになってしまう。結局は、国内のいくつかの障壁を取り除くことが、競争力をつける方策となるので、日本のサービス産業全体にも言えることだが、そのように変更しなければならないと思う。
(7) 許可更新については、建設業を営むにはかなりの初期資金が必要であり、一端始めたら5年でやめる者はいないと思われるが、なぜ、5年毎に更新が必要なのか理解できない。
2 建築士の免許について
(1) 日本語による試験については非常に後進的であると言える。能力があれば日本語が出来るかどうかは重要でない。
(2) 一級建築士に日本語が必要と言うのはおかしいのではないか。日本語が出来ないと日本で仕事が出来ないと決めつけることはない。また、他業種のように通訳を付けることで日本語の必要性は解決するのではないか。
○議長による総括
(1) 我が国の建設市場に新規参入しようとする企業は、28種類の工事それぞれの定義や許可要件について理解した上で、最適な種類の許可を選択するという高度かつ複雑な意思決定を行う必要があり、これが対日投資の阻害要因となりうることは否定できないと思う。
一方、現行制度においても、附帯工事については、業として許可を受けた建設工事以外の工事も請け負うことが可能であり、かつ、技術的要件を満たせば自らその施行を行うことも可能である。また、建設業の許可を得るためには営業所に必ず専任技術者を置かなければならないが、その専任技術者に必要な要件を満たすことができる資格が業種によっては共通している。
従って、建設業許可に関する現在の業種区分を関連業種毎に大括りすることにより、実質的に許可の種類を減らすことは可能ではないか。
また、市場における工事の事後評価機能を強化しつつ、建設業の許可要件を緩和するという方策も併せて検討願いたい。
添付書類の一部省略等、所管省は許可更新手続の簡素化は既に措置済であるということだが、さらに簡素化する余地がないか検討願いたい。
(2) 建築士法において外国の建築士免許を受けた者に関する規定が明示してある点は評価できる。しかし、その認定基準等運用基準が明文化されていない点は、外国からいわれのない批判を招く原因となりうる。従って、「行政の透明性の確保」という行政手続法の精神を活かし、その運用基準を作成・公表すべきである。
(3) この問題については、もう少し時間をかけて審議する必要があるので、事務局の方で、問題提起者、所管省庁とも調整の上、2月の適当な時期に再度専門家会議において審議をしたいと思うので、準備方お願いしたい。
議題2 JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善
○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:ドメインネームの登録要件・手続は公益という観点から適切か
〇問題提起者から提起内容につき説明
(1) 今回の問題提起は、ドメイン名の割当に関する日本の規制が市場アクセス上困難をもたらしていることに基づいている。これは、インターネット・ドメイン名を日本で唯一発行しているJPNICが日本で登記された企業のみにドメイン名を発行するという規則ある。米国企業もJPNICの規則が不当に貿易を阻害してるとして、公正取引委員会に問題を提起している。
(2) 外国企業にとってインターネットによるマーケティングは、複雑な流通システムの日本では特に消費者に直接電子的にコンタクト出来る手段として重要なものである。これを阻害することは、伝統的なマーケティングや販売方式をとる日本企業より外国企業に結果として大きな影響をもたらす。
(3) 一企業一ドメイン制度は商品開発の妨げとなる。これは特にインターネットをプロデュースする企業に影響がでる。例えば、一年に50のプロジェクトを持つ企業がインターネットを通して商品を市場に出す場合、商品の主体性や商品のタイプをできるだけ電子的に協調することが重要となる。この時、商品毎にドメイン名を付けることができれば商品を区別する上で効果的である。
(4) アメリカでドメイン名を登録している企業は、ドメイン名に”co.jp”と付けられない。”co.jp”は、信頼性、尊敬度が高く、外国のインターネット制作にとって魅力的である。更にインターネット上で日本のサーチ・エンジンによりリストされる情報は、”.dom”よりも”co.jp”に基づく選択検索がなされる。このことにより、”co.jp”は日本でマーケティングする場合、より重要である。
(5) アメリカでは、約150万件のインターネットドメイン名が登録されている。記憶しやすいドメイン名の大半は既に使われていて、現状では、インターネットを通じて商品を効果的に市場に進出させようとしている企業に悪影響をもたらしている。しかし、日本は、約2万件の登録であり、マーケティングのための多くの英語の言葉がまだ使用できる状態である。
(6) ドメイン名申請の所要時間について、我々の知る限りでは申請から承認まで2〜3週間の遅延がよくある。マーケティング・キャンペーンのタイミング等を含めた重大な企業戦略はドメイン名が承認されるまで開始することができないこと等企業の事業運営に悪影響をもたらすことがある。
〇所管省等から対処方針につき説明
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(1) 所管省はJPNICが公益法人としてふさわしい事業を行っているかという観点から指導監督していることから、公益法人としてふさわしい事業を行っている以上、その内部方針に関する本件要望は、本来的には当事者間で理解を深め合うべき問題と考える。
また、問題提起者の理解を得るとの観点からは、問題提起者、JPNIC等の当事者間で直接意見を交換し理解を深め合うことが有益と考えており、所管省としては、こうした取組に協力し、促していく用意がある。
(2) ドメイン名の登録に関しては、プロバイダによる仲介申請制度により既に競争原理は導入されている。
ドメイン名のオンライン登録申請は、1991年12月より可能となっている。また、登録申請料金は、先進国の中では中程度の価格設定である。
(3) 所管省としては、有限な資源であるドメイン名の管理のあり方について、近々研究会を開催して幅広く検討していく予定である。
2 JPNICより、ドメイン名、登録要件、OECDの最新資料を用いて国際比較等について説明。
〇この後、審議
(委員の主な発言)
(1) JPNICは共管の社団法人であるが意思決定をする際等に不自由がないか。
ドメインネームを有限資源と認識しているのか。
ドメイン名の現在の登録申請処理期間の10作業日以内を今後短縮する見通しはある
か。(2) 一組織一ドメイン制を採る国と採らない国があるが、将来的にはどちらが主流とな るとみているか。
一組織一ドメイン制(先着順)をJPNICが決めた理由は公平性であって、本来の商標権者の登録商標は重視しないということか。
一組織一ドメイン制とするか複数制とするか、国際的な主流がどちらになるか見極めることが大事だと思う。
(3) 複数ドメイン制を採る国での評価や、それに伴って発生する紛争の対応いかん。
(所管省の主な発言)
(1) ドメイン名を有限資源としたのは、理屈の上では一見無限に思えるが、同じ名前が使えないといった意味で有限資源ということである。
(関係団体の主な発言)
(1) JPNICは、共管であっても意思決定の際不自由は感じていない。インターネットの世界は諸問題が複雑に絡み合っており、4省庁共管をむしろJPNICから要望したものである。
登録申請処理期間については、ドメイン名ルールの国際的合意がなされば、判定に要する時間の短縮につながると思う。また、データベースの高速化や事務の効率化を進め、登録申請処理期間の短縮に努めていく。
(2) ドメイン名の扱いについて、(商標権の観点から)国際的な合意が未だなされていないことが、各国まちまちの対応となっている原因である。
一組織一ドメイン制は将来的にどうなるかわからない。国際会議でもなかなかまとまらない状況であり、当面現状を維持せざるを得ないと感じている。
一組織一ドメイン制を採用した理由は、ドメイン名の扱いについて国際的な合意がなされていない状況ではあるが、商標権を保護したした方が良いという考えに基づき、セイフティーガードとして決定した。
複数ドメイン制を採るアメリカでは、一個人、一組織で大量にドメインを取得して、商標権者に売りつけるといったことも起こっている。
(3) 複数ドメイン制を採用する国の評価については、OECDのレポートでもまちまちである。
(提起者の発言)
(1) インターネットは今や一部の特別な人が使用するものではなく、一般の多くの人々が使用しており、マーケティングとしても重要な手段となっている。少なくともアメリカでは、重要な知識産業となっている。インターネットは将来ますます大きな影響を持つと思われる。日本もインターネットをビジネス領域として発展させる必要がある。その一つは簡単で覚えやすいドメイン名を認めることである。
(2) アメリカの場合、短いドメイン名が付けられ、また、登録申請にしても、競合するドメイン名の確認後約15分で受け付けられた。非常に簡素である。
(3) 両国の差はドメイン名登録数にも表れており、アメリカの方が多く登録されている。誰から見ても日本は制限的だと言える。
〇議長による総括
(1) 公益法人については、民法上その業務が主務官庁の監督下にあり、必要な命令をすることができるとされており、昨年6月の建議でも主張したとおり、たとえその内部方針であっても市場アクセスの観点から適切なものでなければ、主務官庁において所要の対応を行うべきである。
(2) 今回問題提起されたJPNICによるドメイン名の運営方針を検討すると、ドメイン名に関し国際的に統一された運営方針が存在しないことや、先進国間においてもその運営方針が様々であること等から鑑みて、「国際慣行と異なり、市場閉鎖的である」とは必ずしも言えない。
しかしながら、一つの組織に複数のドメイン名が認められたり、ドメイン名の国籍要件が我が国よりも緩い国は現に存在しており、このような国と我が国とのシステム格差により、我が国への市場アクセスや対日投資へどのような影響を及ぼすかという点については、今後検討を要する課題である。
インターネットのあり方については、既に関係省庁において様々な研究会等で多岐にわたるテーマにより議論されているが、これらに加え市場アクセスや対日投資促進の観点からの検討を早急に行い、必要があれば、主務官庁からJPNICに対しドメイン名の運営方針の改善を働きかけるべきである。
(3) 本日示された委員の意見を踏まえて、事務局で問題提起者、所管官庁とも調整の上、できるだけ具体的な改善内容とその実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、私に報告頂きたい。その報告を頂いた上で、必要に応じ更なる検討を加えることとしたい。
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
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