OTO推進会議平成9年度第6回専門家会議議事要旨
日時 平成10年2月25日(水)14:00〜15:00
場所 経済企画庁特別会議室(1230号)
出席者
(推進会議)
議長 大河原議長
(委員)
議長 久米委員
議長代理 行天委員、島野委員、谷村委員、山本委員
委員 片岡委員、金森委員、兼重委員、細川委員、村上委員
(問題提起者)
議題1 駐日欧州委員会代表部イエッセン参事官、田辺経済担当官
(所管省庁)
議題1 建設省建設経済局建設業課 森市場アクセス推進室長
建設省住宅局建築指導課 小川高齢者・障害者建築対策官
(OTO本部事務局)
小林審議官、東貿易投資調整官、前川OTO対策官
議題
(1)建設業の許可等に係わる規制緩和
(2)その他
審議の概要
議題1 建設業の許可等に係わる規制緩和
○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針につき説明
問題の所在:
1 建設業許可取得に係る手続の合理化及びコスト削減を図る余地はあるか
2 一級建築士の認定基準のあり方
○所管省庁から対処方針につき説明
1. 建設業許可について
(1) 建設業界は、現時点或いは景気停滞時においても新規参入圧力の強い産業であり、前回の議論に出たギルド的な組織ということはない。新規参入の多い理由として、当業界は設備投資、資本が少なくても参入可能であることがあげられるが、新規参入が多いということはそれだけ不適格業者が入ってくるという面も否定できない。
(2) 許可業種数については、28業種全ての許可が必要ではなく、営業しようとする業種の許可をとればよい。また、「土木一式工事」、「建築一式工事」、「附帯工事」といった特例もあり、業者に過度な負担となっているとは考えてない。
(3) 問題提起者に話を聞いたところ、「一式工事」や「附帯工事」等の知識を持っていないように感じたこともあり、今後、外国企業にもわかりやすい、建設業許可に特化した英文パンフレットの作成を行い、十分な情報提供に努める。
(4) 中央建設業審議会(平成10年2月4日)において、「業種区分を技術体系等に応じてグループ化し、当該グループを許可単位とする方向で検討し、早期に結論を得るように」との建議が出たこともあり、この線に沿って鋭意検討し、結論を得るよう努力する。
(5) 許可等の手続の簡素化については、すでに可能な限り実施してきたところであるが、今後も諸制度の枠組みの見直しを踏まえ、諸手続の申請事項の一層の整理、簡素化を図る。
2. 建築士免許について
(1) EUの建築士資格が日本で認められないという指摘については、職能サービスについては、GATTの一般協定の原則を踏まえるべきだと考えている。この協定では、他国の資格に対し承認を与える時には、当該国間の協定等で措置するとされている。また、この承認は多国間で合意された基準に基づくべきとされている。現在、建築士の資格についても各国の職能団体間で基準策定がなされており、来年7月に北京でこの基準が採択される見込である。
(2) 資格要件、審査手続、免許要件に関して、不必要な障害を与えるべきでないと各国間で認知されているが、言語は、この不必要な障害に該当しない。安全性の確保に関する最低限のコミュニケーション能力は必要でないかと考えている。
(3) EU諸国をみると、フランスでは他国の資格の受入れ制度については、互恵条約又は協定の決定が必要である。ドイツでは互恵性の有無に関して、もし無ければ拒否することができる拒否権の留保の規定がある。その他の国では他国の資格をそのまま認める制度はあるが、その場合、学歴、実務経験等を審査した上で認めている。
また、日本の一級建築士資格の評価は他国では全く通用してないというのがヒアリング結果からうかがえる。
(4) 建築士制度の運用については、WTO等の場での相互承認を基本として合意された基準に基づくのが基本である。しかしながら、日本である程度の実務実績のある者については、語学要件についても例えば母国語による論文の作成と建築知識の検証で認めている。
○問題提起者から提起内容につき説明
(1) EU代表部が28業種について理解していないのではとのことだが理解している。フランスのある業者は日本で16の免許を取得した。本当は2種類で良かったのだろうが、ビジネスのためには16必要だと思い取得した。
(2) 建築士の決定については、最初に提案を出して3,4年後に初めて建設省から相互主義についての提案があった。なぜもっと早く応答してくれなかったのか。これほど時間がたってから提案が出されたというのは日本企業でもEUに同じ提案を出す必要が出てきたからではないか。しかし、日本企業が直面している問題と我々が直面している問題は違うと思う。
(3) 我々の要求は、1.28業種分類の大幅削減 2.最初は一県でしか活動しないとしても時間の経過とともに複数県にまたがる場合もあるので、最初から建設大臣許可を得られるようにする 3.ライセンス取得のためのコスト引下げ 4.外国エンジニアに関する明確化 5.申請手続の簡素化 6.建築許可の有効期限の延長 7.建築士法における外国建築士の承認基準の更なる明確化及び日本語要件の削除である。
○この後、審議
(委員の主な発言)
1. 建設業許可について
(1) 対処方針に「庭師は通常許可は必要ない」とあるが、通常でなく、許可が必要な場合、判断をするのはどこのセクションか。その判断基準は何に基づいているのか。判断基準そのものは文書で公開されているか。
(2) ここ2,3年の海外からの建設業への新規参入は何件となっているか。
(3) 海外企業の参入は、新しい技術や新しい考え方、海外で発展したビジネスが入ってくることを意味し、日本社会が安いコストで豊かになるということである。
日本の社会にとって古い習慣が温存されることは良いことではないので、これを機に新規参入が容易となるように考えてほしい。従って、業種の単位を大括りする時にも新しい業者になんのメリットもなかったということがないようにしてほしい。
(4) 経営業務管理責任者の許可基準に5年以上の経験を有することが必要とされているが、5年もの長い期間を条件とするのは、はたして適当なのか疑問である。
2. 建築士免許について
(1) 日本の建築士資格で建築家と構造エンジニアが分かれていないのは、日本は災害が多いというのが理由となっているが、災害の多い他の国でも、建築家と構造エンジニアが一緒になっているのか。
(2) 日本の技術水準を海外並に保つには、構造強度の分野と建築分野をはっきり分けて、それぞれの分野が発展するようなことを考える必要がある。日本の資格が海外で認められないのは特異な制度を保っていることが原因である。
(3) 日本語の問題については、出来るに越したことはないと思うが、出来なければならないというのは理解できない。言葉より、その分野の知識、能力が重要である。
(4) 建築士法第4条3項の具体的な運用基準は文書等で公開するのか。
(5) 語学の問題で、実務経験が長ければ英文ペーパーで代用できるのか。また、この実務経験は何年と決まっているのか。
(所管省の発言)
1. 建設業許可について
(1) 軽微な工事(500万円以下)は許可不要でこれは法令に明示している。「通常許可は必要ない」というのは、500万円以下の工事を請け負う場合は許可不要という意味である。
(2) 外国企業の参入については、MPA(大型公共事業への参入機会等に関する我が国政府の措置)を契機に急増し、現在は80社程度である。
(3) 5年の経験年数を必要としているのは、建設業の経理は一般の会計原則と異なっており、その点を身につける必要もあるからだと思われる。
2. 建築士免許について
(1) 自然災害の多い国では、建築家と構造エンジニアのどちらかの資格でないと設計が出来ない国が多い。日本の場合、明治以降の工学教育で設計とエンジニアリングを一緒に教育してきた経緯もある。この資格は分けるのが世界の潮流であることは承知しているが、国内的に業務独占を与える資格を増やすことにもつながるのではないか。
(2) 建築士法第4条3項の具体的な運用基準は公開する。
(3) 英文ペーパーの件は、日本での実務経験が長い場合(3年程度)は、むしろ包括的な知識を求める観点から英文等での論文審査を行っている。
○議長による総括
(1) 1 月28日に行われた審議における各委員の意見を簡単にとりまとめると、1.建設業許可に関する現在の業種区分を関連業種毎に大括りにすることにより、実質的に許可の種類を減らすべきである。2.許可に係る添付書類の更なる簡素化に努めるべきである。3.建築士法において、外国の建築士免許を受けた者に関する規定の運用基準を作成・公表すべきである。というものであった。
これらのうち、建設業許可業種区分については、2月4日に発表された中央建設業審議会の建議によっても当専門家会議における意見と同様の方向性で見直しを検討すべきということが示されたということである。所管省としては、ぜひ実施時期を明確にしながらその具体化を図っていただきたい。
(2) 本件の審議に2回もの専門家会議を要したということからもうかがえるように、そもそも建設業許可の業種区分の仕組みや附帯工事等の意味が、外国人や素人にはわかりづらいことが問題提起の背景となっているのではないか。所管省としても既に広報には力を入れているのであろうが、より一層の努力を期待する。
(3) 外国企業の場合には、我が国に初めて営業所を設ける場合であっても、国境を越えて 複数国にまたがって営業を展開しているものであり、建設業の営業に関する許可及びその監督について、1 つの都道府県の知事の管轄に委ねるよりも、建設大臣がこれらの事務を管轄した方が行政運営上適切ではないか。かかる観点から、外国企業については、我が国に初めて営業所を置く場合であっても、希望すれば建設大臣から許可を受けられるという特別措置を検討すべきである。
(4) 本日及び前回示された委員のご意見を踏まえて、事務局の方で、問題提起者、所管省庁とも調整の上、できるだけ具体的な改善内容とその実施時期を盛り込んだ報告書の原案を作成し、早急に報告いただきたい。その報告をいただいた上で、必要に応じ更なる検討を加えることといたしたい。
○議長総括に対する所管省の発言
大臣許可については、2以上の都道府県またがると、都道府県知事では他の都道府県における活動の監督などを行うことが困難であるためである。そして、営業活動、工事の施工等については、知事許可、大臣許可で何の差異もない。
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問い合わせ先]
経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
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