平成11年度第2回OTO専門家会議議事要旨


1 日時 平成11年12月6日(月) 10:00〜11:50

2 場所 経済企画庁特別会議室(436号室)

3 出席者

(OTO推進会議)

大河原推進会議議長、久米委員(議長)、行天委員、佐々波委員、島野委員、谷村委員、豊島委員、八城委員、米倉委員、伊藤専門委員、兼重専門委員、本田専門委員、朴特別委員 (問題提起者) シモンズ駐日米国大使館上席商務官、稲葉駐日米国大使館上席商務専門官、大浜NNFA JAPAN科学・法務担当ディレクター (所管省庁) 厚生省生活衛生局 吉田食品保健課新開発食品保健対策室長、医薬安全局 津田監視指導課総括課長補佐 他 (OTO事務局) 経済企画庁 川本調整局審議官、市川調整局貿易投資対策官 4 議題 (1)栄養補助食品に関する規制緩和

(2)その他

5 審議の概要

議題1 栄養補助食品に関する規制緩和

○事務局から問題の背景、問題提起内容及び所管省庁の対処方針等について説明

問題の所在 1.栄養補助食品に含まれる成分の範囲はどこまでか。

2.栄養補助食品で使用できる形状、表示の範囲はどこまでか。

3.医薬品としての規制から除外された成分を主たる成分とする栄養補助食品が、実際に流通されるよう食品添加物の定義を見直すべきではないか。

○問題提起者より提起内容につき説明 (1)平成8年3月のOTO対策本部決定が日本における栄養補助食品制度の基盤であるべきである。対策本部決定には「通常海外で食品として流通・販売されているものが医薬品として規制されることなく食品として取扱いできるようにする」とあるが、現実には全くそうなっていない。それは厚生省がOTO対策本部決定を全く尊重していないからである。OTO対策本部決定については速やかに実施していただきたい。厚生省は、グローバルスタンダードと常識によってこれらの物事を扱ってほしい。

(2)対策本部決定には「ビタミンについては平成8年度、ハーブ(生薬)については平成9年度に、形状(剤型)及び表示の現行基準をできる限り緩和し、ビタミン、ハーブ以外のものについても、平成10年度からミネラルをはじめとして順次実施する。」とある。厚生省は、対策本部決定に従いビタミン、ハーブ、ミネラルのそれぞれ一部を薬事法の規制から外した。しかしながら実際には食品衛生法の食品添加物の規制により、米国で販売されている製品が日本に輸出できなかった。また、表示については、米国で認められる表示が日本では認められない。部分的な変化はあったが、販売できるか否かに関して言えば、結局は何も変わっていない。また、OTO対策本部決定では、「ビタミン、ハーブ以外のものについても、平成10年度からミネラルをはじめとして形状及び表示の基準緩和を順次実施する」と決められているのに、ミネラル以外については何の検討もされていない。

(3)「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」の中間報告には「ハーブ」という言葉が載っていない。厚生省はOTO対策本部決定に反してハーブを対象からはずそうとしているのではないかと思われる。

(4)OTO対策本部決定のとおり実施するにはそれなりの規則、ルールの改正が必要となるが、それには米国のDSHEAと同じようなものを作ればよい。

(5)結論として、

(ア)厚生省はOTO対策本部決定に従っていただきたい。 (イ)厚生省は米国のDSHEAと同じような次の仕組みを作っていただきたい。
 

○所管省庁から対処方針につき説明

(1)米国大使館の問題提起には承服しかねる部分が多々ある。食品の分野でのグローバルスタンダードはCODEXによって決まっている。それ以外の部分は各国が独自のスタンスで、それぞれの国民の健康、栄養の責任において進めるべきものである。

(2)CODEXでの栄養補助食品の検討状況は次のとおり。

(ア)含有成分はビタミン、ミネラルのみに限定されている。ハーブについては国によって医薬品としての取り扱いがされていることもあり、各国で共通のスタンスに立ってサプリメントということを考えるに至っていない。特にEUにおいてもハーブについては統一した方向性はない。 (イ)表示は、栄養素が体にどのようにいいかを表示する栄養素機能強調表示が認められている。栄養素機能強調表示ができるのは、栄養素参照量がCODEXまたは国により定められている必須栄養素に限定されている。我が国においては脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルがこれに当てはまるが、ハーブは含まれない。 (3)厚生省として、グローバルスタンダードという観点から考えた場合、フォローすべき内容はビタミン、ミネラル、それらについての栄養素機能強調表示。ただし、それ以外のものについて検討を一切行わないというわけではなく、その余の部分については公衆衛生上の観点から議論すべきと考えており、現在「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」において検討を行っているところ。

(4)「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」での検討状況を11月1日に広く国民の意見を求めるために発表した論点整理事項に基づいて説明。

(ア)前提として、国民の健康はきちんとした食事のバランスがベースである。厚生省においても、食生活指針を示して、食バランスを適性に保ち、それによって健康維持を図ることとかねてから言ってきた。

(イ)栄養補助食品の定義については次の3案が検討されている。

(A案)栄養バランスの取れない方のためという限定的なもの。

(B案)栄養素の働きを栄養バランスを超えて定義し、疾病罹患リスクの軽減を図ることを目的とする食品を含める。

(C案)いいものについてはいいものとしてステータスを与えようというアイデア。米国のDSHEAはこのような観点で捉えられている。

(ウ)栄養補助食品の範囲については次の3案が検討されている。 (A案)ビタミン、ミネラルに限定する。

(B案)ビタミン、ミネラル、プラスアルファ。ただし有用性を併せて検討する。

(C案)もっぱら医薬品とされる成分を除くすべての食品成分。

ハーブを明示的に示していないが、C案にハーブが入ってくる。

(エ)栄養補助食品の表示 いわゆる栄養補助食品は、特定の成分を高濃度で摂ることを前提としているので、それに伴う障害が懸念される。例えば、米国では鉄のサプリメントを摂りすぎて亡くなった方がいる。また、ビタミンAは妊産婦が摂ると奇形児が生まれる危険性が非常に高まる。よって危険性に関する表示は義務的に行ってもらう。任意的な表示として、栄養素機能表示等それぞれの定義にあった表示の仕方を認めていく。 (オ)任意表示の承認方法 米国のDSHEA法では、政府の関与は事後的なものであると理解している。一方、我が国では、何らかの形で政府が表示内容をコントロールあるいは基準を作る必要がある。現在、厚生省が各含有成分毎に栄養素機能表示をあらかじめ示しその範囲内での自己認証制度を認める規格基準型と表示内容についてすべて厚生大臣の許可を必要とする個別評価型の2制度が検討されている。 (カ)栄養補助食品の形状 通常の食品と異なる医薬品的形状の方がいいという意見、食品の形状は問わないという意見が出ている。
(5)我が国では、これまで栄養補助食品を摂ってきた経緯がないので、まず意義や目的を十分に承知してもらった上で適切かつ安全に摂取してもらいたいと考えており、検討を行ってきた。

(6)個別の成分の扱いについては、ワーキンググループを作り、専門家に検討してもらう必要があると考えている。

(7)任意表示の承認制度については、規格基準型、個別評価型の2制度が並列することになるが、当初は個別評価型で行っていたものでも将来的には規格基準型へ変更できるよう制度についても柔軟な対応をとるための検討が必要である。

(8)栄養補助食品について、消費者が適切かつ安全に摂取するため、事前あるいは事後のアドバイスをどのようにしたらいいか、というシステムもあわせて必要である。

(9)今後のスケジュールとして、12月8日に米国大使館を含む関係団体から意見をもらい、中間報告について12月20日の検討会で検討を行う。その後、中間報告を出し、広く国民に意見を求める予定。今年度中に栄養補助食品とはどういったものかという姿を国民に示す。

(10)食品添加物

(ア)ポジティブリストにすることは広くいろいろな国で認められている。

(イ)医薬品は医師や薬剤師の監視の下、一時的に使用されるものだが、食品は日常通常的に摂取される。医薬品から食品となっても、改めて安全性等は評価すべきであるということは多くの国で共通した理解である。積極的に検討するのはやぶさかではないが、ルールにのっとって処理をせざるをえない。

○この後、審議

(委員の主な発言)

(1)薬事法、食品衛生法はOTOでよく扱う。それは見直す部分を多く抱えているからである。本当は法律を改正しなければならないこともあろうが、よほど合理的で説得力のある理由がない限りは、法律改正にいたらないでできることは、少しでも早くやってもらいたい。

来年の3月になって実は何も変わっていなかったということのないようにしてもらいたい。

(2)検討会の結果はどのように処理するのか。本件の起点である、食品と医薬品の間である第3のカテゴリーの法的整理をやるのか。政府として検討する以上、政府としての目的意識が必要である。

(3)厚生省の対応がOTO対策本部決定に反すると問題提起者が受けとめているということはあってはならない。重大な問題である。検討会の対応がOTO対策本部決定に反したものになると困る。検討会での検討結果はOTO対策本部決定の趣旨を踏まえたものでなければならない。

(4)厚生省によると、食品と医薬品の区分は普通の人の常識に基づいて判断する、また食品添加物については実績も尊重し判断しているとのことである。そうであれば、日本で実績がなくても外国で長い間、多くの人によって摂取され、実績のあるものは日本でも認めていいのではないか。常識と実績で判断すべきである。

(5)OTO対策本部決定ではすでに決まっていることだが、栄養補助食品にハーブも含めるべきである。せっかく栄養補助食品の制度を新たに作るのだから、栄養補助食品の範囲を過度に限定し、制度を骨抜きにすることのないように、あとでいろいろな批判をされないようにしていただきたい。

(6)総点検で指摘したように、規制緩和すると同時に、消費者が自分に必要なものを必要な量だけ摂取できる環境を整えることが重要だと考える。消費者が的確に選択できるような表示を可能とすべきである。

(7)形状で医薬品と食品を区分するのは、もはやおかしい。本件はもう対策本部決定で決まったことである。そんな規制はすぐに止めるように。製品は消費者が一番摂取しやすい形で提供されるべきである。早急に規制緩和してもらいたい。

(8)厚生省は、米国では政府は事後の規制を、日本では政府が事前に規制することを強調していた。しかし日本でもPL法が整備されてきているし、裁判官の増員も図られてきている。そろそろ事前に細かいことに介入するという考え方から脱却してはどうか。

(9)厚生省によると、栄養補助食品の最大摂取量などを事前にきちんと決めなければならないということだが、このようなものはRecommendationにとどめるべきものである。バランスのある食事を政府が指導するのは結構だが、他方テレビでは若者がお茶漬けをかきこむCMやインスタント味噌汁だけでご飯を食べるCMが放映されている。厚生省は、どうもいらないところにまで手を伸ばしているようだ。

(10)厚生省が食生活を指導するというスタンスでは貿易摩擦は終わらない。多くの委員は戦後の食糧不足の時代を生きてきたが十分に健康である。厚生省が国民の栄養についてとやかく言うのは余計なお世話である。

(11)国民が摂取するものについて政府が事前にどこまで関与すべきなのか。栄養補助食品に健康被害など悪い例があるのもわかる。しかしアルコール、タバコは体に悪いが、規制はない。事前の規制が必要だ、これがないと大変なことが起こると誰もが納得できる場合を除いては自己責任でいいのではないか。

(12)薬事法が改正されないと局長通知を変える必要はないという意見が「医薬品の範囲基準の見直しに関する検討会」において出たとのことだが、それは暴論である。そもそも法律の解釈を局長通知でやることが法体系として問題。

(13)ビタミンが薬事法から外れたにもかかわらず、実際には栄養補助食品として流通できないというのはおかしい。またCODEXだけやっていればいいというのもおかしい。日本は先進国なのだから、もっと積極的にやってもいいのでは。

(14)本来、規制はネガティブリストで行うべき。食品添加物をネガティブリストではなくポジティブリストにしているのであれば、新規の添加物を申請するには資料を厚生省にもってこいと言うのではなく、厚生省が調べればよい。また、新規食品添加物指定のための指針そのものがどうかと思う。

(15)ビタミンは日米の販売価格にかなり差があると思うのだが、どれくらいあるのか教えていただきたい。

(問題提起者)日本で売られているビタミンの価格は、米国の3倍から6倍くらいである。

(16)国民は健康を厚生省に指導してもらおうと思っていない。有害なものを教えてもらおうと思っている。検討会が国民に意見を求めたとのことだが、有害であるか否かは意見の募集とは別の次元のものである。

(17)バランスのとれた食事とは何か。また、可能な限り必要なすべての栄養素を普通の食事から摂取すべきとあるが、必要な栄養素は個人によっても違うだろう。

 

(所管省の主な発言) (1)いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会はOTO決定を重視する必要があるという観点からスタートしている。ハーブを全く検討しないとは申し上げていない。また、これまでも米国側とは数度にわたり意見交換を行っており、厚生省の方針を全く評価していないとされるのは心外である。

(2)表示については、消費者が的確かつ安全な選択をできるよう検討していく。

(3)消費者団体には、PL法で償えるものは金銭的な部分だけで、損なわれた健康は戻らない、という意見もある。

(4)厚生省として新たに栄養補助食品というカテゴリーを作るには、厚生省が認める範囲を定める必要がある。

(5)新規食品添加物の指定を希望する場合は、ガイドラインに従い安全性の評価の資料等を添えて厚生省に提出することとなっている。

(6)栄養補助食品によって食生活のバランスが失せられてはならない。基本的に、栄養補助食品は、通常の食生活を補うものである。

 

○議長による総括 (1)本件については、OTOで長年議論し、昨年の総点検で包括的な解決をしたと思っていたが、問題提起者は厚生省の対応に、不信感を持っておられるようである。そうであるとすれば重大な問題である。

(2)本日の議論は多少すれ違いがあった。食品添加物の定義からハーブの抽出物やビタミンを除外すべきだという意見が出たが、この意見は添加物の定義そのものを見直してくれと言っているのに、それに対する厚生省の答えは、添加物のポジティブリストに載っていないからだめ、であった。これではいつまでたってもすれ違いである。

(3)そこで、厚生省は、通常海外で栄養補助食品として流通・販売されているものが我が国でも流通できるように、今年度中に、OTO対策本部決定に即し、栄養補助食品のカテゴリーのあり方について決定するとともに医薬品の範囲基準の見直しの結論を得るべきである。そして、その結果を平成12年度中の早い時期に推進会議に報告していただきたい。

(4)具体的には、委員の皆さまから御意見いただいたが、次の点に留意すべきである。

厚生省におかれては、各委員の意見を十分に勘案されて積極的な結論が出るように期待したい。

 

議題2 その他
次回の専門家会議の日程について事務局から説明。
 

以 上
(速報のため事後修正の可能性あり)
[問合せ先]経済企画庁調整局市場開放問題苦情処理対策室
TEL 03-3581-5469 (直通)